真保裕一(しんぽ ゆういち)とは、日本の小説家、脚本家。
概要
1961年東京生まれ。元々はシンエイ動画でアニメの文芸担当や、『笑ゥせぇるすまん』『おぼっちゃまくん』の演出を担当していた。最初は『ドラえもん』のようなアニメを作りたいと思いアニメーター志望で採用試験を受けたが、画力不足でアニメーターとしては不採用になったという経歴がある。
1991年に『連鎖』で第37回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー(その前年に『代償』という作品で最終候補になっており、のちの『誘拐の果実』の原型になった)。1995年に発表した『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞を受賞しブレイク。1996年に『奪取』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞。直木賞は『ボーダーライン』『ストロボ』『黄金の島』『繋がれた明日』で4回候補になったがいずれも落選。2006年、『灰色の北壁』で新田次郎文学賞受賞。
初期は『取引』『震源』ら公務員を主人公にした「小役人シリーズ」など、綿密な取材に基づくジャーナリスティックなミステリーやサスペンスを主に書き、その取材力が高く評価された(が、本人は取材力ばかり注目されるのが不満だったらしい)。基本的に話は長く、文庫で600ページ超や上下巻の作品が多い。2000年以降はイマイチ振るわず、『栄光なき凱旋』などの大作を発表してもあまり話題にならなかったが、2009年の『デパートへ行こう!』に始まる「行こう!」シリーズがヒットして持ち直した。
1998年に『奇跡の人』がドラマ化されたが、作者に無断で企画が進められたため、真保は激怒し版権を角川書店から新潮社に移してしまった。2000年『ホワイトアウト』が映画化された際には自ら脚本を担当している。他に『繋がれた明日』が2006年にNHKでドラマ化、『おまえの罪を自白しろ』が2023年に映画化された。『アマルフィ』『天使の報酬』『アンダルシア』と続く「外交官 黒田康作」シリーズの原作も担当したりしている。
またシンエイ動画時代の縁で、2007年に『のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~』で映画ドラえもんの脚本を担当。その後『新・のび太の宇宙開拓史』と『のび太の人魚大海戦』も手がけた。他に『鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星』の脚本も書いている。
受賞・候補歴
- 「代償」…第36回候補。※後に刊行された『誘拐の果実』の原型
- ★『連鎖』…第37回受賞。
- 『震源』…第15回候補。
- ★『ホワイトアウト』…第17回受賞。
- 『震源』…第47回長編部門候補。
- 「私に向かない職業」…第47回短編および短編連作部門候補。
- 『ホワイトアウト』…第49回長編部門候補。
- ★『奪取』…第50回長編部門受賞。
- 『ボーダーライン』…第122回候補。
- 『ストロボ』…第123回候補。
- 『黄金の島』…第125回候補。
- 『繋がれた明日』…第129回候補。
新田次郎文学賞
作品リスト(小説)
- 連鎖 (1991年、講談社→1994年、講談社文庫→2021年、講談社文庫[新装版])
- 取引 (1992年、講談社→1995年、講談社文庫)
- 震源 (1993年、講談社→1996年、講談社文庫)
- 盗聴 (1994年、講談社→1997年、講談社文庫)
- ホワイトアウト (1995年、新潮社→1998年、新潮文庫)
- 朽ちた樹々の枝の下で (1996年、角川書店→1999年、講談社文庫)
- 奪取 (1996年、講談社→1999年、講談社文庫[上下巻]→2012年、双葉文庫[上下巻])
- 奇跡の人 (1997年、角川書店→2000年、新潮文庫→2023年、文春文庫)
- 防壁 (1997年、講談社→2000年、講談社文庫)
- 密告 (1998年、講談社→2001年、講談社文庫)
- トライアル (1998年、文藝春秋→2001年、文春文庫)
- ボーダーライン (1999年、集英社→2002年、集英社文庫)
- ストロボ (2000年、新潮社→2003年、新潮文庫→2016年、文春文庫)
