フェデリコ・ツァリアーノとは、OVA『機動戦士ガンダムMS IGLOO』第2話「遠吠えは落日に染まった」に登場する地球連邦軍所属の軍人である。階級は中佐。CV:中田譲治
概要
地球連邦軍に所属する軍人。イタリア系の名前をしている事からイタリア人の可能性がある。
小説版によると元戦車乗りで、地球に侵攻してきたジオン軍と交戦した際に左目を潰され、右頬にも戦傷を負った。以降彼は左目に黒い眼帯をしている。負傷を理由に軍の病院で静養する道もあったが、戦況の悪化と、何より彼自身の意思で前線に復帰。セモベンテ(イタリア語で自走砲を意味する)隊を率いてコマンド作戦を実行する。強面だが部下想いな性格であり、いくつもの作戦でジオン軍を奇襲して小さいながらも勝利を重ねてきたため、彼のもとで戦えば必ずジオン軍に勝利出来るとして、部下から絶大な信頼を勝ち取っていた。
ジオンの勢力圏下である北米アリゾナ砂漠で活動中に偶然警備用の陸戦型ザクⅡ6機を鹵獲。鹵獲されたザクは連邦軍内の研究チームに引き渡され、部品によってはネジ1本になるまで解体。そして解析が済んだザクは戦闘データ収集や基本戦術の確立及びマニュアル化のため、一部のエリート部隊に配備。セモベンテ隊もその部隊の一つであった。連邦軍ではザク3機と61式戦車1輌を1個小隊に定めており、セモベンテ隊は6機のザクと2輌の61式戦車からなる2個小隊の戦力を保有。彼らはアリゾナ砂漠におけるゲリラ的な撹乱作戦に臨む。セモベンテ隊の行動範囲や任務内容は極秘とされ、連邦軍側に詳細な資料が残っていないものの、のちにジオン側の資料にその存在が記録される。
元々学んでいたのか今回の作戦のために覚えたのかは不明だが、ジオンの言葉を話せる。ただし訛りがかなり酷いようでそれをジオン兵から指摘されている。
隻眼というハンデを持ちながらモビルスーツを不自由なく動かす技量に加え、「部下一人ひとりが俺のようにMSの指揮官になれる」「未来のMS隊の指揮官」「家族同然の部下」と大切に想い、部下を皆殺しにされた時は怒りのあまり力技でヒルドルブを倒そうとするなど、大変有能な軍人である。実際鹵獲ザクをあてがわれているところを見るに上層部からも優秀と見られていたのは間違いない。『MS IGLOO』の連邦兵はチンピラ崩れのように無能として描かれる事が多いが、このフェデリコは例外と言えよう。形振り構わぬ欺瞞襲撃戦法の是非はさておき、骨太で勇猛な、敵として亡くすには惜しい軍人であった。
彼らが体を張って作り上げたMSの基本戦技や戦術は一年戦争後期で結実する事となる。
元戦車兵でモビルスーツパイロットへの転向に成功し、上層部の信頼を得ながら勝利を重ね続けているフェデリコと、凄腕の戦車兵だったがモビルスーツパイロットに転向出来ず、出世街道からも外れて落ちぶれてしまったデメジエール・ソンネンは実に対照的と言える。
劇中では
宇宙世紀0079年3月1日、ジオン軍は第一次地球降下作戦を開始。この日より大地に一つ目の巨人が降り立った。フェデリコは戦車兵としてジオン軍に立ち向かったが、左目を失うほどの重傷を負う。しかし彼は最前線に立つ事を選び、セモベンテ隊を率いて、小さな勝利を重ねていった。ジオンに対する怨嗟を滾らせながら。
4月29日、ザク6機と61式戦車2輌を有するセモベンテ隊はアリゾナ砂漠でジオンの物資集積所を襲い続けていた。フェデリコは「今の連邦軍将兵に足りないのは、モビルスーツではない。兵器よりも敗北により失われた自信だ」と確信しており、物資集積所を襲う事で小さな勝利を重ねて部下に自信を付けさせていた。もちろんモビルスーツの基本戦技開発も兼ねている。彼らはザクをそっくりそのまま運用したが、通信装置だけは連邦製に換装しており、通信をジオンに傍受されないよう工夫している。
