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セマグルチド
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セマグルチド(Semaglutide)とは、2糖尿病肥満症の治療である。糖尿病治療としての販売名オゼンピック®皮下注とリベルサス®錠。肥満症治療としての販売名ウゴービ®皮下注。

概要

有機化合物
セマグルチド
基本情報
英名 Semaglutide
化学 C187H291N45O59
分子量 4,113.58
化合物テンプレート

セマグルチドは、選択的GLP-1受容体作動である。ヒトGLP-1と94%の構造的な相同性を有するGLP-1アナログであり、31個のアミノ酸残基からなる。週1回投与の皮下注製剤(オゼンピック®、ウゴービ®)と1日1回投与の経口剤(リベルサス®)が、ノボノルディスクファーマ株式会社より製造販売されている。

GLP-1グルカゴン様ペプチド-1)とは、腸やで産生されるペプチホルモンである。GLP-1は膵臓のランゲルハンス島β細胞からのインスリン分泌を促して血糖降下作用を示すほか、内容物排出遅延作用や摂食制作用なども示す。

GLP-1受容体作動は、日本では2010年に初めて登場した。GLP-1と同じように血糖降下作用や摂食制作用を示すため、2糖尿病肥満症の治療に用いられる。作用時間の短い内因性GLP-1よりも長く効果を示すよう良されており、1日1回または週1回の投与でよい製剤が多い。グルコース濃度依存的に(≒血糖値の上昇に伴って)効果を示すため、低血糖のリスクも軽減されている。

開発経緯

セマグルチドは、デンマーク王国の製企業ノボノルディスクによって創製された。ノボノルディスク社は2009年日本では2010年)にGLP-1受容体作動リラグルチド(ビクトーザ®)を上しているが、この製剤は毎日皮下注射する必要がある。そこで、アルブミンとの親和性を高めるなどして、さらに分解されにくく良した週1回皮下注製剤オゼンピック®開発され、2018年内での製造販売承認を得た。

セマグルチドなどのGLP-1受容体作動は分子量の大きなペプチド(≒タンパク質)であり、単純に経口投与してもタンパク質分解酵素により分解され、膜をほとんど透過せず吸収されない。そこで、セマグルチドを分解酵素から保護し、膜から吸収されやすくするサルプロザートナトリウムSNAC)を添加した世界初の経口GLP-1受容体作動リベルサス®開発され、日本では2020年に承認された。

GLP-1は中枢における摂食制作用も知られており、海外では肥満症患者の治療や体重管理に応用されている。肥満症患者を対とした際共同治験でセマグルチドの有効性・安全性が示されたため、日本初となる肥満症を適応とするGLP-1受容体作動ウゴービ®も、2023年に承認された。

効能・効果

肥満症でない患者への美容・痩身(ダイエット的での投与は承認されていない。痩せと謳い、高額でGLP-1受容体作動提供する美容クリニックもあるが、経済的利益をめ「医の倫理」に反する行為である点、副作用被害救済制度を受けられなくなる患者の不利益を軽視している点、有限の医薬品・製造リソースを逼迫させ出荷調整の遠因となる(≒本当にを必要とする患者にが届かない)点で問題視されている。

用法・用量

  • オゼンピック®皮下注0.25mg/0.5mg/1.0mg SD - 週1回皮下注射する。1回0.25mgから開始し、4週間投与したのち1回0.5mgに増量する。1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1回1.0mgまで増量できる。
    • オゼンピック®皮下注2mg - 用法用量は同じ。使い切りのSDペンと異なり、針を付け替えて使用する。
  • リベルサス®錠3mg/7mg/14mg - 1日1回起床時に経口投与する。1回3mgから開始し、4週間以上投与したのち1回7mgに増量する。患者の状態に応じて適宜増減する。1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1回14mgに増量できる。用後、少なくとも30分は飲食を避ける。
  • ウゴービ®皮下注0.25mg/0.5mg/1.0mg/1.7mg/2.4mg SD - 週1回皮下注射する。1回0.25mgから開始し、4週間ごとに1回0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgの順に増量し、患者の状態に応じて適宜減量する。

オゼンピック®やウゴービ®は、毎週同じ曜日に投与する。投与し忘れた場合、次の投与まで2日間(48時間)以上あるなら気づいた時点で投与し、その次はあらかじめ定めた曜日に投与する。次の投与まで2日間(48時間)未満であるなら投与せず、あらかじめ定めた曜日に忘れずに1回分を投与する。投与する曜日を変更する場合は、前回の投与から2日間(48時間)ける。

