基本情報技術者試験とは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)情報処理技術者試験センターにより取り行われる国家試験である。ITパスポート試験
の上級種である。
概要
情報処理の促進に関する法律第29条第1項に基づき経済産業大臣が行う国家試験である情報処理技術者試験の一区分である。試験区分は「FE」。
プログラマー、システムエンジニア、Webデザイナー等、ITエンジニアに必要とされる普遍的な知識・技能を問われる。
ITパスポート試験と大きく異なる点は、プログラミングに関する知識が求められることである。故に、試験に合格する為には、C言語、COBOL、Java、Python、アセンブリ言語(CASL)の何れかのプログラミング言語の基本を習得済みでなければならない。
昭和45年(1970年)に第二種情報処理技術者試験として創設され、平成13年(2001年)に現在の名称に改定。
平成21年(2009年)に初級システムアドミニストレータ試験(初級シスアド)が廃止されたことに伴い、試験範囲にマネジメント系(IT管理)・ストラテジ系(経営・ビジネス)の分野が大幅追加され、ソフトウェア開発の出題項目に表計算ソフトが追加。
2019年の秋期試験を以てソフトウェア開発の出題項目からCOBOLが廃止され、2020年の春期試験からPythonが追加される予定[1]であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により2020年度春季試験は中止となった。
2020年度秋季試験よりCBT方式に変更し、一定期間内の複数日程より受験日程を選択できるようになった。午前、午後の区分は名目上のものとなり、別日受験はおろか先に午後試験を受験することも可能である。なお、試験範囲は先述のプログラミング言語以外大きな変更はない。
2023年度に大規模な改訂が実施される予定である。午前試験は60問90分のA試験に、午後試験は20問100分のB試験に変更となる。B試験では疑似言語(擬似言語)を用いたプログラミングとアルゴリズム、情報セキュリティを中心とした問題が出題され、特定の言語(表計算ソフトを含む)を習得する必要はなくなる。試験は随時受験可能となり、採点方式も素点からIRT方式による評価となる。
歴史
1969年〜1994年4月
1969年
プロトタイプとして第二種情報処理技術者認定試験が実施された。合格率8%程度の難関国家資格だった。
1970年
第二種情報処理技術者試験として本格的にスタートする。
当時は年1回のみの実施だった。午前と午後の2科目構成なのは今と同じだが、当時は午後科目が記述式であることが今と異なっていた。
また当時から午後の選択問題でプログラミング言語の問題があったが、当時はFORTRAN、ALGOL、COBOL、PL/I、アセンブリ言語(CAP-X)の中から1つまたは2つ選んで解答する形式だった(ただし1つの言語だけを選ぶ場合はその言語については2問解く必要があった)。
レベルの目安としては高卒相当(ちなみに第一種情報処理技術者試験は大卒相当)とされていたが、実際には理工系の大学生や大卒のプログラマーでも合格するのが難しい難関国家資格だった。合格率は10%台。
1977年
この年から午後のプログラミング言語でALGOLが選べなくなった。
1986年
1992年
- この年の10月から午後のプログラミング言語にC言語が追加された。
- プログラミング言語はFORTRAN、COBOL、PL/I、C言語、CASLの中から1つまたは2つ選ぶ形式となった(ただし1つの言語だけを選ぶ場合はその言語については2問解く必要があった)。
1994年10月〜2000年
1994年10月
- プログラマーだけでなくシステムエンジニアも対象とするように出題範囲が変更された。
- 午後科目が今と同じ多肢選択式に変更された。
- この回から午後のプログラミング言語でPL/Iが選べなくなった。(1994年4月までは選ぶことができた)
- この回から電卓が使用可能になった。(後にまた禁止に戻ったが)
2001年〜2008年
2001年4月
- 試験名称が基本情報技術者試験に変更された。
- この年から午後のプログラミング言語でFORTRANが選べなくなった。
- この年からCASLの仕様が変更された。(そのため第二種情報処理技術者試験時代と区別するため、2001年以降のCASLをCASL IIと呼ぶことも多い)
2001年10月
- プログラミング言語にJavaが追加された。
