概要
書いて字のごとく「猟に使われる銃」
基本、狩猟動物を撃てれば何でもいいのだが、拳銃やサブマシンガンが有効な位置まで近づかせてくれる動物はさすがにいない(そして近づかせてくれるか向こうから襲ってくるような大型動物には拳銃弾なぞへのツッパリにもならない)のでこれらは除外される。
銃に詳しくない人でも、「とりあえず長い銃」を想像するかもしれないが
威力・命中精度・撃ちやすさなどを加味するとあんな形に収まるため、そのイメージで間違いない。
猟銃の特徴
猟銃に使われる銃は、どれも人を撃つこともできるものだが、動物を相手にするため軍用銃とは異なった進化を遂げている。
連射性が重視されない
当たり前だが動物は人間の兵士のように撃ち返してはこないため、弾幕を張って相手を威圧する必要がない。また、動物は初弾で急所を狙い打たない限り、被弾しても即座に全力で逃走するため、連射する意味がほぼ無い(逃げる動物に当てるのはどんな狩人でも困難を極める)。後を追いかけて何発も撃ち込めばそりゃあ大型動物だって死ぬだろうが、毛皮は穴だらけ、肉は血が回りまくって食えたものではない獲物など売り物にはならない。
昨今、有害動物の駆除ばかりクローズアップされて誤解されがちだが、狩猟の本来の目的は「獲物を手に入れる」ことであって「動物を殺害する」ことではない。猟銃に求められるのは的確に急所を狙い打つ精度と一撃で確実に行動不能にさせる破壊力である。そういう理由から、猟銃の装弾数は低く抑えられており、大体5発以下。
日本では法律によって弾倉(マガジン)にライフルでは5発、散弾銃では2発(ついでに、暴発防止のため撃つとき以外は薬室に弾を入れない運用が一般的)までと決まっており、弾倉にはそれ以上入らないよう部品がつけられ、これを外す改造は犯罪である。ではどうしても2発以上撃たなければいけないときはどうするかって?排莢口から直接弾をねじ込むんだよ!軍用銃ではできないことも多いこの動作、猟銃では大体できる。
弾薬が多彩
基本的に人間相手しか想定していない軍用銃とは異なり、猟銃が想定する相手はハトやウサギなどの小動物からグリズリーやゾウなどの素手だと逃げるしかないような巨大な動物に至るまで多岐に渡る。勿論、これらすべてに対応する銃なぞあるわけがなく、狩人はまず狙う獲物を想定して使用する銃や弾を選ぶ。
例えば、鳥撃ちにはそれ用の粒の細かい散弾を使うべきで、クマ撃ち用の大口径弾を使っても命中が期待できないばかりか命中しても鳥はアワレ爆発四散するという結果に終わるだろうし、ゾウ撃ちに小動物用の.22LR弾のライフルを持ち込んだところで何の役にも立たずゾウを怒らせるだけに終わるだろう。ついでに怒らせた狩人は死ぬ。
狙う動物により使う銃弾は変わり、銃弾が変わればそれを撃てるライフルも変わる。同じメーカーの同じ形式の銃でも、使う弾によっていくつものバリエーションが存在するのだ。最たるものが流通する大体の弾にバリエーションを持つアメリカ生まれのベストセラーライフル、レミントンM700である。
おもな分類
猟銃には大きく分けて3つの系統があり、それぞれに特徴がある。
エアライフル
圧縮された空気圧で専用の『ペレット』を飛ばして射撃する空気銃。空気銃と侮るなかれ、カラス程度の鳥なら射程内であれば首を貫通するくらいの威力がある。主に鳥撃ちに使用され、射程は数十m程度。銃に内蔵されたポンプで空気を圧縮するスプリング式と圧縮空気を充てんしたボンベを装着するプリチャージ式が存在する。
散弾銃
みんな大好きショットガン。
- 発射した際、一発の弾丸ではなく小さく細かい多数の粒弾が発射されるもの。
- 粒弾の大きさと数量は鳥撃ち用/鹿・猪・クマといった大型獣用で異なる。
- 一発だけの弾丸を発射する弾薬(スラッグ弾)もある。
- 後述のライフルほどではないが、割と射程がある。
