概要
209系をベースに最新のIT技術の導入や通勤・近郊形車両の仕様統一などを目指し開発された。
その期待は2000年に本格的な量産が始まっていないのに試作編成が鉄道友の会からローレル賞が送られてしまうほど大きく、その後量産され活躍を開始した同系は大きなトラブルも無く次々と既存車両を置き換えていった。
掲げられた目標はのちの新車の設計にまで影響する(E233系・E331系・E531系とそっくり)ほど高度に完成された形で達成している。
TIMSと呼ばれる情報伝送装置では209系のモニタ装置の機能を大幅に強化(というより別物)。
力行、制動、放送、車内ディスプレイの指令のほか、ブレーキ力の管理や点検まで自動でやってくれる。頭良すぎ。
また主電動機の改良により、走ったり停まったりを繰り返す通勤電車と高速で一駅何分も走る近郊電車の走り装置を共通化。
扉数の統一なども含め、通勤型と近郊型の区分をなくし、新たに「一般型電車」という新しい車両区分を生んだ。
もう少し詳しく書くと、「通勤形」としての加速度はモーターの回転力を車輪に伝えるための歯車の比率を1:7.07と大きく取り(歯車比を大きく取ると起動加速度を高く取りやすくなる)確保。
しかし歯車比を大きくするということは、高速性能を捨ててしまうということでもある。
そこでモーターの回転数を定格・許容回転数とともに今までのモーターよりも高め、高速域での加速性能までも両立してしまったのである。
ただ、いくら高速回転モーターを使っているとはいえ、さすがに通勤電車用の歯車比である1:7.07では高速性能不足が見受けられたのか、或いは騒音の問題があった(高ギア比にするということは、高速域ではモーターが余計に高速回転しているということでもあり、それはすなわち騒音が大きくなるということでもある)のかのどちらかはわからないが、E531系以降では高出力モーター+低歯車比にシフトしたようだ。
パンタグラフは全車シングルアーム型のPS33Bを載せたことにより、中央東線の高尾以西に存在する「狭小トンネル」区間も通過可能である。
このパンタグラフは既存の他車に載せ替えられる例もあり、部品としての汎用性の高さも評価できよう。
E231系の活躍はJR東日本内にとどまらず、この形式をベースとした私鉄向けの多くの派生車両(相模鉄道10000系・東急電鉄5000系ファミリー・東京都交通局10-300形)が誕生した。
番台ごとの分類
900番台
先述の試作車で、黄色帯を巻き当初209系950番台として1本のみ落成。のちにこのE231系へと改称された。
現在は武蔵野線で0番台にまぎれて活躍しており、出会えるかは運次第。
最初の量産車である中央・総武緩行線用の車両は同編成と仕様をほとんど同一としており、試作車とは言え完成度の高さが伺える。
特徴的な点として編成内に三菱電機と日立製作所の2種のVVVFインバーター制御機を積んでいることが挙げられる。
もちろん磁励音はそれぞれの個性を存分に発揮、どの車両に乗るかで違う走行音が楽しめる。
この編成での試用の結果、三菱製の制御機は0番台に、日立製の制御機は1000番台にそれぞれ採用された。後に武蔵野線に転属した。
0番台
中央・総武緩行線、常磐線快速・成田線我孫子支線と武蔵野線で活躍。
通勤タイプで全車ロングシートである。
中央・総武緩行線はE231系の量産車最初の投入線区。車体に巻かれたフィルムは黄。
10両編成で、5号車に6扉車を連結しているのが特徴であった。
先に活躍を開始していた209系500番台とは異なる銀色の先頭部となった。
後に山手線から500番台が移籍してきたため、中央・総武緩行線を走る編成数は減ったものの、500番台だけでは賄いきれないため、現在も6ドア車を抜いた代わりにモハユニットを追加した一部編成が残留したままである。
続いて常磐線快速・成田線我孫子支線に投入されたものは10連と5連が用意され、混雑にあわせ増結が行われるようになった。エメラルドグリーンをベースにウグイス色を下に加えたフィルムを身に纏う。
先に投入された中央・総武緩行線向けと比較すると幕帯や車内LEDに差異が見られるが、これは量産途中で変更となった計画をいち早く反映させたものである。
なお、中央・総武緩行線の一部は500番台が転属してきたことや、上野東京ライン開業による増備のため、2本が常磐線快速・成田線我孫子支線に転属したほか、武蔵野線・八高線・川越線(川越以西)に大量転属し、同線を走っていた205系・209系を置き換えている。
1000番台
宇都宮線(東北本線上野口)、高崎線、東海道線、湘南新宿ライン、上野東京ラインで活躍。湘南電車の伝統であるオレンジとダークグリーンの帯を身に纏うが、少し明るめの色使いとなっている。
