斉藤始とは、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの登場人物である。地球連合軍の空間騎兵隊の隊員(本記事では、空間騎兵隊についても簡単に記述する)。苗字が「斉藤」か「斎藤」かは、資料・書籍によって異なる(両者の苗字は厳密のは別のものらしい)のだが、ここでは『星巡る箱舟』の公式ホームページに準拠して「斉藤」とする。旧作でのCVは、シリーズの主題歌を歌う、ささきいさお。『宇宙戦艦ヤマト2199』では東地宏樹。
この項目は、ネタバレ成分を多く含んでいます。 ここから下は自己責任でお願いします。 |
主な登場は、対白色彗星帝国戦役時の『さらば宇宙戦艦ヤマト』と『宇宙戦艦ヤマト2』。年齢は定かではないが、古代進より年上であることがわかっている。
『宇宙戦艦ヤマト2199』では、TV本編には登場しないが、劇場版『星巡る箱舟』に登場。容姿は旧作とほぼ同じだが、左頬下には大きな十字傷がある。出身は鹿児島で、年齢は27歳(古代進より7歳年上)ながら階級は宙曹長。ヤマト2199の世界では士官候補生に与えられる階級は准尉であるらしいので、叩き上げで下士官の(ほぼ)最高位まで昇進したようである(度重なる戦闘による人員の損耗も影響しているだろうが)。
空間騎兵隊は、対要塞攻略戦、対テロ戦、敵陣地への降下戦、艦内での白兵戦など、危険で特殊な任務を担当する部隊と位置付けられ、20世紀前後の海兵隊とほぼ同じ部隊と定義されている。上陸用舟艇や背負い式の個人ロケット、多弾頭砲といった大きな装備も使用するが、基本的な戦闘スタイルはライフルや小銃、ナイフ、手榴弾などの携帯式の武器を用い、時には肉弾戦を行う歩兵である。その任務の危険性から隊員たちには粗野なほど豪放な人間もかなりおり、また、宇宙船に不慣れで宇宙酔いをすることもあったりして、艦船の乗組員とトラブルを起こすことも少なくないが、本領たる陸戦においては精強そのものである。
斉藤始も、柔道、空手、レスリングその他いろいろ合わせて23段という武術の達人である。
ヤマトに乗艦するまでの経緯は「さらば」と「2」で異なるが、宇宙の彼方から送られてくる謎の警告メッセージの正体を、司令部の制止を振り切ってでも確かめようと発進したヤマトと行動を共にする点は同じ。「さらば」では、ヤマトの行動を見守っていた藤堂長官の密命を受け、30名の部下と共に助っ人としてヤマトに乗り込んだ(いわば「仕事」の一環であった)ためか淡々としており、特にヤマト乗組員との接点もほとんど描かれなかった。「2」では第11番惑星の守備隊長であったが、コズモダード・ナスカ艦隊の奇襲を受けて苦戦していたところをヤマトに救出され、ヤマトに乗り込む。当初は、戦いに敗れたという屈折した心理や、軍種の違いによるギャップのため、ヤマト乗組員とのトラブルが耐えなかったが、戦いの中で次第に打ち解けていく(映画には無い、コミカルなシーンも見せている)。
テレザート星の戦い、バルゼー艦隊(および兵站基地)との戦い、デスラー艦での白兵戦といった危険な任務を果たし、最終的には都市要塞攻防戦で、戦死と引き換えに要塞動力部の爆破に成功する。古代と別れる際、自分より年下の古代を「兄貴のように感じていた」と語った。斉藤の動力部破壊によって白色彗星帝国が都市要塞を放棄せざるを得なくなったことが、最終的な白色彗星帝国の敗北へと繋がっている。
映画の冒頭と最終盤に、土方竜や山南修、藤堂平九郎といった留守番組のメンバーと共に登場する。月面駐屯地に配備された、空間騎兵第7連隊の一員。
駐屯地はガミラス空母の攻撃を受けて大きな被害を受け、斉藤たち生き残った隊員は救援を要請するが、なかなか助けは来なかった。いつ来るかわからない救援を待つ間に隊員たちは力尽きていき、ようやく宇宙戦艦キリシマが生存者を収容しに来たときには、連隊長の桐生悟郎も死んでしまっているなど、連隊は壊滅状態であった。奇襲直後は、もっと大勢の生存者がいたらしく、斉藤は「もっと早く来てくれれば、連隊は壊滅しなかった」と死んだ仲間たちの認識票の束を示して土方たちに抗議するなど、仲間思いな面が描かれている。一人の下士官に過ぎない斉藤が、雲上人にも等しい将官の土方に食って掛かるというのは、厳罰を受けてもおかしくない大変な行為で、山南も「おい、おい」とたしなめていた。土方が咎めなかったため大きなトラブルにはならなかったようだが、実は大変な状況だったのである。
地球帰還後は極東管区地下都市の治安部隊に配属され、治安維持の任についていた。ヤマトが地球抜錨から約11ヶ月後に地球に向けて通信を送り、藤堂長官や土方と連絡を取った際、地球側の通信画面に斉藤の姿は映らなかったが、現場に同席していたことが描かれている。
連隊長の桐生悟郎とは入隊前から懇意にしており、また、彼の娘・桐生美影からは兄のように思われているなど、家族ぐるみの付き合いをしていた。
考えてみると、桐生美影とは似た者同士で、相性が良いかもしれない。それを示す旧作のエピソードが以下の通りである。
(宇宙戦艦ヤマト2 第18話より)
斉藤が気持ちよさそうにグースカ寝ているとき、艦内放送で注意喚起があった。
艦内放送「今より、能力の限度いっぱいのワープを行う。衝撃が大きいから、全員事故の無いよう、十分注意するように」