砂漠の中にある第128物資集積所に味方を装って接近。フェデリコは友軍だと油断している歩哨に向けて120mmザクマシンガンを撃ち込み、投下コンテナを寄せ集めて作った物資集積所を破壊。今回もセモベンテ隊は勝ちを拾った。彼らは第128以外の物資集積所も襲っており、その時に歩兵用の通信機を入手、これを使ってジオン軍の索敵部隊を巧みにかわしてゲリラ作戦を続けていた。また捕虜の証言や押収した書類にも注意を向けて情報収集を行っている。フェデリコ曰く「ジオンと言えど超人ではない。そして思いのほか錬度は低く、敵に何を渡してはいけないのかを知る者は意外と少ない」との事。
そんな中、通信機がコムサイの降下スケジュールを教えてくれた。壊滅させた第128物資集積所から東へ約100kmの地点にある第67物資集積所がコムサイの着陸地点らしい。早速セモベンテ隊は第67物資集積所へと向かった。
5月9日、第67物資集積所では旧ザクが歩哨についていた。ジオン側でもそれなりの戦車部隊が物資集積所を荒らし回っている事を察知しており旧ザクを警備に置いていたのだ。フェデリコは友軍のふりをして旧ザクに近づく。そして伏せておいた部下に降下中のコムサイを攻撃させ、動揺した旧ザクを至近距離からのザクマシンガンで瞬く間に撃破、これを合図に隠れていた他のザクや61式戦車が一斉に姿を現してコンテナや兵舎を攻撃。数分後、第67物資集積所は灰燼に帰した。捕虜は誰一人いなかった。
先ほど攻撃したコムサイは墜ちたのだろうか?部下からの問いに上機嫌に答えるフェデリコ。第67の始末が終わったら索敵のため10km進出する――そう命じたところで地平線の彼方が光った。まず最初に止まっていたクルスのザクが撃ち抜かれて爆発四散。優秀なフェデリコは次に何が起こるか瞬時に把握した。予測通り撃破した旧ザクを調べる事に注意を払っていたペンターのザクが狙われたが、幸い砲弾が上に逸れあがり、ショルダー部分を被弾するだけに留まる。コムサイから投下された試作兵器ヒルドルブの砲撃だ。
突然の奇襲で浮き足立つ部下を宥めつつ、フェデリコは冷静に状況を判断。敵が調整不足の試作兵器だと看破する。部下を物怖じさせる情報は敢えて伏せておくなど、指揮官として熟達している一面を覗かせる。対峙するデメジエール・ソンネン少佐も「忌々しいが錬度が高い」「指揮官が優秀」と分析している。一方、フェデリコも相手の力量を見極め、かなりの手練れと推測している。
その後も沈着的確に判断を下し、ヒルドルブを包み込むように攻撃する。反撃も飛んでくるが、「絶対に止まるな!動いていれば大丈夫だ!!」と指示を飛ばし、部下とともに突撃を続ける。しかしヒルドルブは精強で、部下を一人また一人と葬られていく。自身もザクの足を撃ち抜かれ、その場から動けなくなってしまう。そして身動きが取れないまま目の前で部下を皆殺しにされ、フェデリコは逆上。仇を取るべく、全機大破したものと油断したヒルドルブに肉薄し、ザクマシンガンで頭部コクピットをひたすら殴り続ける。ヒルドルブから抵抗を受け、ザクマシンガンの弾倉を吹き飛ばされるも、モノアイのスリットに一発撃ち込んでついにコクピットを破壊。ヒルドルブは機能を停止した。
勝利を確信したフェデリコは、次にコムサイを蹂躙しようとヒルドルブを後にするが、最後の力を振り絞ったソンネン少佐に背後を撃ち抜かれ、上半身が吹き飛び爆散。フェデリコは戦死。小説版ではコムサイ破壊に固執しすぎて、ヒルドルブの砲塔が回っている事に気付かない描写がなされていた。それほどまでに、部下を皆殺しにされた怒りは大きかったのである。
ギレンの野望では
ギレンの野望 アクシズの脅威から参戦。ヒルドルブ1機に部隊を全滅させられたためか、原作に反して能力が低めに設定されている。また、イベントによっては早々に戦死してしまうという不遇の存在。イベントをこなさなければ生存するが、代わりにジオン軍がヒルドルブを量産し始める。ゲームの都合上、原作で行った後方撹乱はレビル将軍(プレイヤー)の指示という事になっている(させない事も可能)。イベントを行わなかった場合に手に入るザクを全廃棄した資源よりもイベントで手に入る資源の方が少ないため原作再現をしたい人以外には意味の無いイベントになってしまっている。
関連項目
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