『オリエント急行殺人事件』または『オリエント急行の殺人』(原題:Murder on the Orient Express)とは、アガサ・クリスティの長編推理小説である。1934年発表。
エルキュール・ポアロシリーズの長編第8作。
ストーリー
ポアロはシリアの仕事を終え、イスタンブールからイギリスへの帰国のためオリエント急行に乗車した。
そこでサミュエル・ラチェットとという人物と知り合う。
彼は自分が脅迫を受けているということを伝えて事件解決を依頼する。しかしサミュエルは態度が悪くポアロは興味を持てず断るのだった。
それから列車は雪の吹き溜まりにより立ち往生してしまう。
そんな中、サミュエルが個室内で12か所を刺されためった刺しの死体となって発見される。
サミュエルの近くには「デイジー・アームストロング」と書かれた紙があった。
ポアロは列車が動き出すまでの暇つぶしと称して事件の解決に挑む。
容疑者は、国籍も人種も全く違う、同じ車両に乗り合わせた乗客たちだった。
しかし次第に事件との関係性、そして過去に起きた残酷な事件が浮かび上がってくる……
概要
『そして誰もいなくなった』『アクロイド殺し』と並ぶ、クリスティの代表作。
そして『アクロイド殺し』やエドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』、『ポートピア連続殺人事件』と並び、世界で最も犯人をネタバレされやすいミステリー作品のひとつである。
何しろ本作のミステリーとしての核心はたった一言で説明できてしまう。その極めてシンプルかつインパクト絶大のトリックはあまりにも有名で、ミステリー作品に多少でも興味があれば知らずにいる方が難しい。本作の犯人を知らずに読める人は非常に幸運なので、もしこの記事を見ている人にそんな人が居たら知ってしまう前に読むことを強く推奨する。
ミステリー小説のオールタイムベストランキングなどでも昔から上位の常連であり、たとえば2012年の「東西ミステリーベスト100」では海外編の11位にランクインしている。
作中で事件に深く関わる「アームストロング事件」は、チャールズ・リンドバーグの息子が誘拐された事件が下敷き。
日本語訳は2024年現在、早川書房のクリスティー文庫(山本やよい訳)、東京創元社の創元推理文庫(長沼弘毅訳)、KADOKAWAの角川文庫(田内志文訳)、光文社の光文社古典新訳文庫(安原和見訳)の4種類が入手可能。タイトルはハヤカワと創元が『オリエント急行の殺人』、角川と光文社が『オリエント急行殺人事件』表記。書店で見比べて、読みやすい訳を選ぶといいだろう。
また児童向けでも、偕成社文庫(茅野美ど里訳)、講談社青い鳥文庫(花上かつみ訳)、ポプラポケット文庫(神鳥統夫訳)、ハヤカワ・ジュニア・ミステリ(山本やよい訳)の4種類が入手可能(ハヤカワはクリスティー文庫と同一)。
豪華列車という華やかな舞台に加え、作品の性質上思いっきり豪華キャストを揃えるのに向いているため、1974年と2017年に2度にわたってアメリカで映画化されており、どちらもヒットしている。
また、日本でも2015年に三谷幸喜脚本で、舞台を昭和初期の日本に翻案したテレビドラマが放送された。
原作のポアロに最も近いと評されるデヴィッド・スーシェ版のドラマ『名探偵ポワロ』では最終シリーズの一つ前にあたる第12シリーズの通算第64話として放映、本国イギリスでは2010年のクリスマスに放送されており、シリーズ中の目玉として90分のスペシャル版として放送されている。日本では遅れること2年の2012年2月7日に放送。
冒頭や結末部分に独自のアレンジが施されており、これが次の最終シリーズにて、全エピソードの完結編である第70話「カーテン~ポワロ最後の事件~」への伏線となっていた。
なお、ポアロの吹替を担当した熊倉一雄は全シリーズのベストにこのオリエント急行の殺人を挙げていた。また、デアゴスティーニ版DVDでは、49巻目に収録されている。吹替声優は全く異なるので、Fixの熊倉版との違いを楽しんでみたいのなら、興味のある人は揃えてみるのもいいかもしれない。
登場人物
- エルキュール・ポアロ
- おなじみベルギー人の私立探偵。灰色の脳細胞。
- ブーク
- ベルギー人。国際寝台車会社の重役で、ポアロの知人。ポアロに1号室を譲り、事件解決を依頼する。
- メアリ・デブナム
- 11号室の乗客。イギリス人。家庭教師をしていたという聡明そうな女性。
- アーバスノット大佐
- 15号室の乗客。イギリス人の軍人。
- サミュエル・ラチェット
- 2号室の乗客。アメリカ人。ポアロに護衛を依頼するが態度の悪さで不興を買って断られ、その後殺害される。
- ヘクター・マックィーン
- 6号室の乗客。アメリカ人。ラチェットの秘書。
- エドワード・マスターマン
- 4号室の乗客。イギリス人。ラチェットの召使い。
- ハバード夫人
- 3号室の乗客。アメリカ人。おしゃべりな中年女性。
- コンスタンティン
- 医師。ギリシャ人。ラチェットの検死を担当する。
- ドラゴミロフ公爵夫人
- 14号室の乗客。ロシアからの亡命貴族の老婦人。
- ヒルデガルデ・シュミット
- 8号室の乗客。公爵夫人のメイド。
- アンドレニ伯爵
- 13号室の乗客。ハンガリー人。
- アンドレニ伯爵夫人
- 12号室の乗客。ハンガリー人。伯爵の若く美人な妻。
- サイラス・ハードマン
- 16号室の乗客。アメリカ人の私立探偵。
- グレタ・オールソン
- 10号室の乗客。スウェーデン人の婦人。
- アントーニオ・フォスカレッリ
- 5号室の乗客。イタリア人のセールスマン。
- ピエール・ミシェル
- 車掌。フランス人。ラチェットの死体の第一発見者。
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関連項目
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