『スター・ウォーズ 崩壊の序曲』(Star Wars: The Approaching Storm)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説である。
「レジェンズ」作品群に属する。単巻。著者はアラン・ディーン・フォスター。
なお、当記事における人名・役職名など固有名詞の日本語表記は、原則的に本書邦訳に基づく。
概要
時期は映画『エピソード2/クローンの攻撃』の直前、地域対立をきっかけに銀河共和国からの離脱を審議する田舎の惑星アンシオンを舞台に、大きな商機を期待して離脱工作に奔る銀河の財界人たちの暗躍と、離脱が共和国分裂のきっかけとなることを危惧するジェダイの奮闘を描く小説作品。
2002年の『エピソード2』公開を控え、クローン戦争の序章として前作『エピソード1』とをつなぐブリッジ・ノベルとして刊行された。著者アラン・ディーン・フォスターは『エピソード4/新たなる希望』ノベライズ(ジョージ・ルーカス名義)とSW最初のスピンオフ小説『侵略の惑星』の作家で、SW小説には24年ぶりのカムバックとなった。
強力な戦闘力を持ちながらあくまで交渉者たるを本分とする、クローン戦争以前の平和の守護者ジェダイの任務を描いており、オビ=ワン・ケノービをはじめとする熟練のジェダイが隠し持つ多彩な能力を存分に見ることができる作品となっている。バリス・オフィーの初登場作でもある。
原著は長編小説単巻(ハードカバー)で2002年刊行(翌年にペーパーバックでも刊行)。邦訳は同年にハードカバー単巻でソニー・マガジンズより出版され、日本語訳は酒井昭伸。邦訳表紙イラストはスティーブン・D・アンダーソンによる原著表紙イラストを用いている。
ストーリー
原住種族が都市住民と遊牧民にわかれ対立している弱小惑星、アンシオン。都市民たちは銀河共和国が定める遊牧民の権利保護撤廃を求め、共和国からの脱退を審議していた。だがアンシオンは偶然にも複雑な惑星間同盟関係の集中点、多くの惑星が追随しかねない。そして共和国の複雑で面倒な規則を嫌う銀河財界の大物たちは、まさにアンシオンから脱退の大雪崩がはじまることをを望んでいたのだ。
対立を調停すべく、ジェダイ騎士団はルミナーラ・アンドゥリとバリス・オフィー、オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーという二組の師弟をアンシオンに送った。彼らは謎の襲撃に遭いながらも、都市住民と遊牧民アルワリの双方が譲歩する妥協案を示し、アルワリも同意するならば、という了解をとりつけるが、銀河の財界人の手先である地元の大物ソアーグ・ザ・ハットの様々な妨害に直面する。
だがジェダイたちは、ソアーグが放つあの手この手の妨害を退け、アルワリのはぐれ者を味方につけると、遊牧民の暮らす草原へと飛び出した。遠からず迫った脱退の決議までに、彼らアルワリの同意を取り付けねばならないのだ。だがアンシオンの草原は広大で厳しい場所、一行は危険な肉食動物や自然の猛威、遊牧民の独特の風習といった障害に直面することとなる……。
【以下、後半はネタバレ回避のため格納】
巨大な騎獣ス―バタールの鞍上で草原を旅するジェダイ一行は、アルワリのなかでも大きな権威を持つ古豪族ボロキイ族を探し求める。彼らが妥協に同意すれば、アルワリのほとんどが従うだろう。旅の中で一行は、アンシオンの危険な自然をくぐり抜け、草原に暮らす遊牧民と交流を持ち、ソアーグから妨害を請け負った商人氏族クルーン族の手を危うく逃れて、ついにボロキイ族のもとへとたどりついた。
伝統にもとづき提示された試練をルミナーラが達成すると、ボロキイ族はジェダイを信用し、都市住民との妥協案を受け入れた。彼らは不倶戴天の古豪族ジャヌール族との抗争を終わらせる手助けをせよという条件をつきつけたが、戦場に立ったジェダイは両者の武器だけを破壊し、オビ=ワンが両者の会盟をとりつけた。ジェダイは遊牧民の二大部族からの信頼を得ることに成功したのだ。
焦るソアーグの策謀で前倒しされた決議が迫るなか、都市へと急ぎとって返す一行。もはやなりふり構わぬ妨害を払い除けるのは、揃って護衛に送られたボロキイ・ジャヌール両古豪族の戦士たち。駆けつけた審議の場で、アンシオン都市国家連合はジェダイの調停案を受け入れ、共和国残留を決めた。だが事件の黒幕にとって、これはただの一時的後退。分離主義の火が燃え上がる日はもう近くへと迫っているのだ。
惑星アンシオン
たえず強い風が惑星中を循環する、辺鄙な草原の惑星。長い腕とたてがみをもつ細身の先住種族アンシオニアンの故郷である。丘陵地帯には小型の近縁種グウランが住むが、彼らは文明化が遅れており、アンシオニアンからは蔑視の対象となっている。
アンシオニアンは長きにわたり、壁に囲まれた諸都市の住民と、部族ごとに草原に暮らす遊牧民アルワリとにわかれ暮らしてきた。両者は数千年のあいだ絶え間なく争っていたが、200アンシオン年前に平和協定が結ばれて後は一応の共存をつづけている。遊牧民は伝統的な生活様式の維持を望んではいるが、都市と遊牧民各部族の間をとりもつ商人氏族も存在し、完全に宇宙文明から取り残されているわけではない。
