そんな大人、修正してやる! 単語

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ソンナオトナシュウセイシテヤル

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今の私は『クワトロ・バジーナ大尉』だ
それ以上でもそれ以下でもない

ぁ食いしばれ!
そんな大人
修正してやる!!

──これが若さか

……とは、少年の怒りと大人の恥である。

概要

機動戦士Ζガンダム』第13話『シャトル発進』における、カミーユ・ビダンクワトロ・バジーナシャア・アズナブルのやり取り。

自らの正体を隠し、しかしその正体がもたらす恩恵は得たまま、一介のパイロットクワトロ大尉としての人生を優先するシャア。その卑怯さをカミーユは糾弾し、彼の純さに己の恥を呼び起こされするクワトロ

ここでカミーユが叫んでいる「修正」とは「軍隊流の叱責」のこと。つまるところヘマをした者をぶん殴ることである。カミーユは10歳年上のクワトロを容赦なくぶん殴っている。

暴力シーンに事欠かない『Ζ』、ひいては序盤の荒れ気味なカミーユを代表するシーンとして有名であり、クワトロの情けない態度も合わさって、シーン切り抜きしか知らない人には意味不明な展開に映る所である。ただし(当然のことではあるが)、ここまでの話の積み重ねをじっくり追っていくと、カミーユ昂するのも、クワトロが殴られなければならない理由も見えてくる。『Ζ』第一クールとなる『シャトル発進』に相応しいやり取りと言える。

作中の流れ

注意 この節以降は、『Ζガンダム』第13話までを
鑑賞後に閲覧することを推奨します。

 

第13話までの状況

既に作品を鑑賞した方々にとっては、長くなるがお付き合いいただきたい。

第5話:クワトロ、他人の褌で説教する

内をクク・タプで展開

の前で爆死が愚かな自殺を遂げたばかりのカミーユは荒れていた。
クワトロは、彼が未来を向いて生きられるように説教を垂れた。

カ:死んだ両のことは、言うなというのですか!?
ク:そうだ。そして、次の世代の子供達のための、世作りをしなくてはならない
カ:(食い気味に)にそんな責任があるわけないでしょ……
ク:あるな
カ:大尉の何なんです!?(キレる) の前で二度もを殺されたに、何かを言える権利を持つ人なんて、いやしませんよ……!

一拍置いて、クワトロは答える。

ク:……シャア・アズナブルという人のことを、知ってるかな?
カ:……尊敬してますよ。あの人は、両の苦労を一身に背負って、ザビを倒そうとした人ですから。でも、組織に一人で対抗しようとして敗れた、馬鹿な人です
ク:正確な評論だな。が、その言葉からすると、その人の言うことなら聞けそうだな
カ:会えるわけないでしょ……!

ク:無視して)その人は、カミーユ君の立場とよく似ている。彼は個人的な感情を吐き出すことが、事態を突破する上で、一番重要なことではないのかと感じたのだ
カ:(立ち上がる)聞けませんね!にとってはエゥーゴティターンズも関係ないって言ったでしょう? 大人同士の都合の中で死んでいった、馬鹿な両です。でもね、にとってはだったんですよ!?(走り去る)
ク:カミーユ君……!

コア:あんなことを持ち出して説得するなんて、上手じゃありませんね
ク:そうだな。俗人は……ついつい「自分はこういう人を知っている」と言いたくなってしまう、嫌ながあるのさ
微妙な笑みを浮かべるエマとレコア

視聴者は、クワトロこそが、幼くして両をザビに殺され、復讐のためにジオン軍に入隊し、独裁者となったザビを討とうとしたシャアその人であると知っているが……。この時点のカミーユにとっては、何故クワトロシャアを引き合いに出したのか、全く意味が分からなかった。
一方でこのシャアの助言は、良くも悪くもその後のカミーユ行動させ、増長させることになる。

Ζガンダム』というお話全体の、メタ視点から観ると、このカミーユシャアに対する反応は「前作から7年を経て、軍の英雄シャアの正体がジオンダイクン息子キャスバルであることは世間一般で広く知られている事実となっている」ことを示している。軍関係者のみならず、民間人にもシャアの逸話は有名なのだろう。

 

第7話:クワトロ、しがない士官を装う

内をクク・タプで展開

エゥーゴに軍属待遇のMSパイロットとして参加をめられたカミーユは、クワトロからも勧誘を受ける。ふとカミーユは、何故クワトロが軍人なのか訪ねた。

カ:大尉はなぜ軍人なんです?
ク:なぜ軍人?
カ:聞きたいものです
ク:他に食べる方法を知らんからさ。だから今だにさんももらえん

クワトロは、自分は不器用ひとりの軍人だと語る。

ただ、その割にはクワトロは顔が利く。なにしろエゥーゴ導者であるブレックス准将や幹部のヘンケン中佐と同格で話しているのだ。ただの大尉なのに。
なお、ブレックスとヘンケンは「クワトロ・バジーナシャア・アズナブルである」ことは最初から察している。察してはいるが、大人の配慮で黙っている。

