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山本巧次(やまもと こうじ)とは、日本の推理小説家。時代ミステリと鉄道ミステリを得意とする。
概要
1960年和歌山県生まれ。中央大学法学部卒。大学卒業後は鉄道会社に勤務した鉄道マン。
2014年の第13回『このミステリーがすごい!』大賞に「八丁堀ミストレス」を応募。最終候補に残り、選考委員の中では茶木則雄が推したものの、「発想や設定はたいへん面白く、このまますぐ出版できるレベルだが、新人賞の受賞作にするにはあまりにもシリーズものの第一作っぽすぎる」という理由で落選。翌2015年8月、『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』と改題して「隠し玉」として宝島社文庫から刊行されデビュー。シリーズ化され、江戸時代の事件を現代の科学捜査で追うという魅力的なアイデアで、ドラマ化もされるヒット作となる。詳しいことは作品の記事で。
デビュー作は鉄道要素のない時代ミステリだったが、2017年に東京創元社のミステリ・フロンティアから刊行された明治時代を舞台とする鉄道ミステリ『開化鐵道探偵』が「このミステリーがすごい!」10位、「ミステリが読みたい!」5位など高い評価を受け、以降は時代ミステリと鉄道ミステリを二本柱として活躍している。『阪堺電車177号の追憶』では大阪ほんま本大賞と酒飲み書店員大賞を受賞。
高校・大学では鉄道研究会に所属した乗り鉄・撮り鉄で、趣味が高じて鉄道会社に就職したという筋金入りの鉄オタ。題材とするのも明治の鉄道黎明期(『開化鐵道探偵』)から、昭和30年代の鉄道開発(『希望と殺意はレールに乗って』)、阪堺電車(『阪堺電車177号の追憶』)から北海道のローカル線(『途中下車はできません』『留萌本線、最後の事件』)、都内の大手私鉄(『早房希美の謎解き急行』)とバラエティに富む。『希望と殺意はレールに乗って』の特設ページでは、Q&A方式のインタビューに自前の鉄道写真が添えられている(国内だけでなくクロアチアまで!)あたりを見ても筋金入り度がよくわかる。
鮎川哲也以降アリバイ崩しものの題材として連綿と書き継がれたものの、80~90年代のトラベルミステリーブームのあとはあまり元気のない鉄道ミステリー界の期待の新鋭で、鉄道ミステリーの新たな旗手と評される。鉄道ミステリ作家として語られることが多いが、デビュー作に始まる『八丁堀のおゆう』や、大日本帝国海軍の日常の謎ミステリ『軍艦探偵』など、鉄道要素のない時代ミステリも面白いので、興味のある題材の作品から手に取ってみるといいだろう。
作品リスト(刊行順)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう (2015年、宝島社文庫)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤 (2016年、宝島社文庫)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢 (2016年、宝島社文庫)
- 開化鐵道探偵 (2017年、東京創元社→2021年、創元推理文庫)
- 阪堺電車177号の追憶 (2017年、ハヤカワ文庫JA)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 北斎に聞いてみろ (2017年、宝島社文庫)
- 軍艦探偵 (2018年、ハルキ文庫)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ドローン江戸を翔ぶ (2018年、宝島社文庫)
- 江戸の闇風 黒桔梗裏草紙 (2018年、幻冬舎文庫)
- 開化鐵道探偵 第一〇二列車の謎 (2018年、東京創元社→2021年、創元推理文庫)
- 途中下車はできません (2019年、小学館)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 北からの黒船 (2019年、宝島社文庫)
- 希望と殺意はレールに乗って アメかぶ探偵の事件簿 (2020年、講談社)
- 花伏せて 江戸の闇風〈二〉 (2020年、幻冬舎文庫)
- 留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白 (2020年、ハヤカワ文庫JA)
- 早房希美の謎解き急行 (2020年、双葉文庫)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 妖刀は怪盗を招く (2020年、宝島社文庫)
- 江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ (2020年、幻冬舎文庫)
- 鷹の城 (2021年、光文社)
→ 鷹の城 定廻り同心新九郎、時を超える (2023年、光文社文庫[改題])
- 江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ 夢の花 (2021年、幻冬舎文庫)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ステイホームは江戸で (2021年、宝島社文庫)
- 江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ 春の炎 (2021年、幻冬舎文庫)
- 満鉄探偵 欧亜急行の殺人 (2022年、PHP文芸文庫)
- 乳頭温泉から消えた女 (2022年、集英社文庫)
- 江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ ふたつの星 (2022年、幻冬舎文庫)
- まやかしうらない処 信じる者は救われる (2022年、小学館文庫)
- まやかしうらない処 災い転じて福となせ (2022年、小学館文庫)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 司法解剖には解体新書を (2022年、宝島社文庫)
- 江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ 紅葉の家 (2022年、幻冬舎文庫)
- 急行霧島 それぞれの昭和 (2023年、ハヤカワ文庫JA)
- 江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ 隣人の影 (2023年、幻冬舎文庫)
- 岩鼠の城 定廻り同心新九郎、時を超える (2023年、光文社文庫)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 抹茶の香る密室草庵 (2023年、宝島社文庫)
- 江戸美人捕物帳 入舟長屋のおみわ 長屋の危機 (2023年、幻冬舎文庫)
- 災厄の宿 (2024年、集英社文庫)
- 戦国快盗 嵐丸 今川家を狙え (2024年、講談社文庫)
- 甘いものには棘がある 奥様姫様捕物綴り(一) (2024年、双葉文庫)
- 蟷螂の城 定廻り同心新九郎、時を超える (2024年、光文社文庫)
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 殺しの証拠は未来から (2024年、宝島社文庫)
- 千夏の光 蘭学小町の捕物帖 (2024年、幻冬舎文庫)
- 本読む者は人目を忍べ 奥様姫様捕物綴り(二) (2025年、双葉文庫)
- 戦国快盗 嵐丸 朝倉家をカモれ (2025年、講談社文庫)
関連項目
- 小説家の一覧
- ミステリー / 時代小説
- 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう
- 鉄道ファン