ボクシング(Boxing)とは、拳のみを用いて闘う格闘技である。
レスリングに並び世界最古の格闘技で、現在、最も世界で広く知られている格闘技でもある。
概要
ボクシングのリングの上で、拳にバンテージ(包帯)とグローブをつけて行う。アマチュアでは、ヘッドギアとシャツを着る。
プロ・アマ両方で、ベルトラインより下、後頭部への攻撃は禁止されている。また、投げ技や蹴りは反則攻撃である。
歴史
古代
古くは紀元前4000年頃の古代エジプトに記録が象形文字として残されており、エーゲ海周辺の諸国でもフレスコ画の形で残されている。
二つの拳だけで戦う格闘技は古代ギリシャで隆盛し、叙事詩や神話などにも描かれた。
ヒマンテス、スファライといった柔らかい革製防具を両手につけて関節を守っており、これがボクシンググローブの起源とも言える。
著名な所では、アルゴナウタイに参加したポリュデウケース(ふたご座の元となったディオスクロイの弟)が、ベブリュクス王アミュコスの拳闘試合を受けて立ち、彼を返り討ちにしている。叙事詩『イーリアス』でも死者を弔う競技で拳闘が行われ、古代オリンピックでは第23回大会から正式種目として扱われた。
なお当時はラウンドなしの時間無制限、どちらかがギブアップするか戦闘不能になるまで続けられた。
時代は下り、ローマ帝国では闘技場において拳で戦う拳闘士(ピュージリスト)の存在が記録されている。
防具は鉄板や棘がついたカエストスに取って変わられ、観客を喜ばせる見世物として流血は当たり前で、死人が出る事は珍しくなかった。
剣闘試合ほどメジャーではないものの、人気のある競技だった事が、393年に残酷であるとして禁止。その後ローマ帝国滅亡に伴い消滅した。
近代
いわゆる近代ボクシングは、1867年に英国で作られたクインズベリー・ルールの誕生とともに始まった。これは当時非合法に行われていたベアナックル・ファイトを競技化すべく定められたものであり、グローブの着用や1ラウンド3分といった現代に直接繋がるルールがこの時生まれた。
ヘビー級以外の階級もこれ以降次々と誕生することとなった。
階級
ミニマム級(ストロー級などとも呼称)からヘビー級まで、主に全17階級となっていることが多い。体重の基準は団体によらず共通しているが、名称は団体によって異なるものもある。
WBAの階級を例に挙げると、軽い方から
ミニマム級→ライトフライ級→フライ級→スーパーフライ級→バンタム級→スーパーバンタム級→フェザー級→スーパーフェザー級→ライト級→スーパーライト級→ウェルター級→スーパーウェルター級→ミドル級→スーパーミドル級→ライトヘビー級→クルーザー級→ヘビー級
となる。最も軽い階級で約46kg、重い階級で90kg以上と倍近い差がある。
重い階級になればなるほどパンチが強くなるので大柄な男たちのパワフルなファイトが楽しめる。一方軽い階級ではカウンターなどを主体とした素早いボクシングが見られるのでそちらの方も見所。
必ずしも自分の適正体重=戦闘ウエイトとは限らないため、基本的に多かれ少なかれボクサーは試合前に体重調整のための減量という過酷なトレーニングを行っている。
女子ボクシングではミニマム級よりさらに軽いアトム級があるが、その代わりに重量級の階級が存在しない。どの階級が抜けているかは男子と異なり、団体によって統一されていない。
日本国内の選手が多く在籍するのは大体ライト級ぐらいまで。ウェルターを過ぎたあたりになると急速に国内ボクサーの活躍は少なくなっていき、スーパーミドル級以上は今のところ本格的な世界ランカーは現れていない。
アマチュアボクシングは階級が少なく、10階級しか存在しない。軽い方から以下のようになる。
ライトフライ級→フライ級→バンタム級→ライト級→ライトウェルター級→ミドル級→ライトヘビー級→ヘビー級→スーパーヘビー級
世界王座認定団体
ボクシングのいわゆるメジャー世界タイトルの認定団体は現在4つ存在する。WBA・WBC・IBF・WBOである。
この他多数のマイナー団体が存在するがそれらは事実上なんの価値も持たないと言って良い。したがってK-1で元WBF王者などを元ボクシング世界王者と呼ぶのは、ボクシングファンにとっては失笑モノである。
なお、ボクシングの世界王座認定団体は基本的にタイトルを認定しランキングを作成するだけの組織であり、サッカーのFIFAのようにボクシング界すべてを統括する組織は存在しない。
