パラサウロロフスとは、白亜紀に生息していた恐竜の一種である。
名前の意味は「副サウロロフス」(サウロロフスは別の恐竜の名前で、「トサカのあるトカゲ」という意味)。
目 | 鳥盤目 |
亜目 | 鳥脚亜目 |
上科 | ハドロサウルス上科 |
科 | ハドロサウルス科 |
亜科 | ランベオサウルス亜科 |
属 | パラサウロロフス属 Parasaurolophus |
種 | P.ワルケリ P.walkeri P.トゥビケン P.tubicen P.キルトクリスタトゥス P.cyrtocristatus |
中生代白亜紀後期の北米に生息していた、全長10m・推定体重2.5tの大型植物食恐竜。
特に繁栄した植物食恐竜のグループである鳥脚類のうち、最も派生的な特徴を持つランベオサウルス類の一つ。なお、鳥脚類は鳥竜とも呼ばれたが鳥類とはあまり関係がない。
トサカの形状により3種に分類されるが、雌雄差や個体差かもしれない。
1922年にウィリアム・パークスが尾以外のほぼ全身を含む化石から命名。同じハドロサウルス科に含まれ、後方に伸びるトサカを持つサウロロフスとの比較からパラサウロロフスと名付けられた。後にパラサウロロフスとサウロロフスではトサカの構造が異なり、両者がハドロサウルス科の中でも離れていることが判明した。
パラサウロロフス自身はそれほど多くの化石が発見されているわけではないが、ほぼ全身の化石がある。また同じハドロサウルス科のコリトサウルスやエドモントサウルスは皮膚や肉球状のパッドなどの軟組織まで残った全身化石など多くの化石が見つかっており、これらを参考にパラサウロロフスも復元される。
近年、全長2m弱で1歳程度とみられるとても保存状態のいい子供のパラサウロロフスの化石が発見され、ジョーと名付けられた。
国内では北海道大学総合博物館で全身化石のレプリカが、いわき石炭化石館「ほるる」で復元骨格が展示されている。頭骨のみレプリカを展示している博物館もある(福井県立恐竜博物館、豊橋市自然史博物館など)。
また、恐竜を扱う博物館の多くが鳥脚類の復元骨格を展示している。国立科学博物館のヒパクロサウルス、神奈川県立生命の星・地球博物館のチンタオサウルス、東海大学自然史博物館のプロバクトロサウルス、豊橋市自然史博物館のエドモントサウルス、岐阜県博物館のイグアノドン、福井県立恐竜博物館のフクイサウルスやサウロロフスを始めとした鳥脚類コレクションなど。
まず目を引くのが、弧を描いて後方に伸びる大きなトサカである。口の先からトサカの先までの長さは1.8mに達した。ランベオサウルス亜科の恐竜は多くが頭部に中空のトサカを持っていた。
このトサカは鼻道が膨らんだもので、呼吸の際は空気がトサカの中を通ることになる。パラサウロロフスのものは鼻孔のすぐ上から膨らんで顔面を通り、カーブを描いて後上方に伸び、中で鼻道がUターンする。
ヒパクロサウルスなどで知られているように、トサカは子供のうちは頭骨に対して小さく、成長するに従って伸びていったと思われる。この説は子供のパラサウロロフス「ジョー」の発見で確かめられ、またパラサウロロフスのトサカが成長し始めるのは大人の1/4の全長になった頃だと分かった。これは大人の1/2の全長になった頃にトサカが発達し始めるコリトサウルスなどと比べて早い。
ハドロサウルス類が半水性だと考えられていた頃はトサカはシュノーケル、または空気ボンベの役割を果たすと考えられていた。しかし、鼻孔がトサカの頂上ではなく根元にあること、体に対して容積が小さすぎることから、いずれも否定された。
現在は、例えば声を共鳴させる拡声器だという説がある。これに基づき、トサカの内部空間に音を響かせる実験が行われ、とても低く太い音が出ると判明した。また、鼻腔内の表面積を増して嗅覚を高める働きがあった、形状や色彩の違いにより視覚的に仲間や異性を見分けるのに用いられた、という説もある。
アムロサウルスの脳函の形状によると最も発達した感覚は嗅覚で、聴覚や視覚は他の恐竜と大差なかった。しかしトサカは鼻腔の中でも嗅覚と関係の無い部分が発達したものだった。
口の先端には歯が無く、カモに似た幅広いクチバシになっていた。このためハドロサウルス類はカモノハシ竜とも呼ばれた。以前はクチバシで水草を集めたと考えられていたが、現在では地上の植物を主に食べていたと考えられている。
