ピエール・ルメートル(Pierre Lemaitre)とは、フランスの推理小説家。
1951年、パリに生まれる。デビュー前は成人向けの職業教育の場で図書館員に文学を教えながら、テレビドラマの脚本家として活動していた。
2006年、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第1作『Travail soigné』でデビュー。この作品でコニャック・ミステリ大賞など4つの賞を受賞。2011年に刊行された同シリーズの2作目『Alex』は、2013年にイギリスでインターナショナル・ダガー賞を受賞するなど高い評価を集めた。2013年には第一次世界大戦を舞台にした初の非ミステリ作品『Au revoir là-haut』で、フランスで最も権威ある文学賞であるゴンクール賞を受賞する。その後もダガー賞を2015年・2016年にも受賞し4年間で3度受賞という無双っぷり。
日本では2009年に第2作『Robe de marié』が吉田恒雄訳により『死のドレスを花婿に』として柏書房から邦訳されたが、このときはほとんど話題にならなかった。しかし、これを偶然読んで衝撃を受けた文藝春秋社の編集者が他のルメートル作品を探し、2014年、『Alex』が『その女アレックス』として橘明美訳により文春文庫から邦訳される。決して前評判が高かったわけではないが、その衝撃的な展開が口コミで評判を呼び、「このミス」「週刊文春」「ミステリが読みたい!」のミステリーランキング3つで1位に輝き、ついでに本屋大賞翻訳部門でも1位に輝くに至って爆発的に売れはじめ、50万部を超えるという近年の翻訳ミステリーとしては異例の大ベストセラーになった。
この大ヒットを受けて、2015年には『死のドレスを花婿に』が文春文庫で文庫化され、デビュー作『Travail soigné』が『悲しみのイレーヌ』として文春文庫から橘明美訳で刊行。また『Au revoir là-haut』が『天国でまた会おう』として早川書房から平岡敦訳で刊行された。『悲しみのイレーヌ』は「週刊文春」で1位を獲得(「このミス」は2位、「ミス読み」は集計期間の違いにより次年度の5位)。
2016年にはカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ完結編『Sacrifices』が『傷だらけのカミーユ』として同じく橘明美訳で文春文庫から刊行された。年末のランキングでは2年連続で「週刊文春」1位を獲得(「このミス」は6位)。なお『イレーヌ』『アレックス』『カミーユ』と並ぶ邦題は英語版に倣ったもので、著者の要望だったそうである。
フランス・ミステリーらしい意外性に満ちたトリッキーなプロットと、残虐な描写や情け容赦のない展開が特徴。また人物造形の巧みさも特筆すべきで、ヴェルーヴェン警部シリーズは主人公のカミーユを中心にした個性的なキャラクターによる捜査班ものの警察小説としての楽しみにも満ちている。それが刑事ドラマや警察小説が人気の日本でもヒットした要因のひとつかもしれない。
なお、ヴェルーヴェン警部シリーズ2作目である『その女アレックス』を読んでいると、1作目の『悲しみのイレーヌ』がどういう展開になるのか一部が解ってしまうため、これから読む人は『悲しみのイレーヌ』から読むことを推奨する。ただし、『イレーヌ』には作品の性質上、先に『アレックス』を読んでいた方が驚ける部分もある。あと展開が展開なので先に『アレックス』を読んで心の準備をしておくのもアリ。
なんで2作目の『アレックス』を先に出したんだよ、とお怒りの向きはごもっともだが、翻訳ミステリのシリーズものが順番通りに訳されないのはわりとよくあることである。『アレックス』に比べると『イレーヌ』は色々な意味でいささかマニアックな趣向の作品であるため、仮に『イレーヌ』から出していたら売れなくて『アレックス』は訳されなかったかもしれない(実際『死のドレス~』は初刊時には売れなかったのだし)。
また、シリーズ完結編となる『傷だらけのカミーユ』では、最初の登場人物リストに『悲しみのイレーヌ』の犯人の名前が明記されているので、間違っても『カミーユ』から読まないように気を付けよう。
★はカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ。邦題のないものは未訳。
▶もっと見る
急上昇ワード改
最終更新:2024/05/03(金) 04:00
最終更新:2024/05/03(金) 04:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。