なぜ死なないか教えてやろう
主役だからだ
主人公補正とは、そのキャラクターが主人公であることによって受けられる、さまざまな恩恵のことである。
概要
主人公補正と言われることが多いが、主に主人公が中心で物語を引っ張る「主役」と同一である場合に強く働く補正のことでありどちらかと言えば「主役補正」と言うほうが近いと思われる。
その定義については議論の的であるが、大まかに言えば
「物語の作者が、作劇の都合上、主人公を優遇する展開を描くこと」
である。多くの場合、読者・視聴者が気に留めるほどのものではないが、デウス・エクス・マキナやご都合主義に通じる概念であり、度が過ぎると好意を持って迎えられることはない。
主人公が物語の主役であるとき、その物語は主人公のために、主人公はその物語のために存在する。よって主人公が頑張れず、あまつさえ死んだり諦めたりしてしまったりなどすると物語が進まなくなってしまう。しかるに、主人公は途中であきらめるわけにはいかず、並大抵のことでは死ぬことがあってはならない。
故に、主人公に物語を進行してもらうために、主人公に対して致命的な現象が起こらず、また主人公に有利なことが起こりやすくなってしまう。これを主人公の特典であると考えたものが「主人公補正」である。
具体例を一つあげてみる。
とある現代を舞台にした物語で、主人公(を含めた数名)に温泉旅行をさせたかったとしよう。
ここで、例えば小道具として福引きを登場させ、主人公(先述の通り、別に他の誰かでも良い)に福引きを引かせる。
するとどんなに確率が低かろうが、その人物は温泉旅行券を引き当てることになる。
この「福引きで当たりを引く」の部分が、いわゆる「主人公補正」と言えよう。
装甲騎兵ボトムズの主人公であるキリコ・キュービィーはこの主人公補正を逆手に取った設定の代表例である。
作中では「主人公は死なない」という部分を極端に掘り下げ、「異能生存体」 と呼ばれる何があっても死なない人間として主人公を中心に物語が進行している。
また主人公の能力が高すぎる事を指して主人公補正と呼ばれる向きもあるが、意見の分かれるところである。この辺りについてはメアリー・スーの項目も参照されたい。
主人公補正の例
- モテモテ
主人公はモテモテであることが多い。
たとえ外見がイケメンでなくてもモテモテである。時と場合によってはブサメンの場合もあるが、それでもモテモテである。あまつさえ「ブサメンでしかも非モテ」という設定持ちでさえ、ひとりやふたりは理解ある異性が近くにいるのが通例である。常識的に考えれば、フィクションの中でさえ「異性に見向きもされない」という現実に向き合わなければならないほどマゾな人間は多くないからだろう。
大抵の場合、イケメンでなくても他人に優しかったり勇気があったりといった性格イケメンである場合が多い。また特殊な能力や才能を持っているなど、少なからず他人を惹きつける要素を持っている場合が大半である。
ごく稀にだが、イケメンではなく性格も最悪、という主人公がモテまくる作品もある。これこそが主人公補正やご都合主義として非難の槍玉に挙げられる最たるものである。 - 特殊能力の特異性
異能力バトルものなどでキャラクターごとに何らかの特殊能力が付与されるような場合、主人公は、世界設定的に特異で異質な能力を与えられる場合が多い。そして、それをうまく利用することによって活路を開ける唯一の存在となることが多い。
例を挙げれば、不死身のラスボスに対する相克であったり、料理もので言えば、料理を食べただけで材料が全てわかるなど。これを補佐する形で主人公の協力者たちの能力は主人公の足りない部分を補う能力であることがおおい。というか被ると目立たなくなるためほぼ確実。これは、物語の展開としては、主人公がラスボスにトドメを刺すことや、仲間との協力の果てに世界を救うことなどが、読者や視聴者には受け入れられやすいからだと思われる。
ここに、これが当てはまらない二つの有名作品を挙げてみる。
一つは「DRAGON BALL」。主人公の孫悟空がオールマイティすぎて、周りのキャラクターがその強さについていけない。 もう一つは「BLEACH」。主人公サイドのピンチに対し、味方の誰かしらが切り札を切るせいで主人公が空気。しかも主人公サイドのピンチというのは、主人公が修行や覚醒で身に着けた新たな能力が、敵サイドに通じなかったせいで起こる場合が多い。言ってしまえば、主人公が周りの強さについていけていないので、「逆DRAGON BALL状態」とも言う。 - 死亡フラグ回避
文字通り、死亡フラグの回避。(死亡フラグに関してはそちらの記事を参照) 普通他のキャラクターが使えば数ページ後には死亡に直結するようなセリフや行動も、主人公にとっては生存フラグになる。 「ここは俺に任せて先に~」や「この戦いが終わったら俺は~」などの如何にもなセリフも、主人公にとっては物語を動かすための動機・原動力として扱われることが多く、危険なことが起こっても何とかできてしまう場合が多く、何とかならなくとも他キャラクターのような取り返しの付かない代償を払わされたりすることは少ない。ただし、死亡フラグ自体が物語上の表現であることにも注意。 - 負けない
どんな逆境に立たされようと、勝率が1%以下であろうと、主人公が負けることはない。実際には敗北するシーンも描かれるものだが、大抵は敗北を糧に成長させるためであり、ここ一番の勝負では必ず勝利を収める。主人公の主人公たる所以でもある。
主人公補正の負の側面
上記においては主人公というのはいかに恵まれている存在かと思うがもちろん主人公補正がキャラにとってマイナスに働くことも多々ある。
主人公という時点で両親、兄弟姉妹もしくは尊敬する人に強力な死亡フラグがたってしまう、例え上記のような異能の力をもって全力で助けようとしてもこのフラグが勝ってしまうことが多い。
- 困難な出来事について強制的な対峙
物語では様々な事件、強敵が存在するが主人公自体に立ち向かう意志はなく、むしろ避けたいと思っていても回避できず打ち破るまで解決できない事はよくある。他の人はうまく逃げれたのに自分だけ目をつけられたり変な運命を背負わされて嫌々困難な出来事に対峙することになる。
- 作品の評価に対するサンドバッグ
メタ的な視点になるが主人公が活躍する作品が世間から不評な評価を受けるとまるで自分がやらかしたみたいに消費者からバッシングを受けることがある。主人公がそれぞれ違うシリーズ物なら自分=その作品の擬人化みたいな扱いになり一人で不遇な扱いを受けたりキャラ自体貶められることもある。
主人公補正の逆説
読者視点で見ると、確かに主人公を中心に都合よく物語が回っていることは多い。
しかし、例えば実在の偉人の伝記がそうであるように、主人公だから都合よく進んでいるのではなく、最後まで運と実力でやり切ったからこそ数あるキャラの中から主人公に選ばれたという見方もできる。
それ以上に、完全にがんばらない主人公はかなり少なく、多くの主人公が話の中心に立ったがために壁にぶち当たり、並々ならぬ努力をし、自分の信念を貫き、仲間のために奔走しているわけで、主人公という立場に意地で立ち続けたことがその力を作ったとしても不思議ではない。
そして、何であれそこまでやり遂げた奴がカッコよくないはずが無い。
どんな人間でも行動すれば成長するわけで、所詮ご都合主義と言い切れない部分もある。
関連動画
フィクションの世界での主人公補正
←動画の15:43あたりから
現実世界での主人公補正
関連項目
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