惑星を代表する政府といえるものは都市国家群のゆるやかな統一体、都市国家連合であり、そこには当然移住してきた異種族を含む都市住民の意向しか反映されていない。しかし銀河共和国はアルワリのような遊牧民に独立自存の権利を保障しており、草原の開発を求める都市住民は反発。停滞した銀河元老院と複雑な官僚機構への疲弊もあって、ついには共和国からの脱退を希望するに至ったのである。
本来アンシオンは銀河の外交問題の俎上に上がることはまずない弱小惑星に過ぎないが、偶然にもマラリアン同盟、カイトゥマイト相互安全保障条約機構といった多数の惑星間盟約関係の集中点にあった。共和国が広がる腐敗とがんじがらめの規則に悩まされているいま、もしアンシオンが脱退を選べば、ここを先途と脱退の大雪崩が起きるだろう。
登場人物
ジェダイの一行
- バリス・オフィー Barriss Offee
- ミリアラン・女性。若きジェダイ・パダワン。
積極的で多才なすぐれた戦士だが、発想が若く無邪気で時に物騒。政治など面倒なことにはてんで興味がない。基本マイペースながら、内心なにかと師ルミナーラを自慢しているのがかわいい。 - ルミナーラ・アンドゥリ Luminara Unduli
- ミリアラン・女性。ジェダイ。バリスの自慢の師。
大胆にして細心、勇敢にして慎重、時に腕利きの交渉者、時に寛容で賢明な教師であるすぐれたジェダイ。使いこなすさまざまな妙技は、一般の人々だけでなくバリスやアナキンをも感嘆させる。 - オビ=ワン・ケノービ Obi-Wan Kenobi
- 人間・男性。ジェダイ。
若いながらに常に冷静で思慮深いジェダイ。フォースに深い理解を示す沈思黙考の人物であり、時に同僚のジェダイでも意表を突かれるような芸当をやってのける。ケノービ隠し芸大会 - アナキン・スカイウォーカー Anakin Skywalker
- 人間・男性。若きジェダイ・パダワン。オビ=ワンの弟子。
熱意にあふれるが未熟で先走りがち。バリスの能力は認めているが、似て非なる性格でいまいちウマが合わない。機械いじりが得意で、アンシオンの草原に溢れる自然は好みではない。 - ブルガン Bulgan / キアクタ Kyakhta
- アンシオニアン・男性。知的異常や精神疾患で部族を追われた、アルワリのはぐれ者コンビ。
ソアーグに雇われジェダイ一行を襲うが、捕えたバリスにフォースで癒されて本来の明晰さを取り戻し、ジェダイに心服。恩返しにと案内役を買って出る。草原の自然と文化に精通している。 - トゥークィ Tooqui
- グウラン・男性。片言で話す。ブルガンやキアクタからは野蛮扱いされる存在。
一族のなかでも勇敢で知的好奇心が強く、単純なようで野生の鋭さがある。丘陵で出会ったバリスをマスターと呼び、広い世の中を知るためジェダイの一行への随行を申し出る。
アンシオンの人々
- ソアーグ・ザ・ハット Soergg the Hutt
- ハット・男性。アンシオンのギャングのボスバン(元締め)。
財界人たちの手先としてアンシオンの脱退を目指す悪漢。部下には容赦のない暴君だが、辺鄙なアンシオンでジェダイの四人組を阻むのは容易ではないと理解する現実的な一面もある。 - オゴムーア Ogomoor
- アンシオニアン・男性。ソアーグのメイジャードモ(執事)。
ソアーグの指示でジェダイの排除に奔走させられる、気の毒な中間管理職。主の怒りを恐れ、あらゆる手管でジェダイ一行の足止めを試みるが、ことごとく失敗するはめになる。 - バイウントゥ Baiuntu
- アンシオニアン・男性。商人氏族クルーン族の族長。
遊牧民と都市住民のあいだに立ち、文明を使いこなしながらも草原を旅して交易で生きる商人氏族の長。気前良くほがらかだが富に忠実な、抜け目のない商人。
銀河の財界人
- モンスール Mousul
- アンシオニアン・男性。アンシオン選出の銀河共和国元老院議員。
当然ながら都市国家連合側の存在であり、シュ・マーイらと手を組んでアンシオンの共和国脱退を目論んでいるが、脱退をめぐる陰謀には不安を隠せずにいる小心者。 - タム・ユーリス Tam Uliss
- 人間(コレリア人)・男性。コレリア人の産業資本家で、銀河の実業界の大物。
シュ・マーイと手を組むひとり。顔が広く財力も圧倒的だが、いささか拙速なところがある。硬直した共和国の官僚機構に悩まされ、アンシオンの脱退がもたらす政治的激変を望み陰謀に加わる。 - シュ・マーイ Shu Mai
- ゴッサム・女性。コマース(交易)・ギルドの会頭。
銀河の財界人を糾合する、アンシオンの陰謀の黒幕。最終的な目的達成のため、勇み足を避け慎重かつ冷徹にことを進めていく。だが実は、彼女自身さえもさらなる黒幕に仕える身である。
関連動画
関連項目
スター・ウォーズ レジェンズの邦訳小説 (作中時系列順) |
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前作 | 本作 | 次作 |
ジェダイ・クエスト (28-25BBY) |
崩壊の序曲 (22BBY) |
エピソード2 クローンの攻撃 (22BBY) |
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