親譲りのとんでもない気性で話題となった、ある名伯楽の思い出の馬。
主な勝ち鞍
2002年:東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅢ)
2004年:関屋記念(GⅢ)
父サッカーボーイ 母ヘイアンリリー 母父シンボリルドルフ
「弾丸シュート」の異名で知られた父、「七冠馬」の大金字塔を打ち立てた母父共々名うての気性難として知られた馬である。結果として親譲りの荒々しい気性を有することとなり、これが競走生活にも暗い影を落とすことになる。
ひだかトレーニングセールで当時若手調教師だった角居勝彦が惚れ込み、金子真人が購入。しかし、当時から口向きが悪い(=騎手の制御に従わない)ところがあり、このトレーニングセールでも大外から馬なりでぶっちぎるという走りをしていたという。
9月の4回阪神の新馬で逃げ切り勝ち。鞍上に武豊を迎えたデイリー杯2歳S(GⅡ)は最後方から追い込むもシルクブラボーの2着(エイシンチャンプやブルーコンコルドといったGⅠを制することになる馬も出走してきていたがこちらには先着)。 その後東京スポーツ杯2歳Sに挑んだ。このレースでは苦しい位置からの一気の差し切りで重賞初制覇。角居厩舎としてもこれが重賞初勝利となった。関西に戻ってのラジオたんぱ杯2歳S(GⅢ)はかかり癖が出て先行する形となり、最後伸びきれず後の菊花賞馬ザッツザプレンティの7着。
ここまでは順風満帆。2003年クラシック有力候補、あわよくばナリタトップロードと共にサッカーボーイの血を受け継ぐ存在になりうる…はずだった。
陣営は明け3歳初戦に京成杯(GⅢ)を選択。しかし、2歳の地点で角居は「暴走しながら勝っているだけだ」と悩んでおり、右側だけの片ブリンカーで送り出すことにした。しかし、それでもなお気性は改善せず、結果としてとんでもないレースをしでかすこととなる。
単勝2.5倍の一番人気を背負うこととなったこのレース。スタート後最後方待機で慎重に乗ることにした武だったが、1周目のゴール板を通過したあたりからかかり始める。 1コーナーで他の馬を大捲りして先頭に躍り出ると、そのまま20馬身近くちぎり捨てるツインターボ大暴走。この時の前半1000mのラップは59秒4だったが、暴走状態となった向こう流し600m〜1200mで33秒2(11.0-10.9-11.3)の超ラップを刻むという物凄い展開となった。
こんな脚の使い方ではさすがに3・4コーナー中間までが精一杯で、大逃げを打つこととなったため最終的に直線に入ってしばらくまでは先頭で粘ったが、結局後続に飲み込まれてスズカドリーム(奇しくも、大逃げ戦法で知られたサイレンススズカの甥)の11着に敗戦。 これには武豊も「僕には無理です。御せるのはお相撲さん(「朝青龍」と具体名を挙げたとも)ぐらいじゃないか」と困惑のコメントを残すことに。案の定ここから休養し、更には骨折もあり復帰は遅くなった。
翌年の中山金杯で復帰するも春は凡走続き。しかし名古屋競馬の名ジョッキー吉田稔を迎えると、かかり癖も治ったか徐々に戦績が向上。金鯱賞では定石通りの逃げを打ってレコードで駆け抜けるジャパンカップ馬タップダンスシチー相手に、直線追い縋っての2着。そして関屋記念で狙い通りの5番手先行から抜け出し、1年半ぶりの勝利を手にした。次戦の毎日王冠も前目で折り合ってからのNHKマイルカップ覇者テレグノシスの3着。GⅠ獲りもいけるか…と思われた矢先怪我もあり休養し、そのまま引退してしまった。
その後はノーザンホースパークで乗馬となった。熊本の農業高校に移った後には馬術競技でも活躍し、少なくとも2012年のぎふ清流国体と2015年のきのくに和歌山国体の成年総合馬術競技に熊本県代表として出場しているのが確認できる。その後も競技馬として高校で繋養されていたが、2021年までに怪我をして予後不良となり、亡くなったようだ。
あの京成杯の大暴走で名手武豊に「無理」と言わしめ、青嶋達也を驚嘆させ、白川次郎を苦笑させたことばかり語られる馬ではあるが、管理調教師の角居にとっては初の重賞をもたらした馬として、そして開業当時の厩舎の課題を突きつけ、その後の成長の糧となった馬として、忘れ得ぬ馬の一頭となっている。 特に京成杯の武の「僕には無理」という発言は、厩舎の不備を突いたものと感じ、以来武に「いい馬だ」と思われるような馬を育てなければ、と思うようになったといい、また「後年の角居厩舎にいれば、もっともっといい馬になっただろう」と感慨と悔いが入り交じった思いを、雑誌や各種サイトの連載で折に触れて綴っている(下記の参考リンク参照)。後に角居はシーザリオ、カネヒキリ、ヴィクトワールピサなどを育て、特にウオッカでは武を乗せGⅠを3勝した。彼ら彼女らを育てた活躍の原点には恐らく彼があったのではないか。
サッカーボーイ 1985 栃栗毛 |
*ディクタス 1967 栗毛 |
Sanctus | Fine Top |
Sanelta | |||
Doronic | Worden | ||
Dulzetta | |||
ダイナサッシュ 1979 鹿毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
Lady Victoria | |||
*ロイヤルサッシュ | Princely Gift | ||
Sash of Honour | |||
ヘイアンリリー 1990 鹿毛 FNo.1-w |
シンボリルドルフ 1981 鹿毛 |
*パーソロン | Milesian |
Paleo | |||
スイートルナ | スピードシンボリ | ||
*ダンスタイム | |||
エゾノビュティ 1982 鹿毛 |
*サンプリンス | Princely Gift | |
Costa Sola | |||
エゾハマナス | *ハードリドン | ||
ハナカンザシ |
クロス:Worden 4×5(9.38%)、Princely Gift 4×4(12.5%)
アオシマバクシンオー大暴走、白川御大苦笑い
この走りができれば…
掲示板
1 ななしのよっしん
2022/03/20(日) 19:17:41 ID: R9J9KJfnLX
記事作成おつです
2 ななしのよっしん
2022/06/01(水) 19:51:14 ID: xz4+DEGyGR
金鯱賞でのタップダンスシチーの2着がすごいなぁ
サッカーボーイ産駒で一番父の血を濃く受け継いだんじゃないかって思わせるスピード
3 ななしのよっしん
2022/07/05(火) 00:18:30 ID: V8NTDj67T0
記事になったのは角居さんが最近紙面で語ってた影響かな
>>2
代表産駒がミラクルとかトプロとかズブいステイヤーだし、この馬は気性を含めて一番父親に似てる印象あるよね
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/24(火) 02:00
最終更新:2024/12/24(火) 01:00
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