オカヤドカリとは比較的暖かい地域の海岸近くに生息する節足動物である。ヤシガニもこの仲間に入る。
エビ目ヤドカリ下目オカヤドカリ科オカヤドカリ属 に属するヤドカリの総称で、和名の通り陸上で生活する。
常に貝殻を背負って生活しており、成長するたびに貝殻を変えることで有名。本州では殆ど見ないが、沖縄など年中暖かい地域に足を運べば、海辺でたくさん見ることができる。種類によって大きさは違う。一部の種類はちんまい体にちろちろと動く触角などがとても愛くるしい。その可愛らしい見た目から愛玩動物としても認知されている。
種類は、全世界で十五種類が確認されている。内七種類が日本に生息している。生態や生活史はウィキペディアや個人のホームページに詳しいのでそちらを参照されたし。
普通のヤドカリと違い、陸で生活するためケージに土を敷いて飼育する。ホームセンターなどでは非耐久消費財さながらに投げ売りされているが、飼育はそれほど楽ではなく生半可な知識では越冬させることすら難しい。可愛いがために需要はあるが、命を大切にされない生き物ともいえる。いわば愛玩動物というよりも動く玩具として扱われるケースがあるのだ。その象徴ともいえるのが市場における扱いの悪さである。オカヤドカリ用品は地雷商品がやけに多い市場でもあり、特に2005年前後は「使えばヤドカリが死ぬ」という商品が多く出回るという嘆かわしい状況にあった。こうした事態にオカヤドカリの愛好家は悲憤慷慨した経緯がある。
飼育には知識がいる反面、いざ設備さえ整ってしまえば他の愛玩動物に比べてほとんど金はかからない。また、割と活発で、成長すれば貝殻も変わるのでトカゲよりも見ていて飽きがこない。
飼育の歴史はそれなりに長く、愛好家の間では膨大な飼育ノウハウが蓄積されている。インターネットが普及した当初(2chでテレホマンが活躍してた頃)からすでにオカヤドカリの愛好家によるHPが存在し、情報も活発に交換されていた。本気でオカヤドカリを飼育しようと思えば必要な情報はすべてインターネットから手に入るといっても過言ではないのだが、間違った情報がそのまま間違ったまま拡散している場合も多々存在している。
ここでは飼育方法の要点を簡潔に述べるにとどめておくので、本気でオカヤドカリを飼育したい方は自分で情報を収集していただきたい。
彼らを飼育するには彼らのことを知らなくてはならない。飼育において特に強調される点は以下の通りである。
暖かい地域に生息している
極寒の冬が訪れる場所にはいない。暖かい南国の森の土壌に生活している。
砂浜にいるのは貝殻やエサ、もしくは海水のミネラル補充に訪れているだけであり、砂浜で生きているわけではない。
早い話寒いのが苦手で、気温が15度を下回ったあたりから冬眠モードに入る。飼育下で冬眠させるのはリスクが高いとされている。
彼らは夜行性であるため高温すぎるのも苦手。直射日光など言語道断である。
彼らは生活の為に淡水と海水が必要である。
淡水は彼らが湿りを必要としており、海水は彼らが海水からミネラルを補給する為である。
彼らの甲殻はミネラル分を必須としている為であり、脱皮後などは海水を飲みに海に訪れるとされる。
乾燥が苦手
オカヤドカリはエラで呼吸しており、定期的に淡水に入っている。(他に腹部で皮膚呼吸もしている)
このエラが乾くと問答無用で絶命する。
彼らは同じ物を食べ続ける事をしない。
基本的に前回食べたものを記憶しており、栄養バランスを考えてか別の物を食べようとする習性がある。
夜行性
基本的に臆病。貝に籠ることで身を守る。
夜行性で、暗くて静かな場所を好む。精神的に快適な環境は後述の脱皮の成否にも関わってくる。
脱皮をする
オカヤドカリは蟹などと同じで脱皮を繰り返して大きくなる。この脱皮が曲者で、アカテガニのように「おk、脱いだ」と軽々しく脱皮せず、土に潜り数日の時間をかけて脱皮する。
この時飼育環境が砂の場合、砂中に潜って脱皮するしかなくなった結果死に至る場合が多い。
というのも、脱皮とは本来命がけの行為であり、本来ならば土の中に部屋を作って、その中で安全に脱皮している。
だが砂では部屋が崩れ、そのまま脱皮中に生き埋めになってしまう。これが「脱皮に高いリスクを伴う」と言われている点である。
飼育下では土壌を砂とする間違った情報を元に飼育した結果、そうした事故が起きている。
