ナマモノとは、
- 生鮮食品などを指す「生物」あるいは「生もの」(どちらも普通「なまもの」と読む)のカタカナ表記。腐りやすいので取り扱いには注意が必要である。
- 「実在の人物を対象としたファンメイド作品」を指す俗語。「生もの」とも。腐らせるときには取り扱いに注意が必要である。
- 「生物」(「いきもの」あるいは「せいぶつ」)を茶化して言ったもの。クリーチャー。特に漫画家・柴田亜美は、自身の漫画作品『南国少年パプワくん』などに登場する珍奇な動物キャラクターを「ナマモノ」と呼称している。
本記事では上記のうち2.について記載する。
概要
ナマモノ、あるいは生モノとも。芸能人/スポーツ選手/政治家など、実在の人物(ほとんどの場合、有名人)を対象としたファンメイド作品全般を言う。
この定義で言えば、単にその人物を描いた何の変哲もないイラスト作品などもこの範疇に入らないこともない。しかし、記事冒頭でも少し記したように、何らかの意味で「取り扱い注意」なものについてこの「ナマモノ」という表現が用いられることが多いようである。もちろん「実在の人物を対象としていれば、どんな作品でも少しは取り扱いに注意は必要だ」という意見もあるかもしれないが。
「取り扱い注意」とは、要するに「本人やその近しい人が目にしたときに不快に思う可能性」および「本人のファンが目にしたときに不快に思う可能性」についての配慮が必要ということである。特に本人やファンが目にしたときの衝撃を受けやすい、あるいは反感を買いやすい要素、例えば「カップリング」「恋愛」「異性装」「性別変更」「政治」「宗教」「R-18」「R-18G」などの要素を含むものでは特に要注意であろう。
後述するように歴史あるジャンルなのであるが、それだけに現在に至るまで大小問わず多くのトラブルが生じている。日本ではなく中華人民共和国の話だが、対象となっていた有名人を広告に起用していた企業や、さらには政府の検閲システムをも巻き込むような大問題になったことすらある(227事件の記事を参照)。
そういった悲しい歴史も踏まえて、一般に日本の同人界隈では「ナマモノ」や後述する「半ナマ」のジャンルで活動する人々はトラブルを避けるために目立つことを極力避け、同好の者たちだけが集えるような工夫を行うことを良しとする傾向にある。対象の本名全体を使わなかったり、いわゆる「検索よけ」の手法を用いて単純に名前で検索するのみではヒットしないように工夫をしたり。
また自分たちが白日の下に晒されたときに迫害される事を恐れるあまり、そういった「工夫」を怠る身内を見つけると苦言を呈したり、激しい場合は吊し上げ的な厳しい糾弾をも行うことがあるという。
しかし、例えばテレビ番組などで「ナマモノ」というものがあって……と紹介され、さらにはその対象とされている芸能人などにその創作作品を見せるという恐ろしい企画が行われることもある。そういったことが起きた場合、ナマモノ創作の界隈からは、暗い洞窟の中で暮らしていた生き物たちに突然サーチライトを浴びせたような苦悶の声が漏れだすという。
半ナマ(半生)
「実在の人物そのものではないが、それに準ずるものを対象としたファンメイド作品」を指す言葉。
例えば、実写作品であるとか舞台作品であるならば、キャラクターには「それを演じている役者」が居る。ということは、そのキャラクターを描いた画像や動画作品は考え方によっては「その役者がキャラクターを演じている姿を描いている」ことにもなってしまうのだ。こういったケースを指して「半ナマ」という。
「ナマモノ」と比べて、作り手であるファンに「実在の人物を描いている」という意識が生まれにくいとされる。そのためか、こういった「半ナマ」のファンメイドをきっかけに苦言を呈されたり、あるいは意見の対立からの口論と言ったトラブルが起きた実例も少なくない。
ところで、バーチャルYouTuberのファンメイド作品って半ナマに入るんですか?
歴史
こういった作品の歴史は古い。
男性アイドルグループ内のメンバー同士のカップリング二次創作同人誌は少なくとも1980年代後半には存在していたとも言われる。上記の「半ナマ(半生)」も含めるなら、例えば1972年から1986年に放映された有名刑事ドラマの登場人物を対象としたカップリング二次創作が存在したという。もちろん、もっと遡れるかもしれない。
明治時代に流行した男色小説『賤のおだまき』は実在の人物の同性愛を描いている。これもある意味では「実在人物を対象としたファンメイド作品」と言えなくもないかもしれない。ただしその題材となった人物たちは実際に同性愛関係にあったとのことなので、「妄想で同性愛関係のカップリングに仕立て上げた」というわけではなかったようだが。
国外に目を向ければ、1960年代に第1シリーズが放送された有名SFドラマ作品の二次創作作品(「スラッシュ」もの、つまりいわゆるカップリングものも含む)がアメリカ合衆国の同作ファンの間で「ファンジン」[1]の形で隆盛を極めたことは良く知られている。
よって少なくとも1960年代からアメリカにも「半ナマ」のファンメイド作品が存在したことは確実である。「ファンジン」の文化はその有名SFドラマ以前からも存在していたとのことであり、さらに遡れる可能性も高い。
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関連項目
脚注
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