機械工学とは、機械作りを中心とした課題解決のための学問体系である。現代の魔術とも言う。
概要
機械工学の目的は、その名のとおり「機械を工学する」ことである。機械の設計、製造、運用が主な対象となる。そのため、工場があれば必要とされる学問である。機械の多様化などの影響により、現代の機械工学は幅広い内容を含んでいる。これらの理由により、就職において「最もつぶしの効く学問」のひとつとされる。だが、学ぶことが多すぎ・・・orz
機械製作の基礎
機械工学は力学を基盤とした学問体系を形成している。そのため、機械作りのおいて最も基礎とされる学問は
- 材料力学 ・・・ 材料の変形や破壊の原理を基にした強度解析、材料試験法などを扱う。
- 機械力学 ・・・ 機械の動きや機構の力学、振動・波動現象、制振法などを扱う。
- 流体力学 ・・・ 気体・液体の流れ、流れの安定性、浮力、揚力、空気抵抗、風車などを扱う。
- 工業熱力学 ・・・ 熱現象、熱・物質移動、熱物性、エンジン、エネルギー資源と燃焼現象などを扱う。
であり、この分野では四大力学と呼ばれる。材料の特性を扱う機械材料学(材料科学)の基礎知識も材料選びには欠かせない。四大力学と機械材料学は分析技術(Analysis)に相当する。機械作りには、機械要素学の知識がまず必要。機械要素とはネジ、軸、軸受け、歯車、バネなどである。種子島に鉄砲が伝来したときに、ネジの知識が無かったために鉄砲の構造が理解できなかった。このように機械要素一つ一つが無視できないくらいすごい。
他にも、統合技術(Synthesis)であり、具体的に機械要素をどう組み合わせるかを考える設計・製図と機構学、材料の加工技術を扱う機械工作法、計測器具の使い方とその原理を扱う計測工学が機械作りの基本である。実際に機械の設計図を書いたり、工作機械にて金属材料を加工して部品や工具を作ったり、計測器具を使って材料や部品の大きさや機能を調べてみたりと体験することも大事。材料の種類によって加工し易さが違ったりするからね。
現代的な機械設計・生産技術
現代において機械系の技術者だけでは機械作りはできない。電気・電子工学や情報工学などの分野との融合も著しい。従って、機械系でもそれらの基礎知識やプログラミングの技術も必要になってきている。もちろん、他分野の専門家との連携も非常に重要になってきている。
- メカトロニクス
- ほとんどの機械は電力駆動や電気制御を用いて高性能化が図るメカトロニクス化が進んでいる。そのおかげで、電気ポットやエアコンの温度設定するだけで、その温度まで加熱(冷却)、維持してくれるようになった。それは温度をセンサーで感知し、その情報を基に設定温度に近づくよう、ヒーターや冷却器に指示・調整を繰り返すことにより、成り立っている。メカトロニクスの延長線上にロボット工学がある。「ロボット」の記事も参照のこと。
- 計算力学
- 流動や振動といった力学的現象のコンピュータ・シミュレーション技術を研究する分野。物理学的に導出された支配方程式をいかに数値解析を用いて解くかを追究する。これのおかげで設計段階で性能評価が可能になり、性能評価実験の回数が減らせてコストを小さくすることができる。現場では解析ソフト(CAD)を使うことがほとんど。しかし、その中身を理解しないままに使い、発熱などのトラブルが増えているとか、なんとか。
- 人間工学
- 機械を快適かつ使い易いようにしたり、また怪我やヒューマンエラーを設計段階から未然に防ごうというものである。そのため、特に五感などの人間の機能や体の構造を調べ機械設計への適用法を研究する。そのため、生理学や解剖学と生体力学、認知心理学から必要な知識を援用することもある。ユニバーサルデザインを扱うのもこの分野。例えば、使いやすいように手の形に合わせて作ったパソコンのマウスなんかがある。
- 生産システム工学
- 生産用機械の配置や作業の進め方などの工程設計を研究し、工場での生産性の向上を目指す生産技術を扱う。トヨタのカンバン方式が有名。経営工学(管理工学)と表裏一体の分野で、人間工学やシミュレーション技術(CAM)も利用する。他にも採算性を検討する経済性工学(管理会計論)といった社会科学的知識も使用したりする。どんなにいい製品つくっても、儲からなければ意味が無いんや。
研究対象と学問体系
現代社会においては、ほぼ全ての「力学的分野」と言える。人々の足である自動車・鉄道・航空機から始め、物流ではトラック・大型船舶・貨物機、建設には建設機械、農作業にも農耕機械、漁業にも漁船や漁具、繊維産業では紡績機械、出版業界でも印刷機械、発電施設だって様々な機械が必要、さらには医療にも医療機器が使用されているなど、機械工学がカバーする分野は極端に広い。機械工学は地味かもしれないが、現代社会は機械で成り立っている。
社会システム、環境、生体も研究対象として広がりをみせている。交通渋滞の解消したいと考えた時、自動車もシステムとして組み込んで解析したりする。資源枯渇や地球温暖化対策も省エネ技術の開発が重要。医療を支援するため、生体シミュレーションを行ったりする。生体の研究は、人間工学やロボット工学などにも還元される。もはや、一つの学問では課題解決が難しい時代、異分野との融合はどんどん進んでいく。
大きな大学だと複数の機械系の学科・専攻を持っていることも少なくない。機械工学科(専攻)、航空・宇宙工学科(専攻)といったような感じである。また、大学によっては改組により電気系などの分野と統合されより幅広く扱う学科・専攻もある。下に学問の分類の一例を示した。・・・全部学べとは言ってないし、学科・専攻によっては学べないものもある。学びたい分野がある場合は要注意。
手法 |
基礎分野 |
応用分野その他 |
関連項目
- 数学 / 物理学 / 化学 / 生物学 / 心理学 / 経営学
- 工学部 / 工学
- 機械 / 自動車 / 鉄道 / 船舶 / 航空機 / ロケット / ロボット / ナノマシン
- 工具・工作機械の一覧
- ニコニコ技術部
- 学問の一覧
外部リンク
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