ビコーペガサス(Biko Pegasus)とは、日本の元競走馬・種牡馬である。
GIIIを2勝し、短距離戦線の名脇役ないし善戦マンとして現役を知るファンには知られていたが、20年以上も経ってから思わぬところで爆発的に知名度が上がるという数奇な運命を辿る。
主な勝ち鞍
1994年:京成杯(GIII)
1995年:セントウルステークス(GIII)
この記事では実在の競走馬について記述しています。 この馬を元にした『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するキャラクターについては 「ビコーペガサス(ウマ娘)」を参照してください。 |
概要
1991年2月8日生まれ。生産者はアメリカのRobert Steven Stablesで、冠名「ビコー」[1]の(有)レジェンドに売却された。スプリンターなのであまり気にされないが、いわゆる「マル外」である。
父はアメリカの大種牡馬Danzig、母は英国ヨークシャーオークス馬Condessaとかなりの良血。
(以降、活躍時期に合わせて年齢は旧表記とします)
3~4歳 快進撃の始まり(そして終わり)
1993年のデビュー戦から3連勝。3勝目の京成杯(GIII)で初重賞制覇を飾る。この時2着に破った相手はかのヒシアマゾンであり、彼女ものちにクリスタルカップで伝説の追い込みで圧勝する女傑であった。
次のニュージーランドトロフィー4歳ステークス(GII)は2着に終わるが、中日スポーツ賞4歳ステークス(当時はGIII)で2着と短距離・マイル戦線の善戦マンとして早くから名乗りを上げる。
1994年はスワンステークス7着、マイルチャンピオンシップ5着と振るわないものの、スプリンターズステークスで2着と大健闘…どころではない。1994年である。1着馬は引退レース時のサクラバクシンオーである。しかも、1分07秒8というタイムは前年のサクラバクシンオー(1分07秒9)を上回っていた。 4馬身差ちぎられたのはサクラバクシンオーがそれをも上回るタイム(1分07秒1)で駆け抜けていったためであり、相手が悪かったといえるだけの価値ある2着といえる。
5歳~ ビコーペガサスちっちゃすぎ…でもなかった
1995年には武豊を鞍上にセントウルステークス(当時はGIII)を1着。これが最後の勝利となった。
あとはちらほら2着3着が続く善戦マンとして、1998年まで長く短距離・マイル戦線を戦い抜いた…で並の短距離馬なら記事が終わるのだが、本馬はセントウルステークスの次々走、2着に終わった1995年スプリンターズステークスが語られる。なぜなら、1着はとある事情で有名なヒシアケボノ。向こうの馬体重が当時のJRA最高馬体重560kgに対し、こちらは432kgと短距離馬にしてはかなりの小柄。1と1/4馬身差ということもあって当時のゴール写真にはよく一緒に写っており、その馬体差がよく話題になっていた。
しかしながら、この小ささは「ヒシアケボノに比べれば」であって、同じレースにはさらに馬体重の小さいコクトジュリアン(418kg)が出走している[2]。ニコニコ大百科でもちっちゃすぎネタはメロディーレーンに取られ、ビコーペガサスは「ビコーペガサスちっちゃすぎ」の記事すら作られていない。
なお、同じ短距離馬ということで2頭はその後も揃って出走することが多く、90年代を代表する凸凹コンビとして人気を博した。
注:これ以降出てくる「高松宮杯」は、すべて中京・芝 1200m GIである。2000mではない。理由はレースの記事参照。
レース | 格付 | 馬場/距離 | ペガサス | アケボノ | 1着馬 |
---|---|---|---|---|---|
1995年 マイルCS | GI | 芝 1600m | 4 | 3 | トロットサンダー |
1995年 スプリンターズS | GI | 芝 1200m | 2 | 1 | ヒシアケボノ |
1996年 高松宮杯 | GI | 芝 1200m | 2 | 3 | フラワーパーク |
1996年 安田記念 | GI | 芝 1600m | 5 | 3 | トロットサンダー |
1996年 スワンS | GII | 芝 1400m | 2 | 11 | スギノハヤカゼ |
1996年 マイルCS | GI | 芝 1600m | 9 | 15 | ジェニュイン |
1996年 スプリンターズS | GI | 芝 1200m | 7 | 4 | フラワーパーク |
1997年 シルクロードS | GIII | 芝 1200m | 2 | 15 | エイシンバーリン |
1997年 高松宮杯 | GI | 芝 1200m | 10 | 14 | シンコウキング |
1997年 安田記念 | GI | 芝 1600m | 6 | 8 | タイキブリザード |
1997年フェブラリーステークス
ダートも少しだけ走っている。新馬戦とさざんか賞(500万下)は当時の短距離馬なら定番、1995年栗東ステークスも出せそうならいけるローテだが、1997年にGIに昇格したばかりのフェブラリーステークスにも果敢に挑戦。初代王者シンコウウインディの前に4着と健闘を果たした。特に、最後の直線は泥田んぼ並の不良馬場であるにもかかわらず第4コーナーからじわじわと順位を上げていき、掲示板圏内まで突っ込むという負けて尚強しの競馬を見せた。
その次走、シルクロードステークス(GIII)が最後の掲示板となったが、高松宮杯に安田記念にと出られる短距離GIには大体出走し、1998年の安田記念で13着に終わったのを最後に、つまりはタイキシャトルの「大雨の中の無敵」を見届けて引退した。
総評
