独裁者とは、国の政治におけるあらゆる権力が一人に集中した存在である。
由来は古代共和政ローマにおける役職「独裁官」から。ここでは、普段は二人の執政官と議会によって行われている政治を、戦争などの緊急事態の際には一人の独裁官(任期は半年)に全てゆだねるという手法が採られていた。
通常の民主主義の場合、少数派や反対派にも考慮して政策や外交を決めなくてはならない。そのために中途半端な政策になったり、手続きの煩雑さから政策を実行に移すまで時間がかかるのが難点である。また、人気取りの衆愚政治にもなりがちである。
それに比べて独裁政治の場合、民主主義より迅速に合理的な判断を下す事ができるのが最大のメリットである。実際にムッソリーニ政権下のイタリアではマフィアの壊滅による治安向上、ヒトラー政権下のドイツでは失業者の減少、スターリン政権下のソ連では工業の近代化など、民主主義政府では実現出来なかった政策を実現させるなどの成果をあげており、一概に「独裁=悪」と決めつける事が出来ない点には注意が必要である。
ただし、独裁者が間違った政策や戦争に突き進んでも誰も止める事ができない。反対した場合は拘留、最悪なら死刑など、人権や言論の自由が制限されるなどの危険性も含んでいる。
類似する概念に一党独裁、軍事独裁などがあるが、これらの政体の国に独裁者が存在するかは場合による。
実際には民主的に選出され、独裁者ではなくてもその政治家の反対派がレッテル貼り的に独裁者呼ばわりするということもある。
概ね以下のような状況の場合、民主主義よりも独裁政権のほうが良い状況となる場合がある。
アフリカに独裁政権が多いのはこのような事情を抱えている国が多いことにほかならない。また中国も共産党の一党独裁であるが、これに関しても、二番目の地域対立の事情などが大きく関わっている。
大きく分ければ二つのパターンがある。
第一は、まず選挙などの民意によって最高権力者に就任し、その後憲法や法律の改正によって独裁権力を確立するというもの。具体的な人物を挙げればアドルフ・ヒトラーなど。
例えば大統領の任期を撤廃し、自分が終身大統領に就任するなどの手法が採られる。まずは国民からの支持や基盤作りといった下準備が必要ながら、最大のメリットはあくまで合法的に物事が進められているという点である。ただ、熱狂的な支持を受けて当選したとしても、失策を重ねるなどしてその熱が冷めてしまうと、激しい弾圧に転じたり国政が腐敗・麻痺してしまう事も(ジンバブエ・ドルの件とか)。
もうひとつは、革命やクーデターなどの非合法な手段で政権を乗っ取ってしまう事。部族対立が激しいアフリカなどでよく見られる。
言うまでもなく難点は非合法で正統性に欠けるという事。国民や周辺諸国から支持を得られるとは限らない。だが非常に手っ取り早くトップに立つ事が出来る手段である。あくまで非常事態・緊急事態における過渡期政権であるというアピールをとる事が多いが、実際にはそのまま権力の座に居座る事で独裁者が誕生する。最初から強引な手段で政権についている為、反対する諸勢力を排除するために更に強引な手段が取られがちである。
また、大国の密かな後ろ盾のもとにクーデターを起こすケースも散見される。
基本的に独裁者というのは、元々権力を持っていなかった人物が、様々な手段・闘争の末に権力を我が物にすることで生まれる。その点は生まれた身分で権力を持つ王や貴族とは若干異なってくる。ところが最近では北朝鮮のように独裁者が三代世襲するケースも登場してしまった(北朝鮮が「事実上の絶対君主制」と言われるゆえんである。これもうわかんねぇな)。
一人による独裁ではなく、一政党による独裁。
作り方はいたって簡単、自分たちの政党以外を禁止・非合法にしてしまえば完成である。社会主義国では憲法に「~~党が国を指導する」と明記している国もある。中には衛星政党・ダミー政党のみ容認する事で「これは一党独裁じゃないよ、複数政党制だよ」と言い訳するケースもあるが、実態は言うまでもない(ヘゲモニー政党制)。
この場合、選挙で政権が覆る事はないし、議会にも自分たちに反対する勢力はいない。ただし党内での権力闘争が起こる事はありうるので、それらの流れからトップに立つ人間は入れ替わっていったりする。そういう点では、一人の独裁者が立ち続けるよりはある程度の変化が生じる。
…とは言ったものの、社会の構造が固定されがちで、やがて一部の層が権益を独占する歪んだ社会となってしまう事も多い。
党のトップが独裁者と呼べるほどの権力を持つかは場合によって様々である。例えばソ連の場合、共産党による一党独裁国家であったが、ヨシフ・スターリンは政敵を次々と粛清して事実上の個人独裁にシフトした。だがスターリンの死後、その個人崇拝的なやり方は後任者のフルシチョフによって否定され(スターリン批判)、再び一党独裁のレベルへと戻った。
ちなみに、戦後日本のように特に野党に制限が課されていないが、選挙の結果として一与党がほぼ常時政権を握っているケースは一党優位制と呼び、一党独裁とは区別される。
軍部による独裁政治。当然、クーデターから生まれる。軍事政権とも言う。
これまたトップが独裁者と呼べる権力を持つかはケースバイケース。長期政権を手にした独裁者としてはリビアのカダフィ大佐、ミャンマーのネ・ウィン将軍などがいる。
