ミッキーのミニー救出大作戦(原題:Get A Horse!)とは、ディズニー短編アニメーションの一作品である。長編映画「アナと雪の女王」の同時上映として2013年に公開。
第41回アニー賞短編アニメーション賞受賞作品。
概要
ミッキーマウスを主演とする短編映画の通算125作目で、前作「ミッキーのアルバイトは危機一髪」以来実に18年ぶりに作られた新作である。
特徴は、1928年にミッキーがデビューした当時の初期のモノクロ作品を意識して作られた作風である。映画は4:3の小さな白黒の画面で始まり、古いフィルムのノイズなども再現されたスクリーンの中に1920年代当時の初期の姿のミッキーたちが登場する。
しかし途中、ミッキーとホーレスはピートに意地悪をされてスクリーンの外に放り出されてしまう。スクリーンの外の現実世界は3DCGで表現された映画館で、ミッキーもカラーの3DCGの姿になる。つまりこの作品は、ディズニー初期のモノクロ手描きアニメーションと最新の3DCGアニメーションのハイブリッドなのである。初期の短編アニメのコミカルに動き回るキャラクターの姿が新規の綺麗な作画で再現されている一方、最新のCGによる美麗な水の表現を見られたりとアニメーションの進化を体感できる。
ミッキーたちカートゥーンは、現実の世界にやってきても物理法則を無視してやりたい放題。ホーレスを飛行機に変形させたり、映画館の客からパクったスマートフォンでスクリーンの中のピートに電話をかけたり、スクリーンを外から回転させて映画を巻き戻し/早送りさせたりと、あの手この手でピートに奪われたミニーを救出するために初期の短編アニメそのままのドタバタを繰り広げる。
本作は声も見どころの一つである。原語版におけるミッキーマウスの声には、彼の初代声優であるウォルト・ディズニーその人の声が使われている。ウォルトによるミッキーの声は過去の短編映画から抽出されたアーカイブによるものだが、一箇所だけ、カラーの世界に出てきたミッキーが自分のパンツが赤いことに驚くセリフ「Red!」は、アーカイブに該当するセリフがなかったため、ウォルトの音声を音節ごとにつなぎ合わせるという人力VOCALOIDのような手法で実現している。ちなみに、ウォルトの声を使うことを提案したのは、製作総指揮のジョン・ラセターである。
また、ミニーマウスとピートの声も、彼女らのウォルトの次の担当声優であるマーセリット・ガーナー、ビリー・ブレッチャーによる過去作のアーカイブ音声から可能な限り再利用されているが、一部のセリフは、ミニーは公開当時の現行の担当声優であるルシー・テイラー、ピートは「ミッキーのクリスマスキャロル」などで現行のジム・カミングスの代役をしていたウィル・ライアンによって新録されている。
また、声のみならず、特に初期のミッキー作品を基にした小ネタも非常に多いのが本作の特色である。
ミッキーシリーズの最初の3作品からの引用に絞ってみても、
- 本作に登場するミッキーは「蒸気船ウィリー」のスタイルそのもの。ミッキーが口笛を吹きながら登場する始まり方も同作を意識している。
- 飛行機に変形したホーレスに乗ったミッキーがピートを追いかける場面のカメラワークは「プレーン・クレイジー」を意識している。
- 気絶して映画館の天井に引っかかったミッキーに、ホーレスが自分の足を投げ縄代わりにして投げるシーンの効果音は「ギャロッピン・ガウチョ」からの引用。
といった具合に、様々なミッキー作品からの小ネタが詰め込まれている。ミッキーシリーズのファンはこれらの小ネタを探しながら楽しんでみるのも良いかもしれないし、逆に本作を見てから過去作を見て「これはあの声の/あのシーンの元ネタだ!」と確認する楽しみ方もある。
登場キャラクター
- ミッキーマウス(声:ウォルト・ディズニー/青柳隆志)
ご存知主人公。今回は「蒸気船ウィリー」に準拠した黄色いボタンの付いた赤いパンツに角張った靴、手袋なしというスタイルで登場する。ピートによってスクリーンの外のカラーの世界に放り出された際、「なんだこれ!?赤い!!」と自分のパンツの色に驚く場面が印象的である。ミニーに一目惚れしたピートによってホーレスと一緒にスクリーンの外に放り出されてしまうが、ホーレスと協力しながらあの手この手でミニーを奪還しようと奮闘する。 - ミニーマウス(声:マーセリット・ガーナー、ルシー・テイラー/水谷優子)
ご存知ミッキーの恋人。彼女も白い花のついた赤い帽子と水色のスカートという初期のスタイルで登場する。ピートによってミッキーと離れ離れにされてしまうが。その一方でピートに仕返しをする際にはピートの落下地点にトゲだらけのサボテンを置いて「これ素敵じゃない?」とミッキーに聞いたりとやることがえげつない。 - ピート(声:ビリー・ブレッチャー、ウィル・ライアン/大平透)
今回もやっぱり悪役。やはり初期作品に準拠して片足が義足になっている。昔ながらの馬車に乗るミッキーたちに「”未来”のお通りだ!」とクラクションを鳴らしながら自動車を自慢しに来たが、馬車で歌うミニーに一目惚れし、彼女を我が物にしようとミッキーたちをスクリーンの外に追い出してしまう。しかし言うまでもなくミッキーとホーレスたちから仕返しを食らい、自動車のクラクションからも「馬を飼いな!(Get A Horse!)」と皮肉を言われスクリーンから締め出されてしまう。 - ホーレス・ホースカラー
ミッキーの最も古い友人の一人のウマ。最初はデビュー作「ミッキーの畑仕事」のときのような4足歩行で、音楽隊を乗せた馬車を引いて登場するが、2足歩行にもなるという折衷仕様。ミッキーによって飛行機に変形させられたり、スマートフォンと消火器を持ってきてスクリーンの中のピートに攻撃を仕掛けたり、スクリーンを回転させて映像を巻き戻せることを発見したりと、今回の最大の功労者。おしまいにはミッキーとミニーに両側からキスをされた。うらやまけしからん。 - クララベル・カウ
ホーレスとセットで扱われることも多い、古参キャラのウシの女性。今回は全体的にコメディリリーフのように扱われている。最後のDisneyロゴではティンカー・ベルの代わりにお城の上空を舞いミルクを撒いた。 - オズワルド・ザ・ラッキーラビット
終盤、数秒ながらもカメオ出演。詳細は彼の単語記事に譲るが、ディズニーによる権利奪還以降初めての銀幕出演となった。
ついでの知識
中盤、スクリーンから出てきたミニーがミッキーに「ここはどこ?ポキプシー?」と尋ねるが、ここで言うポキプシーとはニューヨークの北の外れにある小さな町、ポキプシーシティのこと。アメリカのドラマや映画などではしばし「遠いところ、へんぴなところ」というニュアンスで引き合いに出される地名である。
参考:「Get a Horse!」ミニーの「ここはどこ?ポキプシー?」のポキプシーって?/dpost.jp
関連動画
関連商品
関連項目
- 2
- 0pt

