UNIXとは、元はベル研究所が開発したオペレーティングシステムである(このときC言語が生まれている)。
概要
UNIXはおおよそ以下の三種類に分類されるが、UNIXの商標は現在The Open Groupが持っており、SUS(Single UNIX Specification)の認証を得た物が公式にUNIXと名乗れることになっているので、公式にUNIXを名乗れるのは1のみである。
- UNIXの商標を管理する団体The Open GroupよりSingle UNIX Specificationを満たすことの認証を受けたOS。
- ベル研究所で開発されたオリジナルのUNIX及び、オリジナルのUNIXの派生OS。
- POSIXなどのUNIXに関連する規格をみたす、UNIX互換なOS。
分類1によるUNIX
2008年12月現在、SUS認証を受けているのは以下の通り。
- Apple macOS(及び同Server) - 現役。今のところIntel版Leopardが該当。
- HP HP-UX - 現役。PA-RISCからItaniumへ移行。
- HP Tru64 UNIX - OSF/1→DEC Digital UNIX→HP-UXと統合断念。AlphaServer終了ととも販売終了。
- IBM AIX - 現役。ハードはAS/400系とRS/6000系とが一本化されてPower Systemsに。
- IBM z/OS(1.9以前) - 現行バージョンで認証を受けるか不明。
- NCR UNIX SVR4 - NCRがサーバ事業から撤退。
- NEC UX/4800 - 独自ハードのEWS4800の販売終了。
- SCO OpenServer - 旧SCOがマイクロソフトと共同開発したXENIXを完全取得。現SCOが2007年から会社再建中。
- SCO UNIXware - USLのSVR4→Novellへ売却後UNIXWare→旧SCOへ→OpenServerへ統合→現SCOへ。
- Sun Solaris - 現役。
分類3によるUNIX
一般にUNIXと言うと、この意味で用いられることが多い。この場合、Linuxや*BSDなど、互換性を持ったシステムも含まれる。以前は広義な意味でUNIXライクなOSに対して*NIXなどの表記が用いられた。
歴史
ベル研で開発されたオリジナルのバージョン
1969年9月、PDP-7上のアセンブラで開発された。
1971年11月3日、1st Edition(V1) - PDP-11/20上のアセンブラで開発された。
1972年6月12日、2nd Edition(V2)
1973年2月、3rd Edition(V3) - Cで書き直され、パイプが実装された。
1973年11月、4th Edition(V4)
1974年6月、5th Edition(V5)
※Unixが初めて一般に知られることになったのは、1974年にCommunication of the ACMに掲載された論文によってである。論文が発表されると、世界中の大学や研究機関がUnixを試したいと殺到した。ベル研究所の親会社であるAT&Tは1958年の反トラスト法違反事件についての同意判決によってコンピュータ産業への参入を禁止されていたので、Unixを製品化することはできなかった。それどころか同意判決によると、ベル研究所は電話と関係ない技術については開示を要求するすべての人に使用を認めなければならなかった。Ken Thompsonはテープやディスクパックを各所に送付することで要求に応え始めた。[1]
1975年5月、6th Edition(V6) - 1BSDから2.xBSDの元になったバージョン。
1979年1月、7th Edition(V7) - XENIXなど多くのUNIX系OSの元になったバージョン。
1979年5月、32V - V7をVAXへ移植したバージョン。3BSD、SystemIIIの元になったバージョン。
1985年2月、8th Edition - このバージョン以降ベル研でのみ使用された。4.1BSDを取り込んだ。
1986年9月、9th Edition
1989年10月、10th Edition - 最終バージョン
BSDと商用化UNIX
1974年、カリフォルニア大学バークレイ校で初めてUNIXが起動された。
1977年、最初のBSDリリース。pascalコンパイラ、ex。
1979年5月、2BSDリリース。more、termcap、vi、csh。
1979年、3BSDリリース。ベースは32V。VAX用。仮想メモリ。
1980年8月、マイクロソフトとSanta Cruz Operation(旧SCO)がXENIXの最初のバージョンをリリース。ベースはV7。いくつかのバージョンを経てOpenServerになる。マイクロソフトは84年に手を引く。
