E531系とは、JR東日本が保有する交直流一般形電車である。
概要
JR東日本常磐線では、柿岡の地磁気観測所への影響を懸念し取手以北が交流電化となっているため、交直両用の近郊型電車である415系を使用して普通列車を運行してきた。
しかし、2005年に首都圏新都市鉄道・つくばエクスプレスが開業したことによる競争力の強化の必要性が出てきたことや、何より415系自体が老朽化しているということもあり、新型車両への置換えが決定。(尤もその前にE501系も入っていたが)
既に増備されていたE231系をベースとしながらも数々の新機軸を取り入れ、尚且つJR東日本の普通電車最速の130km/h走行が可能なE531系が開発されることとなった。
尚、E531系の登場により上野口から415系は撤退。交流区間でステンレス車体の1500番台がローカル運用に就いている。
2014年になって上野東京ライン開業による運用増加と415系置き換えのために増備が行われ、現在は水戸線でも定期運用に就いている(過去に代走で運用に就いていたことはあった)。
2015年10月より415系1500番台の置き換えとして、準耐寒耐雪仕様車の3000番台が5両付属編成として落成した。
また、東北本線黒磯駅での交直流切替設備が車上切替へ移行したことで、交流専用車両が同駅への入線が不可能となったことで2017年10月より東北本線黒磯駅~新白河駅間での営業運転を開始した(所属は勝田車両センター)。
現在は0番台が基本編成10連26本260両、付属編成5連27本135両、3000番台が付属編成5連7本35両、計430両が勝田車両センターに配置されている。
仕様
車体
編成は10連の基本編成(4M6T)と、5連の付属編成(2M3T)で構成されている。
車体はE231系をベースとした軽量ステンレス製であるが、高速走行を行うため若干の強化が行われている。このため交直流機器の追加もあって、E231系より重量が増加している。
低重心化とバリアフリー面から、床高さをE231系より下げている。このためかどうかは知らないが、曲線通過時の安定性はE231系よりもよくなっているような気がする(編集者の主観)。
前面は後のE233系にも改良され、採用されたデザイン。前照灯はHID(高輝度放電灯)を運転台上部左右に配置。標識灯は行き先表示用LEDの左右に配置されている。
車内設備
客室もE231系を基本とするものの、様々な部分に新機軸が導入されている。
普通車
車内に入ってまず気づくのが、「E231系と比べて車内が明るくなった」ということであろう。
E531系は内装のFRP化粧板の色を見直しており、白色に近いものに変更している。このため車内の明るさは圧倒的である。
各ドア上には先に登場した常磐快速線用E231系でも採用された、2段式のLED情報装置を搭載。行先・列車種別・次停車駅と案内メッセージを同時に表示することが可能になった。尚、号車表示もここで行っている。
吊り革はE993系「ac@train」で試験された、新型の黒い吊革を採用。一部のものは身長の低い人でも握りやすいように吊手の部分が長くなっている。とは言え若干長すぎるのか?登場して間もない頃は吊革をポールに巻きつけて、乗客が勝手に長さを"調節"している光景も見られた。
優先席付近の吊り革は黄色いものとなっている。
天井のラインデリアのルーバーは、E231系で使用されていたFRP製のものから私鉄車両で見られるアルミニウム製の連続したものに変更された。しかし、クーラーのある場所はルーバーが連続しているだけであり、肝心のラインデリアは収まっていない。
荷物棚は従来のパイプ棚から、アルミニウムの板を用いたものに変更された。
荷物棚にはスリットが開いており、ここから天井の照明が漏れるという構造になっている。
尚、これらの仕様もE233系に引き継がれていることは言うまでもない。
トイレは車椅子対応の洋式タイプ。車椅子対応によりトイレスペースが大型化しているため、トイレ設置車はトイレの脇の客室用ドアが若干中心寄りにズレている(停車時に確認可能)。
・・・余談であるが、このトイレのドアは開閉ボタンで操作する自動ドアであるが、割と頻繁に故障を起こして「閉まらなく」なってしまうこともかなり多い。主な症状としては、「閉」ボタンを押してもドアが閉じない・手で閉めても勝手に開いてしまうなど。また、ドアを閉めてロックを掛けないと、警告の音声メッセージが流れるという仕様であるが、これはドア故障で「閉めることが出来ない」状態でも流れる。
それと、 混雑時にトイレを体裁の良い「一人用個室」として使用するのはやめよう。みんなが迷惑するぞ!
