アロサウルスとは、ジュラ紀に生息していた恐竜の一種である。
名前の意味は「異なるトカゲ」。
概要
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目 | 竜盤目 |
亜目 | 獣脚亜目 |
下目 | テタヌラ下目 |
科 | アロサウルス科 |
属 | アロサウルス属 Allosaurus |
種 | A.フラギリス A. fragilis A.”ジムマドセニ” A. "jimmadseni" A.アトロックス(?) A. atrox(?) A.エウロパエウス(?) A. europaeus(?) A.テンダグレンシス(?) A. tendagurensis(?) |
中生代ジュラ紀後期の北アメリカに生息していた大型の肉食恐竜。かっこいい。
模式種A.フラギリスの他にも何種かいるとされるが、特に断らない限りフラギリス種を指す。かっこいい。
多くの化石が発見された代表的な大型肉食恐竜であり、研究も特に進んでいる。全長は最大9~12m、近縁のエパンテリアスやサウロファガナクスをアロサウルス属に含めるとそれ以上になる。
発見と命名、展示
発見されたのは1877年、アメリカである。発見者はオスニエル・マーシュ。コープとの熾烈な発掘競争の中で発見されたもののひとつである。
1980年頃まではアントロデムスという名で呼ばれることも多かったが、アントロデムスと名付けられた標本が不充分なものであったためこの名は使われなくなった。
「アロサウルス・フラギリス」という学名は「繊細で(他の恐竜と)異なるトカゲ」という意味だが、これは脊椎の軽量化された構造が初めて認識された恐竜であることを意味する。実際には多くの恐竜で脊椎が軽量化されている。
20世紀初頭には全身骨格が知られ、さらに1960年代にはクリーブランド・ロイド発掘地で幼体を含む数十体分もの骨格が発見された。他に全身が知られた大型肉食恐竜がいなかった頃の復元の模範とされていた。
1991年には全身の95%が揃った化石、通称「ビッグ・アル」が発掘され、後の「ビッグ・アル2」と並んで非常に保存状態の良いアロサウルス化石として高い学術的価値がある。ビッグ・アルはやや小柄な若い個体だが全身に傷による感染症の跡が残る満身創痍の状態であった。
日本で初めて全身骨格の展示が行われた恐竜でもある。上野の国立科学博物館に収蔵されているが、実物化石を鉄筋の土台に組んでしまったため、長い間化石を破損することなく古い復元ポーズを改修することができない状態にあった。しかし2011年の恐竜博に合わせて47年ぶりに姿勢が改修され、近代的な姿を披露した。国立科学博物館のリニューアルにより、現在この骨格は気象衛星ひまわりとともに地球史全体を俯瞰するホールの中心に据えられている。
国内では他に福井県立恐竜博物館、豊橋市自然史博物館、大阪市立自然史博物館、北九州市立いのちのたび博物館など多くの博物館で見ることができる。また頭骨のみなら化石・鉱物関係の販売イベント等の出席率も高い。
形態の特徴
かつて獣脚類の分類は大型のカルノサウルス類と小型のコエルロサウルス類に二分するだけだったが、1980年代以降細分・再編が進められてきた。その流れの中では、アロサウルス類はあまり位置が動かなかったほうである。今でもアロサウルス類をカルノサウルス類と呼ぶこともある。
大型肉食恐竜としてほぼ標準的な体型といえる。
頭骨は大きく発達しているが他の大型獣脚類ほどではなく、開口部が大きく軽量化されている。衝撃を吸収する構造になっていて強度は高かったが、噛み締める力自体は強くなかった。扁平で縁の鋭い歯が多数並んでいるため、獲物の体を噛み砕くよりは顎全体を一つの斧や鉈のように使って肉を切り裂いたりえぐり取ったりしたのではないかと言われている。顎の幅は普段は狭いが左右に大きく広げることもでき、一度に多くの肉を飲み込むことができた。
左右の眼窩の前上方には三角形の小さな角が生えており、アロサウルスの外見上最大の特徴である。これは形状に個体差が大きく、また中心に分泌腺が収まっていたと思われる凹みがあった。生前は角質で覆われて若干大きく鋭かったと考えられるが武器としては役に立たず、同種に対するディスプレイや個体識別に用いられたとされる。目は横向きで測距能力は低く、嗅覚は発達していた。
首や胴体、骨盤はやや丈夫な構造をしていたがティラノサウルスなどに比べるとしなやかだった。鳥類と同じ呼吸補助器官である気嚢が発達していたと考えられ、近縁のアエロステオンには特にはっきり気嚢の格納スペースが見られる。尾は長めだった。
前肢は大型肉食恐竜としては特に発達していた。親指の鉤爪が非常に大きく、狩りや食事の際に獲物の体を押さえつけたのかもしれない。手首は鳥が翼をたたむように左右に向きを変えられた。
後肢は比較的長く、爪はあまり鋭くなかった。特に丈夫な構造ではないが、推定2tになる体を時速30km台で走らせる脚力があったとされる。
