必殺シリーズ(ひっさつシリーズ)とは、朝日放送(現・ABC(朝日放送テレビ))と松竹株式会社が制作し、TBS系列およびNETテレビ(現・テレビ朝日)系列で放送されたテレビ時代劇シリーズの総称。『必殺仕事人2007』よりテレビ朝日も製作に関わっている。
概要
当時の人気時代劇『木枯し紋次郎』を打倒するために作られたシリーズ第1作『必殺仕掛人』を皮切りに、テレビシリーズだけで合計31作品が作られた。
コンセプトは、「殺し屋が金をもらって、生きていては世の中のためにならない人でなしを始末する」ことで、これはほぼ全作品に共通していることである。頼み料(仕掛料。作品によっては仕置料・仕事料とも)は作品によって違い、最初期のシリーズでは数両~数十両前後といった大金で仕置をしていたのが、後期シリーズでは一両~小銭、場合によってはただ同然とだんだんと安くなっていった。中には頼み料は安くても悪党から金をふんだくるパターンもあった。
第1作目の『必殺仕掛人』は池波正太郎作の『仕掛人・藤枝梅安』と基になった『殺しの掟』を原作にしている。第2作目以降はテレビオリジナル(第3作目のみ原案あり)であり、金をもらって悪人を始末するコンセプトは変わらずも梅安シリーズから独立していった作品である。ちなみに『必殺仕掛人』を制作する時に池波先生に許可をもらいに行った時は許可は降りたものの苦言を呈していたらしい。
これまでの正統派時代劇とは真逆を行く、正義の味方とはとても言えない人物が主人公となった本シリーズは第一作から大反響を呼び、裏で暗躍する人物を指す『仕掛人』という言葉を流行・定着させた。その後も必殺シリーズは視聴者からの様々な反響・批判を受けつつ、「時代劇の常識に捕らわれない」「放送当時の社会風刺・流行を江戸時代に置き換え積極的に取り入れる」「できる限り実際にマネするのが困難、あるいは不可能な殺し技を使う」といった姿勢を確立し、時代劇シリーズとしては異例の長期シリーズとなった。
なお、シリーズ第2作目『必殺仕置人』より登場したのが、テレビ時代劇では有名キャラクターとなる中村主水である。
シリーズ初期はTBSや朝日放送などでは土曜夜10時台に放送していたが(制作局の朝日放送がTBS系列だったため)、第5作目『必殺必中仕事屋稼業』放送中の1975年にネットチェンジ(朝日放送がNET(現:テレビ朝日)系列に、毎日放送がTBS系列に変更)が決定したため、関東では第14話から放送局がNETに移動することとなった。その際、NETの編成上の都合から金曜夜10時台に放送枠を新設することとなったため、制作局の朝日放送でも同様に放送日を変更した。
その後、1978年冬にスタートしたシリーズきっての異色作『翔べ!必殺うらごろし』で大きく視聴率が低下したものの、これでダメならシリーズ終了も、との意気込みで臨んだ次作『必殺仕事人』が大成功を収め、以後1980年代前半の必殺シリーズは、約1年間放送の主水主役の『仕事人』と、その間に放送期間1クールの主水が登場しない短編シリーズを挟む、といったパターンで放送された。
この時代、金曜の夜には『3年B組金八先生』や『太陽にほえろ!』などの強力な裏番組があったが、「仕事人ブーム」の頃のテレビ朝日系列の金曜夜は夜7時の『ドラえもん』から始まり、7時半の『宇宙刑事ギャバン』を始めとする宇宙刑事シリーズ、夜8時からの『ワールドプロレスリング』、夜9時からの『ザ・ハングマン』シリーズ、そして夜10時からの必殺シリーズという、今では考えられない超豪華ラインナップであった。
1985年に始まった『ニュースステーション』が平日夜10時台に編成されたが、金曜日のみこの必殺シリーズの放送を優先させたため、金曜日のみ『金曜版』として夜11時からの放送となりシリーズは継続されたが、1987年の『必殺剣劇人』の終了とともにシリーズも一旦終了、『Nステ』も他曜日と同じく10時からの放送となる。
以後は単発のスペシャル番組が放送されていた。1991年10月8日に第30弾となるTVシリーズ『必殺仕事人 激突!』が放送されたが、金曜夜10時ではなく火曜夜9時という時間帯だった。
それから約17年後の2007年7月7日、ジャニーズ事務所所属である少年隊の東山紀之、TOKIOの松岡昌宏、関ジャニ∞の大倉忠義を中心としたスペシャル番組『必殺仕事人2007』が放送、シリーズの顔・中村主水も復活した。
2009年1月4日に『2007』のメンバーが出演した『必殺仕事人2009新春スペシャル』が放送された後、1月9日には約19年ぶりの連続ドラマとなる『必殺仕事人2009』が時間帯こそ夜9時だが金曜夜に放送された。以後、東山主演の単発スペシャル番組『必殺仕事人2010』、『必殺仕事人2012』、『必殺仕事人2013』が放送されている。
『2009』終了から約8ヶ月後の2010年2月17日に主水役の藤田まこと氏が他界したため、この作品が藤田氏のシリーズ最後の出演となった。この年の夏に放送された『2010』では過去映像の形で出演をしている。
さらに、第8弾『必殺からくり人』の花乃屋仇吉役をはじめとして、数々のシリーズ作品に出演された山田五十鈴氏が2012年7月9日に他界された(必殺シリーズへの出演は第6弾『必殺仕置屋稼業』第15話ゲストが最初)。
現在は京楽が製作しているパチンコ機で仕事人たちの活躍を観ることができる。2007年にCR機が製作されて以来、現在に至るまでの10年以上同メーカーの代表シリーズとしてその地位を保ち続けている。
ちなみに、直接のシリーズではないが、関連作品扱いとして韓国KBSが必殺シリーズの権利を松竹から購入して制作し、朝鮮王朝の時代を舞台にした『必殺!最強チル』というものもある。いくつかは本家必殺シリーズの要素は採り入れてはあるが、内容としては本家シリーズと性格が異なる点が多い。
作品
TVレギュラー
第1弾 | 必殺仕掛人 |
