財政投融資とは、国が租税以外を原資として行う投資と融資のことである。
概要
財政投融資とは、
一言で説明すると国がお金を貸す仕組みのことである。それと投資と融資は別物であり投融資という単語自体が財政投融資を指し示す造語である。
財政投融資は建前上は租税をつかってない、としている。かつては主な原資として年金や郵貯を主財源としていたが現在では国債の一種である財投債を用いている。特殊法人や地方自治体に対して、高速道路・空港建設、学校建設、中小企業の事業資金、国民の住宅建設資金、ひいては景気対策などと銘打って利用してきた。
制度設計としては明治政府の頃からある古いもので、お金の足りない日本国の主計の代わりに融資や投資と銘打って横流しすることで、今ある日本のあまたの設備建設やODA等を可能としてきた。なお郵便貯金が流用されていたのは郵便の父である前島密が当時の大蔵省に融資の管理を任せたからである。
大蔵省が他人のお金を預かるからくりが出来たことにより明治17年(1884年)に大蔵省預金部が創設される。戦前においてはここから戦費や軍艦建造のための出費の不足分を補ったのである。この仕組みは戦後も変わらずに維持され、財政投融資と名称を変えた後は土木建設などの公共事業を主体に融資を行うようになる。
このように長らく重宝されて使われてきた半面、根本的なところで融資・投資先の負担が消えるわけではないため返済に詰まった夕張市が破たんしたり道路公団の債務が40兆円を超えるなど明らかな不具合も露呈していた制度である。小泉元総理の郵政改革の主眼はこの仕組みにあったとされる。
以上のことから、財政投融資は世界の中で生き残るため必要に迫られて日本国政府が組み上げた官僚主体の疑似的金融システム(金貸し)の一種と説明することが出来る。日本を大きな国に育て上げるのに非常に貢献した反面、数多の天下りや無駄遣い、融資先の破綻、保障による国家債務の増大といったマイナス面を改善できず、現在は規模を縮小して運用されている。それに伴い年金や郵貯・簡保からの委託金はなくなっており政府の持ってる株式からの配当益と市中で消化される財投債のみでまかなわれている。
2016年に改正法成立、財政投融資を活用、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じてJR東海に最大で3兆円程度を融資した。これにより最大8年程、リニア中央新幹線の工期を前倒しできる。
財政投融資計画額の推移
1990年 | 27.6兆円 |
1995年 | 40.2兆円 |
2000年 | 37.5兆円 |
2005年 | 17.2兆円 |
2010年 | 18.4兆円 |
2015年 | 14.6兆円 |
2016年 | 13.4兆円 |
2017年 | 15.1兆円 |
上記は毎年新規実施される財政投融資の額面を5年毎に一覧化したものである。一時は40兆円を超えた財政投融資計画額だが急速に規模を縮小している。これは平成13年度(2001年)の財政投融資改革にともなう年金や郵貯などの義務預託の廃止、および原則として特殊法人が財投機関債を発行、独立行政法人自身による長期借入の実施等によるものである。2017年に再び増加しているがこれはリニア中央新幹線への貸付(3兆円)のほか、日本企業によるインフラ海外展開への支援融資(2.4兆円)を積み増したためである。なお、鉄道・運輸機構からのリニアへの貸し付けは2017年7月11日に完了している。
財政融資資金貸付金残高
平成17年度231兆円あった残高だが平成27年5月20日現在では141兆6791億円へと減っている。これは国家資産の圧縮方針に伴い上記の財政投融資計画額が減っていること、財政融資資金貸付金の証券化などにより財政投融資の貸付金を現金化して財投債(国債)の消化などに当てたりしている為である。
財政融資資金の証券化
19年度以降、財政投融資の残高を証券化している。将来の回収金の現金化により財投債を買入消却している。証券化スキームはそこそこ複雑である。
貸付債券を信託会社にまず債権信託する、その後、信託会社にセラー受益権と劣後受益権、優先受益権の三つに分けてもらいセラー受益権と劣後受益権はもう一度、財政融資資金に権利を移動、優先受益権についてのみSPC(特別目的会社)に移動してそのSPCが特定社債を発行、社債発行時に受け取った現金が財政融資資金特会に支払われ最終的には財投債が消化されるという仕組みとなっている。
財政投融資の分類
財政融資
産業投資
NTT、JT、JP(日本郵政)からの配当金、日本政策金融公庫からの国庫納付金などがこの分類で使われる。投資先はレアメタル等の探鉱や開発、ベンチャー支援、そのほかの研究開発などとなっている。
平成27年度の金額は3979億円
政府保証
政策としての保証融資がこの分類である。最近では経済産業省が地熱資源の開発を促進するために財政投融資から2013年から2年で240億円を借りている。運用としてはJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じて開発プロジェクトに対する長期融資の債務保証する形で活用している。
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