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G36とはドイツH&K社が開発、製造販売しているアサルトライフル(シリーズ)である。
概要
西側諸国で標準的な5.56×45mm弾を使用するアサルトライフル。
当初西ドイツ軍(当時)はケースレス弾薬を使用するG11ライフルで7.62mm弾を使用するG3ライフルを更新することにしていたが、G11の開発は難航し、冷戦終結・東西統一に伴って計画そのものがキャンセルされた。そのため、G3を更新する新たなライフルとして開発されたのがG36である。
5.56mm弾を使用するアサルトライフルとしては後発であるが、開発国のドイツ連邦軍以外にも各国の軍隊・法執行機関、特に特殊部隊で採用されている。
ドイツでは2014年に不具合が取り沙汰されて、発注が停止されている(後述)。
G36の後継銃の選定では、ヘーネル社のMK556とヘッケラー&コッホのHK416が競い、最終的にH&KのHK416A8が選定されている。[1]
詳細・スペック
スペック (G36) | |
---|---|
製造 | ドイツ・H&K |
全長 | 999mm 758mm (折り畳み時) |
銃身長 | 480mm |
重量 | 約3600g (約3.6kg) |
機構 | ガスピストン方式 |
口径・弾薬 | 30発 箱型弾倉 5.56mm NATO弾 |
有効射程 | 800m 200 ~ 600m (サイトなし) |
G36は他のNATO諸国ですでに一般化していた5.56mm弾を使用弾薬とし、野心的で複雑に過ぎたG11の反省を生かす形で開発が進められた。
英仏がブルパップ式ライフルを採用する中通常型の弾倉配置を使用したり、従来H&K社がG3アサルトライフルに用いてきたローラー・ロッキングによる遅延ブローバック方式にかえてより一般的なターンボルト式のガス圧作動を採用したことなどにオーソドックスな設計を志向していたことが窺える。
G36の作動方式や全体の構成などは手堅く保守的にまとめられているが、ファイバー強化プラスチックの多用による軽量化、コンポーネントの組み替えによってコンパクト・カービンから分隊支援火器まで発展させられるウェポン・システム化、光学機器の標準搭載など新機軸も多く盛り込まれている。
この銃で最も特徴的なのが、銃の上部分をほぼ覆うような形になっているダットサイト付きキャリングハンドルだが、現在ではやや低めのキャリングハンドルにピカティニー・レールが付いたバージョン「G36-A2」への更新が行われており、ダットサイトはそのピカティニー・レールに載せる仕様のものに変わっている。
不具合
連続射撃をした後に照準器のゼロインが狂うというもので、ドイツ軍がアフガニスタンに派遣された際に兵士たちから不満の声が上がったことで問題がクローズアップされた。ドイツ国防総省は当初「弾薬のジャケットの厚みのバラつきが原因」という調査報告を2014年に提出していたが、ドイツ連邦軍技術研究所が「連続射撃による銃身の加熱が原因である」という結論を出していたことがマスコミの報道により判明。国防総省の報告に疑念が生じ、2014年6月にG36は発注停止となった。専門家は、銃身の放熱能力の不足により銃身基部の砲耳周辺の樹脂が加熱され、そこに衝撃が加わることでゼロ点が狂うのではないかと指摘している。[2]
2015年にドイツ連邦軍技術研究所(WTD19)が改めて「銃本体側に問題がある」と発表し、国防省はその後製造元であるH&K社に対して改善を求めて訴訟を起こした。
このドイツ政府とH&K社を巡る裁判は大スキャンダルとなったが、当のH&K社はそれに対し「納入時の国からの要求仕様を満たしたもので、通常使用であれば不具合は起こらない」「フルオートで発砲すればどの銃だって弾丸はバラける」として反論、否定している。
2016年に司法側は「国からの要求仕様に対して性能を満たしたものであったこと。軍のトライアルに合格していること。そもそも問題があったのなら改善要求もせずに同じ仕様で調達を続けていた政府は何をやってたの。」とH&K社に非は無いと、政府側の訴状を棄却している。ただし、判決では熱問題や命中率の低下が起きないとは言及していないことに注意が必要である。
元々ドイツ国内か、せいぜいがヨーロッパ内での使用が前提とされていた為に悪環境下での検証が不十分であったことが不幸であったとも言える。連続射撃時の問題は過酷なテストを行うはずのトライアルで気付きそうなものだとは思うが。
主な派生型
- G36E
- 輸出用バージョン。オリジナルの等倍サイトと三倍スコープが省略され、1.5倍スコープのみになっている。
- MG36
- 大容量ドラムマガジン、放熱を考慮したハンドガード、二脚を装備した分隊支援火器バージョン(現在は廃番)。
- G36K
- 短縮型カービンタイプ。Kは「Kurz(短い)」から。
- G36C
- Kよりもさらに短縮化[3]されたコンパクトカービン。室内でのCQB用にサブマシンガンに代えて採用されるケースが増えている。
- SL-8
- 民間向けセミオートバージョン。ピストルグリップを廃しサムホールつきストックを採用している。
関連動画
ゲーム
関連項目
脚注
- *ドイツ軍の次期小銃でHKに敗れたヘーネルは全てのアサルトライフルを破壊しなければならない 2023.1.4
- *H&K 社の「G36」自動小銃の命中精度下落問題「弾薬ではなく自動小銃側に問題」と国防総省が結論 2015.4.6
- *標準型とK型、C型の簡単な見分け方はハンドガードの放熱口の数である。順に6個、4個、2個。
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