OSO18とは、北海道で獣害を引き起こしていた羆のコードネームである。「オソ」ツベツで発見された、足幅「18」cmの熊。
概要
標茶町を始めとした北海道東部で猛威を振るっている羆の呼び名。最初に目撃された場所がオソツベツという土地だったのと、雪上に残された前足の横幅が18cm[1]と計測されたことから、標茶町で酪農を営む第一発見者の高橋雄太氏が命名した。滅多に人前に姿を現さない神出鬼没なさまから「忍者グマ」という別名でも呼ばれる。
体長は2m、体重は300kgほど。ヒグマの雄の成獣としては平均的な体格とされる。
獲物を食い尽くさずすぐ現場から離れる異常な警戒心の持ち主で、襲撃と逃亡を繰り返しながら散発的に家畜を襲い続けていた。
釧路湿原を抱える標茶町は人口7000人の住民よりも乳牛の方が多い酪農が盛んな土地。本来羆は乳牛にはあまり興味を示さないとされるが、OSO18はこれまで確認できただけでも66頭もの乳牛を殺傷している。しかも牛に一撃を与え大怪我を負わせながらも殺さずそのまま立ち去るなど、猟奇的とも言える行動を取っており、特異な個体だと見なされている。
また、フェンスの隙間から侵入するなど自由自在に動き回り、工事現場で使われるライトなども効果がなく、電気柵や罠肉が入った檻などのトラップにも掛からない。姿を現すのは決まってハンターが銃器を使用できない真夜中で、移動経路に川の中やガード下を選択して痕跡を残さないようにするなど恐ろしく頭がいい。一頭のヒグマのために特別チームが結成され、凄腕の熟練ハンターやヒグマの生態研究の権威を交え禁猟区間で特別狩猟許可を出してまで対策をしたにも関わらず、痕跡を見つけることすら難航し数年間被害を出し続けた。
これまでに二千万円相当の損害を出していたOSO18だが、前述した個体としての厄介さに加え、ハンターに対し動物愛護団体の抗議が殺到しており、更に新型コロナウイルス蔓延によってアメリカの銃弾の生産工場がストップし、2020年の大統領選後に起こった混乱がアメリカ全土を襲いその不安からアメリカ国民が銃弾を買い占めたことで銃弾が日本まで十分に流通せず、迂闊に動くことができない状態だという。
実際のところ
そもそもOSOが山から平野に降りてきたのは、以下のような経緯であった。
- 北海道のヒグマは雑食ではあっても基本的に草食(8割草食、2割昆虫食)であり、サケなどを取ることはあっても獣肉は積極的には食べない。
- 人間の保護活動で増え過ぎた鹿(エサ不足で餓死したもの)あるいは人間に駆除されたが死体を処理せず放置された鹿、猪を食べて獣肉の味を覚えた。熊は一度獣肉の味を知ると異常に執着するようになるらしい。
- 他方で、酪農家は乳牛の飼料として高栄養価の牧草とデントコーンを育て始めた。
- 増えすぎてエサのなくなった鹿が山から降りてきて牧草を求め人里に降り始めた。人里に降りる鹿は駆除対象であるが上記の通り数が多すぎて死体が放置されるようになった。
- 鹿の肉を求めて山から降りてきたヒグマが乳牛と出会い、そこで牛の肉の味を覚えた。また、リスクを犯さずに高栄養を取れるデントコーンの味を覚えたことで頻繁に姿を現すようになった。
しかも、北海道東部ではOSO以外にも家畜を襲う羆がいることが確認されている。これらは鹿肉のタンパク質とデントコーンのデンプンによって、かつてOSOが想像されていたような400kg級の巨大サイズにまで成長している。前述したように、人間によるいびつな生態系の破壊が原因で肉食の本能が呼び覚まされてしまったのだ。
OSO18の異常に高い警戒心は小熊の時に人間に猟銃で打たれたか、または箱罠にひっかかりながらも生き延びたからではないか?と推測されている。人間は恐ろしいものだと認識しているため警戒するが、肉は欲しいから牛を襲う。一方で、少しでも危険を察知すると牛を仕留められそうでもあっさり手を引き逃亡する。この警戒心の強さが人間には猟奇的な行動に見えていたのかもしれない。
明治の開拓時代にも人間の過度な生態系への介入で食物連鎖のバランスを崩し、似たような経緯で結果的に羆が人を襲う事件が頻発していた。当時は大量駆除で対処したようだが、現代ではそのような対策は取れないため農家と行政は農業と環境問題の両立に苦心している。
駆除
2023年7月30日にオタクパウシという土地で駆除されていたことが発覚した。OSO18が一般的な熊と見分けがつかない事からハンターは知らぬうちに駆除しており、後に体毛などをDNA鑑定にかけた事から同個体と判明したとの事。駆除された後はそれがOSO18の肉だとは知らずに解体され、珍味として海外に出荷されたり国内のジビエ料理店で炭火焼として提供されたりした。
NHKの取材を簡単にまとめると以下のようになる。
ある痩せ衰えたヒグマがオタクパウシで発見され、動く気力が無いのか激しく抵抗する様子もなくそのまま市役所職員の手により屠殺された。他の熊と同様に事務的に解体業者に運ばれ、その個体がOSO18と気付いた時には既にバラバラに解体されており肉は出荷済み、骨や毛皮などの不可食部位は堆肥にするため残滓置き場に廃棄されていた。足幅はおよそ16cmだったようだが、高級食材として売ってしまったため足のサイズを正確に知ることはできないという。
NHK取材班がゴミの山の中からOSO18のものと思われる骨を回収した。骨や牙を科学的な分析に掛けたところ、年齢は9歳前後で老衰するほど年老いておらず、3歳くらいの若い頃から鹿肉を常食し始め、牛に被害が出始めた頃から牛を常食するようになっていたことが分かった。通常のヒグマに見られる植物食の形跡は殆ど無く、肉ばかりを食っていたようである。駆除される少し前に何らかの理由で牛を狙わなくなっていたらしく、餌を充分にとれず栄養不足で痩せていた。
ある時期から肉ばかりを求めるようになったために食糧を植物に頼らないようになり、肉が手に入らない時にも植物を食わなかったために痩せて衰弱してしまった。個体としては特段強いわけではなかったため他の雄に縄張りを追いやられ彷徨っているうちに力尽きて、あっさり人に見つかり人里に降りてきた無名の衰弱個体として駆除された、というのが怪物ヒグマOSO18の最期であった。
余談
関連動画
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関連リンク
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関連項目
脚注
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