貝殻がいる
貝殻はオカヤドカリの体を守るだけでなく、水を貯えておくという重要な役割を担っている。脱皮などで大きさが合わなくなると貝殻を脱ぎ捨てて、他の殻に移る。
オカヤドカリは貝殻をかじる為、人工物の混じっていない天然物を用意する。
彼らの命を預かっている以上、快適に過ごせる安住の地を提供すべきなのが、我々飼い主の務めである。
多頭飼育
オカヤドカリがたくさんいれば、見ているほうもにぎやかで楽しい。…だが待ってほしい。
彼らは神経質で、狭いケージで大量に飼えばそれだけリスクは高くなるし、小競り合いはしょっちゅう起きる。そうなれば彼らがストレスを感じるのは容易に想像できるだろう。
120㎝水槽でも用意する覚悟なければ大量に飼うのはやめておいたほうがいい。
ケージ(容器)
水槽やプラスチックケース(虫とかいれるやつ)が広く用いられている。
彼らはこと、脱走にかけては天下一品なので、固定できる蓋があれば頼もしい。保湿と保温ができるなら別に衣装ケースでも飼育は可能である。
容器が大きいと広々と使えて大変よろしいが、当然掃除や用意する土の量も多くなる。多頭飼育をするのであれば必然的に容器も大きくなる。
反対に小さいと土や保温器具は少なくて済むが、飼育内での温度勾配を作り辛くなる。
蓋は保湿を重視するつもりで選ぼう。やや通気性があって、脱走できない重みがあるといい。
砂 土
主に脱皮と保湿の役割を担うため、サンゴ砂がよく用いられるが材質はある程度細かいものであればなんでもいいとされているが、それは大きな間違いである。
同じ甲殻類であるエビやカニと同様にデトリタス食性であり、一度微生物に分解された植物質を食べる為、彼らは土をツマツマするのだ。
いうなれば自然界での分解者の立場に存在している。極端な話、落ち葉も食べるし分解さえ進んでいれば自身の糞でさえ食事の対象となる。
細かなサンゴ砂にそういった分解物は存在せず、有機物の含まれた土の様な彼らの小腹を満たす物が無い。その為食事が給仕のみとなり飢え死にしやすい原因ともなっている。
湿っていて握れるぐらいの湿度のある土壌が好ましい。可能ならば彼らが住む場所の土を持ってくるのが一番でもある。
オカヤドカリが穴を掘って脱皮することも意識し、最低でも15cm~20cm前後は欲しい。
大きい個体を飼うのであれば当然もっといる。容器内に別の容器を用意して部分的に高さを増す猛者もいるが初心者はやめたほうがいいだろう。
水場は全身が浸かれるくらいの深さは最低限必須。
これは彼らの呼吸方法がエラ呼吸であり、水に浸かって貝の中に水を貯めそれで呼吸しているからである。
当然水に酸素が溶け込んでなければ窒息するので、エアレーションは必須となる。
一方海水場は水場より小さく作っておく。
これは塩分補給のための水飲み場であり、脱皮後等に飲みに来るために必要な場所となる。
餌から塩分をとれるならばいいのだが、そんなものを人間が目分量で適切に用意できるわけがない為、初心者ならば用意しておくべきだろう。
餌やり場はメンテナンスが楽なのを選ぼう。
土壌がよければ、食べ残しは自然に分解される為不要でもある。
当然土壌がよければ彼らは土をツマツマするので餌の頻度も少なくてよい。
登り木
読んで字のごとし。彼らが上るための木のことである。ヤドカリが木に登るさまは割と見ていて楽しい。無ければ水槽のゴム部分を伝って天井に登ったりする。脱走には注意。
その他隠れ家的な意味もあるので入れておいたほうがいい。また低床が湿りすぎていると流木に上るので、そうした環境のバロメーター的な役割も果たす。
隠れ家
夜行性なので暗くて狭い場所に身を隠す。なので常に彼らが安心できる場所を作ってやる。
植木鉢だと脱皮後に皮膚が張り付いて死んだなどという話も聞くので、材質にはこだわったほうがいい。
貝殻
邪魔にならない範囲で飼育数+1ぐらいの数を入れる。
入手先は装飾品点やホームセンターで買う場合は人工物は止める事。
自分で採集しにいってもいい。
温度計・湿度計
保温
木枯らしが肌寒い冬がやってくると当然ケージ内を温める必要が出てくる。
間違っても爬虫類用の保温球など使わないように。あっという間に乾燥して永眠する。オカヤドカリは夜行性なので紫外線を浴びせる必要はない。
保温はホームセンターでも売っているペット用ヒーターの重鎮「ピタリ適温」が、コスト・使いやすさ・入手のしやすさの点で安定している。貼る場所は天井。
