HK416とは、ドイツのヘックラー&コッホ社(H&K社)によって開発された突撃銃(アサルトライフル)である。
概要
M16ライフルの特殊部隊向けカービンとして、1994年にアメリカ軍に制式採用されて以来、高い評価を得たM4カービン。しかし2000年代に入り、諸々の事情(戦争形態の変化・国家戦略の変更など)からM16並びにM4の配備状況を見直し、これらに代わる次期主力小銃の選定が始まった。
アメリカ軍は各メーカーに新型銃の開発を要求すると共に、既存のM4の改修計画の一環として、イギリス軍のL85を改修した実績のあるH&K社に対し、M4の改造・改良を依頼した。そして返ってきたのがこのHK416である。
なお、当初は「HKM4」という名称だったが、M4の製造元であるコルト社からクレームがつき、現名称になったという経緯がある。
だが、米陸軍のM4更新計画は最終的に選定結果を出さず、既存のM4の微改修のみに留めるという形で終了してしまった[1]。既に確立されきったアメリカ軍のM16系兵站システムを一新してまで採用する価値が、どの候補にもなかったのである。XM8がいい線いってたらしいけど、アメリカの政治事情で潰れたというのもあるが。
結局、HK416は米軍の一部特殊部隊で採用されるに留まったが、その他の国では新正式小銃として盛んに採用されつつある。本国ドイツ軍ではG36に代わる新小銃となったほか、ノルウェー軍やフランス軍での次期主力小銃に決定するなど、好調なセールスを記録している。
特徴・スペック
HK416 (14.5インチ) | M4カービン | |
---|---|---|
全長 | 804~900mmmm (ストック伸縮可) |
850.9mm (ストック伸縮可) |
銃身長 | 368.3mm | 368.3mm |
重量 | 3.0~3.7kg | 2.6~3.4kg |
発射機構 | ガスピストン方式 (ショートストローク) |
DI方式 |
弾薬 | 30発 5.56mm x 45 NATO弾 |
30発 5.56mm x 45 NATO弾 |
有効射程 | 約450m | 約500m |
トータルのサイズはM4カービンとほとんど変わらない。ストックはM4から引き続き伸縮式になっているためサイズを自分で調整でき、使用者の体格に合わせた運用を可能にしている。
アメリカ軍で制式化されているマウントレールシステム「ピカティニーレール」を標準搭載としており、M4やM16シリーズで使っていたオプションパーツをそのまま流用できる。また、カスタマイズなしのM4では機関部までしかなかったレールがハンドガード部まで伸ばされているため、作戦内容に応じたパーツ変更をM4以上に柔軟に行えるようになった。現在ではM4と同じく、様々なモジュラーレール規格に対応したハンドガードも登場している
M4からの大きな変更点の一つとして、作動機構をDI式(リュングマン式)からガスピストン式に変更したことが挙げられる。
DI式は発射時の燃焼ガスをガスチューブを介して直接ボルト・キャリアに吹き付けてボルト・グループを作動させる方式。部品点数が少ないので作動時の重心のブレが少ないという利点があるが、高温高圧の燃焼ガスを作動部に吹き付けるので、汚れによる作動不良を起こしやすく、部品の寿命も短い。HK416ではG36と同じショートストローク・ピストン式を採用することで、操作方法はM4と変わらないまま作動の信頼性と耐久性を向上させている[2]。
ただし、HK社が公開したHK416の耐久テストは(この手のテストではよくあることではあるが)結果がいい方に盛られていたらしく、実際の運用においてはM4とそんなに差がないとする意見もある。
バリエーション
銃身長 | 全長 | 重量 | その他 | |
---|---|---|---|---|
HK416C | 9インチ(228mm) | 560~690mm | 3.09kg | 最短再軽量モデル。その分信頼性に 難があり、現在は生産終了 |
D10RS | 10インチ(264mm) | 686~796mm | 3.27kg | |
D14.5RS | 14.5インチ(368mm) | 804~900mm | 3.74kg | |
D16.5RS | 16.5インチ(419mm) | 855~951mm | 3.81kg | |
D20RS | 20インチ(505mm) | 941~1037mm | 4.10kg | 一番長い・一番重い |
MR556 | 16.5インチ(419mm) | 861~957mm | 3.90kg | 民間用モデル。セミオートのみ |
モデルごとにバレルの長さと重量が違うほかは「使用弾薬:5.56mm×45 NATO弾 / 装弾数:(STANAGで)30発 / 動作機構:ガスピストン方式」とすべて共通の仕様となっている。
また、民間用モデルは「MR556」となっており、バレルの長さが16.5インチとなっている。
成功の秘訣
単純に性能、信頼性、耐久性を大きく向上したアサルトライフルであれば、MASADAやFN-SCAR、XM8など多数のライバルが存在している。ではHK416が現状で、M4カービンの更新・代替装備としてトップを走っているのはなぜか。
それは先述した通り、米軍M4でも使用されているレイルシステム、アクセサリをほぼそのまま流用できること。原型がM4カービンであり、装備更新に際して教育しやすいこと、潜在顧客層であるM4カービンユーザーが非常に多いことなどが挙げられる。
現在M16系列を使用している国においては、単純な性能改善だけではなく「今ある使用感を余り変えずに、装備を更新できる」し、米軍やNATOとの協力を重視する国では、そちらに装備形態を合わせやすくする更新候補として挙がってくるのだ。
HK417
米軍のアフガニスタンやイラクにおける作戦において、殺傷力や射程に優れる7.62mmNATO弾が再評価されたため、HK416にも7.62mm弾に対応した「HK417」が平行して開発されている。
こちらは軍、警察の特殊部隊が用いる他、軍の一般部隊におけるDMR(マークスマンライフル)として運用される。本邦ドイツ軍では民生用のMR308A1に搭載された高精度バレルを逆輸入した「G28」が採用されている。
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関連項目
脚注
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