ベルトを締めなくては危ないため、隊員が寝ている斉藤に注意を促す。
隊員「隊長、起きてください。ワープですよ」
だが、寝ぼけた斉藤はトンチンカンな反応をする。
斉藤「スープなんかいらねえよ」
隊員「スープじゃなくてワープです」
ここで寝ぼけパンチと共に
斉藤「ロープだと? 俺がいつ首つるって言った?」
と言う始末。とばっちりを受けた隊員は、さじを投げた。
隊員「オレ、知らね」
そして、どんがらがっしゃーん。ワープ後、医務室に担ぎ込まれた斉藤は弱々しく言った。
斉藤「腰が痛てえ~。背中も足もバラバラだ・・・」
二人には、どんがらがっしゃーん、という共通点があるのだ。
『星巡る箱舟』では、主にヤマト、ガミラス、ガトランティスといった3勢力それぞれの思惑と戦いが描かれ、そこに注目が集まったが、もう一つ描かれた戦いがある。それは、斉藤たち地球に残った者たちの苦闘である。
冒頭からして、地球の苦しい状況がわかる。斉藤たちは救援が遅かったことを憤っていたが、救援は「ついで」に行われたに過ぎなかった。地球にはもう、満足に動かせる宇宙船は少なく、船があっても動かすエネルギーに事欠いているような状態である以上、何かの「ついで」でもない限り、月まで行くことはできなかったのだ。地球の苦しい状況は、時間の経過と共に、更に悪化していく。ヤマトによってガミラス冥王星基地が壊滅したため遊星爆弾の脅威こそなくなったが、ヤマト計画を成功させて、コスモリバースシステムをイスカンダルから持ち帰らないかぎり、人類に滅亡の道しか残されていないという状況に変化は無い。
計画のタイムリミットはわずか1年、それも、「必死に延命して、1年が限界」というものである。残り少ないエネルギーや食糧を浪費すればタイムリミットを縮め、たとえヤマトが予定通りに帰還できたとしても、地球が破滅しているという事態になりかねない。斉藤たち留守番組の使命は、そんな事態を防ぐことにある。
それがいかに辛い戦いであったかは、ヤマトの地球抜錨から約11ヶ月後の斉藤の口からも語られている。来る日も来る日も、暴徒鎮圧。市民にも治安部隊にも死傷者が出続ける日々で、しかも敵はガミラスではなく、本来は守るべき相手である市民たち。斉藤は、その現場で実際に市民に銃を向けてでも治安を維持しなければならない立場である。そして、暴動を起こす市民ばかりを責めることもできない。徳川太助が闇物資を入手しないと「やっていけない」とTV本編で語っていたほどに配給が滞っている状況では、不満が爆発しない方が不思議である。斉藤も「こんな地獄、いったいいつまで続くのです?」と苦しい胸の内を明かす。
それに対する土方の返答は、「俺の親友(とヤマト)は必ず帰ってくると言った。必ずだ」というものであった。
何か具体的な方針や対策ではなく、決意を述べただけにも見えるかもしれないが、実際のところ、土方たち地球で待つ人々がやらねばならないのは、待つことなのである。
ヤマト乗組員は、計画の状況をリアルタイムで知ることが可能だ。『星巡る箱舟』でも描かれたとおり、地球抜錨から約7ヶ月を経過した時点で、イスカンダルまで到達、コスモリバースシステムを入手し、ガミラスとの停戦が成立したことで、艦長の沖田が病床にあって艦長としての職務をほとんど果たせなくなった状態でにもかかわらず、ヤマト艦内の雰囲気は非常に明るいものであった。それに対して地球では、タイムリミット直前まで何もわからない。ヤマトの航海は順調なのか、遅れているのか、もしかして撃沈されているのではないか。藤堂長官すら、「ヤマトは本当に・・・」と弱音を吐きかけたほどである。それでもヤマトを信じて、自暴自棄を起こしそうな自分自身とも向き合いながら、待たねばならない。並大抵の体力・精神力では乗り切ることができない。斉藤は知らないことだが、ヤマト艦長の沖田は土方に「地球のことを頼む」と託して出発している。きっと沖田は、留守を守る役割の重要さと困難さ、期間の長さを考慮し、信頼する親友にその役割を委ねたのだろう。
土方が返答した直後、オペレーターから待ちに待ったヤマトからの通信が入ったと報告がなされる。報告を受けた土方の顔に笑みが浮かぶ。それは、ある意味でヤマト乗組員以上に過酷だった斉藤たちの戦いが、決して無駄ではなかったことを知らせる通信であった。
掲示板
1 ななしのよっしん
2016/11/02(水) 19:20:25 ID: wmxOaZFba0
乙です。いい仕事をなさる…
2202での斉藤の活躍を期待する一方どうあっても散華は免れなかろうと思うと哀しい気分にも…悩ましい
2 ななしのよっしん
2017/07/15(土) 21:58:48 ID: ZeDIH4v1Mz
ホントに愛であふれた良い記事だなぁ。もっと評価されるべきだ。
助けを待ち続けるのもある種別の戦いなんだ。よく頑張ったなぁ地球の人。
3 ななしのよっしん
2023/12/01(金) 19:52:12 ID: b+AAjnH/sh
2202への言及がないのはまあ分かるかなあ。
本当に2202のスタッフは罪深いわ。
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最終更新:2024/12/27(金) 04:00
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