外から貼っても十分効果はあるので安心してほしい。というよりモノによっては水で発火するので中には貼らないほうがいい。
発泡スチロールや段ボールといった断熱材をケージに張り付ければ抜群の保温力を確保できる。暖房器具で部屋ごと暖めるという方法もあるが乾燥には注意したい。
保湿
冬は特に注意をはらおう。冬は温度に目が行きがちだが、実はこの乾燥こそが最も恐ろしい。
彼らにとって乾燥は天敵であり、それでいて常に濡れていることを嫌う。
高湿度では手足が腐って死んでしまうため、天井の通気性も適度に制限しよう。
※霧吹きの是非についてはいろいろと議論が分かれている。やる場合はヤドカリに直接かけるようなマネはしないように。
餌
雑食性なのでなんでも食うが、個体ごとに好みが分かれる。
調理の際に出た残り物(イワシの骨、ニンジンの皮、果物などの食べ残し)などを週に2、3度少しずつ与えれば、食費はほぼ0に抑えつつ色々なものを与えることができる。
餓死してしまう場合、彼らにとっては過酷な環境となる為注意が必要。
愛好家の中にはセミの死骸を冷凍して常備する剛の者もいる。なんでも栄養価が高い上にタダだからだとか。
脱皮
土に潜ったら適度に湿度を保って放っておこう。土の交換は脱皮が終わるまで止めるように。
当然彼らも糞をする。糞をすれば臭気を放つ。
ただしその土壌が完成していれば、自然分解され彼らがツマツマする為問題はない。
土の大半が分解されてしまった場合は、土の3分の1を入れ替えて、枯れ葉等を地表に撒いてやればよい。
バクテリアが繁殖していれば分解によって臭気はある程度抑えられる。
繁殖
一応繁殖例は存在するが、難易度はとても高い。海を再現する飼育設備が必要な上、丘に上がった時用の数mm~の貝殻を用意しなくてはならない。ぶっちゃけてしまうと無理。
以上ここに書いてきた飼育情報は基本と呼ばれる物である。重ねて言うがオカヤドカリを飼育する場合は彼らの生活環境をよく考えてほしい。
彼らは餌の少なく天敵の多い砂浜に生きてはいない、森の分解者の一員だと考えて飼育しよう。
越冬と脱皮を乗り切ればひとまず一人前のヤドカリストだ。
宿を変えるという特異な習性のためか様々な娯楽作品にも度々登場する。例えばハンマー片手に巨大なヤドカリをぶっ叩いた方も多いはずだ。
掲示板
11 ななしのよっしん
2022/09/06(火) 10:51:16 ID: Q0R6oRg1+4
土は脱皮の成功率1番高いけど、管理ミスるとダニやら小蝿が爆増するから一概に最適とはいえない
12 ななしのよっしん
2023/03/10(金) 07:38:41 ID: vCq3LEUiJh
床材はどれも特徴があるから自分にあったのを使用すれば良いと思う。
大切なのは粒の細かさ、湿り具合、深さ、塩分濃度が適切であること。流木に登ってずっと上に逃げてると床に問題がある目安になるよ。
13 ななしのよっしん
2024/02/10(土) 02:10:13 ID: iTnlacaiIm
土で飼うっていう妥当性は関連動画の飼い方を解説している動画を見てわかるけど、メジャーな飼い方では無いせいでネットや書籍でも情報は集めにくそう。
それにどこかから土を持ってくるにしても病原菌や虫の卵なんかを持ち込む危険性もあるし、土に腐葉土を混ぜるにしても臭いの問題や動物を飼える土の状態かを判断するには知識と経験が無いと難しい。
現状メジャーな砂で飼っても十分長生きさせられるし砂は汚れが分かりやすく土よりも清潔で状態の把握が簡単。なにより何か起こった時に長年蓄積された知識があるおかげでネットや書籍で情報を調べやすいという点においても初心者には土はおすすめできないかな。
もしできるなら前の飼い方を情報も多くメジャーな飼い方として紹介して、土で飼うのはベテラン向けの新しい飼い方として動画の内容を解説したほうが、見る人が参考にしやすいと思う。
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最終更新:2025/01/14(火) 08:00
最終更新:2025/01/14(火) 08:00
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