Satoshi Nakamotoとは、暗号通貨「Bitcoin」(ビットコイン)の最初の開発者であり、おそらく最初の採掘者、そして最初の送信者である。
Bitcoinやひいてはそれに続いた多数の暗号通貨、さらには様々に応用されるブロックチェーン技術の始祖とも言える存在だが、その正体は一切不明。
概要
Bitcoinは、2008年10月31日に暗号理論に関するメーリングリスト内で「Satoshi Nakamoto」によって発表された論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」[1]に基づいて開発された。
2009年1月3日には最初のBitcoin(「block #0」とか「genesis block」などと呼ばれることもある)が初めて採掘された。Bitcoinは採掘や取引の記録を遡ることができるため、その記録が現在でも確認できる
。
その5日後の1月8日には同じメーリングリスト内で「Satoshi Nakamoto」よりBitcoinのリリースが告げられた。リリースよりも採掘が先なので、つまり1月3日の最初の採掘は「Satoshi Nakamoto」による試し掘りであった可能性が高い。(あるいは、Satoshi Nakamotoにリリース前にBitcoinを試用させてもらった何者か、という可能性もあるが)
さらに1月12日には最初の他者への送信
が行われており、これは「Satoshi Nakamoto」からの10BTCの送信だった。相手はPGP社に所属する暗号技術者でサイファーパンク活動家でもあった「Hal Finney」で、上記メーリングリスト内で早期から「Satoshi Nakamoto」と活発な議論を行った人物でもある。
「Satoshi Nakamoto」は初期にはBitcoinの共同開発に参加していたが、2010年には他の開発メンバーにBitcoin公式サイト「bitcoin.org」のドメインを含む様々な権利を譲り渡して連絡を絶った。その後は2014年3月に数年ぶりに一度だけ短いメッセージを投稿したのみで、2018年2月現在では数年間音信不通となっている。しかしBitcoinはオープンソースであるため他の開発メンバーがその後もプロジェクトを引き継いで開発は続けられている。
Bitcoinの、ひいては暗号通貨のコミュニティからは「始祖」的な人物として尊重され、時には崇敬のような感情を向けられていることもある。Bitcoinの最小単位「0.00000001 BTC=1 satoshi」の名称が彼(または彼女?)にちなんで名付けられていることからもそれがわかる。暗号通貨のコミュニティで論争が起こったときなどに「それはSatoshi Nakamotoの思想と異なる」とか「Satoshi Nakamotoの論文をもう一度読み直せ」といった言葉が相手への非難として使用されることもある。
「思想」と言うとやや大仰にも感じられる言葉だが、確かに「Satoshi Nakamoto」が思想とも言うべきものを持っていたらしいことは、発言記録からも窺い知れる。例えば上記のメーリングリスト内で、「You will not find a solution to political problems in cryptography.」(「あなたは暗号技術の政治的問題への解決策を見出すことはできないと思う」)というコメントに対して、「Satoshi Nakamoto」はこう回答している。
Yes, but we can win a major battle in the arms race and gain a new territory of freedom for several years.
(そうですね。しかし我々はこの数年間、「軍拡競争」の主戦場において勝利し、新たな解放領域を獲得することができています。)Governments are good at cutting off the heads of a centrally controlled networks like Napster, but pure P2P networks like Gnutella and Tor seem to be holding their own.