普通車はロングシートとセミクロスシートの2種類の座席が存在する。
ロングシート車
ロングシート車は基本編成の3・6~8号車と、付属編成の11・12号車。
座席はE231系よりも詰め物が厚くなり、また座席にSバネも入ったことにより座り心地は劇的に向上している。
また一人辺りの占有幅もも460mm(E231系は450mm)に拡大された。
セミクロスシート車
セミクロスシート車は基本編成のの1・2・9・10号車と、付属編成のの13~15号車。
ロングシート同様セミクロスシートもE231系からの改善が図られている。
グリーン車
E531系は登場時は普通車のみのモノクラス編成であったが、東北線(宇都宮線)及び高崎線、そして湘南新宿ラインにも拡大された「普通列車グリーン車」が好調であったため、2007年にE531系にも二階建てグリーン車が導入されることとなった。
ちなみに正式に「グリーン車」として営業開始する前は普通車扱いであったため、上野駅で乗客が4・5号車乗車口に並ぶ姿も見られた。
車体はE231系のグリーン車をベースとしたものであり、座席も970mmピッチの4列配置回転リクライニングシートと共通している。
蛍光灯カバーは従来の半透明のプラスチックを用いたものから、多数の孔の開いた金属カバーのものに変更されている。
「カッコイイ」や「蛍光管が見えて安っぽい」など様々な意見があるが、少なくとも編集者は「カッコイイ」と思う。
尚、車端部の平屋部分の客室は、従来通りの蛍光灯カバーを採用している。
デッキ部から1・2階に移るための階段の照明、これに気づいたあなた、鋭いです。
お気づきの通り階段の照明は従来の白熱灯から、白色LEDを用いたものに変更されている。
だからと言って物珍しさにあまり覗き込まないように。LEDは点光源であるため、直視すると非常に眩しいですよ。
各座席上にはSuicaグリーン券システムに対応するためにカードリーダーが搭載されている。
尚、裏技?として、「同じSuicaでもう一度タッチすると、カードリーダーの確認用LEDを赤(チェック前)に戻せる」ということが挙げられる。席を移りたいときには是非ともお試しを。
E531系のグリーン車は二階建てであるが、これはすなわち「車端部の平屋部分」「1階席」「2階席」の3つの仕様が存在していると言うことである。
各客室の特徴をまとめると、
- 平屋部分:天井が高くてゆったりしている、定員が少ないため個室感覚で使える、荷物棚がある
- 1階部分:低い位置にあるため揺れが少ない、地面スレスレのスピード感を味わえる、駅停車時にムフフな光景が拝める(実践するなよ!)
- 2階部分:見晴らしがよい、(1階部分よりは)天井が高い、子供受けが良い
・・・などがある。
仕事帰りで疲れていて休みたいときには揺れが少なくて快適な1階部分、グループ旅行や長距離乗車のときは個室感覚で利用できる車端部の平屋、子供連れのときは子供ウケの良い二階などを使い分けるのも乙である。
機器類
高速走行を行うため、機器類は一部にE653系特急形電車を元にした技術を採用している。
制御方式はVVVFインバータ。日立製2レベルIGBTインバータで新設計の主電動機「MT75」を駆動する。
主電動機は上で挙げた通り、新設計のMT75を使用。一時間定格出力はE231系のMT73の95kWから140kWに強化され、高速運転に対する出力を確保している。
駆動方式はTD継手式平行カルダン駆動。
ギア比は高速運転に向け、16:97=1:6.06に設定。ちなみにこれは223系や313系、そしてつくばエクスプレス車両よりも高速向けの設定である(同車両は15:98=1:6.53)。
台車はE653系のDT64を元にした新型のDT71を採用。高速運転に備え、全車ヨーダンパを装備する。
ブレーキシステムは全電気制動対応の回生ブレーキ。
基礎ブレーキ装置のうち、付随車のディスクブレーキは高速からの制動に対応するため1軸あたり2枚に増加。駅停車中や踏切通過などの際に確認できる。
補助電源装置は140kVAのSIVを2連セットで装備し、計280kVAの出力としたもの。これは後のE233系の二重化思想に通ずるものであるとも言える。
交直流モードの切り替えはE501系・E653系に引き続き、ATS地上子で列車位置を検知し、自動的にモード切り替えを行うものを採用。ちなみにこれはE991系「TRY-Z」で試験されたものである。
パンタグラフはE231系とは逆向きに付いているが、これは交直流機器を追加したことにより重量のバランスを保つためである。ちなみにこれはE531系に限ったことではなく、交流・交直流車両でシングルアームパンタを採用する車両の多くで見られる。
尚、これらの機構はJR東日本の新型ハイグレード電車「E655系"和"」にも改良を加えられ、採用されている。
言い方を変えれば「新型お召し電車とほぼ同じ足回りを持っている」とも言えよう。
性能
となっている。
ダイヤ上での速度種別は湘南新宿ライン特別快速と同じ「A21」を指定。
これは、「10パーミルの上り勾配での均衡速度(車両の性能的に出せる最大の速度)が121km/h」としてダイヤを組む、ということである。
高出力のモーターにモノを言わせたE531系の力行性能の片鱗を垣間見れるのは、なんといっても高確率で130km/h運転を行う佐貫~牛久間であろう。
この区間は下り列車(牛久・土浦・水戸方面)の場合で見ると若干の上り勾配が立ちはだかっているが、佐貫を発車したE531系はその勾配が存在していなかったかのように最高速度の130km/hに到達、定速運転に入ってしまう。
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130km/運転
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