リベルサス®用し忘れた場合、その日は用せず翌日の起床時に忘れずに1回分を用する。錠剤を粉砕したり分割したりせず、1回1錠をそのまま用すること。ちなみに、添加されているSNACの量はどの錠剤も同量(300mg/錠)で、SNACの量とセマグルチドの吸収率は例しせずかえって吸収が低下するため、7mg錠2錠を14mg錠1錠の代用とすることができない。1回14mgに増量となったら、7mg錠が残っていても用しないこと。

作用機序

セマグルチドは、GLP-1受容体作動である。膵臓のランゲルハンス島β細胞上にあるGLP-1受容体に選択的に結合し、ATPからのcAMP産生を促進させ、グルコース濃度依存的にインスリンを分泌させる。分泌されたインスリンは、肝臓筋肉などの細胞表面にあるインスリン受容体に結合し、血中のグルコース細胞内へと取り込ませることで、血糖値を低下させる。

また、GLP-1摂食制作用も有する。GLP-1受容体作動による摂食抑制メカニズムとして、消化管のGLP-1受容体から迷走神経および延髄孤束核を介した作用と、中枢への直接的な作用が考えられる。食欲が抑制され喫食量が減少するため、体重が減少する。

リベルサス®に添加されているSNACは、pH緩衝作用を有し、の低pH環境において錠剤周囲のpHを上昇させる。低pHで活性化するタンパク質分解酵素の作用が抑えられるため、セマグルチドの分解が抑制される。また、セマグルチドをモノマー化する作用や細胞脂質膜を流動化させる作用が確認されており、これらが吸収促進につながっていると考えられる。

禁忌・副作用

GLP-1受容体作動インスリン代替ではない。糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病睡・前睡、1糖尿病の患者は、速やかにインスリン製剤によって治療されるべきである。また、2糖尿病の患者であっても重症感染症の患者や、手術などの緊急の場合においては、インスリン製剤による血糖管理が望ましい。したがって、これらの患者へのGLP-1受容体作動の投与は禁忌である。本剤の成分によって過敏症をきたした患者への投与も禁忌

副作用は、嘔吐、腹痛便秘下痢といった消化器症状が較的多い。GLP-1受容体作動グルコース濃度依存的に作用するため低血糖のリスクが少ないが、低血糖を引き起こす可性はゼロではない。低血糖の初期症状として冷や、動悸、手の震えなどがあるため、そのような症状があればブドウ糖や砂糖を含むジュースを摂取し、必要に応じて医療機関を受診すること。重大な副作用として、急性膵炎の報告もある。急性膵炎は嘔吐やしい腹痛を伴い、重症化すると約10%が死に至るため、そのような症状がみられた場合にも医療機関を受診すること。なお、膵炎と診断された患者への再投与は行わない。

同種同効薬・関連薬

GLP-1受容体作動ステム幹)は、ペプチドを意味する“-tide”である。さらに、アメリカドクトカゲが分泌するエキセンディン-4に由来する“-enatide”系、GLP受容体作動を意味する“-glutide”系に細分化される。GLP-1受容体作動2023年10月時点で10種類(皮下注射剤9剤+経口剤1剤)が上されており、GIP受容体にも作用する二重作動の製剤や長時間作用インスリンアナログとの配合剤もある。

GLP-1に関連した糖尿病治療として、ビルダグプチン(エクア®)、リナグプチン(トラゼンタ®)などのDPP-4阻がある。GLP-1分解する酵素であるDPP-4(ジペプチジルプチダーゼ-4)を阻することで、内因性GLP-1による血糖降下作用を示す。GLP-1受容体作動DPP-4阻は、併せてインクレチン関連と呼ばれる。

非ペプチド系・低分子量のGLP-1受容体作動として、ダヌグリプロン、ロチグリプロン、オルフォルグリプロンがある。もし、これら低分子量のGLP-1受容体作動が実用化されるならば、リベルサス®と異なり食後投与可な経口剤となる可性がある。ただし、ロチグリプロンの開発は中止された。

肥満症治療として、マジドール(サノレックス®)、オルリスタット(アライ®)などがある。オルリスタットは腸管からの脂肪酸の吸収を抑制するリパーゼ阻で、一般用医薬品・要医薬品として薬局ドラッグストア処方箋なしに購入可食事運動善と併行して、1日3回内する。

GLP-2受容体作動として、テデュグルチド(レベスティ®)がある。腸管の大量切除や生まれつき腸管が短いことに起因する、短腸症候群の治療に用いられる。GLP-2グルカゴン様ペプチド-2)は、腸管膜の増殖栄養分の吸収促進に寄与している。

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