古代・中世の政治体制はだいたい軍事力によって作られていたので(日本の幕府など)そういったものは軍事独裁とは呼ばず、近現代の文民統制が主流となってからのケースがこう呼ばれる。そうした仕組みが安定していない発展途上国では、現在でもたびたびクーデターが起こってしまう。
広く民主制が周知され、多くの国で採用されている現代の先進国においては、独裁者の存在は嫌悪される。
そのため、創作の中では独裁者は倒すべき存在として位置づけられることが多く、現実世界においても独裁政治で追い込まれた市民による革命などでその地位を追われたり、殺害される独裁者も存在する。古くは古代ローマ帝国で終身独裁官に就任したガイウス・ユリウス・カエサルが暗殺された。第二次世界大戦時のイタリアの独裁者ムッソリーニの最期はパルチザンに捕らえられての処刑であり、ルーマニアの独裁者チャウシェスクは1989年に民衆の手によって逮捕・処刑されている。
また、外国との戦争によって独裁政権が倒された後の独裁者も悲惨な結末をたどることも多い。その代表例なのがドイツのアドルフ・ヒトラーであり、首都ベルリンにまで攻め込まれた彼は自殺に追い込まれた。近年でもイラクのサダム・フセインはイラク戦争にて政権が倒されると逃亡生活ののちに逮捕・処刑された。
しかし、独裁者が倒されたり死んだりしても、それだけであらゆる問題が解決されるわけではない。新政権を樹立し、独裁者による政治から国民のための政治に切り替え、国を復興するのには長い時間がかかる。
ときに、上記「独裁政権が有効となる場合」のように、必要だったからこそ独裁制を採用していた場合などには混乱が加速することがある。独裁者の不在で国が崩壊した有名な例として、チトーを失った後のユーゴスラビアを挙げることができる。
そうなる理由としては、権力の空白やリーダーの不在によってかえって混乱する、民主主義や法の支配が根付かない、などが挙げられる。結果として、実質的には別の独裁者による独裁政治が続くといったことも起こりがちである。
近年では、独裁者を倒したがかえって混乱に陥った2010年から始まるアラブの春がまさにそのような状況に陥っている。
何をもって独裁者とするのかはもちろん個々人の判断もあるので、賛否両論ある人物も含まれるので注意。
太字は記事のある人物
独裁者という概念は、近現代の民主主義・分権志向が基本の政治構造の中で、例外的に専制的な存在として君臨しているものといえる。
それに対して、古代・中世の場合は一人のカリスマ的指導者が国を興すことも珍しくなく、そのように成立した国家では建国者は必然的に独裁者となる。そう言った場合に対して、さかのぼって現代的な要素を当てはめるのは難しい場合も多いので、その辺はあらかじめ注意が必要。
一方で、カエサルのように元から国家として成立していた共和制ローマで独裁官となりつつ、国家体制は変えるに至らなかったものや、ルイ14世のようにもともとフランス王国の国王だったが、その権力を強化し絶対王政を確立したものなども独裁者と呼ぶこともある。
ヨーロッパはフランス革命あたりから。アジアは明治維新・辛亥革命あたりからを目安としている。
掲示板
473 ななしのよっしん
2024/09/25(水) 04:02:20 ID: /y2GRDqFJS
>>472
>>464=>>465=>>470を言い負かしたい余りちょっと行き過ぎてない?
記事冒頭にもある通り、独裁者とはあまねく国家権力を自分自身に集中させている存在のことであって「民主的かつ合法的な権力移譲手段を実行するか否か」はそれを成立させる条件の1つに過ぎないはず
つまり、>>464への反論としては「安部晋三やトランプは次の首相や大統領を選ぶための選挙を拒否できる立場になかった、この事実が示すように安部晋三やトランプはあくまで国家権力の一端を担っていたに過ぎず独裁者とは呼べない」とするのが適切
474 ななしのよっしん
2024/11/06(水) 18:05:38 ID: IlAl9U1qED
俺の思い通りに動くはずの世の中がそうはならなかったのは独裁者が事象を捻じ曲げたからだから(震え声
475 ななしのよっしん
2024/11/06(水) 22:09:03 ID: D6oOC6IMsG
故人を貶める気は無いが、アメリカのジョージ・ワシントンも現代で言ったら独裁者にあたる気がする。
大陸軍の総大将から転身して、富裕な白人男性の制限選挙により得票100%で大統領に選ばれ、連邦党による一党制を敷き、インディアンに対してはジェノサイドを命じ、およそ20年間トップに座ってる。
粛清などせず他の建国の父と協力してたし、王位を勧められて断った精神はとても民主的といえるが、現代のそれとイコールでは無い。
ルーズベルトも戦争に勝つ為とはいえ16年大統領を勤めて色々人権侵害してるから際どい気がする。
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最終更新:2024/11/26(火) 20:00
最終更新:2024/11/26(火) 19:00
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