多肉植物(サキュレント)とは、乾燥した環境に適応した植物の総称である。
概要
多肉植物とは、葉や茎や根に水分を蓄える性質があり、乾燥に強いのが特徴である。主に多肉植物(サキュレント)・塊根植物(コーデックス)・球根多肉植物(ケープバルブ)が多肉植物のカテゴリに分類されている。日本では江戸時代後期から渡ってきたとされており、歴史は古く和名が付けられている多肉植物も多い。ホームセンターや100円ショップでも購入することができ、多肉植物をメインに取り扱う専門店も存在するようだ。季節の鉢物に売り場を占領されることがしばしばあり、地味なイメージが強かったが近年アジア圏を中心に多肉植物のブームが起きSNSでも多肉植物関連の投稿が増えている。
多肉植物は管理が容易とされているが、普通の観葉植物のような育て方をすると株が弱ってしまうことがあるので注意が必要である。失敗の多くは水や肥料の与えすぎである。水は土が乾いたのを確認してからたっぷりと与える。季節よって水やりの回数を調整する必要があり、休眠期は一切水を与えない方が良い種類がある。また、インテリア目的で室内で栽培されることが多いが、基本的に日光を好むので冬以外は戸外で管理した方が健全な株に育ちやすい。ただし真夏の直射日光で葉焼けを起こすことがあるので遮光ネットなどで調整が必要な場合がある。どうしても室内で育てたい場合はLEDライトを用いることで日照不足を補うことができる。ハオルチアやガステリアなど耐陰性の高い多肉植物を育てることも方法の一つである。
形態の特徴による分類
- 多肉植物(サキュレント)…葉や茎に水分や栄養を蓄える植物で、アロエ・エケベリア・サボテンなど日本でも馴染みのある植物群である。アロエやエケベリアのように肉厚な葉に水分を蓄えるように進化をした植物と、サボテンのように茎に水分を蓄えて、水分の蒸発を防ぐために葉が刺に変化した植物がある。
- 塊根植物(コーデックス)…灌木地帯(巨木が育ちにくい乾燥地)に生息する植物。根元に塊根部を持ち水分や栄養を蓄えるので、葉は多肉質ではない場合がある。大根や里芋にも塊根はあるが、根菜類は塊根が一年しか持たないのに対して、パキポディウムのように何年もかけて塊根部を大きく太らせる植物のことを塊根植物に分類する。しかし、トックリヤシ・ポニーテールノリナ・クワズイモなどは塊根植物には含まれないことがあり定義が曖昧である。
- 球根多肉植物(ケープバルブ)…球根植物のなかでも、南アフリカ共和国ケープ州を中心に乾燥地帯に適応した球根多肉植物を多肉植物に分類する。最近では球根植物の枠組みを超えて南アフリカ共和国が原産の植物の総称にケープバルブが用いられる。多肉植物と管理が似ていることから昔から多肉植物と同じ売り場で販売されることが多かった。個性派ぞろいの植物群で、近年ビザールプランツとしても注目が高まっている。
生育型による分類
- 春秋型…春と秋に生育が活発になる多肉植物。真夏と真冬は生育が止まり休眠する。ベンケイソウ科の植物が多く、ミニ観葉として安価に流通している。寒さに比較的強く育てやすいのが特徴である。
- 夏型…夏に生育が活発になる多肉植物。サボテンやアロエなどが当てはまる。低温が苦手な植物が多いので、冬は暖かい室内で管理が必要。耐暑性が強く日光を好むが日本の日差しでは強すぎる場合がある。
- 冬型…低温を好み夏は休眠する多肉植物。晩夏から冬にかけて生育が活発になるという特徴がある。高温多湿に特に弱いので梅雨の時期は風通しが良く涼しい場所で管理。冬型と書かれているが凍結や霜には弱い。
主な春秋型の多肉植物一覧(一部表記ゆれ・例外あり)
- エケベリア属…バラの花のような美しい姿が特徴。女性からの人気が高くコレクターも多い。品種改良が盛んで寄せ植えの主役になることが多い。主な品種にラウイ・ブラックプリンス・ローラ・桃太郎など。