ただし、ゲーム的に「至近距離で当てればライフルより強い!」なんてことは全くなく(そもそもとどめ刺しでもなければ元気な動物にそんなに近づけない)、散弾もそこまで散らない。ミリタリー畑の人間には奇異に映るかもしれないが、キチンと高精度のスコープを取り付け、肩当て膝撃ちで狙い撃つのが基本だ。もっともメジャーな口径12番で鹿撃ち用のバックショットを使う場合、100mくらいはちゃんと狙える。
動作方式によって3つに大別され、
ガシャッコンと銃身下部の持ち手を前後させることで、装弾筒の弾を薬室に送り込むタイプ。ショットガンと言われてパッと思いつくのは多分これだろう。
トリガー下のレバーを大きく動かすことにより装弾筒の弾薬を薬室に送り込むタイプ。ライフルでも採用されることがある。「ターミネーター2」でシュワちゃんが使っていたウィンチェスターM1887が代表的だが、あの銃身をグルンと回すアクションはかなりイレギュラーな使い方である。
一発撃つごとに引き金の上を捻って、手前に引いて戻す方式である。
後述のライフル多く使われているが、構造が単純&高信頼性なため採用されているものもある。
(→ ボルトアクション)
銃身を意図された部分で『折る』ことにより排莢を行い(大体の銃でコッキングも同時に行われる)、手で直接薬莢を装填するタイプ。2本の銃身を束ねた、上下もしくは水平二連銃が主流。水平二連は『両引き』と呼ばれる二つの引き金を生かした「左右の銃身で絞りや弾種を変えて撃ち分ける」などの変態的熟練技などが語り草になるが、部品強度の問題やどうしても横方向にかかる独特な反動などから廃れ気味。なお、上下二連はクレー射撃の場などでバリバリの現役である。(こちらの引き金は基本的に普通の『単引き』)
自動式
いわゆるオート。ガス圧で次弾を装填するため、構えを解かずに次が撃てるのが特徴。但し、数を撃つ必要性が狩猟ではほぼ無いため、治安組織用のそれと違ってマガジン弾倉式はほぼ存在せず、他の方式同様に装弾筒に弾を込めていくのが主流。当たり前だが言われるほど動作不良は出ない、が「やはり使い慣れた物を」と自動式を回避するものも少なくない。
が存在する。
様々な大きさの散弾やスラグ弾(一粒弾)など弾薬の選択や管理、反動を考慮した適切な射撃姿勢、スコープの選定や調整など、散弾銃には猟銃に必要な要素が全て詰まっている。逆に言えば、こいつを十全に使いこなせなければ、次の段階へ進むなど夢のまた夢である。
ライフル(小銃)
強い、遠くまで飛ぶ、命中精度が高いと3拍子揃った人類最強の友。こいつをもって初めて人類は大型野生動物と同じステージに立つ…というのは言い過ぎか。その火薬量が産み出す弾速と弾頭重量による射程距離と精度、そして破壊力(弾薬によるが)はまさしく銃の王である。
おもに小動物に使用する.22LR弾から(なお、こいつを使った狩猟は日本国内では違法)、クジラも射殺する.577T-REX弾とか言う悪ふざけの産物(メーカーはティラノサウルスも射殺して見せると主張している)まで、膨大な種類の弾薬とそれに対応したライフルが存在しており、ライフルを手にすることになった狩人はまず狙う獲物を考慮して弾を選び、それからそれに対応した銃を選ぶ。ただし、どの弾にも大体バリエーションがある銃もある。そう、レミントンM700ならね。(国内人気はサコーやミロク、サベージなど。)
主な動作機構は概ねボルトアクション。オート機構を搭載したものが狩猟に使われることもあるが…軍用銃よろしくフルオートで弾幕、という運用は基本的に想定されないだろう。熊を相手にするような大口径弾を秒間何発と撃ったところでまともに当たらないだろうし、反動を受け止める人間の方が怪我をしそうである。
例外的なのが水平二連ダブルライフル…アレは英国上流階級の浪漫である。サバンナの巨獣相手に『会敵してから2発しか撃てない』大口径ダブルライフルを持って挑む命がけの戦い、正しく浪漫である。なお貴族は従者に弾込めをさせつつ、持たせていたスペアのダブルライフルを使って3発目以降を撃つ。うーん英国紳士!