近郊タイプで基本編成の10連と付属編成の5連が存在し、前灯が高く衝撃吸収構造の先頭部や、211系時代に混雑対策のためオールロングシートとしたことが長距離利用客から不評だった反省から普通車の半数近くをセミクロスシート車としたこと、トイレ付き車両の連結、2階建てグリーン車などの特徴を持つ。セミクロスシートの配置などは基本的にE217系と同じである。211系時代はセミクロスシート車の乗車定員がロングシート車の乗車定員より1両あたり24人も少なかったが、本系列ではセミクロスシート車とロングシート車の乗車定員は全く同じとなり、このことも半数近い車両をセミクロスシート車に割り当てることが出来た要因の一つとなっている。
性能面では通勤タイプより若干加速度が低いほか、搭載するインバーター制御機の仕様により主電動機からなんとも言えない癒し系(?)のサウンドを奏でる。
最初に登場したのが宇都宮線・高崎線用の小山車両センター所属車である。
当初グリーン車は連結されておらず、後に東海道線への新車投入を絡めた大規模な車両組み換えが生じることとなった。
わずかなブランクを置き東海道線に投入された車両にはいくつか仕様変更がされている。
具体的には先頭部のブラックフィルム貼付け、車外スピーカ準備蓋、濃い緑色になったガラス、セミクロス車の数(9・10号車もセミクロス化)、便所位置、末期製造分のスカートの形状など。
また増備の方法もユニークで、6・7号車を除いた8両で車両メーカーを出場、宇都宮線編成にグリーン車を組み込むことで捻出されたサハ2両を挟み10連を組成した(最初の1編成はこの方法をとらず全車新製)。
こうした増備の経緯や湘南新宿ライン運用から、従来暖地向けの車両が使用されてきた東海道線にも「半自動ドア」スイッチ等の耐寒装備つきの本系列が投入されることとなった。
ちなみにこの1000番台は後から東海道線・高崎線・宇都宮線に投入されたE233系3000番台と連結が可能な仕様とされており、2014年12月に併結試運転が行われ、2015年3月14日から湘南新宿ラインや同日開通の上野東京ラインでE233系3000番台との併結による営業運転が開始された。
また、小山車両センター所属車両と国府津車両センター所属車両の運用が共通化し、E233系含めて所属関係無く、運用に就くようになった。
500番台
山手線向けに登場、通勤タイプである。ウグイス色のラインが入る。
すべての車両が自社の新津車両製作所(現:総合車両製作所新津事業所)にて製造された。
車内には先代205系6扉車の車内で導入されたLCDディスプレイを本格採用。
ドア上鴨居部に2基設置して左がトレインチャンネル、右が次駅案内や運行情報などを常時表示している。
205系から導入された6扉車を本系列では1編成につき2両に増やしているが、混雑の緩和と安全確保を理由に2017年に向けてホームドア構想が進んでおり、運用の事情から6ドア車両の廃止が決定。全ての6扉車が新造の4扉車に差し替えられた。このうち10号車のドア配置が変わっており、京浜東北線E233系10号車に合わせる形で11号車寄りのドアが通常の車両より前側にずれている。
特筆すべき点として、ブレーキに電力回生ブレーキに加え0kmの完全停止まで機能する純電気ブレーキを装備している。
6M5TのM車比率とともに重要線区山手線の安定運行・サービス向上に貢献している。
なお、2015年秋より山手線にはE235系が投入されたが、一部の編成を除き、10号車は6ドア車から入れ替えられた関係で車齢の浅い4600番台が改造されている。
そんな中、520編成が10号車を含んだ8両(4~6号車を抜いた)で総合車両製作所新津事業所に配給され、10号車を切り離した後に大崎に戻された。10号車はE235系の量産先行車編成に転用されたのだが、残り10両については帯が黄色に変更され、ミツA520編成として中央・総武緩行線に転用されるものと見られた(ほかにも先頭車にホーム検知装置が取り付けられた)。
そして、2014年12月1日から運用を開始。LCDについても中央・総武緩行線仕様に書き換えられている。
800番台
東京メトロ東西線乗り入れに使用されていた301系・103系1000番台及び1200番台の置換えとして登場した。
大分類では通勤タイプに当てはまるが地下鉄乗り入れのために他番台には見られない装備を持つ。
地下鉄直通規格(A-A基準)を満たすため先頭はプラグドア式の非常扉を設置した他、旧営団線の建築限界にあわせるため車体幅を裾絞りがない2,800mmとしている。
制御機器は山手線仕様の500番台をほぼ踏襲しているが、直通協定で定める起動加速度3.3km/hを満たし、メトロ線内に存在する40‰の急勾配(早稲田~飯田橋間)への対応をとる為に、M車比率が6M4Tと高めになっている。
先代301系などは8M2Tだったので、VVVF制御による走行性能の向上がよくわかる例といえよう。
またメトロ05系・07系・東葉高速鉄道2000系の装備と合わせるために本系列としては唯一車外スピーカーを設置している。車外スピーカー関しては、他区分のE231系はすべて準備段階または未対応としている。
なお直通協定により東葉高速鉄道へは乗り入れない。
関連動画
関連項目
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