- グラプトベリア属…エケベリア属とグラプトペタルム属を交配させた園芸種である。グラプトペタルムの丈夫な性質を受け継いでおり育てやすいとされる。主な品種に薄氷・白牡丹・ピンクシフォンなど。
- セデべリア属…エケベリア属とセダム属を交配させた園芸種である。エケベリアよりも葉に厚みがあり、先端がほんのり紅葉するのが特徴とされる。主な品種に樹氷・スノーキャンディ・ブルーエルフなど。
- パキべリア属…エケベリア属とパキフィツム属を交配させた園芸種である。パキフィツムの上品さとエケベリアの美しさを兼ね備える。主な品種に桃美人・霜の朝・煌星美人・シンデレラなど。
- オロスタキス属…蓮華の花を小さくしたような姿をしている。冬に地上部は枯れて休眠し、群生し良く増えるのが特徴。日本にも分布する珍しい多肉植物である。主な品種に子持ち蓮華・爪蓮華・富士など。
- クラッスラ属…形態が豊富で冬型の品種があるので育てる前に確認が必要。花月の和名を持つ金の成る木はクラッスラの仲間である。主な品種に火祭り・玉稚児・神刀・銀揃・ゴーラムなど。
- グラプトペタルム属…暑さにも寒さにも強くとても丈夫で育てやすい。日本で最も普及している多肉植物。グラパラリーフなどの名前で食用としても流通している。主な品種に朧月・だるま秋麗・姫秋麗など。
- コチレドン属…チレコドンと名前が似ており紛らわしい。葉の先端がギザギザしていたり、ひらひらと波打っていたりと形態が豊富で、ベルのようなかわいい花も人気。主な品種に熊童子・福娘・旭波の光など。
- セダム属…ジェリービーンズのような可愛らしい葉が特徴。多肉植物の寄せ植えに用いられることが多く、寒さに強くて丈夫な品種が多い。主な品種に虹の玉・乙女心・ビアホップ・白雪ミセバヤなど。
- センペルビウム属・ジョビバルバ属…高山に自生しており寒さにとても強い。欧米で人気の多肉植物。1度花が咲くと枯れてしまう。主な品種に巻絹・ゴールドナゲット・バニラシフォンなど。
- ダドレア属…地球上の植物の中で最も葉が白くて美しいと評される。流通量は少なくレアな印象。寒さに強い反面高温多湿に弱いとされる。主な品種にグリーニー・クサンチ・仙女盃・銀閃光など。
- パキフィツム属…ふっくらと肉厚で丸みを帯びた葉が特徴。~美人の和名を持つ品種が多く、白い粉をまとい淡いパステルカラーの色合いをしている。主な品種に星美人・月美人・バナナ美人・フライドなど。
- ムラサキベンケイソウ属…セダム属に近い植物。東アジアを中心に分布し、日本でもいくつかは山野草として見ることができる。主な品種にオオベンケイソウ・アオベンケイソウ・ヒダカミセバヤなど。
- ロスラリア属…エケベリアに似ている植物。葉は柔らかく小型で群生しやすい特徴がある。センペルビウムに近縁の属で高山に自生しており寒さに強い。主な品種にプラティフィラ・アトミー・クリサンサなど。
- ガステリア属…分厚い葉と独特な姿形をしており、ハオルチアとは違った魅力がある。斑紋や白や黄色の斑入りの品種が人気だが強光に弱く遮光が必要とされる。主な品種に臥牛・熊笹・ピランシー錦など。
- ハオルチア属…アロエの仲間に近い多肉植物。硬葉系と軟葉系に分かれる。特に宝石のような透き通った葉を持つ軟葉系はマニアに高値で取引される。主な品種に十二の巻・オブツーサ・玉扇・万象など。
- ペペロミア(サダソウ)属…観葉植物としても人気のコショウ科の植物。みずみずしくて艶のある葉が特徴。強光に弱く室内向きの植物である。主な品種にオブツシフォリア・カペラタ・スイカペペなど。
主な夏型の多肉植物一覧(一部表記ゆれ・例外あり)
- サボテン科…サボテン科の植物は多肉植物のなかで最も種類が多い植物なのでサボテンと多肉植物は分けられることが多い。形体の特徴から、コノハサボテン・ウチワサボテン・柱サボテン・玉サボテン・紐サボテン・森林性サボテンに分けられる。主な品種に金鯱・日の出丸・兜丸・緋牡丹錦・翁丸など多数。
