古馬王道とは、日本競馬における競走体系のうち、中央競馬主催の古馬(競走馬年齢4歳以降)が出走可能、かつ王道距離とされる中距離以上(2000m以上)の混合競走のことである。特に、この条件におけるGI競走を指す。
概要
2016年以前の大阪杯はGIIであったため、古馬王道の大競走とはみなされていなかった[1] 。2016年以前における古馬王道は大阪杯を除いた5競走のことを指す。大阪杯を除く5競走は全国発売競走であり、グレード制以前から十大競走として重要かつ格式の高い競走とみなされていた。
GIであることから出走に当たっての収得賞金も相応に必要であり、競走も高度となることから、5競走ないし6競走の全てに出走すること自体が困難である。
近年では有力馬は年間4~5戦程度のローテーションが標準で、海外レースに向かうことも多いため、そもそもこの古馬王道6戦の全てに出走する馬自体が滅多にいない。特に2000mの大阪杯と3200mの天皇賞(春)は間隔がさほど空いていない上に距離が違いすぎるため、この2レース両方に出る馬が非常に少ない。
また、古馬王道のうち春に開催される大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念の3競走で春古馬三冠、秋に開催される天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念の3競走で秋古馬三冠とも呼ばれ、同一年に三競走の全てに優勝した競走馬に対しては報奨金が支払われる。ただし春古馬三冠も秋古馬三冠も古馬王道と同じくJRAの公式用語ではない。
記録
2000年にテイエムオペラオーが当時の古馬王道GIを完全制覇している。また全連対[2]は、1988年にタマモクロスが、1999年にスペシャルウィークが、2000~2001年に年をまたいでメイショウドトウが達成している。大阪杯のGI昇格以降では2017年にキタサンブラックが6レース全てに出走して4勝を挙げたのが年間最多勝記録となっており、完全制覇や全連対の達成馬は現れていない。
古馬王道GIの連勝記録は2000~2001年にかけてテイエムオペラオーが記録した6連勝が最多で、次点はタマモクロス(1988年)とゼンノロブロイ(2002年)とイクイノックス(2023年)が記録した3連勝となっている。連続連対記録は2000~2001年にかけてテイエムオペラオーが記録した9連続連対が最多で、次点はメイショウドトウが2000~2001年にかけて記録した6連続連対となっている。
歴史
年 | |
---|---|
1937年(昭和12年) | 競馬倶楽部主催の帝室御賞典と優勝内国産馬連合競走を統合し、春秋2回の帝室御賞典が開催開始。 |
1944年(昭和19年) | 戦局悪化により、帝室御賞典が中止。 |
1947年(昭和22年) | 平和賞の名前で帝室御賞典が復活。 |
平和賞を天皇賞に改称。 | |
1956年(昭和31年) | 第1回中山グランプリが開催。 |
1957年(昭和32年) | 第1回大阪盃競走が開催。 |
中山グランプリが有馬記念に改称。 | |
1960年(昭和35年) | 第1回宝塚記念が開催。 |
1971年(昭和46年) | 天皇賞へ外国産馬が出走不可となる。 |
1976年(昭和51年) | 宝塚記念が全国発売競走となる。 |
1981年(昭和56年) | 天皇賞における勝ち抜き制を廃止。 |
第1回ジャパンカップが開催。旧古馬王道5競走が確立。 | |
メジロファントムがサンケイ大阪杯を含めた6競走を初完走。 | |
1984年(昭和59年) | グレード制を導入。天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念はGIに格付けされる。 |
天皇賞(秋)の施行距離が3200mから2000mに短縮。 | |
1987年(昭和62年) | タマモクロスが古馬王道GI全連対を初めて達成する。 |
2000年(平成12年) | 天皇賞へ外国産馬が出走可能となる。 |
天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念(いわゆる秋古馬三冠)すべてに勝った馬に報奨金が用意される。 | |
テイエムオペラオーが古馬王道GI完全制覇を初めて達成する。 | |
ステイゴールドが1998年から3年連続で完走。 | |
2017年(平成29年) | 産経大阪杯を大阪杯へ改称し、GIへ昇格。現古馬王道6競走体制が確立。 |