口の奥には小さな歯が大量に密集していて、これをデンタルバッテリーという。歯が屋根瓦のように整然と重なり合って並び、先端の方から磨り減って抜け落ちては奥の方から新しい歯が生えて交換されていった。すり合わされた上下のデンタルバッテリーは石臼のように植物をすり潰していたと考えられる。また顎の構造も単純に開閉するだけでなく複雑な動きができるようになっていた。
歯の生えている部分が頭骨側面より少しくぼんだ部分にあったことから、咀嚼している食物が漏れるのを防ぐ頬を付ける復元が多い。
S字にカーブした首は、口が下向きになるように頭の角度を保っていた。
胴体は背が高く、広い腹腔に長い消化器官を収めていたと思われる。前半身が下を向くように脊椎が山なりにカーブしていた。
腰から尾にかけて棘突起(背筋の骨)が大きく、また尾では血道弓(尾の下側の骨)もやや長かったため、後半身全体が縦に平たかった。半水性説の頃はこれも遊泳のための適応と思われたが、後に背中から尾にかけて骨化した腱が網目状に張り巡らされていたことが分かり、尾をくねらせて泳ぐとは考えられなくなった。
重心は胴体の中央ではなく腰にあった。これは祖先の小型鳥脚類が常に二足歩行していたことの名残である。パラサウロロフスは二足歩行と四足歩行を使い分けたとされる。エドモントサウルスにおける物理演算結果から、速く歩いたり走ったりするときは二足歩行、ゆっくり歩く必要があったときは四足歩行だったようだ。
前肢は後肢と比べて細く短かった。手の指は5本あったが、生きていたときは第2指(人差し指)から第4指(薬指)までが一体化し、先端に蹄だけでなく肉球のような軟組織があったことが、コリトサウルスやエドモントサウルスのミイラ化石から分かっている。手の平が内側を向いているのが自然な姿勢だったようだ。
後肢は長く発達し、走行に適していた。膝の裏にある腱が収まる溝は、鳥脚類以外の多くの恐竜でただくぼんでいるだけなのと異なり、深くえぐれて両側からカバーされトンネルと化していた。これにより腱が骨の上を素早く往復することができたため、後肢を速く動かすことが可能だった。
エドモントサウルスなどでは大規模なボーンベッドが知られているが、パラサウロロフスの化石はそれほど多く見つかっていない。
主に地表に生えていた様々な植物を幅広いクチバシで集めて食べていたと考えられる。高い咀嚼能力により、ある程度硬い植物でも食べることができただろう。また必要に応じて四足で下を向くことも二足で頭を持ち上げることもできたので、様々な高さの植物を手に入れられたとも考えられている。
マイアサウラのように巣を作り子供を保護した可能性が高いが、群れを作る習性は弱かったかもしれない。声でコミュニケーションを取るとしたら声が低いものほど成熟した個体と見なされただろうし、視覚でコミュニケーションを取るとしたらトサカが大きいほど成熟した個体と見なされただろう。
アルバートサウルスなどの捕食者からは、仲間同士の警戒や鋭い嗅覚、発達した後肢を用いて逃走したと考えられる。ただし武器が無くとも2tを超える成体ともなれば、中型程度までの肉食恐竜は肉弾戦で追い払えたかもしれない。
分類:ピサノサウルス科 全長:1m 時代:三畳紀後期 地域:南米(アルゼンチン) 意味:「ピサノのトカゲ」
鳥盤類全体の中でも非常に原始的で鳥脚類に含まれないこともあるが、便宜上ここで取り扱う。
クチバシのあるやや丸みを帯びた頭骨、頬があると考えられる歯の位置、二足歩行、植物食性など基盤的な鳥脚類に似た特徴をすでに持っていた。
分類:ヘテロドントサウルス科 全長:1.5m 時代:ジュラ紀前期 地域:南アフリカ 意味:「異なる歯を持つトカゲ」
学名が示す通り複数種の歯を持ち、丸い頭骨と上下両方の顎に生えた犬歯が特徴。この犬歯は威嚇や仲間内の闘争に用いられたとされる。
こちらも鳥脚類に含まれないこともあるほど原始的だが、近縁種は白亜紀まで生き残った。その内の一つティアニュロングには羽毛と起源が同じかもしれない剛毛の痕跡があった。
分類:鳥脚亜目ヒプシロフォドン科 全長:大きなもので約2.3m 時代:白亜紀前期 地域:ヨーロッパ(イギリス、スペイン) 意味:「高い隆起のある歯」
ヘテロドントサウルスと比べるとクチバシや歯が少し発達している。目の上にひさし状の骨があり、生きていたときはタカのように鋭い目つきだったかもしれない。
