M4カービン(Model 4 Carbine)とは、コルト社がアメリカ特殊作戦軍(通称:SOCOM)の要請を受け、M16A2を基に開発したカービンモデルである。現在では、コルト社の純製は元より、他社で生産された「M4クローン」と呼ばれるものまで、M16のカービンモデル全般に用いられている。
世界中の軍、警察機関で使用されており、民間分野でも最も人気のあるアサルトライフルの1つである。
概要
「カービン(英:Carbine)」とは、本来、騎兵が馬上で扱うことを考慮して全長を切り詰めた小銃のことで、現代ではもっぱらアサルトライフルの全長を短縮した「アサルトカービン」のことを指す。小型で持ち運びやすく、取り回しが良い反面、反動・マズルブラスト・発射音が激しくなったり、命中精度が落ちたりという欠点も持ち合わせている。
「M4カービン」は1942年にアメリカ軍が採用したM1カービンから続く4番目の制式採用カービンを意味しており、それまでのM1カービン、M2カービン、M3カービン(これらは全て同じ銃のバリエーション)が1973年に軍から退役して実に25年後の1998年にアメリカ軍に採用された。
現在ではM4のオリジナルであるM16に代わる標準ライフルとして、全ての米軍で採用されている。
開発までの経緯
M4カービンを始めとするM16カービンの始まりは、半世紀前のベトナム戦争にまで遡る。
全ての始まり ~CAR-15 サブマシンガン~
ベトナム戦争中、色々あって主力小銃が7.62×51mm NATO弾を用いるバトルライフルの「M14」に代わって、5.56×45mm NATO弾を用いるアサルトライフルの「M16」に更新された。(詳細はM16の項を参照のこと。)
アーマーライト社が開発したM16は、プラスチックやアルミなどの軽合金を多用し、それまでの7.62×51 NATO弾より小さく軽い5.56×45mm NATO弾を採用したことにより、M14などの従来型ライフルより大幅に軽量することが出来た。M14に比べて射程距離は短くなったものの、軽量で短くなった全長によりジャングルでの取り回しはM14よりも優れており、現場の歩兵からは非常に喜ばれた。
しかし、特殊部隊や指揮官、工兵・砲兵・通信兵などの技能兵、車両や航空機の乗員からは、より小型で取り回しやすいカービン銃が求められていた。
アーマーライト社からM16の製造権を買い取ったコルト社ではこれを見越して、M16A1を切り詰めたカービンモデル「CAR-15 サブマシンガン(M607)」を開発していた。M607は米軍特殊部隊によりテストされたものの、銃身を半分近くにまで切り詰めたうえフラッシュハイダーは元のM16A1から変更されなかったため、銃声、マズルフラッシュ、反動が酷く、おせじにも扱い易いとは言い難かった。
また、銃身を切り詰めたせいで命中精度も低下しており、ストックも現在のM4で使用されているテレスコピックストックではなく、単にM16の固定ストックの根元を伸縮できるようにしただけのものであり耐久性が低かったため、結局試験運用に留まり、制式採用されることはなかった。
余談だが、その昔東京マルイが「CAR-15」の名前で販売していた電動ガンのモデルはコレである。
M16系カービンの始祖 ~XM177/GAU-5シリーズ~
派生プロトモデルについては別記事があるのでこちらも参照。 → XM177
これらM607で判明した問題点を改善したのが「CAR-15コマンドー(M609/610)」である。M609/610では大型のフラッシュハイダーを採用し、ストックも従来の樹脂製ストックから、新設計の簡素な金属製テレスコピックストックを採用しており、扱いやすさが改善されている。
M609/610は、陸軍に「XM177E1」、空軍に「GAU-5/A」として仮採用され、前線部隊に配備されていった。のちに小改良を施した「M629/649」が開発され、陸軍で「XM177E2」として仮採用、空軍では「GAU-5A/A」として制式採用した。銃身を切り詰めたことで、射程と命中精度が低下したものの配備された前線部隊での評価は上々だったようである。陸軍のXM177は前線部隊で広く使用されたが、最後まで正式採用されず、「X」の名前は外されなかった。