軍用ライフルをそのまま狩猟に使えば猟銃…という訳ではない。人間とクマなどの大型獣では体格も耐久性も骨格(骨の厚み)も異なるため同じ基準で測ることはできない。
その他・トリビア
最高の猟銃と最高の射撃の腕を持っていればハンターになれる
…わけではない。獲物の特性や追跡技術、サバイバルの知識や経験も必要である。
日本国内
※責任・使用・運搬・禁止事項など等いろいろ → 基準問題 (pref.kyoto.jp)
・日本では誤射を防ぐため、猟銃+迷彩服は着用できない。また、スコープが装備されているものは「精密に狙う」だけでなく「対象物が撃って大丈夫なものか」を確認する意味もあり、なぜか散弾銃にスコープがついてる場合があるのはこのためで散弾銃+スコープ=素人という訳ではない。(ド素人に猟銃免許は下りないし、問題を起こせば免許や猟銃を取り上げられてしまう)
・施錠できるガンロッカーでの保管が義務付けられている。海外の愛好家やエアガンのように部屋に飾っていつでも眺められる…という事はできない。用もないのに出しておくだけで違法である。エアガンで我慢してください。
・どうだ、お前(猟銃免許なし)も一発撃ってみるか?面白いぞ!…もちろん違法。…田舎の山中でこっそりやってもバレないかもしれないが、安全管理の無い素人に渡して、変な方に向けて引き金を引いてしまい大事故になるのは海外でもよくあるためリスクしかない。渡した本人が撃たれる自業自得なパターンも稀にある。
・身辺調査もあり、前科はもちろん借金があると猟銃は所持できない。
そのまま銀行や現金輸送車を襲いにに行けるし、警察官の防弾チョッキくらいなら余裕で貫通してしまう。
・猟銃免許を持っている人が少ないため、猟銃自体の値段が他国よりボッタクリ高額。海外だとまあまあ安価。猟銃と免許類を返納しても猟銃の価格は帰ってこないため、弾薬やガンロッカーなど意外と出費がかさむ。「金に余裕がある人なら犯罪をしないでしょ」という意味も含まれているかもしれない。
もちろん猟銃を持っている人=金持ちではないし、むしろ出費のほうがが多くコスパが悪いのが現状。
・猟銃免許を持つハンターの高齢化にも拘わらず、昨今の犯罪への悪用を懸念して猟銃免許のハードルはより一層上がり続けている。警察では「で、なんで猟銃持とうと思うの?罠とか他の方法でも良くない?銃が好きなの?ねえなんで?」→翌日「で、なんで猟銃持とうと思うの?罠とか他の方法でも良くない?銃が好きなの?ねえなんで?」→翌日「で、なんで(ryなどしつこく追撃される。警察も余計な責任を取りたくないため。
批判を受ける場合も
・「くまさんを殺さないで!かわいそう!」「動物の命を何だと思ってる」「喜んで動物を撃つハンターは精神異常者、○ね」「動物を殺してストレス発散すんな」と感情論だけで動く現地の被害を知らないマジキチ動物愛護団体にクレーム(役場や事務所に殺到する抗議電話・罵声)をよく浴びせられる。「人が最も残酷な時は、自分が正しいと思い込んだ時」とはよく言ったものである。
しかも日本特有の悪習で角を立てないように対処しようとするため、狩猟活動が縮小、農作物や人的被害が拡大するといった負のスパイラルが続いている。もちろん動物愛護団体による保証など1円もない。
(→クレーム)
- 【話が通じない】動物愛護(団体)について猟師の立場から物申す | フリーランス農家(kishikorofreee.com)
- 北海道のヒグマ駆除に、道外からクレームが殺到 「クマの怖さを知らないのか」と非難の声 | ニコニコニュース (nicovideo.jp)
軍用・海外の民間におけるニーズ
一部の猟銃(散弾銃を除く)は
命中精度の良さからスナイパーが使用する対人狙撃銃としても使用されている。
連射が利かず装填可能な弾薬の数も少ないが、新規開発する手間がなく市販のパーツも豊富で
十分な破壊力と射程、構造が単純で高い信頼性・高精度ながら比較的安価…と割とコスパが良い。
さらに煮詰めて狩猟用でなく対人狙撃専用となったものも多い。
散弾銃・猟銃ともに安価で単純なため、銃規制の緩い国では民間でも根強い人気がある。
(むしろ小さい拳銃のほうが高い場合も珍しくない 大きい=高額ではない)
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関連項目
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