(各国政府は、例えば「Napster」のような中央制御式のネットワークの息の根を止めるのは得意でした。しかし「Gnutella」や「Tor」のようなピュアP2Pのネットワークは屈していないようです)
こういった発言から察するに、Hal Finneyと同じくサイファーパンクであり、リバタリアン的な思想をもってBitcoinを創り上げたものではないかと思われる。
謎
「Satoshi Nakamoto」の正体は不明である。日本人男性であるかのような名称だが、日本語を使った形跡は無く本名なのかどうかは疑問視されている。
「中本哲史」と日本語表記されることもあるが、これはかつて「bitcoin.co.jp」において記載されていた表記である。[2]しかし「bitcoin.co.jp」のドメインは2011年に登録されたものであり、「Satoshi Nakamoto」が表舞台から姿を消した後に作成されたサイトであることを考えると、本人に「あなたの名前はどう漢字表記するのか?」と聞いて記載された表記ではなく、推定表記に過ぎない可能性が高い。
「男性」「複数ではなく一人の人物」を指す人称代名詞「He」が使用されることが多いが、これらの点についても確たる根拠は何もない。男性かもしれないし女性かもしれない。複数人のグループの共同名義かもしれない。
年齢も不明で、老人かもしれないし若者かもしれない(仮に2009年に未成年の天才少年/天才少女だったとしても現在は成人しているだろうが)。容姿も不明。
これまでマスコミなどがその正体を探ろうとしたが、少なくとも公表されている限りでは誰も成功には至っていない。「この人こそSatoshi Nakamotoだ」と名指しされた人物は複数居るが、ほぼ全員が「自分はSatoshi Nakamotoではない」と否定しており、推定の理由も「名前が似ている」とか「この人なら開発可能では?」といった憶測に基づくものばかりで、動かぬ確かな証拠が示された人物は一人も居ない。「自分がSatoshi Nakamotoである」と申し出た人物も一人居るが、それを証明するための十分な証拠を提示しなかったためにこの申し出は信頼されていない。
ちなみに上記の「2014年3月に数年ぶりに発せられた短いメッセージ」は、「Satoshi Nakamoto」だろうと推定された人物が現れてメディアに追い掛け回されていたときに「私はその人物ではない」と主張する内容であった。騒ぎをたしなめようとしたものと思われる。
これまでの論文や投稿には英語が使用されており、その文章には非英語話者がしばしば行う不自然な表現やミスなどの痕跡が認められないことが確認されている。また投稿時間の解析から睡眠時間帯が推定され、標準時UTC-5かUTC-6の地域で暮らす人物ではないかとも推測されている。
「人間ではなくAI(人工知能)なのではないか?」[3]という突飛な考えを持つ人も居るようだ。しかし2008年~2009年当時のAIはBitcoinのような高度なコーディングや人間が書いたものと見紛うほどの論文制作や自由な会話を行うことなどはできていなかったため、少なくとも人間ではないかと思われる。
他の珍説としては「Satoshi Nakamoto魔王説
」「Satoshi Nakamotoエイリアン説
」など。
Bitcoin創成期に採掘(マイニング)を行っていたため、非常に多くのBitcoinを所有していると目されている(114万8800BTCと推定した調査がある。[4]2018年2月4日現在のレートで換算すると日本円にして1兆円超)。にもかかわらず、姿を消して以後これらのビットコインを使用している形跡がない(上記のようにビットコインは取引の記録が公開される)。この点も「Satoshi Nakamoto」の社会的立場や価値観についての謎を深め、様々な憶測を呼んでいる。
「Satoshi Nakamoto」の正体を探って公表しようとすることには倫理的な問題点もある。「Satoshi Nakamoto」の素性が明かされれば、世界中の犯罪者からその所有Bitcoinを狙われること、またBitcoinの存在を快く思わない者からの攻撃がなされることはほぼ確実であろう。また「Satoshi Nakamoto」のこれまでの行動から考えると、自らの素性を明かすことを望んでいないと想像がつく。
関連項目
関連リンク
- Bitcoin.org
- Bitcoin公式サイト。2008年8月に「Satoshi Nakamoto」がドメインを取得し、2009年1月にBitcoinソフトウェアを公開した。ちなみにこのドメイン取得に際しては匿名ドメイン代理取得業者「AnonymousSpeech
」が代行していたため、「Satoshi Nakamoto」の身元がこのドメインのwhois情報から明らかになることはない。 - Satoshi Nakamoto - Bitcoin Wiki
- Bitcoinの公式Wiki「Bitcoin Wiki
」における「Satoshi Nakamoto」の記事。 - View the profile of satoshi
- Bitcoinの公式掲示板「BitcoinTalk Forum
」(Bitcoin Forum)における「Satoshi Nakamoto」(この掲示板でのユーザー名は「satoshi」)のプロフィールページ。「Position: Founder」と表示されているように、この掲示板の設立者という立場でもある。 - Satoshi Nakamoto Institute
- 「Satoshi Nakamoto」をリスペクトし、関連文書を公開している団体。「The Complete Satoshi
」のページでは、入手可能な「Satoshi Nakamoto」の全発言を記録し公開している。
脚注
- *Bitcoin公式サイト内で英語原文がPDFファイルで読める
。また、和訳版を公開しているブログ
もある。 - *Bitcoin P2Pベースの仮想通貨 - ビットコイン
(http://www.bitcoin.co.jpの、2011年7月17日時点のアーカイブ) - *Is Satoshi Nakamoto an A.I.?

- *The Well Deserved Fortune of Satoshi Nakamoto, Bitcoin creator, Visionary and Genius | Bitslog

- 2
- 0pt