- この回から午後のプログラミング言語はC言語、COBOL、Java、CASLの中から1つまたは2つ選ぶ形式となった。(ただし1つの言語だけを選ぶ場合はその言語については2問解く必要があった)
2002年
2005年
午前科目の免除制度が導入された。主にIT系の専門学校(や一部の大学、短期大学、商業高校、工業高校など)に通う学生を対象とした制度だが、社会人でも(通信講座等を利用するという条件付きで)利用可能である。
※詳細は「基本情報技術者試験の科目免除制度」の項目をご覧ください。
2006年
10月から合格率が20%台まで上昇し、やや難易度が下がったとされる。
2009年以降
2009年
4月から試験内容が大幅に変更された。具体的な変更点は以下の通りである。
- 2009年4月の試験を最後に初級システムアドミニストレータ試験(初級シスアド)が廃止されることに伴い、基本情報技術者試験でもマネジメント(経営管理)やストラテジ(経営戦略、企業活動など)などといったビジネス系分野からの出題が増えた。
- この年から午後のプログラミング言語はC言語、COBOL、Java、CASL、表計算ソフトの中から1問選択する形式となった。
2011年
10月から午後の表計算ソフトに、擬似言語を使用したマクロ機能の内容が追加された。これは「表計算が明らかに他のプログラミング言語より簡単過ぎる」という批判があり、難易度を他のプログラミング言語と同じくらいに引き上げるための措置である。
2014年
この年からセキュリティに関する内容の出題が強化される。具体的には以下の通り。
2020年
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響で4月の試験が中止となった。(10月に再開)
- この年からCBT方式に変更された。
- この年から科目B(旧・午後)のプログラミング言語でCOBOLが選べなくなった。その代わり、Pythonが追加された。
2023年
4月からの変更点は以下の通り。
科目免除制度
IPAが指定した一部の講座を受講した後、修了試験に合格すると、A試験(旧・午前)の受験が1年間免除される特典が受けられる。これを使えばB試験(旧・午後)だけ受ければ良くなるので勉強の負担が軽減される。ただこの制度を使うためにはIPAの認可を受けたIT系の専門学校や大学に通って指定の講座を受けるか、自分で通信講座(有料)を予約するしかない。
ちなみにこの制度は「本番の試験でA試験のみ合格したから、次回再挑戦する時はB試験だけ受ければ良いよ」という制度ではないため、ご注意ください。
詳細は「基本情報技術者試験の科目免除制度」の項目をご覧ください。
難易度
情報処理技術者試験の中では難易度が低いほうの区分であるとされているが、それでも民間の情報処理の検定試験(J検の情報システム試験、サーティファイの情報処理技術者能力認定試験2級など)に比べるとだいぶ難易度は高い。
また、高校生にとっては難関国家資格であり、(名門校はともかく)一般的な工業高校や商業高校では基本情報技術者試験に合格できる人はきわめて稀である。合格すると新聞に名前が載るほどである。
ただし2009年度から2022年度まではプログラミング言語の代わりに表計算ソフトを選択可能だったことから今までよりは若干難易度が下がっていたとも言われている。
応用情報技術者>基本情報技術者(旧)>基本情報技術者(新)≧初級シスアド>情報処理技術者能力認定試験2級≒情報システム試験>情報セキュリティマネジメント>ITパスポート≧情報活用試験1級
関連動画
関連チャンネル
関連項目
- IT資格
- 情報処理推進機構
- 情報処理技術者試験
- 情報処理安全確保支援士試験
- IT
- プログラミング言語
- 情報処理技術者試験の歴史
- 基本情報技術者試験の歴史
外部リンク
- 情報処理推進機構 IT人材育成センター国家資格・試験部
- 情報処理技術者試験の概要
- 基本情報技術者試験(FE)
(情報処理技術者試験の概要 - 試験区分一覧) - 試験制度の沿革
(情報処理技術者試験の概要 - 試験制度の沿革)
- 情報処理技術者試験の概要
- 基本情報技術者試験ドットコム
脚注
- *COBOL廃止、Python追加、プログラミング能力・理数能力等を重視
: IPA 独立行政法人 情報処理推進機構、COBOLの出題廃止、Python追加 基本情報技術者試験、「AI人材育成ニーズ踏まえ」
: ニコニコニュース
親記事
子記事
兄弟記事
- 7
- 0pt