- ユーフォルビア属…サボテンと間違えられることが多い多肉植物。刺の根元に針座が無い方がユーフォルビアである。葉や茎を傷つけると有毒の白い樹液が流れるのも見分ける方法である。塊根を持つ品種もありコレクターに人気。主な品種にオベサ・フェロックス・イネルミス・ギラウミニアナ・ゴルゴニスなど。
- リュウゼツラン属…ビザールプランツとして熱狂的な人気を誇るアガベやユッカが属するグループ。ワイルドで無骨な雰囲気があるためロックガーデンとの相性が良く、ドライガーデンの主役として植えられることが多い。主な品種にチタノタ・オテロイ・ホリダ・吉祥天・ユタエンシス・ロストラータなど。
- アデニア属…トケイソウ科の塊根植物。塊根部分の他に葉の形も美しく観賞価値が高い。主な品種にスピノーサ・スティローサ・グロボーサなど。
- アデニウム属…塊根植物のなかでも丈夫で育てやすいとされている。美しい花を咲かせるため、「砂漠のバラ」と呼ばれ親しまれている。主な品種にアラビカム・ドワーフ・オベスムなど。
- オペルクリカリア属…大型で樹木のような姿が特徴のウルシ科の多肉植物。自生地では数が激減しており、成長が遅いため大木は大変高価である。主な品種にパキプス・デカリー・ボレアリスなど。
- ドルステニア属…クワ科の塊根植物。個体差が大きく同じ品種でも様々な形に成長する。主な品種にフォエチダ・ギガス・ラブラニーなど。
- パキポディウム属…ビザールプランツでも大人気の塊根植物。独特な質感と丸みを帯びた姿が魅力的で、男性の愛好家が多い。主な品種にグラキリス・ウィンゾリー・恵比寿大黒錦など。
- ピレナカンサ属…クロタキカズラ科の塊根植物。まん丸でつるんとした塊根部が特徴。主な品種にマルビフォリア・カウラバッサーナなど。
- フォッケア属…ガガイモ科の塊根植物。小さな突起と大根のようなずんぐりとした姿が特徴。主な品種に火星人・カムラ・コマルなど。
- キルタンサス属…ヒガンバナ科の球根多肉植物。成長が遅く栽培が難しいとされている。主な品種にスピラリス・オブリクス・スミシアエなど。
- レデボウリア属…ユリ(キジカクシ)科の球根多肉植物。乾燥に強く丈夫で葉に美しい豹紋が浮かび上がる。主な品種にガルピニー・クリスパ・ソシアリスなど。
- アロエ属…キダチアロエやアロエベラなど薬や食用としても親しまれている植物。刺が多く凶悪な見た目をしているハイブリッドアロエの注目が高まっている。主な品種にアロエ美人・千代田錦・エリナケアなど。
- アローディア属…マダガスカルに生息し、大型で鋭い刺と小判型の葉を展開する。亜竜木という和名を持ち、他の多肉植物とは形態が大きく異なる。主な品種にプロセラ・アルケンデンス・フンベルティなど。
- カランコエ属…頭の良くなる花として流通しており、カラフルな花が人気。花だけでなく葉を観賞する品種も栽培が盛んである。主な品種に子宝弁慶草・月兎耳・胡蝶の舞・デザートローズなど。
- サクララン属…多肉質な葉と星型で芳香のある可愛らしい花を咲かせるガガイモ科の植物。ミニ観葉のラブハートはケリィの葉を葉刺ししたものである。主な品種にカルノサ・ケリィ・コンパクタなど。
- セネキオ属…吊り鉢の定番であるグリーンネックレス(ミドリノスズ)が含まれる。ツル性から塊根植物まで形体は様々。主な品種に白銀竜・ワックスアイビー・マンドラリスカエなど。
- チトセラン属…観葉植物として人気のサンセベリア(トラノオ)が含まれる。乾燥に強く育てやすいのが特徴。主な品種にローレンティ・ゴールデンハニー・スタッキー・サムライドワーフなど。
