まつかぜ(列車)

まつかぜとは、国鉄時代に運行されていた列車名及びJR西日本で運行されている列車名である。

概要

まつかぜは山陰地方の特急列車として使われている。まつかぜとスーパーまつかぜには列車名以外の直接の繋がりは無いが、当記事では両方について触れる。

まつかぜ

1961年の俗に言うサンロクトオのダイヤ改正で全国の特急列車が9往復から26往復に大増発された際に、山陰初の特急として誕生したのが特急まつかぜである。当初の運行区間は京都～松江間であり、松江駅を始発・終着とする特急列車は後の世を見ても珍しいものであった。また車両はキハ80系6両編成が使われており食堂車も連結されていた。

ただし京都駅と山陰地方をそのまま結ぶ事はせず、一旦大阪駅と福知山線を経由して山陰本線松江駅とを結んでいた。これは京都駅と大阪駅の両方の客の需要に応える為であったからであり、そういった理由から大阪駅と福知山駅の間はノンストップで福知山線内の途中駅は全て通過していた。

また、山陰初の特急という事で北近畿地方では豊岡市の中心部で豊岡城下町への最寄り駅の豊岡駅と当時は独立した自治体であった城崎町の中心部で城崎温泉の最寄り駅の城崎駅とで停車駅の争奪戦が行われた。結果的に下りは城崎駅・上りは豊岡駅停車という事で決着したが、同じダイヤ改正で設定された大阪～青森間の特急白鳥も似たような経緯で停車駅の決着がなされていた。

京都駅・大阪駅の両方を経由する事から距離としては不利であったが、それでも山陰初の特急という事で利用は好調であり、まつかぜ設定から3年後の1964年には松江駅から更に西である九州の博多駅まで運行区間が伸ばされている。それでも三江北線（1975年より三江線）の接続駅の石見江津駅（1970年より江津駅）や下りのみであるが宮津線（1990年より北近畿タンゴ鉄道宮津線）の接続駅の豊岡駅といった駅は通過していた。

1965年には山陰第二の特急やくもがまつかぜと同じ経路で新大阪～浜田間に設定される。この時に北近畿地方で生じていた上下で停車駅が異なるという問題が解決されている（まつかぜは豊岡駅停車にやくもは城崎駅停車になった）。ところがそのやくもが山陽新幹線岡山開業のダイヤ改正で岡山駅で新幹線に接続する伯備線の特急となった事からまつかぜに吸収され、まつかぜは2往復運転となっている。ちなみに伯備線初の特急は前年の1971年に設定された新大阪～岡山～出雲市間の特急おきで、1972年のやくも誕生に伴い廃止になっている。

ところがまつかぜが2往復になってから半年後の1972年10月には、1往復残っていた京都駅発着のまつかぜは下りは大阪駅発・上りは新大阪駅着に運行区間が短縮されている。これは京都～米子間等を全区間山陰本線で運行される特急あさしおが設定されたからである。また、同ダイヤ改正で大阪～青森間の気動車特急白鳥が電車化されたので大阪～博多間の気動車特急まつかぜは気動車の最長運行区間の列車となった。

次に博多駅発着のまつかぜに大きな変化が訪れるのは1985年の事である。1975年の山陽新幹線博多開業のダイヤ改正でも山陰本線の大半を走破する特急として維持していたまつかぜであったが、1985年に米子～博多間を特急いそかぜに分離してまつかぜは2往復とも米子駅発着になってしまっている。また、この時に博多駅発着に使われていた使用車両のキハ80系をキハ181系に置き換えた事から食堂車が消滅している。本州の昼行特急では最後の食堂車を連結していた特急の一つであった。

そして翌1986年に福知山線と山陰本線福知山～城崎間の電化が完成した事から福知山線の特急は北近畿10往復に委ねる事になりまつかぜは廃止されてしまった。ちなみに城崎～米子間は気動車特急あさしお・はまかぜの運行区間延長で対処している。余談だが米子駅発着のはまかぜは1994年12月の智頭急行線特急スーパーはくとの誕生で廃止されて、米子駅発着のあさしおは嵯峨野線園部～福知山間の電化で気動車特急あさしお自体が電車特急きのさきになって廃止されている。

スーパーまつかぜ

2003年の鳥取～米子間の高速化工事完成に伴い同区間の特急列車が3往復から7往復に増発される事となった際に、従来から鳥取～米子～益田間を運転していた特急スーパーくにびきを改称してかつて山陰本線を運行していたまつかぜの名称を復活させ誕生したのが特急スーパーまつかぜである。ちなみに、10月1日は東海道新幹線に品川駅が開業した事から北陸本線の特急加越がしらさぎに吸収されたり智頭急行線の特急いなばにキハ187系が投入されスーパーいなばになったりと全国的に大きなダイヤ改正が行われた日であった。

車両はスーパーくにびき時代と同じくキハ187系2両編成が使用されていた。設定時には鳥取～米子間は下り5本・上り6本と運行本数が異なっていたが、これは米子～益田～新山口間の特急スーパーおきの内1.5往復が鳥取駅まで足を伸ばしていたからである。