アマチュアボクシングにおいてはIBA(AIBAから改称)がFIFAのような組織だと言えたが、2023年にワールドボクシングが設立、アメリカなどIBAから脱退してWBに変更する国が増えており、さらにIBAはオリンピック資格が取り消されている。
近年は暫定王者やスーパー王者などといった世界王座の乱発が問題となっている(特にWBA)。
このほか、IBFでも「敗北王者なのに王座保持」といった問題も起きている。
WBOは4団体ではまだ地位が低い。マトモそうなのは一番加盟国が多くてオープンスコアを採用してるWBCぐらい、といいたいがこっちもダイヤモンド王者だの名誉王者だのやたらチャンピオンがいっぱいとなっているし・・・
女子ボクシングはメジャー4団体がいずれも女子部門を持っているほか、女子ボクシングの王座認定団体も存在する。このうちWIBAとIFBAがメジャー世界タイトルとされている。
ややこしいことに、アマチュアボクシングを統括しているAIBAも新たにプロボクシング団体であるAPBを立ち上げていた。
この団体は既存の認定団体とは全く異なる完全なる独自路線で運営されている。オリンピックのボクシング競技にはプロ団体に所属していると出場できないが、APBであれば可能なため、アマチュアの大会にも出場したいという選手の受け皿となっていた。
しかしながら、財政難もありわずか2年で終了した。
日本のボクシング
1952年白井義男が世界フライ級王座を獲得し、日本人初のボクシング世界王者として国民的英雄となった。
以降60名を超える世界王者が日本から生まれている。ただし一般に日本の世界王者とは日本のジムに所属する外国人選手を含めている。これは日本のボクシング界がジムを主体として成り立っているためである。海外の多くの国においてジムは単なる練習場であるのに対し、日本のジムは武道の道場の影響を受けたために自らの看板を背負って選手を育成し興行を手がけているという大きな特徴がある。
日本ボクシングコミッション(JBC)は4つあるメジャー世界王座認定団体のうちWBA・WBCの2つのみを認定している。このため日本のジムに所属するボクサーは残るIBF・WBOに挑戦することはできない。マイナー団体についても同様である。2013年4月1日より、IBF、WBOにJBCが加盟したことで、主要なボクシング世界メジャー団体全てに日本人ボクサーが挑戦可能となった。今後はWBA,WBC以外の試合が国内でたくさん観られるかもしれない。
女子ボクシングは1999年に設立された日本女子ボクシング協会(JWBA)が統括していたが、2008年よりJBCが女子の参加を認めたことで、同年にJWBAは解散した。JWBAは女子プロレスリングのメジャー世界王座認定団体であるWIBAとIFBAも認定していたが、JBCは認定していない。ただ、Wikipediaソースだが海外で挑戦してもJBCのライセンス剥奪はないらしい。
なお、アマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟(JABF)はIBAに加盟しているが、IBA(当時はAIBA)が設立したプロ団体のABPへの参加は消極的だった。しかしながら、APBのオリンピック出場枠の比重が高まったこともあって、現在は前向きな姿勢を示しており、2014年に清水聡がABPと契約し日本人選手第一号となった。2024年9月にIBAから分裂したWBに加盟。IBAからは脱退しておらず、重複加盟となる。
プロとアマの乖離
近年では、プロとアマの競技性の違いが大きくなり、問題となっている。
それは、プロは「相手を倒す」競技になり、アマチュアは「パンチを当てる」競技となったことで、コンセプトに違いが出来てしまったことが原因である。
(具体的な例としてはアマではノックダウンを奪っても特別の点数はつかない等)
アマチュアでは、相手を倒すことよりも、多少攻撃力が低くても的確かつスピーディにパンチを当てることが優先される。
また、近年の強豪選手は変則スタイルに傾倒する傾向にある。プロに比べるとKO率が低く、KOがあっても、選手はピンピンしているのにレフェリーがストップしたりするので、あまり派手さが無い。昔はヘッドギアを着用していなかった。ただし08年北京五輪からアマチュアの採点基準が見直され、より強いヒットでなければポイントにならなくなった。
関連動画
アマチュアボクシング
プロボクシング
その他
関連項目
外部リンク
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