推定される生態
クリーブランド・ロイドでの発掘状況から集団で狩りをしたとも言われている。オオカミのように普段から群れで生活していたとは限らないが、複数で行動する場合もあっただろう。
大型の竜脚類を仕留める勇ましいシーンが描かれることが多いが特に餌が手に入りにくい状況でない限りそのような危険は冒さず、自分より大きくない相手や衰弱した相手を捕えたと思われる。
また大型竜脚類の群れについて行って脱落者が出るまでひたすら待っていたという説や、大型竜脚類から一回の食事分の肉を削り取ることさえできれば殺すことまでせず竜脚類も死にはしなかったのではないか、という説まである。数トンもある生物が多く含まれる生態系について推測するのは難しい。
尾椎や肩甲骨にステゴサウルスの尾の棘がぴったりとはまるような穴が開いた化石も見つかっており、ステゴサウルスから反撃を受けた証拠とされる。
同時代、同地域にはケラトサウルスやトルヴォサウルスといった中型~大型獣脚類が他にも生息していた。アロサウルスは氾濫原で集団生活をし、小型で珍しいケラトサウルスは森林で単独生活、丈夫なトルヴォサウルスは腐肉を主に食べていたのではないかといわれる。
そのほかのテタヌラ類(コエルロサウルス類を除く)
トルヴォサウルス
分類:メガロサウルス上科メガロサウルス科 全長:10m 時代:ジュラ紀後期 地域:北米
最初に発見された恐竜の一つメガロサウルスの近縁種だがこちらのほうが多くのことが判明している。アロサウルスと比べて原始的で、体形は頑丈なものだった。特に顎と歯がより太長く、アロサウルスと違って骨まで噛み砕くことができたと考えられる。
スピノサウルス
分類:メガロサウルス上科スピノサウルス科 全長:18m(?) 時代:白亜紀前期 地域:アフリカ北部(エジプト、モロッコ)
最大の獣脚類。存在自体は早期から知られていたが見つかっていた標本が少なかったうえに空襲で失われ、体形が判明したのは近縁種が見つかったここ20年ほどのことである。最大の特徴は高さ1.8mにもなる大きな背鰭で、他にもワニに似た細長い吻部や丈夫な前肢など独特なスタイル。魚食性とされ、近縁のバリオニクスの腹からも消化しかかった魚の鱗が見つかっている。
モノロフォサウルス
分類:アロサウルス科 全長5m 時代:ジュラ紀中期 地域:中国
アロサウルス類の中でも早いうちに現れたもので、体形はアロサウルスとよく似ていた。しかし頭骨の幅はかなり狭く、また鼻筋に沿って前後に長いトサカがあった。トサカの中は中空で鼻道につながっていた。
フクイラプトル
分類:アロサウルス上科 全長4.8m(亜成体) 時代:白亜紀前期 地域:日本(アジア東部)
福井県で発見された。全体的にアロサウルスによく似ていたと考えられるが前肢は細く、後肢もより長い。脊椎の棘突起(背筋にあたる部分)がやや高く伸びた、中国で見つかったジュラ紀後期のヤンチュアノサウルスやシンラプトルにも似た姿に復元されている。それらより一段進化したメガラプトルやアウストラロヴェナトルに近縁とも言われる。
コンカヴェナトル
分類:アロサウルス上科カルカロドントサウルス科 全長:6m 時代:白亜紀前期 地域:ヨーロッパ(スペイン)
腰の前と後ろにとがった形をした小さな背鰭があった。生前は二つの間が埋められていたとされることが多い。また腕には羽毛の土台になるでっぱりが見つかっており、鳥類にそれほど近縁でないアロサウルス類では画期的な発見である。
アクロカントサウルス
分類:アロサウルス上科カルカロドントサウルス科 全長12m 時代:白亜紀前期 地域:北米
ティラノサウルスに迫る大型獣脚類。前肢は体の大きさに比べアロサウルスのように発達していない。棘突起はフクイラプトルやヤンチュアノサウルス以上に発達して目立つ背鰭となっていた。竜脚類プレウロコエルスを追跡していたことが足跡化石から判明している。
カルカロドントサウルス
分類:アロサウルス上科カルカロドントサウルス科 全長13m 時代:白亜紀前期 地域:アフリカ北部
ティラノサウルスと同等の大型獣脚類。こちらも空襲で化石が失われていた。名前(サメの歯のトカゲ、またはホオジロザメトカゲ)のとおりサメのような鋭い歯の縁には特徴的な波状の鋸歯があった。白亜紀後期の南米には近縁のギガノトサウルスやマプサウルスが生息していた。
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スピノサウルス。このようにアロサウルスの角同様、帆の部分に派手な模様を施す復元も多い。
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関連項目
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