ちなみにネットミームで有名な「手すりに寄りかかって同じ方向を見ているクワトロカミーユ」のカット元ネタはここ。

 

第9話:エマ、大人のあるべき姿を説く

内をクク・タプで展開

戦果を挙げたカミーユは増長し、自分勝手な理由でミーティングに遅刻し、その結果ウォン・リーに手荒い「修正」を受けた。アーガマパイロットルームで気絶から回復したカミーユは、病み上がりにも拘らず出撃を命じてくるクワトロエマ・シーンに反発する。

カ:理不尽じゃないですか(訝しむクワトロエマ一方的に暴行を受けていたのに、黙って行ってしまった、あなた方のことですよ!
ク:軍隊っていうのは、ああいったものだ。アーガマでは君に甘すぎた。反省をしている
カ:ウォンとかっていう人は、軍人じゃないんでしょ!?
ク:エゥーゴの出資者だ。大切な人
カ:暴力肯定なんですか!?
ク:を荒げる)支度を急げ!
カ:嫌ですよ! ウッ!

ここでとうとうエマカミーユを「修正」する。ご丁寧にウォンに殴られた側のビンタしている。

カ:エマさん
エ:軍隊というところは理不尽なところよ
ク:殴られたくなければ自分のミスをなくせ(退室)
カ:は行きませんよ!

エ:ガンダムMk-Ⅱはどうするの?
カ:クワトロ大尉がいるでしょ
エ:今日まで生きてこられたのは、あなた一人の力ではないのよ!
カ:の力があったから、アーガマはここまで来られたんでしょ!
エ:その自惚れが! 今にあなたの命を落とすってわかっているから……ウォンさんはあなたを殴ったのよ
カ:自惚れだなんて、は……
エ:ウォンさんはね、地球にしがみついて地球を滅ぼすような人は何とかしたいと思っているのよ。その上で、あなたのような見込みのある人に生き残って欲しいと考えて……

カ:(食い気味に)は見込みありません。自閉症子供なんだ
エ:……自分の都合で大人子供を使い分けないで!

エマの最後の一言は、カミーユの心に深く突き刺さった。気持ちを切り替え、カミーユクワトロの後を追って出撃する。クワトロ大尉って、こうなるってわかってたのかな? 嫌いだな。ずっと試されてるみたいだ」づいてはいたが。
当のクワトロアポリーに「カミーユは来ますか?」と聞かれて「来るな。エマ中尉がやってくれる」と答えている。

更にこの後、グラナダ基地に停泊中のティターンズ艦を強奪するため、クワトロカミーユは生身で銃撃戦を繰り広げる。ティターンズ兵どころか、一般兵の射殺も厭わないクワトロに、初めて銃撃戦を体験するカミーユは溜まりかねて(殺し合いを楽しんでるんじゃないか。こんなの戦争じゃない!)心中で叫んでいる。

 

第10話:カミーユ、修正を知る

内をクク・タプで展開

ぼーっとしていたカミーユを注意するエマ。その中で以前からちょくちょく出ていた「修正」の説明がされる。

エ:いい加減に軍に慣れたら?これじゃ、いつまでもウォンさんの修正を受けるわ
カ:「修正」?
エ:「殴って気合を入れること」よ。アーガマは正規軍でないから甘いけどね
カ:気を付けます

 

第13話

ティターンズの後方拠点ジャブロー基地の強襲をしたエゥーゴだったが、作戦空振りに終わった。エゥーゴMS隊は反連邦組織カラバの協力の元、宇宙への脱出を行おうとしていた。慌ただしい中、カラバハヤト・コバヤシは昔の友人から書き置きを受け取る。

クワトロ大尉シャア・アズナブルだと思える。
そのシャアが偽名を使って地球連邦政府と戦うのは卑怯だから──』
……一緒には行動ができないと言うのか

後で、ご意見を聞かせてください

作業がひと段落した後、ハヤトクワトロ手紙の意見をめる。

ク:私には関係の手紙だな
ハヤトカイはあなたのことをシャア・アズナブルだ」と言っています。本当のことでしょうか?
ク:買いかぶってもらっては困ります。ジオンシャアが何でエゥーゴに手を貸すのです?
ハ:ザビは7年前に滅びました。となれば、シャアという人は地球再建を志に抱いてもおかしくい人です。その人が地球圏に戻り、エゥーゴに手を貸す……。分かる話です

ク:仮に私がシャアだとしたら、君は何を言いたいのだ?
ハ:(作業員に)急いでください! (向き直って)……カイ手紙にこう書いてありましたね。リーダーの度量があるのにリーダーになろうとしないシャア卑怯だ」と。モビルスーツパイロットに甘んじているシャアは、自分を貶めている」のです
ク:シャアという人がそういう人ならばそうでしょう
ハ:10年20年かかっても、地球連邦政府首相になるべきです!
ク:しかし私は、クワトロ・バジーナ大尉です

ここで話を聞いていたカミーユが割り込む。

カ:もしそうなら! それは卑怯ですよ。シャア・アズナブル、名乗った方がスッキリします!
ク:無視して)ガンダムをシャトルに移動させろ!
カ:しますよ。どっちなんです?教えてください!

