「僕の妹は漢字が読める」 とは、かじいたかし著・イラスト皆村春樹、HJ文庫から発刊されたライトノベル。 全5巻。
1巻1章がWEBで無料公開されている。 →試読サイト
また、それを原作として日辻ハコによるコミカライズ版も発売されている。
時は23世紀。2060年に発表された小説『おにいちゃんのあかちゃんうみたい』(通称「おにあか」)が日本文化に多大な影響を与え、日本語からは漢字が消え、萌えが社会の隅々まで浸透したメインカルチャーとなり、二次元美少女が首相となった日本。
文学界では「正統派文学」と呼ばれる女の子のパンツを題材とする作品が主流となり、特に人気のある妹萌え作品では、文豪たちや読者が義妹派と実妹派に分かれ論争を繰り広げていた。
作家志望の少年、イモセ・ギンが妹のクロハとともに文学界の大御所オオダイラ・ガイのもとを訪れる所から物語は始まる。ギンたちが不慮の事故で21世紀にタイムスリップしてしまったことで、文字通り歴史を揺るがす大事件へと発展してゆく。
ひそかにギンに想いを寄せる義妹のクロハ、両親公認の嫁候補ユズ、押しかけ実妹のアマネコら、妹系美少女達に囲まれて、今日もギンは作家を目指して邁進し続ける。
様々な考えを持った人たちとの出会いを通じて、ギンは人として成長してゆく。
本作には、様々な時代の様々な文体が様々な形で登場する。その劇中劇ならぬ文中文の一部を紹介する。
※以下、白文字で作品のネタバレと独自研究を含む解説を記載していますのでご注意ください。
PCからの操作で文字反転すると閲覧できます。
20世紀~21世紀頃の文体。古語。
23世紀にはこの文章を読み解けるレベルの知識を持った者は珍しい。
我輩について余人に多くを語ろうとは思わない。只、世を憂う者である。
人は誰しも生きるための寄る辺をもつ。我輩にとっての寄る辺は文学であった。弱年より活字と戯れ、分別のわかる頃には箸を取るより筆を執ることを好んでいた。
行く行くは父祖、冬耳虎彦のような、淡麗な文体の小説で世に出るはずであった。吾輩ほどの才気があれば、容易いことであった。
だが、日本の文学が死んでいた。
文学の惨状は心得ていたものの、腹の何処かで、正しい文学は此の国にまだ火を残していると思っていた。日本人の良心に縋りたかった。- チョウマバヤシ・サダメ『吾輩録』(1巻1章)
歴史改変を目論んだ懐古主義者の日記。
妹のメグリを持ってして「無駄に漢字が多くて知識量をひけらかしたい」だけと言わしめるほどの堅い文体。
明治大正あたりをイメージしたと思われるが、文章の流れやテンポもよく、きちんとした日本語として完成されており、サダメが口先だけでなく知識と文章力を持った人物であるとよくわかる。
「うわあ」
「きゃあっ」
倒れたはずみで少女のパンツが見えた。
空色だった。
清は慌てて、目をそらす。- オオダイラ・ガイ『きらりん! おぱんちゅ おそらいろ』近代文版(1巻1章)
23世紀の人気作家が戯れに書いた"近代文学"。
オオダイラがただの変態でなく、古語も理解する識者であることをうかがわせるシーンだが、その文体は現在のラノベ、その中でもさほど上手くない文章をイメージしていると思われる。
23世紀現在の一般的な文体。
政府によって漢字が廃止され、ひらがな・カタカナ・記号による新しい日本語「現代文」が導入されている。
にいさまへ あなたの 『ほんとうの』 いもうと
- 真琴周子のメール(3巻1章)
周子がギンに送ったメールの件名。
"現代文"より前の近代文化保護を目的とする特区出身の周子だけあって、漢字が使われていないだけで現在と同じ文法で書かれており、比較的"近代文"に近い文体。
漢字の読めないギンに合わせて、"近代文"使用者が"現代文"を書いた設定と思われる。
そういう じじょうです
なので やっば~い です
アタシ だいピンチ です- チョウマバヤシ・メグリの手紙(2巻1章)
メグリが主人公らに助けを求めるために便箋に手書きした文面。
他の巻や他の人物の文章も見るに、23世紀で最も一般的な文章のイメージと思われ、この作品を象徴する"現代文"そのものといえる。
きよし「うあっ」
おなのこ「みゃあっ」
わわわ でんぐりがえっておぱんちゅ きらり☆
きらっ きらっ
きらり☆
おぱんちゅ→おそらいろ
きよしっこ てれっこ- オオダイラ・ガイ『きらりん! おぱんちゅ おそらいろ』(1巻1章)
23世紀の人気作家の最新作の原稿。
その文体は作中でも異彩を放っており、"現代文"をさらに先鋭化した文体は、23世紀においても特徴的で「オオダイラ文体」として話題になっている。
1巻発売当時に無料試読できた為まとめサイトに引用されまくりネタとして消費されたが、今見てもやっぱりブッ飛んでいる。
なお引用部分は3つ上の近代文版と同じ内容である。
■〓→▽
- イモセ・ギンの同人小説(3巻1章)
ギンが小説サイトに投稿した小説の一文。
「黒いパンストが白い大根を包みこんで、むしゃむしゃ食べ尽くす」シーン。
(引用元は縦書きの為、二文字目が縦の黒棒2本になっていますが、横書きに合わせて意訳を行いました)
なにがなんだかわからないが、これが"現代文"の次の日本語としてスタンダードとなってゆく"未来文"の原型となる。
23世紀におけるギンの非凡な才能の一端が垣間見れる。
- カブゥロの報告書(4巻1章)
38世紀の日本語。
21世紀の我々はおろか、作中の23世紀の面々ですら解読不能な記号の羅列だが、イモセ・ギンを「偉大なる父」と崇める38世紀の日本文明において、これがスタンダードな日本語である。
訳は「カブゥロの二十三世紀レポート」。4巻と5巻で何度か出てくるが、4巻の初出時のみ訳がついており、以降は特に注釈なくこの記号の羅列が登場する。
そう、読者はこの未来文を否応なく理解させられてしまうのだ。
掲示板
17 ななしのよっしん
2018/09/03(月) 22:01:55 ID: HpoxPsWY3H
この作品がオオダイラ文体的なものを皮肉っているんだという前提で話す奴は読んでないのがよくわかる
ちゃんと全巻買って読めよ
18 ななしのよっしん
2018/09/09(日) 10:13:45 ID: kL2VssGRYX
でるひと→[人名]
[人名]「[その人のセリフ]」
って文法は地味に便利そう
現行の日本語だと4人以上いると特徴的な語尾のキャラ以外のセリフの前には○○が言ったって書いておかないとまずわけわかんなくなるしw
19 ななしのよっしん
2022/10/02(日) 11:43:17 ID: Lh0JdFU+uV
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最終更新:2024/12/21(土) 20:00
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