1972年9月2日~1973年4月14日 | 全33話 |
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林与一、緒形拳、津坂匡章(現・秋野太作)、太田博之、中村玉緒、山村聰他 |
第2弾 | 必殺仕置人 | 1973年4月21日~1973年10月13日 | 全26話 |
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山崎努、沖雅也、津坂匡章、野川由美子、藤田まこと他 |
第3弾 | 助け人走る | 1973年10月20日~1974年6月22日 | 全36話 |
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田村高廣、中谷一郎、宮内洋、津坂匡章、住吉正博、野川由美子、山村聰他 |
第4弾 | 暗闇仕留人 | 1974年6月29日~1974年12月28日 | 全27話 |
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石坂浩二、近藤洋介、津坂匡章、野川由美子、藤田まこと他 |
第5弾 | 必殺必中仕事屋稼業 | 1975年1月4日~1975年6月27日 | 全26話 |
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緒形拳、林隆三、岡本信人、草笛光子他 |
第6弾 | 必殺仕置屋稼業 | 1975年7月4日~1976年1月9日 | 全28話 |
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沖雅也、新克利、渡辺篤史、中村玉緒、藤田まこと他 |
第7弾 | 必殺仕業人 | 1976年1月16日~1976年7月23日 | 全28話 |
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中村敦夫、大出俊、中尾ミエ、渡辺篤史、藤田まこと他 |
第8弾 | 必殺からくり人 | 1976年7月30日~1976年10月22日 | 全13話 |
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緒形拳、森田健作、ジュディ・オング、間寛平、芦屋雁之助、山田五十鈴他 |
第9弾 | 必殺からくり人血風編 | 1976年10月29日~1977年1月14日 | 全11話 |
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山崎努、浜畑賢吉、ピーター、吉田日出子、草笛光子他 |
第10弾 | 新必殺仕置人 | 1977年1月21日~1977年11月4日 | 全41話 |
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藤田まこと、中村嘉葎雄、火野正平、中尾ミエ、河原崎健三、藤村富美男、山崎努他 |
第11弾 | 新必殺からくり人[1] | 1977年11月18日~1978年2月10日 | 全13話 |
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近藤正臣、ジュディ・オング、古今亭志ん朝、芦屋雁之助、緒形拳、山田五十鈴他 |
第12弾 | 江戸プロフェッショナル必殺商売人 | 1978年2月17日~1978年8月18日 | 全26話 |
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藤田まこと、梅宮辰夫、火野正平、鮎川いづみ、草笛光子他 |
第13弾 | 必殺からくり人富嶽百景殺し旅 | 1978年8月25日~1978年11月14日 | 全13話 |
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沖雅也、芦屋雁之助、高橋洋子、真行寺君枝[2]、 江戸家小猫(現・江戸家猫八)、山田五十鈴他 |
第14弾 | 翔べ!必殺うらごろし | 1978年12月8日~1979年5月11日 | 全23話 |
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中村敦夫、和田アキ子、火野正平、鮎川いづみ、市原悦子他 |
第15弾 | 必殺仕事人 | 1979年5月18日~1981年1月30日 | 全84話 |
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藤田まこと、伊吹吾郎、三田村邦彦、山田隆夫、鮎川いずみ、 三島ゆり子、中村鴈治郎(2代目)、 山田五十鈴、木村功他 |
第16弾 | 必殺仕舞人 | 1981年2月6日~1981年5月1日 | 全13話 |
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京マチ子、本田博太郎、西崎みどり(現・西崎緑)、高橋悦史他 |
第17弾 | 新必殺仕事人 | 1981年5月8日~1982年6月25日 | 全55話 |
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藤田まこと、三田村邦彦、鮎川いずみ、中条きよし、山田五十鈴他 |
第18弾 | 新必殺仕舞人 | 1982年7月2日~1982年9月24日 | 全13話 |
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京マチ子、本田博太郎、西崎みどり、高橋悦史他 |
第19弾 | 必殺仕事人Ⅲ | 1982年10月8日~1983年7月1日 | 全38話 |
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藤田まこと、三田村邦彦、鮎川いずみ、ひかる一平、中条きよし、山田五十鈴他 |
