ダンジグまたはダンツィヒまたはダンシグ(英:Danzig)とは、1977年産のアメリカ合衆国の競走馬・種牡馬である。鹿毛の牡馬。アメリカでの発音は[dænsɪg](ダンシグ)が近いらしい。
ノーザンダンサーの後継種牡馬として、Sadler's WellsやNijinskyと並ぶ大成功を収めた傑物であり、ノーザンダンサーの最良後継種牡馬と書かれている資料が多いようである。
名前の由来はドイツ帝国領時代のポーランド・グダニスク市の旧名Danzig。
概要
父 Northern Dancer(ノーザンダンサー)
母 Pas de Nom(パドノム) 母父 Admiral's Voyage(アドミラルズヴォヤージ)
父Northern Dancerは言わずと知れた世界レベルの大種牡馬。種付け料は全盛期では100万ドルともそれ以上ともいわれていた。ダンジグはその14年目の産駒である。
母Pas de Nomは名無しという意味だが、5歳まで走って42戦9勝、2着8回という名牝。
母父Admiral's Voyageは52戦して12勝、2着10回とこちらもタフに走った競走馬である。
ダンジグは体高が15.3ハンド(約155cm)と小柄な馬だった。ある意味父に似たといえる。
デビュー前から膝に剥離骨折をもっていて不安を抱えていたが、その状態で2歳6月に未勝利戦(5.5ハロン)に出走すると、8馬身半差をつけて勝利した。
ダンジグの驚異的な競走能力を確認した陣営は手術を受けさせ、足への負担の少ないプール調教をさせた。
復帰は3歳5月と時間がかかったが、2戦目のアローワンス(6ハロン)に出走すると7馬身差で圧勝した。
2週間後のアローワンス(7ハロン)では単勝1.1倍に支持され、これでも競馬場が赤字になる配当だったが、5馬身3/4差で勝利した。
そのあと脚部不安が再発して獣医師の検査を受けたが「もしもう一度レースをさせたらこの馬の命がない」と宣告され、引退することになった。
現役時代はこのわずか3戦3勝。重賞はおろかステークス競走にも出走することなく、底を見せぬまま引退した。
種牡馬入りするとその天性のスピードを遺憾なく伝え、初年度からノーフォークS、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルなどを勝利し最優秀2歳牡馬に選出されるChief's Crownを出し、その後もDanzig Connection、Green Desert、Danehill(*デインヒル)、Shaadi(*シャーディー)、Dayjur、Adjudicating(*アジュディケーティング)……他にも数多の名馬・名種牡馬を輩出し北米リーディングサイアーを二回獲得するなど大暴れ、芝ダート国の違いを問わず大活躍した。
日本では孫以降に活躍馬が多く、ファインモーションやエアエミネム、シンコウフォレスト、アジュディミツオーらがおり、*アジュディケーティングが地方リーディングを何回も獲得し、孫のChief Bearhart(*チーフベアハート)が渋い条件で走る味のある産駒を多数輩出するなど本当に万能の血統である。ただし直仔は軽すぎるスピードのせいかSadler's Wellsほどではないにしても期待ほど成功せず、GI馬は故障で大成できなかったヤマニンパラダイスしか出せなかった。その日本におけるスピード馬の代表的な例であるのがアグネスワールドで、日本のスプリントでさえフルの実力を発揮できず中央競馬のGIは2着が最高で、代わりに遠征先の英仏のスプリントGIで2勝する快挙を達成した。他で日本で活躍した直仔としてはビコーペガサスやマグナーテンがいる。
唯一の欠点はあまり距離が持たないことだったが、Chief's Crown、Green Desertらの子孫からは凱旋門賞や英ダービーを勝つような産駒も多数出ており、挙句の果てに*デインヒルからは4000m級のGⅠを複数回勝利したステイヤーWesternerまで出るなど、本当に不得手な条件が見当たらなくなりつつあり軽さを身に付けつつあるサドラーズウェルズ系とは逆に重厚さを身に付けつつある。
参考までに近年の代表的子孫を挙げると
- Ouija Board、Sea The Stars、Golden Horn - 父Cape Cross・曽祖父
- Rock of Gibraltar(*ロックオブジブラルタル)、Duke of Marmalade - 父*デインヒル・祖父
- Lost in the Fog - 父Lost Soldier・祖父
- Big Brown - 父Boundary・祖父
- Goldikova - 父Anabaa・祖父
- Rail Link、Harbinger(*ハービンジャー) - 父Dansili・曽祖父
とまあ、近年の子孫だけでもお腹いっぱいになりそうである。
母の父としても優れたスピードを伝える働きをしており、日本だけでも*グラスワンダー・ビリーヴ・ニシノフラワー・スターリングローズ・ハギノリアルキングらいろんな傾向の産駒を活躍させている。もはや世界の馬産においてダンジグの血を全く不要にする環境はあり得ないのではなかろうか。
2004年シーズンをもって種牡馬を引退して功労馬となり、2006年に老衰のため29歳で永眠。2004年生まれのHard Spun(*ハードスパン)がアメリカの三冠戦線でStreet Sense(*ストリートセンス)やCurlinと激戦を繰り広げるなど、息の長い種牡馬であった。
血統表
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic 1954 黒鹿毛 |
Nearco | Pharos |
Nogara | |||
Lady Angela | Hyperion | ||
Sister Sarah | |||
Natalma 1957 鹿毛 |
Native Dancer | Polynesian | |
Geisha | |||
Almahmoud | Mahmoud | ||
Arbitrator | |||
Pas de Nom 1968 黒鹿毛 FNo.7-a |
Admiral's Voyage 1959 黒鹿毛 |
Crafty Admiral | Fighting Fox |
Admiral's Lady | |||
Olympia Lou | Olympia | ||
Louisiana Lou | |||
Petitioner 1952 鹿毛 |
Petition | Fair Trial | |
Art Paper | |||
Steady Aim | Felstead | ||
Quick Arrow |
関連動画
子孫の走りをご堪能あれ。
関連項目
Danzig 1977
|Chief's Crown 1982
||*チーフベアハート 1993
|||メルシーエイタイム 2002
|||ビービーガルダン 2004
|Green Desert 1983
||Cape Cross 1994
|||Ouija Board 2001
|||Sea The Stars 2006
|||| Sea The Moon 2011
||||| Fantastic Moon 2020
||||*フクム 2017
||||Baaeed 2018
|||*ベーカバド 2007
||||サバノミッソーニ 2018
|||Golden Horn 2012
||*デザートストーリー 1994
|||レッドゾーン 2004
||メジロダーリング 1996
||Invincible Spirit 1997
|||I Am Invincible 2004
||||Imperatriz 2018
|||Kingman 2011
||||*シュネルマイスター 2018
||Oasis Dream 2000
|||Native Trail 2019
|*デインヒル 1986 →デインヒルの記事参照
|Polish Precedent 1986
||*ピルサドスキー 1992
|*アジュディケーティング 1987
||アジュディミツオー 2001
|Dance Smartly 1988
|Boundary 1990
||*サーガノヴェル 1999
|Lost Soldier 1990
||Lost in the Fog 2002
|*ビコーペガサス 1991
|Anabaa 1992
||Goldikova 2005
|*ヤマニンパラダイス 1992
|Langfuhr 1992
||*アポロケンタッキー 2012
|*アグネスワールド 1995
|Bianconi 1995
||Nicconi 2005
|||Nature Strip 2014
|War Front 2002
||*デクラレーションオブウォー 2009
|||シランケド 2020
|||トップナイフ 2020
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