ヒプシロフォドン類は南極をも含む世界各地で、白亜紀末まで長期間繁栄した。小柄で走行に適した体つきを持ち恐竜界のガゼルとも呼ばれている。
分類:鳥脚亜目ハドロサウルス上科イグアノドン科 全長:6m 時代:ジュラ紀後期 地域:北米、ヨーロッパ 意味:「曲がったトカゲ」
最も早いうちに大型化し始めた鳥脚類。学名の意味は大腿骨の形状からきている。
ややほっそりとしていたが基本的な体型はすでに後のハドロサウルス類に近いものになっていた。
分類:鳥脚亜目ハドロサウルス上科イグアノドン科 全長:10m 時代:白亜紀前期 地域:北米、ヨーロッパ 意味:「イグアナの歯」
2番目に命名された恐竜。奥歯はかなり丈夫で密集していた。
ハドロサウルス類と違って前肢の第1指が棘状になっていた。自衛用の武器と考えられてきたが、届く範囲が狭く有効性に疑問がある。イグアノドンの個別記事も参照。
分類:鳥脚亜目ハドロサウルス上科イグアノドン科 全長:4.7m 時代:白亜紀前期 地域:東アジア(日本) 意味:「福井のトカゲ」
福井県の勝山で発掘されたイグアノドン類。他のイグアノドン類やハドロサウルス類と違って上顎の動きは制限されていた。
モンゴルのアルティリヌスや北アフリカのオウラノサウルスに近縁である。これらのようにイグアノドン類は白亜紀前期の世界各地に生息していた。
分類:鳥脚亜目ハドロサウルス上科ハドロサウルス科ハドロサウルス亜科 全長:9m 時代:白亜紀後期 地域:北米 意味:「良い母のトカゲ」
大きなトサカはなく、眉間に段差と小さな出っ張りがあった。小さな子供や卵の殻を含む巣と一緒に発掘されたことにより、「良い母のトカゲ」と女性形で命名された。
生まれて間もない子供の歯が少し磨り減っているのは親が餌を運んだためだという説と、ワニと同じように卵の中で歯ぎしりしたためだという説がある。
分類:鳥脚亜目ハドロサウルス上科ハドロサウルス科ハドロサウルス亜科 全長:13m 時代:白亜紀後期 地域:北米 意味:「エドモントン(カナダ・アルバータ州の都市)のトカゲ」
パラサウロロフスより少し後の時代に生息した、特に大型のハドロサウルス亜科の恐竜。頭部に骨のトサカはなく、鼻孔が大きかった。しかし軟組織のトサカがあるものもいたことが、ミイラ化した化石から発見された。
傷を負わされて治癒した痕跡が知られているが、この傷を付けたのはティラノサウルスだったといわれている。
アジアにはシャントゥンゴサウルスやズケンゴサウルス、フアシアオサウルス(これらは同一属ともされる)といった、さらに大型化して15mを超えたものもいた。
分類:鳥脚亜目ハドロサウルス上科ハドロサウルス科ランベオサウルス亜科 全長:4m 時代:白亜紀後期 地域:北東アジア 意味:「日本のトカゲ」
日本領だった頃のサハリンで発掘された原始的なランベオサウルス類。
やや小柄でトサカも小さいが、これは幼い個体だったためで、ランベオサウルス類の成長に関する情報を含んでいる。
分類:鳥脚亜目ハドロサウルス上科ハドロサウルス科ランベオサウルス亜科 全長:10m 時代:白亜紀後期 地域:北米 意味:「コリント式ヘルメットトカゲ」
頭部に半円形のトサカを持つランベオサウルス類。これとエドモントサウルスは全身がミイラ化した化石が見つかっており、軟組織や姿勢などについて多くの情報をもたらした。学名の由来は古代ギリシアの部族であるコリント族のカブトとトサカの形状が似ていた事から。
北米のランベオサウルス類はこれやランベオサウルス、ヒパクロサウルスなど幅広いトサカのものが多く、パラサウロロフスに似た角状のトサカのものはカロノサウルスやオロロティタンなどアジアにいた。
イグアノドンの復元3パターン。恐竜に関する情報が何も無かった当初は手前のように単に大きな爬虫類として復元された。その後全身の骨格が発掘されると、背筋を垂直にして尻尾を引きずりながら二足歩行するように描かれた。恐竜が活動的な生き物であるとされるようになると、大型鳥脚類も尻尾を引きずらず体を水平にして歩く姿に復元されるようになった。
ひょうきんにも流麗にも見え、さらに凶器も装甲もないという姿が親しみやすさを感じさせるためか、鳥脚類の中ではかなり人気が高い。
掲示板
掲示板に書き込みがありません。
急上昇ワード改
最終更新:2024/04/25(木) 06:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。