しばしの沈黙。ハヤトが口を開く。

ハ:お認めになってもいいのではありませんか?

ク:今の私は、クワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でも、それ以下でもない

カ:ぁ食いしばれっ!そんな大人、修正してやる!

クワトロの顔面に鉄拳をぶち込むカミーユ。吹っ飛びながら落するクワトロ

ク:(これが若さか)

突しもちをつくクワトロと、作画の都合でホバースライドしてくるカミーユ

カ:どんな事情があるか知らないけど……どんな事情があるか知らないけど!
ク:静を保ちつつ)人には恥ずかしさを感じる心があるということも……おっ?

警報が鳴りき、話は中断された。クワトロカミーユはシャトル発進援護のため、それぞれの機体に乗り込む。

シャアが詰められている理由

前作を観ていない人には、というか観ていても少々わかりづらいところだが、要はハヤト(とカイカミーユシャアが自らの血筋や実績による名アピールして『ティターンズ叩き連邦を正常化する』と表に立てば、シャアを慕う多くの人々が反連邦活動に加わるだろう。そしてシャア自身が彼らの揮をとれば、ずっとスムーズに事は運び、駄な流血も少なくなる」と言いたいのである。

シャア・アズナブル──キャスバル・レム・ダイクンは、宇宙移民者の未来を説いて「ジオン共和」を拓いたジオン・ズム・ダイクンの忘れ形見である。志半ばでザビに暗殺された(と囁かれる)ジオン・ズムの遺志をシャアが継ぐと宣言すれば、その政治的効果は絶大である。
また、シャアは前の大戦において、宇宙移民者を虐げてきた地球連邦を相手に多大な戦果を挙げ、そしてジオンの思想を私物化して地球圏の独裁を論んだザビを倒そうと孤軍奮闘していた。まさしく宇宙移民者全ての英雄と呼べる存在がシャアなのである。
視聴者線では天然パーマ小僧ボコられたりインド少女にうつつを抜かしている様子がネタにされるが、決してそれだけの男ではないのだ

元々、ジャブロー強襲作戦エゥーゴスポンサーである企業な要請によって決定されたものだった。もし、最初からシャアが正体を明かしたうえで要請に異議を唱えていれば、企業の連中も大きな顔はしていられなかっただろう。
また、それに先立って行われたグラナダのティターンズ艦強奪作戦においても、エゥーゴはグラナダ駐留軍に対する導権を握るため、あえて戦いの先を切っている(グラナダの連邦軍は、エゥーゴ寄りではあるが実戦ではどうにも消極的な描写がされている)。ここでもシャアが正体を明かせば、元来ジオン系の基地であるグラナダも、もう少し協力的な態度に変わったかもしれない。

もっともシャア本人としてみれば、自身の実績はともかく、血筋については彼が望んで得たものではない。後の話、ひいては続編の『逆襲のシャア』でも描かれるが、シャアは自身のルーツを利用することを嫌っている。彼にしてみれば自身のルーツのために不遇極まる幼年時代を強いられ、復讐として青春を知らずに過ごすことになったのだから。それをネタカミーユ説教してるけど
外野が騒ぐのは、そんな忌まわしき記憶から解放されたいシャアにとってはいい迷惑に過ぎない。過ぎないのだが……。

カミーユがこんなにキレた理由

ここまでの経緯を振り返ると分かるだろうが、要はシャアがあまりに勝手すぎるのである。エゥーゴという軍隊の中で揉まれてきたカミーユの瞳には、クワトロという名の仮面余りに理不尽な存在に映ったのだ。

シャアではない、シャアで有りたくない、と一兵士を装っているくせに、やっていることはエゥーゴの幹部どころか導者の側近である。シャアとしての経験・実績ければ出来ることではない。そもそも本当に「外野にはほっといてほしい」のであれば、軍隊など辞めてどこかに行ってしまえばいいのだ。かつてシャア自身がアルテシアに「戦争を忘れろ」と諭したように。

にもかかわらず、ある程度わがままを通せる立場を保ちながら軍隊(即ち暴力装置)の中で生きようとし続ける男が、クワトロ・バジーナである。そうし続けることで駄に失われた命があったとしても、意に介していないのが、クワトロ・バジーナである。ついでに言うなら、全に他人のふりをして過去の自分を引き合いに出してきたのがクワトロ・バジーナである。

極めつけに、10歳も年少のカミーユに詰められて絞り出したのが「今の私はシャアではないが、私自身がシャアではないとは言っていないという戯言だった。否定も肯定もせず煙に巻こうとする態度は、他ならぬクワトロ(とエマに軍隊流の割り切りを叩き込まれたカミーユに対する背信であった。

物心ついた時から大人の理由を振りかざし、汚い生き方をしてきた自分に対して、まっすぐな感情をぶつけてきたカミーユ。それはシャアにとっては余りしく、自分の行動を恥じたくなるものだった。

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最終更新:2025/03/17(月) 22:00

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