ファーラップ 単語

1件

ファーラップ

4.2千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE

ファーラップ(Phar Lap)とは、1926年ニュージーランド生まれ・オーストラリア調教競走馬。「レッド・テラー(恐怖)」「ワンダーホース(驚異の)」などと呼ばれたオセアニア競馬英雄である。

名はチワン語で「稲妻」を意味する「farlap」を元に、メルボルンカップの勝ちに多かった「7文字で、2単語に分割された名前」になるようにひねったもの。

オセアニアでは8月シーズンの変わりであり、馬齢もここで加算される。以下でもそれを踏まえて記述する。

概要

Night RaidEntreatyWinkieという血統。イギリスで35戦2勝、ニュージーランドで1戦未勝利(着外)と、両とも競走成績に特筆すべきことはかった。

しかし、彼の調教師となるハリーテルフォード師は、血統に名カーバインであるマスケットインブリードが存在することと、系が一流であることからファーラップの素質を見抜いたのだという。もっともセリでの購入額は160ギニー(約3万円)とそこまで高いわけではなかった。

入厩時は背高の痩せっぽちであまり良い体ではなかったファーラップ。そのせいでテルフォード師が馬主になってくれるよう依頼したデヴィッド・デイヴィスという人物が激怒して、預託料の支払いを拒否する事態に発展してしまった。結局「3年間預託料を払わない代わりに賞金の2/3を調教師の取り分にする」ということで決定したが、こうなると走らなければ何も入ってこないため、成長を促すためにテルフォード師はファーラップをあっさり去勢してしまう。当時の豪州クラシックレースセン馬でも出走可だったのである。とっちゃったら立に育ったファーラップは、最終的には体高179cmというとんでもない巨になってしまう。でかすぎである。ヒシアケボノもびっくりだ。

デカい身体を持て余したからか、初戦から4戦連続着外。2歳4月末に5戦で初勝利を挙げるものの、シーズンが変わってから5戦連続で負け。正直、ここまでは全然大したではなく、「オーストラリアダービーにだって勝てる」と初勝利時に発言したテルフォード師も業を煮やして、障害競走への転向を検討した。しかし、テルフォード師が見込んだ才はここから急に開する。

初めてマイルえる距離を使われたチェルムスフォードS(9ハロン)で2着に入った後、これで波に乗ったのか3歳戦の大競走の一つであるローズヒルギニーで久々勝利を挙げると、次走のオーストラリアダービーレコードタイム勝。続くクレイヴンプレートも4身差で圧勝した後、ヴィクトリアダービーでもレコードタイム勝利オーストラリア最大のレースメルボルンカップこそ敗れ、年明けのセントジョージSも3着に敗れたものの、続けて出走したVRCセントレジャーを皮切りに2ヶ半で9連勝を挙げ、最終的にこのシーズンは20戦13勝をマーク。特に凄まじいレースとして語り継がれているのが18ハロン戦であったAJCプレートというレースで、ファーラップはこのレース大逃げを打ったまま逃げ切り、コースレコード、10身差(そんなものではなくて200mぐらい着差があったという説もある)で圧勝。彼に『恐怖』という異名が献上されたのはこの時であるとされる(アメリカで付いた異名という説もある)。

シーズンは本格化して更に手が付けられなくなる。16戦14勝、しかも14連勝(最初と最後に負けている)である。フューチュリティS(7ハロン)では途中で先頭から30身差を付けられ、更に複数回進路を塞がれながらクビ差で勝利。前年に敗れたメルボルンカップにも1.7倍というダントツの一番人気に応えて楽勝。

この時、あまりの人気に損を恐れたブックメーカー(賭け屋)がメルボルンカップ3日前のメルボルンSというレースレース前追い切りを行ったファーラップをピストルで撃ったという話まである(当時、出走取り消しされた馬券は払い戻さなくても良かったんだそうな)。あるいはこの撃事件は新聞記者が特ダネ欲しさにやったのだという説もあり、いずれにせよ当時のファーラップがオーストラリアにおいてどれほどの話題を集めていたのかが分かるようなエピソードだ。

なお、4歳最後の敗戦は軽い疝痛を推して出走させたのが要因であるとされ、それを悔やんだテルフォード師は5ヶ近くファーラップを休養させた。この間に預託料に関する契約が満了し、デイヴィス氏側は4000ポンドで所有権の半分を購入した。

5歳になったファーラップは休養明けから8連勝。連覇を狙ったメルボルンカップこそ150ポンド≒68kg(!)という酷量がいて8着に負けてしまったものの、その強さはもはやオセアニアに留まるレベルではないと見做されていた。そしてついに、デイヴィス氏はファーラップのアメリカ大陸遠征を企てたのである。