M16系カービンの地位確立 ~M727/733~
1982年、アメリカ陸軍は老朽化したM16A1を更新する為、大幅に改修を加えた「M16A2」を制式採用した。
コルト社は、M16A2をもとに新たなカービンモデル「M723/725」を開発。さっそくアメリカ特殊作戦軍に提出したが、実際に運用してみた兵士の評価は散々だった。当時、M16用に開発されていたアドオングレネードランチャー「M203」を装着することが出来なかったからである。そのため軍からの発注も少数に留まった。
同時期、コルト社にはアラブ首長国連邦(通称:UAE)から「M16A2を基にM203を装着できるように改良を加えたモデル作ってよ!」という注文を受け、新型カービンライフル「M727/733」を開発した。これらのモデルは発注元であるUAEの首都から「アブダビ・カービン」と呼ばれた。
M727/733は、それまでのM16系カービンの集大成ともいえる存在であり、比較的高い性能を有していた。そのため、ブラックホーク・ダウンで描かれた「ソマリア・モガディシオの戦い」や「パナマ侵攻」など、1980~90代に米国が関わった紛争・戦争において特殊部隊が好んで使用した。
M16系カービンの頂点 ~M4カービン~
アメリカ軍では、特殊部隊にM727/733の配備を進めると共に、新型カービンの開発に着手。M727を基にして各種改良を加えた「M4カービン」を開発した。
それまでM16系の象徴とも言える存在だったレシーバー上部のキャリングハンドル(持ち手)を着脱式にし、代わりにレシーバー上部に各種アクセサリーを装着できる20mmマウントレールを設け、ストックに強化リブを追加するなど細かな部分で改良が加えられている。また、特徴の1つでもある14.5インチのバレル長は、XM177以来のM16系カービンの運用ノウハウから割り出されたもので、火力・命中精度と取り回しやすさを両立する最適なバレル長とされている。
ただし、M16より短くなった銃身は過熱が早いという問題も指摘されている。それを考慮した上でもその完成度の高さから、陸海空軍各特殊部隊に広く配備され、遂には一般部隊での全面採用に至った。なお、海兵隊では他3軍のM4配備後もM16を標準採用していたが、現在では主力ライフルとなっている。
スペック・特徴
| スペック | |
|---|---|
| 全長 | 850.9mm |
| 重量 | 3.4kg (マガジンなし) |
| 銃身長 | 370mm |
| 機構 | リュングマン方式 (ダイレクト・インピンジメント) |
| 口径・弾薬 | 5.56mm NATO弾 装弾数は30発 |
| 有効射程 | 500m |
5.56×45mm NATO弾を使用し、発射速度は700-900発/分、装弾数は基本的に30発。
M16A2からの変更点として、伸縮式ストック(銃床)を標準搭載している。これにより固定ストックだったM16とは違って、使用者自身がストックを自分の体格に合わせた長さに調整できるようになった。
また、銃身が短くなったことでより狭い場所での戦闘もできるようになった(近年の銃撃戦での有効射程について研究されたところ、「あれ?もしかして今よりさらに短距離でも問題ないんじゃね?」という結果が出たことも銃身が短くなった要因の一つとなっている)。
また、ストックや銃身に加えて、それまでキャリングハンドルだった部分にパーツを別途追加するためのマウントレール「ピカティニー・レール」が装備されており、光学照準器やレーザーサイト、グレネードランチャー(M203)など装着可能になっている。そのためカスタムパーツが豊富である(それを反映してかM16の更新版であるA4の方でもキャリングハンドル部分がマウントレールに変わっている)
日本では、サバイバルゲームなどで使って遊ぶ遊戯銃(エアソフトガン)として東京マルイやウェスタンアームズなど数社からM4シリーズが販売されており、エアソフトガンの中では一番人気でバリエーションやカスタムパーツが豊富に用意されている。
モデル・派生
| M4 | セレクターがセミ/バーストになっているモデル。 |
