アマゴワクチンとは、漫画「みどりのマキバオー」に登場する架空の競走馬である。
概要
父ホラフキー、母メリークリスマス、母父カツラダヨーという血統。父ホラフキーはマルゼニスキー(マルゼンスキーがモデルと思われる)の産駒。全兄に皐月賞・日本ダービーを勝った二冠馬のピーターⅡがいる。ピーターⅡは三冠馬となることを期待されていたが、函館記念で故障し引退してしまった。そのため、全弟であるアマゴワクチンを応援するファンが多かった。
得意な戦法は逃げ。兄同様豊富なスタミナとレース全体のペースを自在に操ることのできる優れた知略を持ち合わせ、競争相手を翻弄する。
3冠相続人
3歳(1995年)
後にミドリマキバオー、カスケードと並んで三強と呼ばれたアマゴワクチンもデビュー2戦は凡走し、実力を発揮することができなかったが、兄ピーターⅡの故障をきっかけに覚醒、京都3歳ステークス含むレースを2連勝し、朝日杯3歳ステークス(GⅠ)に挑む。ミドリマキバオー、カスケードとはこのレースで初めて対決することとなった。レースではミドリマキバオー、カスケードらと激しい先行争いを演じる。マキバオーは道中位置を下げるも、ワクチンとカスケードはそのままの勢いで1000m57秒というハイペースでレースを進める。第3コーナーに差し掛かるころには後続馬も差を詰め始め、直線に入るとついに後続馬に抜かれてしまうが、ワクチンとカスケードは末脚を発揮し他馬を差し返す。他馬は彼らのペースに無理について行ったためか次々と脱落するも、一頭だけ無理をせず控えていたマキバオーに中山の坂の手前で一気に抜き去られてしまう。しかし、ワクチンは必死にマキバオーに食らいつき最後は競り合いとなるも、地を這う走法を編み出したカスケードに差され、2着に終わった。ちなみにマキバオーは3着である。
4歳(1996年)
明けて1996年。アマゴワクチンはクラシック路線の始動戦として共同通信杯(GⅢ)に出走するも、他馬の転倒のあおりを受けたため敗北(この転倒は本レースの勝ち馬のモーリアローの妨害による結果だが気付かれなかったためか審議にはなってない)。加えてレース後骨折が発覚し皐月賞への出走が絶望的となってしまう。それでもワクチンは出走を諦めず、無理を押して皐月賞に出走した。
皐月賞(GⅠ)では朝日杯で対決したミドリマキバオー、カスケードに加え、因縁のモーリアローや船橋所属のサトミアマゾンが出走していた。ワクチンは何とか骨折を克服したものの、馬体重は前走と比べ20キロ減となりオッズも5番人気に甘んじていた。明らかに調整不足であったが、しかしワクチンに負ける気などさらさら無かった。レースでは果敢に大逃げを図り、他の出走馬が「無謀な逃げをしている」と思い込みペースを抑えたところで自身もペースを落とし、スローペースで逃げを図ろうとする。しかし、出走馬も馬鹿ではない。道中でそのことに気付きペースを上げ次々とワクチンを抜き去っていく。ただ一頭、カスケードを除いて…。実はワクチンの策には第二の罠が用意してあった。スローペースだと気付いた他馬がペースを上げると同時に自身もペースを上げることで、ワクチンに追いつけない他馬は追いつくために必要以上のペースを上げスタミナを消耗させることとなったのだ。結果としてカスケード以外の馬はこの策にまんまと嵌り、残り200m付近でワクチン、マキバオー、カスケード、アマゾンの四頭の争いとなった。が、さすがに無理を押して出走したことの限界が来たのか。四頭のうちワクチンは一番先に脱落、それでも勝利を諦めなかったワクチンだったが、鞍上の山中の懇願により、ついにその脚を緩めた。レース後は放牧され、日本ダービーに出走することはなかった。
その後、昨年兄ピーターⅡの最後のレースとなった函館記念(GⅢ)に出走、古馬を相手に突き放し、日本ダービーで激戦を繰り広げたミドリマキバオー、カスケードに見せつけるかのような勝利をあげ、次走の神戸新聞杯(GⅡ)も快勝し、兄の取りこぼした菊花賞へと駒を進めた。
菊花賞(GⅠ)にカスケードは凱旋門賞に挑戦するため出走はしていなかったが、カスケードと同着で日本ダービー馬となったミドリマキバオー、セントライト記念を勝ったサトミアマゾン、青葉賞でミドリマキバオーを破り日本ダービーで3着となったベアナックル、オークス馬スーパースナッズ、夏の上がり馬プレミア、長距離適正はないと思われているモーリアローなど早々たる面子が出走していた。そんな中ワクチンは、兄の叶わなかった夢を彼に託すファンが多かったのか、1番人気で出走した。レースでワクチンは得意の逃げをうたず、なんと後方に控えレースを進めた。