- フェルニア属・スタぺリア属…サボテンのような棒状の茎からド派手で悪臭を放つ花を咲かせるガガイモ科の珍奇植物。暑さと乾燥に強く育てやすい。主な品種に阿修羅・牛角・ピロサスなど。
- プレクトランサス属…シソ科で多肉質な葉を持ち、ハーブとしても人気の植物。寒さが苦手で、多肉植物のなかでは肥料を好む。主な品種にアロマティカス・シルバーグラス・サルコステムモイデスなど。
主な冬型の多肉植物一覧(一部表記ゆれ・例外あり)
- メセン類…リトープスやコノフィツムが属するグループで、冬型の代表的な多肉植物。岩に擬態するという生態をしており見た目がユニークである。春になると脱皮を行い葉を更新するという植物のなかでもかなり変わった特徴を持つ。主な品種にオリーブ玉・五十鈴玉・オペラローズ・令和の桃太郎など。
- アエオニウム属…垂直に伸びた茎と大きく広がるロゼット状の葉が特徴。アエオニウムとセンペルビウムの交配種であるセンポニウムが登場している。主な品種にスミシー・黒法師・艶日傘など。
- アドロミスクス属…小型でリトープスに似ているがベンケイソウ科の植物。品種により葉に斑紋が入ったり表面が凸凹していたりと見た目が派手である。主な品種にヘレイ・緑の卵・神想曲・楊貴妃の扇など。
- アボニア属…平たい塊根部分から細長い葉を伸ばし、可愛らしい花を咲かせる。小さくても存在感がある植物である。主な品種にクイナリア・アルストニー・パピラケアなど。
- オトンナ属…キク科の低木の塊根植物。セネキオ属とも近縁の植物である。冬にタンポポのような小さくて黄色い花を咲かせる。主な品種にユーフォルビオイデス・ルビーネックレス・クラビフォリアなど。
- チレコドン属…太くてどっしりとした茎から細長い葉と長い刺を展開するベンケイソウ科の塊根植物。成長はとてもゆっくりである。主な品種に万物想・ワリチー・ペアルソニーなど。
- ディオスコレア属…亀の甲羅のような塊根部分から可愛らしいハート型の葉を伸ばす。ビザールプランツでも大人気の植物。主な品種にアフリカ亀甲竜・銀葉亀甲竜・メキシコ亀甲竜など。
- ぺラルゴ二ウム属…フウロソウ科でゼラニウムと近縁の塊根植物。盆栽のような渋い樹形が人気である。主な品種にトリステ・ゼロフィトン・ミラビレ・アルテルナンス・アッペンディクラツムなど。
- モンソニア属…塊根部がタコの足のように枝分かれするのが特徴。小さい葉と刺を展開し、美しい花を咲かせる。主な品種にフラベスケンス・ヘレイ・パターソニーなど。
- アルブカ属…ユリ科の球根多肉植物。葉がクルクルとカールするのが特徴。高温多湿は苦手だが、寒さには比較的強く育てやすいとされる。主な品種にスピラリス・ナマクエンシス・キキタナスなど。
- オーニソガラム属…ユリ科の球根多肉植物。小さな球根が群生するのが特徴。冬型だが暑さにも強い。あえて球根を見せて育てるのが主流。主な品種にサンデルシー・ダビウム・ジュンシフォリウムなど。
- ブーファン属…ヒガンバナ科の球根多肉植物。太閤秀吉とも呼ばれる。大型の球根と球根から左右に波打つ葉を展開するため、見た目のインパクトが大きい。主な品種にディスティチャ・ハエマンソイデスなど。
- ブルビネ属…ユリ科の球根多肉植物。透き通った宝石のような葉が特徴で、一見するとメセン類のような見た目をしている。主な品種にメセンブリアンテモイデス・アルベオラタ・マルガレタエなど。
- ボウイエア属…ユリ科の球根多肉植物。つるんとした球根から細長い茎と葉を展開する。愛好家からは玉ねぎの愛称で親しまれる。主な品種に蒼角殿・キリマンジャリカ・ガリエペンシスなど。
- ラケナリア属…ユリ科の球根多肉植物。ムスカリに似た花を咲かせる。白・赤・黄色・水色・紫とバリエーション豊富。主な品種にビリディフローラ・ムタビリス・トリコフィラなど。
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