| M4A1 | セレクターがセミ/フルオートになっているモデル。 |
| M4 MWS | ハンドガード部分にアクセサリーを装備するためにピカティニー・レールを持つMWS(Moduler Weapon System)を装備したもの。ナイツ社製レイルシステムRIS(Rail Interface System)を組み込むことがほとんどである。 また、米軍の教範ではM4にRISを装着した物がM4 MWSとされ、特殊作戦群などでは通常のM4よりこちらが使われていることがほとんどである。試験時にはM4 E2とも呼ばれている。 |
| M4 CQB-R | M4に近接戦闘用のClose Quarters Battle Receiver(近接戦闘用レシーバー)を組み込んだもの。バレル長が10.3インチに短縮されており、米軍各特殊部隊で使用されている。 ナイツ社のRISとLMT社のバックアップサイトが標準搭載されており、短銃身用にナイツ社のQDフラッシュハイダーも装備している。また、CQB‐Rにはブロック1、1.5、2などのバージョンが確認されている。 |
| H&K HK416 | H&K社が開発したM4の近代化改良型。当初は「HKM4」の名称だったが、コルト社からクレームが入って現名称となった。 作動方式をDI式からショートストロークピストン式に変更、ハンドガードに20mmピカティニー・レールを標準搭載するなど、拡張性や作動の確実性などを向上させている。 本銃はアメリカ陸軍から提出されたM4の改修依頼に基づく製品であり、次期正式採用小銃までの繋ぎとして採用される予定であったが、計画自体が予算不足などの事情で調達中止になり、またM4を大規模改修する必要性も認められず、一部の特殊部隊に少数配備されるに留まった。海兵隊では16インチバレルのモデルに小改修を加えた「M27」が分隊支援火器として採用されている。 |
登場作品
| Call of Duty 4: Modern Warfare (コールオブデューティ4:モダンウォーフェア) |
FPS | ゲームシナリオ内で使用する機会が多い。 威力は低いが癖が無く、反動も小さく扱いやすい。アタッチメントも豊富。 |
| Counter Strike (カウンターストライク) |
FPS | 威力は低いが反動が小さい、サイレンサーが装備可能 |
| Grand Theft Auto (グランド・セフト・オート)シリーズ |
アドベンチャー | 1986年や1992年にはM4は存在しない筈だが、軍の人間が何故か所持している、ちなみに仮にあったとしても軍の制式採用年は1994年である。 |
| Special Force (スペシャルフォース) |
FPS | 威力は小さいが反動が小さい、金メッキ塗装を施したM4が期間限定で販売された(性能は同じ) |
| Sudden Attack (サドンアタック) |
FPS | 命中率も良く、反動も小さいのでヘッドショットに自信が有る人向けの武器 |
| メタルギアソリッドシリーズ | アクション | 2ではレーザーサイトを装備したM4が登場、4ではM4 CUSTOMと言う名称で登場し、自由にカスタムパーツを装着できる |
| アンチャーテッドシリーズ | アクション | シリーズ3作目に当たる「砂漠に眠るアトランティス」以外のシリーズ全てに登場。 本編では序盤に手に入るAK47の完全上位互換として中盤~終盤にかけて活躍する。 マルチプレイではAK47に比べ反動や命中率の点で劣り、威力や連射性能で勝る位置付けになっている。 |
映画・ドラマ
| 24 -TWENTY FOUR- | ドラマ | シリーズ全編に登場 |
| アイ・アム・レジェンド | 映画 | ライトとスコープとレイルシステムを装着したM4が登場、ネビルが護身用として所持 |
| トランスフォーマー(実写版) | 映画 | ダットサイトとM203を装備したM4が登場、米軍の兵士が所持 |
関連動画
関連項目
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- 0pt

