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プレドニゾロン(Prednisolone)とは、ステロイド系抗炎症薬である。商品名はプレドニン®など。
プレドニゾロンは、合成された副腎皮質ステロイド、糖質コルチコイドである。1955年に合成され、本邦では1956年に上市された。副腎皮質ホルモンのコルチゾールをもとに、その1位-2位間に二重結合が導入されているため、抗炎症作用や免疫抑制作用などが強まり、電解質への作用が弱められている。こうした合成副腎皮質ステロイドは、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患などに幅広く使用されている。以下に、副腎皮質ステロイドの作用を例示する。
プレドニゾロンなどのステロイド系抗炎症薬は、細胞質の糖質コルチコイド受容体(GCR)に結合し、複合体を形成する。複合体になると、GCRに結合していた2分子の熱ショックタンパク質(HSP)が解離し、DNA結合ドメインが露出する。ステロイドとGCRの複合体は、核内に移行して二量体を形成、糖質コルチコイド応答エレメント(GRE)というDNAの特定の領域に結合し、mRNAの転写を促進ないし抑制する。抗炎症作用をもつタンパク質リポコルチンの産生促進や、炎症応答に関与する酵素ホスホリパーゼA2、誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現抑制などにより、抗炎症作用を示す。
一方、ステロイド系抗炎症薬は全身に作用し、糖質やタンパク質の代謝にも影響を与えるため、多彩な副作用があらわれる。とくに注意すべき副作用として、消化性潰瘍、骨粗鬆症、耐糖能異常(2型糖尿病)などがある。免疫系を抑制するため、肺炎や敗血症のリスクもある。満月様顔貌(ムーンフェイス)や中心性肥満などの特徴的な副作用もある。また、ACTH分泌抑制作用のため、長期投与によって副腎皮質が委縮する。長期投与したあとの急激な減量や中止は急性副腎不全(副腎クリーゼ)を招くため、徐々に減量する必要がある。
これらの副作用や中止までに時間がかかることから、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドは、一般に怖い薬や止められない薬と認識されやすい。しかし、臨床ではその強力な治療効果のため広範に使用されている。これは、デメリットを差し引いても、患者にとって有益な結果をもたらすと考えられるためである。不適切な使用は症状悪化・治療長期化を招くが、適切に使用すれば少ない投与量・短い治療期間で済むケースもある。もちろん、副作用のリスクはゼロにはならないため、注意しておくことは大切である。治療法や副作用について十分に理解し、気づいたことがあれば医師や薬剤師にフィードバックしよう。
ステロイド系抗炎症薬は、その強力な抗炎症作用のため、多くの疾患の治療に用いられる。実際にどれほど多いのかを示すため、例として内服のプレドニン®錠、注射や吸入などで用いられる水溶性プレドニン®の適応症を以下に記載する。なお、剤形や投与方法によって適応は異なるが割愛する。炎症性疾患を中心に、100を超える疾患に使用されていることが分かる。
合成副腎皮質ステロイドは、副腎皮質ホルモンのコルチゾールの誘導体であり、プレドニゾロンであれば1位-2位間に二重結合をもつ。こうした化学修飾は、抗炎症作用や免疫抑制作用などを強め、電解質への作用を弱めることに寄与している。また、ベタメタゾン(リンデロン®など)のように、16位にメチル基が導入されている合成副腎皮質ステロイドは、代謝されにくくなり作用時間が延長している。
血中半減期 | 糖質コルチコイド作用 | 鉱質コルチコイド作用 | |
---|---|---|---|
コルチゾール | 1.2 hr | 1 | 1 |
コルチゾン | 1.2 hr | 0.7 | 0.7 |
プレドニゾロン | 2.5 hr | 4 | 0.8 |
デキサメタゾン | 3.5 hr | 25 | ≒0 |
ベタメタゾン | 3.3 hr | 25 | ≒0 |
註:糖質コルチコイド作用・鉱質コルチコイド作用について、コルチゾールを1としたときの相対的な力価を掲載。 |
プレドニゾロンは作用が適度に持続するため、用法用量を調節し副作用を減らす工夫がしやすいとされる。また、大量投与でなければ胎盤で不活性化されるため、胎児に影響を及ぼしにくく、妊娠していても安全に使用できると考えられる。
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最終更新:2024/11/09(土) 03:00
最終更新:2024/11/09(土) 02:00
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