大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念(いわゆる春古馬三冠)すべてに勝った馬に報奨金が用意される。 | |
キタサンブラックが6競走になってから初めて完走する。 |
完走馬一覧
5競走時代
年 | 馬名 | 春天 | 宝塚 | 秋天 | JC | 有馬 |
---|---|---|---|---|---|---|
1981 | メジロファントム | 3 | 3 | 7 | 11 | 10 |
グレード制導入(1984年) | ||||||
1986 | クシロキング | 1 | 7 | 14 | 9 | 10 |
1986 | スダホーク | 7 | 5 | 10 | 14 | 11 |
1988 | タマモクロス | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 |
1988 | ランニングフリー | 2 | 7 | 5 | 7 | 4 |
1989 | イナリワン | 1 | 1 | 6 | 11 | 1 |
1991 | メジロマックイーン | 1 | 2 | 18 | 4 | 2 |
1992 | ヤマニングローバル | 11 | 13 | 3 | 12 | 15 |
1994 | ナイスネイチャ | 4 | 4 | 7 | 8 | 5 |
1997 | ローゼンカバリー | 5 | 5 | 11 | 9 | 4 |
1998 | シルクジャスティス | 4 | 6 | 8 | 8 | 7 |
1998 | ステイゴールド | 2 | 2 | 2 | 10 | 3 |
1999 | ステイゴールド | 5 | 3 | 2 | 6 | 10 |
1999 | スペシャルウィーク | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 |
2000 | ステイゴールド | 4 | 4 | 7 | 8 | 7 |
2000 | テイエムオペラオー | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
2001 | テイエムオペラオー | 1 | 2 | 2 | 2 | 5 |
2001 | メイショウドトウ | 2 | 1 | 3 | 5 | 4 |
2003 | ツルマルボーイ | 4 | 2 | 2 | 15 | 4 |
2004 | ゼンノロブロイ | 2 | 4 | 1 | 1 | 1 |
2005 | サンライズペガサス | 14 | 5 | 12 | 6 | 7 |
2005 | ハーツクライ | 5 | 2 | 6 | 2 | 1 |
2005 | リンカーン | 6 | 4 | 15 | 4 | 3 |
2007 | メイショウサムソン | 1 | 2 | 1 | 3 | 8 |
2008 | アサクサキングス | 3 | 5 | 8 | 8 | 14 |
2009 | コスモバルク | 16 | 13 | 14 | 12 | 10 |
2011 | エイシンフラッシュ | 2 | 3 | 6 | 8 | 2 |
2011 | トゥザグローリー | 13 | 13 | 5 | 11 | 3 |
2011 | ローズキングダム | 11 | 4 | 10 | 9 | 12 |
2015 | ラブリーデイ | 8 | 1 | 1 | 3 | 5 |
大阪杯GI昇格後
年 | 馬名 | 大阪 | 春天 | 宝塚 | 秋天 | JC | 有馬 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2017 | キタサンブラック | 1 | 1 | 9 | 1 | 3 | 1 |
関連項目
脚注
- *産経大阪杯は天皇賞(春)の前哨戦の一つではあったが、3200mで施行される天皇賞(春)とは距離が違いすぎるし条件の近い宝塚記念とはレース間隔が開きすぎているしと2000年代前半までは有力馬が出走することの少ない、やや裏街道に近い扱いだった。しかし中距離路線の人気の高まりにともない2000年代後半からは中距離路線の有力馬が多く出走する、いわゆる「スーパーGII」の一角となった。
- *全連対は全競走で2着以上のこと。ここでは先に挙げた全勝馬の名は省く。
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