第20弾 | 必殺渡し人 | 1983年7月8日~1983年10月14日 | 全13話 |
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中村雅俊、渡辺篤史、西崎みどり、高峰三枝子他 |
第21弾 | 必殺仕事人Ⅳ | 1983年10月21日~1984年8月24日 | 全43話 |
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藤田まこと、三田村邦彦、鮎川いずみ、ひかる一平、中条きよし、山田五十鈴他 |
第22弾 | 必殺仕切人 | 1984年8月31日~1983年12月28日 | 全18話 |
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京マチ子、小野寺昭、西崎みどり、山本陽一、芦屋雁之助、高橋悦史、中条きよし他 |
第23弾 | 必殺仕事人Ⅴ | 1985年1月11日~1985年7月26日 | 全26話 |
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藤田まこと、鮎川いずみ、京本政樹、ひかる一平、村上弘明、山田五十鈴他 |
第24弾 | 必殺橋掛人 | 1985年8月2日~1985年11月8日 | 全13話 |
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津川雅彦、宅麻伸、斉藤清六、西崎みどり、萬田久子他 |
第25弾 | 必殺仕事人Ⅴ激闘編 | 1985年11月15日~1986年7月25日 | 全33話 |
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藤田まこと、鮎川いずみ、京本政樹、村上弘明、笑福亭鶴瓶、梅沢富美男、柴俊夫他 |
第26弾 | 必殺まっしぐら! | 1986年8月8日~1986年10月31日 | 全12話 |
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三田村邦彦、秋野暢子、大沢樹生、睦五郎(現・睦五朗)、笑福亭鶴瓶、西郷輝彦他 |
第27弾 | 必殺仕事人Ⅴ旋風編 | 1986年11月7日~1987年3月6日 | 全14話 |
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藤田まこと、村上弘明、出門英、かとうかずこ、ひかる一平他 |
第28弾 | 必殺仕事人Ⅴ「風雲竜虎編」 | 1987年3月13日~1987年7月31日 | 全19話 |
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藤田まこと、村上弘明、かとうかずこ、桂朝丸(現・桂ざこば)、三浦友和他 |
第29弾 | 必殺剣劇人 | 1987年8月7日~1987年9月25日 | 全8話 |
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近藤正臣、田中健、あおい輝彦、工藤夕貴、二宮さよ子他 |
第30弾 | 必殺仕事人 激突! | 1991年10月8日~1992年3月24日 | 全21話 |
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藤田まこと、中村橋之助、光本幸子、滝田栄、酒井和歌子、三田村邦彦他 |
第31弾 | 必殺仕事人2009 | 2009年1月09日~2009年6月26日 | 全22話 |
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東山紀之、松岡昌宏、大倉忠義、田中聖、和久井映見、藤田まこと他 |
TVスペシャル
劇場版
1 | 必殺仕掛人 | 1973年6月9日 |
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2 | 必殺仕掛人 梅安蟻地獄 | 1973年9月29日 |
3 | 必殺仕掛人 春雪仕掛針 | 1974年2月16日 |
4 | 必殺! THE HISSATSU | 1984年6月16日 |
5 | 必殺! ブラウン館の怪物たち | 1985年6月29日 |
6 | 必殺! 裏か表か | 1986年5月24日 |
7 | 必殺4 恨みはらします | 1987年6月6日 |
8 | 必殺!5 黄金の血 | 1991年11月23日 |
9 | 必殺! 主水死す | 1996年5月25日 |
10 | 必殺始末人(第1作) (第2作、第3作はオリジナルビデオとして発売) |
1997年3月1日 |
11 | 必殺! 三味線屋勇次 | 1999年2月11日 |
記事がある登場人物の一覧
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関連コミュニティ
脚注
- * Wikipediaをはじめとするいくつかのサイトや一部の書籍では、『新必殺からくり人 東海道五十三次殺し旅』と誤って表記しているが、この番組の正式タイトルは『新必殺からくり人(新 必殺からくり人)』であり、「東海道五十三次」はサブタイトルの頭につく単語である。ちなみに現在のWikipediaでは、『新 必殺からくり人』と記事名変更してある。
- * うさぎ役の役者交代劇(高橋洋子→真行寺君枝)は前任者の体調不良の降板によるものである。
- * この『大利根ウエスタン』が『必殺仕事人Ⅴ』の実質的な第1話となる。
関連項目
子記事
兄弟記事
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