- 黄金の島 (2001年、講談社→2004年、講談社文庫[上下巻])
- ダイスをころがせ! (2002年、毎日新聞社→2005年、新潮文庫[上下巻]→2013年、講談社文庫[上下巻])
- 発火点 (2002年、講談社→2005年、講談社文庫)
- 誘拐の果実 (2002年、集英社→2005年、集英社文庫[上下巻])
- 繋がれた明日 (2003年、朝日新聞出版→2006年、朝日文庫→2008年、新潮文庫→2023年、朝日文庫[新装版])
- 真夜中の神話 (2004年、文藝春秋→2007年、文春文庫)
- 灰色の北壁 (2005年、講談社→2008年、講談社文庫)
- 栄光なき凱旋 (2006年、小学館[上下巻]→2009年、文春文庫[上中下巻])
- 最愛 (2007年、新潮社→2010年、文春文庫)
- 追伸 (2007年、文藝春秋→2010年、文春文庫)
- 覇王の番人 (2008年、講談社[上下巻]→2011年、講談社文庫[上下巻])
- アマルフィ (2009年、扶桑社→2010年、講談社ノベルス→2013年、講談社文庫)
- デパートへ行こう! (2009年、講談社→2012年、講談社文庫)
- ブルー・ゴールド (2010年、朝日新聞出版→2013年、朝日文庫→2016年、角川文庫)
- 天使の報酬 (2010年、講談社→2012年、講談社ノベルス→2021年、講談社文庫)
- 天魔ゆく空 (2011年、講談社→2014年、講談社文庫[上下巻])
- アンダルシア (2011年、講談社→2012年、講談社ノベルス→2021年、講談社文庫)
- 猫背の虎 動乱始末 (2012年、集英社→2015年、講談社文庫)
- ローカル線で行こう! (2013年、講談社→2016年、講談社文庫)
- 正義をふりかざす君へ (2013年、徳間書店→2016年、徳間文庫)
- アンダーカバー 秘密調査 (2014年、小学館→2017年、小学館文庫)
- ダブル・フォールト (2014年、集英社→2017年、集英社文庫)
- レオナルドの扉 (2015年、KADOKAWA→2017年、角川文庫→2018年、角川つばさ文庫[全2巻])
- 赤毛のアンナ (2016年、徳間書店→2019年、徳間文庫)
- 遊園地に行こう! (2016年、講談社→2019年、講談社文庫)
- 脇坂副署長の長い一日 (2016年、集英社→2019年、集英社文庫)
- 暗闇のアリア (2017年、KADOKAWA→2022年、講談社文庫)
- オリンピックへ行こう! (2018年、講談社→2020年、講談社文庫)
- こちら横浜市港湾局みなと振興課です (2018年、文藝春秋→2021年、文春文庫)
- おまえの罪を自白しろ (2019年、文藝春秋→2022年、文春文庫)
- ダーク・ブルー (2020年、講談社→2023年、講談社文庫)
- シークレット・エクスプレス (2021年、毎日新聞出版→2024年、毎日文庫)
- 真・慶安太平記 (2021年、講談社→2024年、講談社文庫)
- 英雄 (2022年、朝日新聞出版)
- 百鬼大乱 (2023年、講談社)
- 魂の歌が聞こえるか (2024年、講談社)
- 共犯の畔 (2024年、朝日新聞出版)
作品リスト(脚本)
- おぼっちゃまくん (TV、1989年~1992年、文芸担当)[1]
- ホワイトアウト (映画、2000年)
- ドラえもん のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~ (映画、2007年)
- ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史 (映画、2009年)
- アマルフィ 女神の報酬 (映画、2009年)
- ドラえもん のび太の人魚大海戦 (映画、2010年)
- 鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星 (映画、2011年)
- ゴーちゃん。〜モコとちんじゅうの森の仲間たち〜 (映画、2017年)
関連動画
関連項目
- 小説家の一覧
- シナリオライターの一覧
- シンエイ動画
- ドラえもん
- 織田裕二
脚注
- *脚本担当回は、69話Aパート「おったまゲタゲタ!」のみ。他に71話Aパート「友だちんこララバイ!」絵コンテ、75話Aパート「恋の季節カメへんぶぁい」絵コンテを担当(全て1990年)。