2006年には東京～鳥取～米子～出雲市間の寝台特急出雲が廃止になった事から、ほぼ朝の同時間帯を運行する下りスーパーまつかぜが1本増発されている。尚、この影響で上り1本が4両編成になっているが、これは定期列車の中で唯一4両編成で運行されるスーパーまつかぜである。

スーパーまつかぜになってからの鳥取駅と米子駅の間の停車駅は倉吉駅にしか停車しないのが基本だったが、一部列車が2010年からは鳥取大学前駅に、2009年からは伯耆大山駅に停車するようになっている。しかしまつかぜ時代には停車していた浜村駅はスーパーまつかぜ時代には停車していない。

なお、2012年10月以降に臨時で山口線新山口駅までの延長運転が一部の列車で行われるが、列車名に変更はない。

2025年3月15日のダイヤ改正以降、鳥取駅～米子駅間はワンマン運転化され自動放送化。車内チャイムに「鉄道唱歌」が追加された。あわせて同日より鳥取駅～倉吉駅間がICOCA対応となったため、鳥取駅～出雲市駅間はICOCA＋特急券での利用が可能となった。

運行形態

• 列車種別：特急
• 運行区間：鳥取～米子・益田間合計7往復（米子駅発着3往復と益田駅発着4往復）
• 使用車両：キハ187系
• 編成図（益田・米子⇔鳥取）※上り・まつかぜ2号は4両編成（3・4号車自由席）
  

  1号車	2号車
  指定席	自由席

• 2024年3月16日ダイヤ改正現在

停車駅

凡例：●は全列車停車、○は半数以上の一部が停車、▲は半数以下の一部が停車。同区間にはスーパーおきも運行されている事からスーパーまつかぜの停車駅は上下で一致していない事が多い。前述の通り浜村駅はスーパーの付かないまつかぜ時代には停車していた。

駅名	鳥 取 駅	鳥 取 大 学 前 駅	浜 村 駅	倉 吉 駅	伯 耆 大 山 駅	米 子 駅	安 来 駅	松 江 駅	玉 造 温 泉 駅	宍 道 駅	出 雲 市 駅	西 出 雲 駅	大 田 市 駅	仁 万 駅	温 泉 津 駅	江 津 駅	波 子 駅	浜 田 駅	三 保 三 隅 駅	益 田 駅
スーパーまつかぜ （益田行き・下り）	●	●	→	●	▲	●	○	●	○	○	●	▲	●	▲	▲	●	▲	●	▲	●
スーパーまつかぜ （米子行き・下り）					○
スーパーまつかぜ （米子発・上り）	●	●	←	●	▲	●
スーパーまつかぜ （益田発・上り）					←		○	●	○	▲	●	▲	●	▲	▲	●	←	●	▲	●

列車名の由来

松林に吹く風から。

年表

まつかぜ

1961年10月　京都～松江間に福知山線経由で特急まつかぜが1往復設定される。
停車駅は京都 - 大阪 - 福知山 - 豊岡(上りのみ) - 城崎(下りのみ) - 鳥取 - 上井 - 米子 - 松江

1964年3月　松江～博多間を延長して運行区間が京都～大阪～松江～博多間となる。
松江駅までの停車駅は同じで松江駅以西の停車駅は松江 - 出雲市 - 石見大田 - 浜田 - 石見益田 - 東萩 - 長門市 - 下関 - 小倉 - 博多

1972年3月　新大阪～米子間を運転していた特急やくもの名称変更で大阪～鳥取間に1往復が増発されまつかぜは計2往復となる。

1972年10月　京都～米子間等の特急あさしお設定に伴い博多駅発着のまつかぜの始発駅を大阪駅に、終着駅を新大阪駅に短縮。

1982年7月　鳥取駅発着便を米子駅まで延長しまつかぜの運行区間は大阪→博多間・博多→新大阪間・大阪～米子間の計2往復となる。

1985年3月　米子～博多間をいそかぜに分離しまつかぜは2往復共に下りは大阪→米子間・上りは米子→新大阪間になる。

1986年11月　福知山線全線電化に伴い福知山線は電車特急北近畿で対処する事となり気動車特急まつかぜ廃止。

スーパーまつかぜ

2003年10月　従来スーパーくにびきとして運行していた列車をスーパーまつかぜとした事からまつかぜの名称復活。鳥取～米子間下り1本上り2本・鳥取～益田間4往復の計5.5往復が設定される。
改称時の停車駅はこちらを参照

2006年3月　鳥取～米子間のみの列車を1.5往復から2往復に増発。計6往復となる。

2008年3月　鳥取～米子間のみの列車を3往復に増発。計7往復となる。

関連動画

スーパーの付かないまつかぜは1986年に廃止されている事もありスーパーまつかぜタグの動画が多い

関連項目

• 鉄道列車名一覧
• 福知山線・山陰本線・鹿児島本線
• キハ80系・キハ181系・キハ187系
• 日本国有鉄道・JR西日本
• 北近畿(列車) - 福知山線特急時代の後継
• くにびき(列車) - 山陰本線特急時代の先代

山陰地方（鳥取・島根）へ向かう特急

スーパーおき─スーパーまつかぜ─スーパーいなば─やくも─はまかぜ─スーパーはくと─サンライズ出雲