1980年10月、4BSDリリース。
1981年7月8日、4.1BSDリリース。
1983年9月、4.2BSDリリース。TCP/IPを実装。
SunとAT&Tの参入
80年代からUNIXベンダーが増え始め、UNIX戦争と呼ばれる時期が90年代前半まで続いた。
1982年1月、AT&Tが地域会社を分割し、それまで独占禁止法で参入できなかったコンピュータ事業を開始した。
1982年、AT&Tが、最初の製品であるUNIX SystemIIIをリリース。ベースは32Vやいくつかの派生バージョン。
1982年、Sun Microsystemsが創業、Sun UNIX0.7をリリース。ベースはUniSoft UNIX V7と4.1BSD。
1982年、SunOS1.0をリリース。ベースは4.1BSD。
1983年1月、AT&TがSystemVをリリース。SystemIVは開発に失敗したとされる。
1984年、UNIXの標準化のための業界団体としてヨーロッパのメーカがX/OPEN設立。後に標準規格であるPOSIXをリリースする。
1986年、SystemVRelease3(SVR3)リリース。
1986年4月5日、4.3BSDリリース。
OSF vs. UI
これからの5年間がUNIX一番の混乱期となる。
1988年、AT&TとSunがSystemVRelease4(SVR4)を発表。ベースはSVR3、4.3BSD、XENIX、SunOS。リリースは1990年?多くのSunとBSDユーザが失望。
1988年、SVR4に危機感を感じたDEC、Apollo、HP、IBMなどがOpen Software Foundation(OSF)を設立しOFS/1を発表。リリースは1992年。
1988年、OSFに対抗して、AT&TとSunがUNIXInternational(UI)を設立。
1988年、POSIX.1リリース。→ POSIX
USL vs. BSD
1989年、ベル研内にUNIX System Laboratories(USL)が設立され、AT&TのUNIX事業が移管された。
1989年9月、NeXTSTEP1.0リリース。ベースはMachと4.3BSD。
1990年3月、SunOS4.1リリース。ベースは4.3BSD。SunOS4.1.4までリリースされ後にSolaris1.xと呼ばれた。
1990年、SystemVRelease4リリース?この後、SunはSystemVには関わっていない。
1991年6月28日、4.3BSD NET/2リリース。4.3からベル研のUNIX由来のコードを取り除いたバージョン。
1991年、NovellがUSLに出資した。
1992年2月、386BSD0.0リリース。4.3BSD NET/2をPC上に移植し不足しているファイルを追加したもの。フリー。
1992年2月、BSDiが、BSD/386の最初のバージョンを商用UNIXとしてリリース。ベースは4.3BSD NET/2。
1992年、SystemVRelease4.2(SVR4.2)リリース。
1992年、DECがOSF/1リリース。
1992年7月、SunがSolaris2をリリース。ベースはSunOS4.1とSVR4。
1992年7月、USLがBSDiとBSD Net/2に対して知的所有権について訴訟を起こした。
1992年11月、NovellがUNIXWare1.0をリリース。SystemVRelease4.2と同じもの。
1992年12月頃、NovellがUSLを買収することが明らかに。
その頃日本では
1970年代後半、東大の石田晴久、SRAの岸田孝一らが海外でUNIXを知った。
1976年、石田晴久が日本にUNIXを紹介。
1983年、石田、岸田、斎藤信男、村井純らが日本UNIXユーザ会(jus)を設立。
1985年、Σプロジェクト開始。将来の技術者不足に対応するためだったがSystemVベースのマシンを作っただけで終了。後々まで失敗した公共事業の代名詞になる。
1986年10月、アスキーがUNIX MAGAZINEを創刊。
1987年、ソニーがNEWS-OSリリース。ベースは4.2BSD。Σプロジェクトには関わっていないソニーはそれを横目に発売。
UNIXでないUNIX
時代は前後するが、AT&Tライセンスが厳しく高額になるにつれUNIXライクなOSがいくつか開発された。
1983年9月、GNUプロジェクトがR.Stallmanによって始められた。
1987年、Minix1.0リリース。A.S.TanenbaumがOSの教育用としてUNIX V7互換のOSをゼロから書き上げた。
1991年9月、Linux0.01リリース。L.TorvaldsがMinixに影響を受けて作り始めた。
和解
1993年1月20日、クリントン政権誕生。ゴア副大統領が情報スーパーハイウェイ構想を提案。