狙うは3月メキシコのアグアカリエンテ競馬場で行われるアグアカリエンテハンデキャップ。この時期、アメリカでは多くの州で馬券の発売が禁止されてしまい、競馬がほとんど行われていなかった。そのため、禁止法の抜け的に近くにあるこの競馬場での開催が盛り上がっていたのである。アグアカリエンテハンデキャップはその中でも世界最高賞金(5万ドル)を誇る大レースであった。

かしこレース、ファーラップはそもそもいきなり寒いに(南半球3月)連れてこられて体調を崩していた上に、初めて走るダートコースに戸惑い、おまけに大きく出遅れてしまう。ところが中盤で気を取り直すと、8.23mもあったという大歩であっという間に差を詰めて先行一気に抜き去り、レコードタイムゴールアメリカの競馬関係者はあっけに取られても出なかったという。

この勝利は、欧米からさんざん格下扱いされていたオセアニア競馬における、遠征による初めての海外レース勝利であった。まさに歴史的な勝利だったのである。

この後、ファーラップはカリフォルニア牧場に送られ、休養に入った。アメリカ各地を転戦する計画が立てられていたのだという。しかし、ここで悲劇が起こるのである。

1932年4月5日。ファーラップが牧場で苦しんでいるのが発見され、数時間後に大量の血を吐いて死んでしまったのである。その死のニュースオーストラリアで大々的に報道され、オーストラリアファンヒーロー突然の死に驚き、悲嘆に暮れた。

……ここからが競馬界に残るミステリーとなる。

解剖の結果、ファーラップの死因は疝痛であると判定された。しかし、同時に体内から砒素も検出されたのである。

このニュースオーストラリアファンは怒り狂った。「ファーラップがアメリカ人に殺された!」と叫んでアメリカに囂々たる非難を浴びせたのである。この事件はオーストラリア人の反米感情に火を付け国際問題にまで発展したという。現在でもオーストラリア人がアメリカ人を貶す際にファーラップ事件を持ち出す例は多いのだとか。

もっとも、前述のように当時のアメリカでは幾つもの州で馬券の発売が禁止され、競馬の時代であった。オーストラリア人のでは、アメリカマフィア八百長レースの邪魔になるファーラップを殺したのだ、ということなのだが、当時の状況からは理があると思う。アメリカ馬主オーストラリアなんかに負けるのを恐れたというも、アメリカ人の気質的にはいのではないかと思われる。

剤のついた牧を食べたのだとか、ファーラップを献身的に世話していたトミーウッドコック厩務員が砒素の含まれていた食欲増進剤の投与量を間違えたのだという説もある。いずれにしろ、相は歴史の闇の中。ファーラップは競馬史上、もっとも不可解な死に方をした名として語り継がれている。

ファーラップは通算51戦37勝という恐ろしい戦績(9・14・8連勝したことがある)を残し、獲得賞金は6万6738ポンド(当時の世界3位)に達した。しかしその数字以上にオーストラリア競馬に残した足跡は大きい。オーストラリアニュージーランド競馬殿堂が出来た時にも当然っ先に選出された。1930年メルボルンカップ圧勝劇は2006年シドニー・モーニング・ヘラルドが行った「オーストラリアスポーツ名場面投票で第7位に選ばれている。実はアメリカでの評価も非常に高く、20世紀のアメリカ名馬100選ではアメリカ合衆国で一度も走っていないにも関わらず22位に選ばれている。

その遺体オーストラリアに送り返され、剥製メルボルン博物館に、格はニュージーランド国立博物館にそれぞれ展示されている。そしてなんと通常の2倍もあったという巨大な心臓はキャンベラの解剖学研究所に保管されている。

現在でもオーストラリア競馬史上最強と言われるファーラップ。その異名に似合わず非常におとなしく心優しいであったそうである。セン馬であったから子孫は残せなかっただろうが、引退しても牧場人気者になったのではないだろうか。そんな余生を送って欲しかった。遠い異の地で寂しく死なせるにはあまりにも惜しい名であった。

血統表

Night Raid
1918 栗毛
Radium
1903 黒鹿毛
Bend Or Doncaster
Rouge Rose
Taia Donovan
Eira
Sentiment
1912 鹿毛
Spearmint Carbine
Maid of the Mint
Flair St. Frusquin
Glare
Entreaty
1920 黒鹿毛
FNo.2-r
Winkie
1912 栗毛
William the Third St. Simon
Gravity
Conjure Juggler
Connie
Prayer Wheel
1905 鹿毛
Pilgrim's Progress Isonomy
Pilgrimage
Catherine Wheel Maxim
Miss Kate

クロス:St. Simon 4×5(9.38%)、Galopin 5×5(6.25%)、Musket 5×5(6.25%)

関連動画

まさかあるとは……UPGJ!

関連商品

関連コミュニティ

関連項目

この記事を編集する
流行語100

掲示板

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
Garry'sMod[単語]

提供: Pro_tor

もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2024/11/30(土) 07:00

ほめられた記事

最終更新:2024/11/30(土) 07:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP