『俺たちのフィールド』とは、『週刊少年サンデー』に連載されていたサッカー漫画である。通称は「俺フィー」。作者は村枝賢一。コミックス全34巻+外伝1巻、文庫版は全19巻が発行されている。
概要
Jリーグ開幕直前の1992年に連載が開始され、フランスW杯後の1998年まで連載が続けられた。
物語は、主人公高杉和也がサッカー選手の父に憧れる小学校時代、父を事故で失いサッカーを止めていたものの再びサッカーを始める高校時代、過酷な環境に揉まれ最大のライバルと出会うアルゼンチン留学時代、社会人チームのヤマキに入りナビスコ杯優勝を目指すJリーグ加盟編、Jでのリーグ優勝を目指すJリーグ編、代表予備軍として海外遠征に出るリザーブ・ドッグズ編、1998年フランスW杯を目指すアジア予選編と進行していくが、現実の日本サッカーの発展、あるいは日本代表の闘いとリンクしており、当時のサッカー熱と相まって非常な盛り上がりを見せた作品である。
登場するキャラの熱い台詞も注目すべき点である。特に後述する、日本代表監督がW杯への想いの丈をぶちまけたシーンは当時のサッカー関係者の心情をよく表していると言われ、単なる「スポーツ」ではなく「戦い」としてのサッカーを描いた本作は高く評価されている。
主な登場人物
- 高杉和也
- 本作の主人公。日本リーグの選手であった父・貫一に憧れサッカーを始めるが、父の死後はサッカーボールに触れることなく高校生となる。紆余曲折あり再びサッカーを始めた後は、その身体能力の高さを生かしたダイナミックなプレイと勝利へのメンタリティで周囲を引っ張る選手となっていく。ポジションはFW、MF、代表ではボランチなど。
当時のサッカー漫画の主人公は、某作品の影響からかほとんどが必殺技持ちであったが、和也は華麗なテクニックや必殺技と呼べるものを全く持っていない。が、「無尽蔵の体力」「爆発的シュート力」「スロースターター体質」「完璧なフィジカル」と、いささか地味ではあるが、しかし現実で考えた場合サッカー選手としては超高水準の能力を持っている。全サッカー漫画から選手を選びベストイレブンを作るような場合、その有用性からほぼ確実に選ばれるため、「漫画界最強のサッカー選手」と言われることもある。
ちなみに、『サカつく2002』では各種サッカー漫画の登場人物たちが特殊エディット選手として登録されており、利き足や出身などを合わせることでゲームに登場させることが出来るのだが、高杉の能力はかなり高く設定されており、別のサッカー漫画から登場する椎名燿、大空翼、ナトゥレーザなどと同等の能力を持っている。 - 森口愛子
- ヒロイン。幼馴染であり、和也や拓馬と高校まで一緒であった。子供の頃から和也のことが好きで、小学生時代は同じチームでプレイしていたものの、次第に世界に目を向ける和也を見守り陰ながら応援するという位置づけとなる。大学在学中にピッチレポーターのバイトを始め、アジア予選の頃には多くのサポーターに知られることになる。最終予選のさなか、日本代表の絶体絶命のピンチの場面、周囲が絶望に包まれる中で絶対に諦めずに応援する姿は感動のシーンである。
- 騎場拓馬
- 大阪から越してきた後、和也と同じチームに加入する。その後高校→ヤマキと、和也と同じチームに所属、J開幕後はセレッソ大阪に移籍しライバルとなる。リザーブ・ドッグズにも参加し、フランスW杯の時点では和也が抜けたチームを引っ張るほどに成長する。ポジションはFWで、小学校からずっとテクニシャンのドリブラーであったが、セレッソ時代にFWとしての得点力を磨くため、肉体改造を図り1タッチゴーラーへと変貌する。代表ではゲームメイクもこなす万能選手になっていった。
- 磯野拓郎
- 冬の高校選手権の決勝で和也や拓馬と戦う。その後は和也と共にアルゼンチンに留学、帰国後にヤマキに入り和也・拓馬と共に「三羽ガラス」と呼ばれる。リザーブ・ドッグズにも参加し、スピードとトリッキーなプレイでチャンスを演出する。ポジションは初めFWであったが、その運動量と突破力を買われSBにコンバートされる。
- ダミアン・ロペス
- アルゼンチン留学時代に出会った和也の最強のライバル。全てのプレイにおいて超高水準であり、留学から2年後に再会した時の手合わせではJリーグの中心選手であった和也がまったく相手にされないほどの実力を身に付けていた。
なお、現実の98年W杯ではアルゼンチン代表と対戦するという組み合わせになったため、村枝は本来W杯最終予選までで終了させるはずだった漫画を延長し、ダミアンとの決着を描くことにしたとのこと。
作中のチームなど
- ヤマキ自工→東京バンディッツ
- 和也の父である高杉貫一が所属していた社会人チーム。アルゼンチン留学後の和也が入団する。Jリーグ準加盟チームで当時のJFLに所属していたが、リーグ戦では成績が振るわず、親会社はJリーグ加盟を諦めようとしていた。和也が加入した後、再びJリーグ加盟を目指しナビスコ杯での好成績を狙い戦うことになるが、親会社との軋轢や資金問題、プロアマの契約の問題など様々な問題と直面していくこととなる。Jリーグ入りを果たした後は「東京バンディッツ」と名を変え、堅い守備と速攻を生かしたカウンター型のチームとして戦っていく。
- リザーブ・ドッグズ
- 日本代表のFW伊武剣輔が各チームから集めた若手で構成された代表予備軍であり、いわゆるB代表。「何としても98年W杯に出なければならない」という追いつめられた状況のため、総合強化のA代表とは違い、有望な選手の特徴を最大限に伸ばす個別強化が目的で結成されている。和也も参加し、当初はリザーブ・ドッグズと共に世界中を武者修行の旅で回るものの、A代表の助っ人として一時帰されることになる。
その後、最終予選前の合宿でリザーブ・ドッグズが帰国するが造反、A代表対リザーブ・ドッグズという、真の代表を決める戦いが行われることになる。実はこれも「2つのチームを衝突させ反発させることでテンションの高い代表を作る」という目的で行われていた。
最終的には、両方のチームに参加したことのある和也が2つのチームの融合を図る最大のキーマンとして扱われることになった。
名台詞
物騒なんだよ、ワールドカップはな!!
2002年大会の開催国を…日本は「半分」とはいえ引き受けてしまった。その事にも、大きな責任があるんだぞ!
協会員であるあんたらに、今更ながら教えてやる。
「サッカー」とは…宗教、言語、人種全てを問わず、世界中で理解されている唯一のスポーツだ。
次のフランス大会に出場できなくとも、日本は、2002大会に開催国特権で自動的に出場できる。
それが、どういう事かわかっているか!?
今度の予選に勝ってフランス大会に出場しなければ…「弱き国・ニッポンは金の力でワールドカップに初出場した」――と、世界中から言われるんだぞ!!
第一回ならともかく、60年も続いた大会に「開催国初出場」の記録を残す事は…サッカーを愛する人間にとって――――永久に消える事のない……恥だ!!
それが選手にとってどれほどのプレッシャーか、わかるか!?なりふり構っている場合じゃない!
今度ばかりは、死んでも負けられないんだ!!
あの伊武剣輔はそのためなら――どんな事でもやるだろうよ。そしてそれは……俺も同じだ。
日本代表監督の鹿野周一(モデルは当時の代表監督加茂周)が、リザーブ・ドッグズを「やり過ぎ」だと嘆く協会幹部に向け言い放ったこの台詞は、実際に当時の日本サッカーに関わっていた者の偽らざる気持ちだろう。
大丈夫!勝てるよ!
アジア最終予選対イラン戦、後半で2‐1で負けていたところにロスタイムでPKを取られ、絶体絶命となった時に愛子が代表達に言った言葉。実際の最終予選でも監督が更迭され、絶体絶命の危機にまで追い込まれた状況となった中で、最後までW杯出場を信じ切っていた者がどれくらいいるだろうか。
勝つんだ!!絶対!!行くんだ!!フランスに!!負けるなんていうヤツは試合に出るな!!
代表の先輩である伊武がふと漏らした「負ける」という台詞に激昂し、和也が殴りかかった時のもの。勝利を渇望し、年齢が上の者でも関係なく自己を貫き通すメンタリティは当時の中田英寿を思い起こさせる。
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