1993年3月、USLのBSDiへの訴えが却下された。
1993年3月、Common Open Software Environment(COSE)設立。UNIX標準化のための業界団体。IBM、Sun、HP、USLなどが参加。
1993年4月、NetBSD 0.8リリース。ベースは386BSD0.1と4.3BSD NET/2。
1993年6月、COSEが、Common Desktop Environment(CDE)を発表。OSFのMotifベースのデスクトップ環境。
1993年6月、AT&Tが、USLとUNIXに関する全ての資産をNovellに売却することを決定。当時NovellはPC用ソフトウェアのシェアでマイクロソフトと戦うために多くの企業を買収していた。
1993年6月、NovellはUNIXの商標をX/Openに譲渡した。
1993年12月、FreeBSD1.0リリース。ベースは386BSD0.1。
1994年、USL vs BSDiの裁判の判決に沿って4.4BSD-Liteがリリースされた。
1995年、4.4BSD-Lite2リリース。最後の本家BSD。
1995年、NovellがUNIXWareを旧SCOへ売却。Novellはマイクロソフトとの戦いに敗れ会社が傾きかけていた。
1996年、X/OpenにOFSが合流し、The Open Group設立。
1996年12月、AppleがNeXTの買収を発表。1997年2月、買収完了。
1998年3月、旧SCOが、UNIXWare7をリリース。ベースはSystemVRelease5。SCOはXENIXの子孫のOpenServerというPC用のUNIXも持っていた。
UNIX以外のPOSIX対応
1993年、IBM MVS/ESAがPOSIXに対応。
1993年、WindowsNTがPOSIX Subsystem搭載。Windows 2000まで。
1995年頃、CygnusがCygwinをリリース。Windows上で動作するPOSIXシステムコール互換環境とコマンド類。
1996年、InterixがServices for UNIXリリース。WindowsNT用POSIX Subsystem。
The SCO Groupへ
またか、誰もがそう思った。
2000年8月、Caldera Systemsが旧SCOからUNIXWareとOpenServerの権利を取得した。買収完了は2001年5月。
2001年3月、Mac OS X1.0リリース。
2002年1月23日、 Caldera InternationalはPDP-11のV1からV7までと32Vをライセンスフリー化した。→ Ancient UNIX(Wikipedia)
2002年8月、CalderaはThe SCO Groupに社名変更。旧SCOはTarantellaへ社名変更。
2003年3月、SCOがIBMに、「UNIXのコードを無断でLinuxに使用した」として訴訟を起こした。
2005年、SCOはSolarisのオープンソース化は問題ないとした。
2005年6月、Solaris10のソースをオープン化。
2007年8月、SCOは何も証拠を出せないまま敗訴。UNIXの著作権はNovellにあると判決。
2007年9月14日、SCOは倒産、再建中。
2009年8月24日、SCOは先の裁判の判決の一部を覆すことに成功、裁判の差し戻しが決定。
2010年3月30日、差し戻し審でUNIXの著作権はNovellにあると改めて確認。
2011年、SCOはUNIX OSをUnXis(現Xinuos)に売却。
2016年2月16日、SCOの訴訟はIBMとSCOの合意をもって終わりとなった。
UNIXの定義
2007年10月、Mac OS X Leopard(現macOS)リリース。SUS認証を受けて正式なUNIXになった。これと同時期にSUSの認証を得たものがUNIXの商標を名乗ることを許されるようになった。
未来
2038年1月19日、UNIXの2038年問題。
C言語のtime_t型が32ビット符号付整数となっている環境(多くの32ビットアーキテクチャと、一部の64ビットアーキテクチャ)で桁あふれが起きる。
関連項目
- オペレーティングシステム
- Mac OS X
- Linux
- MINIX
- *BSD
- Plan9
- デニス・リッチー(UNIX開発者)
- 美容室UNIX(オペレーティングシステムとは関係なし)
外部リンク
- The Single UNIX Specification
- UNIX History - かなり詳細な系統図がある。
- bsd-family-tree - BSDに関係する系統図。NetBSDに含まれるファイル。
脚注
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