秋古馬三冠とは、日本の中央競馬(JRA主催の競走)の内、10月~12月の秋季に開催される3つのGI競走をまとめて指す言葉である。また、これらの競走を制覇(勝利)することも指す。
2017年以降に成立した春古馬三冠とは対を成す。
概要
一般に以下の3競走を指す。
ジャパンカップが設立されたのは1981年だが、当初は「秋のGI3連戦」といった呼び方がされており、これらを三冠として一つの競走体系として結びつける意識はなかった。本格的にこれらの3競走が(ファンの間で)三冠扱いされるようになったのは、2000年の賞金制度改革以降のことである。これらの競走を同一年内に全て勝利した競走馬に対して、レースの本賞金に加えて特別報奨金(内国産馬2億、外国産馬1億円)が支払われることになったのだ。
元々、天皇賞は古馬最大の重賞競走である。そして、勝ち抜け制により再度の出走が出来なくなった天皇賞馬向けの競走として構想された有馬記念と、世界に通用する馬づくりを念頭に創設されたJCも、成立当初から日本競馬の王道路線競走として扱われてきた。1984年のグレード制導入に当たっても、これら3競走は導入当初からGIに位置付けられている。現在では天皇賞の勝ち抜き制廃止と秋天の施行距離短縮、JCや有馬記念の賞金増加などによってますます有力馬が集まるようになり、国際的にも高いレーティングを誇っている。
当然ながら来場者も多く、近年では競馬場内の混雑緩和のため、開催競馬場では当日の現金入場券は発売されず、事前にインターネット発売で指定席券・入場券を購入した人のみが場内観戦可能な措置が取られている。特に有馬記念では入場料(指定席券に非ず)が1,000円に吊り上げられるが、それでもほぼ完売するのが恒例になっている。
その困難さ
このように、必然的に強者たちが集い、注目度も非常に高い秋の3競争ではあるが……。
実質的な三冠成立の20年ほど前から挑戦できるにも関わらず、秋三冠を達成した馬はクラシック三冠・牝馬三冠より遥かに少ない。それには主に以下の要因がある。
- 秋天・JCの舞台である東京競馬場はコーナーが緩やかで最終直線が長い左回りコースで、スピードとスタミナが求められる。その2戦を終えた後の有馬は、コーナーが小回りで最終直線が短い(上にゴール前に急坂がある)右回りコースで、テクニカルな走りが求められる中山競馬場で行われる。東京の2戦を経て中山に対応する器用さとタフさを兼ね備えていることが絶対条件である。
- 秋天→JCは中4週、JC→有馬は中3周。馬とスタッフにはこの短い間隔に対応することも求められている。
- 秋天と有馬は外枠が絶対的に不利なコースで行われる。脚質によっては枠番抽選で勝敗が決してしまう。
- JCはその年の東京開催最終日、有馬もほぼ最終日に行われるため、馬場が荒れている。
- 3歳(旧4歳)馬に不利な条件が多い。
- 逆にジャパンカップと有馬記念については、成長のピークを迎えようとする3歳馬と、ピークアウトした年配の古馬がかち合うことがある。次代のホープに屈するベテラン馬は決して少なくない。
- 2000年代前半あたりまでのJCには多数の外国馬が遠征してきていた。日本競馬のセオリーから外れた外国馬によって、前後の2競走とはまるで違ったペースの戦いになることが多く、惜敗する馬も多かった。
- 2020年代以降は、そもそも3競走全ての出走を計画する陣営自体が減少傾向にある。
達成馬
現在までの達成馬は2頭。ともにその年の年度代表馬に選ばれた。
テイエムオペラオーはその年の春季王道路線GI及び前哨戦の重賞含め8戦8勝である。
ゼンノロブロイの有馬記念の記録2分29秒5は当時の芝2500mの日本レコードである。現在もコースレコードとしては破られていない。
| 年 | 馬名 | 天皇賞(秋) | ジャパンカップ | 有馬記念 |
|---|---|---|---|---|
| 2000 | テイエムオペラオー | 1 | 1 | 1 |
| 2004 | ゼンノロブロイ | 1 | 1 | 1 |
あと一歩だった馬達
同一年に2勝した馬
以下のリスト記載馬が該当する。その中で最も三冠に近付いたのは1999年のスペシャルウィーク(秋天・JC制覇、有馬ハナ差2着)である。
2020年のアーモンドアイ、2023年のイクイノックス、2024年のドウデュースは、それぞれが秋天とJCを制覇しながら、それぞれの事情で有馬記念に出走しなかった。
| 年 | 馬名 | 天皇賞(秋) | ジャパンカップ | 有馬記念 |
|---|---|---|---|---|
| 1985 | シンボリルドルフ | 2 | 1 | 1 |
| 1999 | スペシャルウィーク | 1 | 1 | 2 |
| 2002 | シンボリクリスエス | 1 | 3 | 1 |
| 2003 | シンボリクリスエス | 1 | 3 | 1 |
| 2006 | ディープインパクト | 未出走 | 1 | 1 |
| 2017 | キタサンブラック | 1 | 3 | 1 |
| 2020 | アーモンドアイ | 1 | 1 | 引退済 |
| 2021 | エフフォーリア | 1 | 未出走 | 1 |
| 2022 | イクイノックス | 1 | 未出走 | 1 |
| 2023 | イクイノックス | 1 | 1 | 引退済 |
| 2024 | ドウデュース | 1 | 1 | 出走取消 |
隔年で3勝した馬
特別報奨金対象にはならない「隔年での三競争制覇」に視点を広げると、以下の馬達が該当する。
関連項目
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