レーザーとは、
- Laser - Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの略称。本項で記述する。
- レーザー級 - ヨットのセーリング競技での階級の1つ。
- クライスラー(プリムス)・レーザー - クライスラー社の乗用車。
- フォード・レーザー - フォード社の乗用車。
- LASRE - トヨタのエンジンの愛称。Light-weight Advanced Super Response Engine。
概要
レーザー(Laser、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation、放射の誘導放出による光の増幅)とは、指向性、収束性の高いコヒーレント[1]な電磁波(可視光とは限らない)を発生させる装置・又はその光そのものである。
通常、太陽等の恒星や炎、あるいは蛍光灯等から発生する光には波長も振幅も位相も異なる電磁波が混在している。それに対してレーザー光は位相も波長も揃った指向性のある単色光である。
利用
レーザー光は指向性・収束性・単色性等自然光にはない特徴を備えているため、工学や医学の分野で基礎から応用まで広く用いられている。
しかし光エネルギーが狭い領域に高密度に収束するその性質故、使い方を誤ると失明等の事故につながる恐れがある。
レーザーの安全基準については国際機関により定められており、出力や波長に応じてクラス1~4に分けられる。クラス1程度の低出力のものであれば人体に害は無いが、出力が増大するにつれて危険度も高まる。ちなみに人体にとって危険といわれるのはクラス3以上。クラス4に至っては物に当たると発火する恐れがある。
レーザー光と目への危険性
規格上、クラス1~2なら目に直接あたっても即座に失明しないとされているが、あくまでも失明するか否かという話であり、実際は目に入ると「非常にまぶしい」と感じて瞼を反射的に閉じてしまう光度のレーザーを出しているものもある。その結果、一種の目くらまし効果となり思わぬ事故の原因となりかねない。
ましてや故意にそんな光を当てようものなら、相手に強力な悪意を持っている・危害を加える意思があったとみなされていても仕方のないほどの危険性をはらんでいる。
よって、レーザー光を取り扱う際はいかなる場合でも直接目に光が入らないよう取り扱うべきである。
また、日常生活ではいわゆるレーザーポインターのように可視光レーザーしかないイメージがあるが、実際は赤外線レーザー、または紫外線レーザーも存在しこれらも直接目に入ればダメージは免れない。よって、レーザー光の警告がある箇所は絶対に不用意に覗き込んではならない。
レーザー兵器
1960年代からレーザーを使用した兵器は実用化されている。当初は目標までの距離を測る装置や、ミサイルや爆弾を目標に誘導する装置に利用された。アメリカは1980年代のSDI計画で宇宙に配備したレーザー衛星で敵の弾道弾を破壊する研究を行ったが実用化には至らなかった。ただ、1996年にはロシア製のロケット弾をレーザーで迎撃する実験に成功している。[2]
レーザーによる高エネルギーそのもので対象に損害を与えるレーザー兵器は、SFの世界ではビーム兵器と並んでメジャーな存在である。現在のところ実用化の気配のないビーム兵器と対照的に、レーザー兵器はすでに実用に向けての研究が進んでおり、ミサイルや砲弾等を迎撃する実験には成功している。しかし現実のレーザー兵器は目標の一点に1秒ないし数秒間レーザーを照射し続けねばならない。そのためSFアニメのような可視光線レーザーで装甲を焼き切ったり、目標を一瞬にして熱で溶かしたりすることは現実にはない。
またレーザー兵器には、その高い直進性ゆえに生じる意外な欠点がある。それは「地平線(水平線)より先の目標を狙えない」ということ。地平線までの距離は人間の高さを基準とすれば約4.6km、構造物を多少高くしても5~6kmくらいである。高台に設置したり、航空機へ搭載すれば射程は延びるが、この場合電源の確保等の問題から出力に制限が生じる。また平地に高層建築物として設置する手もあるが、この場合標的になりやすい。SF作品等では「飛行機や衛星に積んだ巨大な鏡で反射させる」という手段もあるが、あまり現実的とはいえない。
よって現在の技術では遠距離攻撃を運用実績豊富な砲撃やミサイルからレーザーに置き換えるメリットは薄く、当面は短距離での運用が中心となると思われる。
また大気圏内ではレーザー自身で射線の空気が炙られ屈折率が変わり常に揺らいでしまう(サーマルブルーミング現象)ため、正確な照射には常に照準の微調整が必要となる。
なお実際のレーザー兵器はSFの様に対象を打ち抜くことはできず、対象を炙って加熱することで破壊する。(レーザー切断機も、鋼板などを切る物はアシストガスなどが必要。)
化学レーザー・個体レーザー
高出力レーザー兵器の研究は1960年代から始まっていたが、1990年代から、化学レーザーを使用した高出力レーザー兵器の開発が進められた。米国とイスラエルは共同で「フッ化重水素化学レーザー(DFCL)」を使用した「戦術高エネルギーレーザー(THEL)」を開発、飛翔中のロケットを撃破する実験には成功したものの、システムは大型で車両での移動が難しく、計画は2006年に中止された。THELとは別に、米国は「化学酵素ヨウ素レーザー(COIL)」をボーイング747に搭載した「空中発射レーザー(ABL)」も開発したが、結果的に出力が不足し、これも実用化には至らなかった。2010年代に入ってからは、化学レーザーに比べてシステムを小型化できる固体レーザーを使用した兵器の実用化研究が進められている。[3]
LaWS
アメリカ海軍は古い揚陸艦「ポンセ」に実験的にレーザー砲を搭載して2014年にペルシャ湾に展開させた。小型ボートのスウォームを排除する機能が期待されている。専用のディーゼル発電機をエネルギー源として、33キロワットを1回発射するのは容易だという。ただ、実戦ではスウォーム対策として連続した発射が必要だが、放熱に時間がかかるため連射はできない。[4]
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- ビーム
- イットリウム(アルミニウムと共にYAGレーザーに用いられる)
- ネオジム(YAGと並ぶ代表的な固体レーザーであるガラスレーザーに用いられる)
- チタン(超短パルスレーザーであるチタンサファイアレーザーに用いられる)
脚注
- *コヒーレントの意味はwikipedia「コヒーレンス」を参照
- *「世界軍事ウォッチングPART2」江畑謙介 1997 時事通信社 p.274(用語集)
- *「ミサイル防衛は『高出力レーザー兵器』」宮脇 俊幸 軍事研究2017年9月号
- *「兵頭二十八の防衛白書 2016」兵頭二十八 草思社 2016 p.292
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