出走馬の多くがワクチンをマークする中、先頭ではサトミアマゾンとスーパースナッズついでにベアナックルが先行争いを繰り広げ、第2コーナーを過ぎ、後続集団が向こう正面に入った時点で先頭のアマゾンとの差は15馬身近く開いていた。この状況に業を煮やした他馬はワクチンへのマークを切り上げ次々とペースを上げ先頭に追い付こうとするが、当然これはワクチンの策であった。ワクチンはあえてペースを抑えることでマークしてくる馬をスローペースに押さえつけたのだ。アマゾンらがどんどん差を開いていくことで他馬はアマゾンらを放置し続ける焦りを覚える。かといってワクチンを放置することもできず、途中までアマゾンらを放置し続けワクチンをマークし続けたままレースを進めていたのだ。焦燥と恐怖による精神的動揺は想像以上に彼らのスタミナを浪費していた。マキバオー、プレミア、アローの三頭はこの策に嵌らず精神的動揺は他馬と比べ少なかったもののスタミナの浪費を完全に抑えられたわけではなかった。とはいえ後方からではワクチンの脚では届かないように思われたが、前述の策によってペースを抑えたことでワクチンはスタミナを大幅に温存し、3コーナーの下り坂から一気にスパートし、他馬を次々と抜き去っていった。外を回るも、下り坂を利用した加速で不利を帳消しにし直線に向かい、先頭で競り合うマキバオーとアマゾンを抜き去り先頭に躍り出る。マキバオーは脱落し、アマゾンは必死に食らいつくもワクチンは何とか踏ん張り、三冠レース最後の一冠を制覇。春の無念を乗り越え念願のGⅠタイトルを勝利し、ピーターⅡの無念をも晴らし「三冠」を達成したのであった。
次走の有馬記念(GⅠ)ではカスケード、古馬総大将トゥーカッターに次ぐ3番人気に推されて出走。ファン投票でも14万7119票で4位に推されている(1位は20万1085票のカスケード、ミドリマキバオーは14万7600票で3位となっている)。レースでは先行策を取り、後方のマキバオー、カスケード、トゥーカッターを警戒しながらレースを進める。その後レースは1000m1分1秒3というペースで進むも、第2コーナーから向こう正面に入るところで何とカスケードが一気にスパートをかけ、それに呼応するかのようにワクチンら4歳勢とトゥーカッターもペースを上げていき、直線に入ると第3コーナーで一旦下がったカスケードが一気に追い上げワクチンらを抜き去る。先頭を走るカスケードに必死に追いすがるも、カスケードに並んだのはマキバオー。その後カスケードは後退し順位を下げ、マキバオーは1着でゴール、ワクチンはトゥーカッターと僅差で2着となり、三強としての意地を見せつける形で4歳戦の幕を閉じた。
5歳以降
その後5歳となり古馬となったワクチンはドバイワールドカップ(ドバイで開催されている実在のドバイワールドカップとは別の架空のレース大会)の一つの4000mの長距離走にトゥーカッターと共に出走。急な上り坂や下り坂、芝やダートが繰り返されるという並みの障害戦以上の過酷なレースの中、トゥーカッターの助けもありなんとか4着に滑り込んだ。
帰国後は長期休養を挟んだ後復帰初戦の有馬記念で3着となりその実力が健在であることを示した。明け6歳となると、天皇賞春(GⅠ)を制覇。天皇賞秋(GⅠ)ではミドリマキバオーの半弟であり既にGⅠ6勝をあげていた三冠馬ブリッツの2着と好走するも[1]、有馬記念では世代交代を痛感させられる5着に、7歳の宝塚記念(GⅠ)では6着となり、その後調教中に屈腱炎を患い引退することとなった。
通算戦績14戦7勝。獲得賞金は「5億3854万円くらい」だそうだ。
引退後は種牡馬となり一口1000万のシンジゲートが組まれたが、続編の『たいようのマキバオー』では「マキバオー世代で種牡馬として成功したのはカスケードとプレミアぐらい」と語られていることから種牡馬としては大成しなかったらしく、ピーターⅡは少なくとも2頭のGⅠ級馬を種牡馬として輩出していることが分かっており、兄とは対照的な結果に終わった。加えて『たいようのマキバオーW』でワクチンが既に死亡したことが判明し、「たいよう」「W」でも目立った描写が与えられたミドリマキバオーやカスケード、サトミアマゾンと比べると何とも不遇が目立つ。
関連動画
関連項目
脚注
- *なお、『みどりのマキバオー』の最終話でブリッツはワクチンが天皇賞春を勝った年の宝塚記念を制覇した後、ジャパンカップと有馬記念を2連覇したと語られているが、同じく最終話でワクチンは天皇賞秋で「ブリッツとの大接戦の上惜しくも2着」と語られている。「ブリッツが勝ったのに何故『JCと有馬記念を2連覇』と語られているのか」と疑問に思うが、ブリッツはワクチンと大接戦はしたが勝利したのは別の馬だったのだろうか。
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