筋肉質な方が有利とされる短距離馬でかなりの小柄、さらに追い込み馬という珍しい脚質を持ち、勝ったレースの「通過」の欄を見ると「なんじゃこりゃー!」と思うぐらい後方から突っ込んでいる。京成杯は8頭立てで6-6-4だからまだマシだが、セントウルステークスなど11-9である。1400mでよく追い込めたものである。
一方、距離が短すぎて「追い込めなかった」レースも多く、これがミスター掲示板となった主な理由という説が有力である。GIIIではそこそこ通用したがGIでは難しかったようだ。
当時の短距離馬の常として、出られる重賞には片っ端から出ており、短距離・マイル重賞戦線ではよく見ることができた。そのため名前は割と有名であったようである。
また、(クリスタルカップ前とはいえ)ヒシアマゾンを差し切ったことは本馬の戦いの中では最も高く評価されている。そのうえ、三冠馬ナリタブライアンに先着という珍記録を持っている。なぜ珍なのかといえば、ブライアンの方がなぜか短距離の高松宮杯に出走してきたからである。
一方、(ヒシアケボノとの対比以外で)何か目立った特徴があるわけでもなく、当時の競馬ファンに「ビコーペガサスってどんな馬?」と聞いても「名前はよく見たけどどんな馬だったっけ…?」という声が返ってくるのが常である。
『東スポ』が『ウマ娘』の元ネタ競走馬の記事を特集しており、これが当時を知ることのできる可能性が最も高い記事であった。とはいえ、ビコーペガサス回はやはりというかヒシアケボノとペアで一つの記事であった(下記「関連リンク」参照)。
総獲得賞金3億5785万円。「ビコー」の馬の中では最も多く稼いでおり、1歳上の先輩である2位のビコーアルファー(なんと重賞未勝利で3億736万円)と共に馬主孝行な馬であった。
引退後
2006年に種牡馬を引退。北海道新ひだか町のローリングエッグスクラブステーブルで余生を過ごす。
2019年5月末頃から筋肉のコントロールが難しくなり、同年6月11日、フレグモーネからの敗血症により死去[3]。28歳の大往生だった。
ウマ娘 プリティーダービー
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/uma_musu/status/860325977313783808
競走馬を女の子に擬人化するメディアミックスプロジェクト。本作により、若い層にもビコーペガサスの名が広く知れ渡ることになる。
当初名前は発表されず、クイズ形式で行われた。衣装に(原案では一本線やスカートだけだが)勝負服の紫が使われ、背中に羽が生えていることから、絵だけでもビコーペガサスであることはかなり早くから的中させる競馬ファンが多かった。同時に「え、ビコーペガサスまで出てくるの!?」と驚きをもって迎えられたのも確かである。
アニメ1期より前の59頭のうち、ウマ娘化したGI未勝利馬は4頭だが、他はハルウララ・ナイスネイチャ・ユキノビジンと別の理由で人気のあった馬であり、ビコーペガサスはこの中ではかなり渋いチョイスといえる(その後、アニメ2期に併せてチームカノープスが登場し、名脇役ポジションがもう少し増える)。
本作は元の競走馬をよく取材してキャラデザが行われているが、なぜか本馬は「ヒーロー好き」という設定になっている。作中で別のペガサスっぽいポーズを披露するので「ペガサス」の名前に引っかけただけのキャラ付けかと思いきや、「毎度今ひとつのところで勝ちきれなかった馬がヒーローに憧れる」という設定には思うところのある競馬ファンもいるらしい。今後「彼女」が育成実装されたり、他のストーリーで掘り下げられることがあれば印象が変わる可能性もある。
史実でも人気だったヒシアケボノとの名コンビは健在。というよりもコンビを組ませる予定で採用した可能性がある。
血統表
Danzig 1977 鹿毛 |
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic | Nearco |
Lady Angela | |||
Natalma | Native Dancer | ||
Almahmoud | |||
Pas de Nom 1968 黒鹿毛 |
Admiral's Voyage | Crafty Admiral | |
Olympia Lou | |||
Petitioner | Petition | ||
Steady Aim | |||
Condessa 1978 栗毛 FNo.5-h |
Condorcet 1972 鹿毛 |
Luthier | Klairon |
Flute Enchantee | |||
Pan American | Pan | ||
Visibility Good | |||
Varinessa 1970 鹿毛 |
Varano | Darius | |
Varna | |||
Silken Princess | Arctic Prince | ||
Silken Slipper | |||
競走馬の4代血統表 |
半妹Condescendanceの曾孫に2023年の牝馬三冠馬リバティアイランドがいる。
関連動画
関連静画
※暫定的にウマ娘の方を貼っておきますが、実馬を見つけたら差し替えてください。
関連項目
- 競馬
- 競走馬の一覧
- 1994年クラシック世代
- サクラバクシンオー
- ヒシアケボノ
- マチカネイワシミズ - 同様に、ゲーム(ダービースタリオン)のおかげで知名度を上げた馬
- ブロードアピール - 後輩のダート・短距離・追い込み馬
関連リンク
脚注
- *「ゼンノ」の大迫忍氏も使うことがあるが、それとは別物。
- *なお、コクトジュリアンがここまで小さいのはこの競走までで、その後はビコーペガサスと同程度まで増量している。
- *つまり人間で言えば寝たきりになり床ずれから細菌感染。寝返りを打てない馬ではこうなると時間の問題。
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