アライグマとは、哺乳類の一種である。
概要
哺乳綱食肉目アライグマ科アライグマ属に分類される哺乳類。英語名はRaccoon(ラクーン)。クマと名前がつくが、クマの仲間では無い。どちらかというと見た目はタヌキにそっくりである。タヌキと違い尻尾が縞模様なことで簡単に見分けがつけることができる。
夜行性で木登りや泳ぐのが得意。二本足で立つこともでき、食べ物を洗って食べる姿は非常に愛らしい。
雑食性で何でも食べ、また原産地のアメリカでは砂漠から林地、市街地までどんな場所にも適応しているというタフさを発揮。
性格は凶暴と言われがちだが、それは臆病さからくる警戒心の強さの表れであり、自分から攻撃してくることはまずない。人間の飼育下にいるアライグマがよく噛んでくると言われているのは、大体は人を怖がっているだけで、別に凶暴だから襲ってきているわけではない。
世界名作劇場枠で放送された「あらいぐまラスカル」というテレビアニメが有名だろう。
しかし、日本においては野生化と害獣化が深刻化している。農作物被害や、家屋への侵入、希少動物の捕食などが主に問題になっている。2003年には41都道府県で生息情報が確認されており、特に北海道、神奈川、京都、和歌山などの被害が深刻である。
アライグマってなんで物を洗うの?
という疑問を持つ人は少なからずいると思われる。
野生の動物がそんな潔癖症の人間みたいなことをするのか?と訝しがる人もいるだろう。
実はこれ、洗っているわけではなく、物を触って感触を確かめているだけである。アライグマは視力がそれほど良くなく、こうして水などに手を突っ込んで食べ物をペタペタ触って、それが何であるかを確認しているのだ。
つまり人間が「洗ってるように見えるから」という理由でアライグマという名前が付けられているだけに過ぎない。
そのため、別に水辺でなくても食べられそうなものはとにかくペタペタと触る。とはいえ、今後人間がどれほど歴史を重ねようと、アライグマは綺麗好き、というカリカチュアされたイメージが変わることはないだろう。
ジビエとして
上記のように野生化と害獣化が取りざたされている生物であり、捕獲による駆除の対象となっている。であれば当然出てくるのが「ただ駆除して殺すのはもったいないしなんだか申し訳ない。この動物の肉は食べられるのではないか?」という疑問だろう。いわゆるジビエ(狩猟肉)として有用か?という視点である。
実は、アライグマは原産地であるアメリカでは古くから先住民らの狩猟・捕食対象となっていた(主に毛皮の方が重視されていたようだが、肉も食べられていた)。さらに、アメリカ合衆国が建国されて以後も、大々的にではないにせよ「やや珍しい食べ物」「地方によっては食べられているジビエ」という扱いで食されてきたようだ。もちろん、アメリカにも「カワイイから食べたくない」「何でも食べるしゴミとかも漁るし不潔そうだから食べたくない」という人も多いらしいが。
第30代アメリカ合衆国大統領カルビン・クーリッジの妻グレースは「レベッカ」という名前のアライグマをペットとして飼っていたが、このアライグマも元々はホワイトハウスで開催される感謝祭の食事会での料理にするために贈られた個体だったという。
というわけで食べられるらしいのだが、気になるのが「味は?」という点であろう。
これは、複数の摂食経験者の感想をまとめると「ちゃんと下処理をすると旨味が強くおいしい」「下処理が不十分だと脂に臭みを感じる」という感じらしい。
(以下のリンク先には、解体途中のやや生々しい写真やが掲載されているものもある。苦手な方は閲覧注意)
- 最高のアライグマで作るすき焼きが絶品だったのだ | 野食ハンマープライス
- アライグマが農地を荒らすのでとって食べたらメッチャ美味しかった | 東京でとって食べる生活
- 「食べて減らすのだ!」実は美味しいアライグマ肉 | 新狩猟世界
- 「芸能人格付けチェック」GACKT絶賛で早くも売り切れ…アライグマの肉って美味しいの?|日刊ゲンダイDIGITAL
解体して食肉とする際に、脂をしっかり削ぎ落すことを勧める人もいる。
アライグマを解体するときに、毛とあわせて気をつけておかなければならないのが、脂肪の処理です。冬場のアライグマは、タヌキやアナグマと同様に、身に脂がたっぷりと乗っています。一般的に「脂身は美味しい」という認識がありますが、アライグマのような雑食性の強い動物は脂に臭いが染み込んでいることが多く、さらに脂と肉の間に分泌物を出す管が通っているため、発情期が近いオスアライグマはとても酷い獣臭がします。
そこでアライグマを解体するときは、できるだけ身から脂肪を削ぎ落とすようにし、さらに筋肉と脂肪の間にある筋膜も剥ぎ取るようにしましょう。
(※「食べて減らすのだ!」実は美味しいアライグマ肉 | 新狩猟世界 より引用)
1930年代に出版された有名なアメリカの料理本『Joy of Cooking』の初期の版にも、アライグマ料理についての節があり、そこでも脂を落とす下処理の重要性が強調されている。
この料理本では最終的にはアライグマにサツマイモとアップルドレッシングを詰めてオーブン焼きにしている。だが、その前段階として「体の各所にあるglands(臭腺?)や、外側と内側の全ての脂肪を取り除き、さらに塩水に浸して一晩冷蔵保存したのち、45分湯通しし、小さじ2杯のベーキングパウダーを加えてさらに5分湯通し、それから温水ですすいだ後に、冷たい水に入れてから沸騰させ、弱火に変えて15分煮込む」という、かなり念入りな下処理をしている。
なお、「食べられるし手間をかければ美味しいなら、ちょっと捕ってこよう」と思った方は、法的な問題に注意されたい。アライグマは害獣として駆除対象となっているので、少なくない自治体で「研修会を受けた人ならば、狩猟免許を持っていなくても捕獲することを許可する」という柔軟な制度が施行されている。だが、逆に言えばそういった研修会を受けたか狩猟免許を持っているかのどちらにも該当しない人は、アライグマを勝手に捕獲してはならない。
またアライグマに限らずジビエの調理全般に共通することだが、野生生物であるので寄生虫や病原体を持っている可能性が高いことにも注意。調理に使用した器具はすべてそういった寄生虫の虫卵や病原体に汚染されている可能性が出てくるため、使用後に熱湯消毒する等の衛生対策が必須となる。
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関連項目
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