アサデンコウとは (アサデンコウとは) [単語記事]

アサデンコウとは、1964年生まれの日本の元競走馬である。鹿毛の牡馬。

主な勝ち鞍
 1967年:東京優駿(八大競走)、弥生賞

※馬齢表記は当時のものに合わせて旧表記で記載しています。

誕生からデビューまで

1964年、千葉新田牧場で一頭のサラブレッドが産声を上げた。
父シーフユリユー、母ニユーベツシー、母の父にトシシロという血統を持つその幼駒は、後にアサデンコウと名付けられて中央競馬でデビューすることになる馬である。

OK、ここで「え？なにその血統は」とか思った人もいるだろう。古い馬だからね、仕方ないね。
父のシーフユリユーは父にフランスの至宝ことシカンブル(日本でもオールドファンにはおなじみのムーティエやファラモンド(FR)の父)、母の父にダンテ系の始祖であるダンテを持つ良血馬。ただし競走成績は8戦3勝と微妙である。

母の父トシシロは父に戦前の大種牡馬ダイオライト、母に戦前の日本を代表する繁殖牝馬・月城(競走名クレオパトラトマス)を持つ、こちらも良血馬である。ただしこちらも競走成績は3勝(詳細不明)と微妙。

ぶっちゃけ両方と父も祖父も競走成績は微妙な親の七光この血統背景に加えてトシシロには種牡馬としての実績があった(シフユリユーはアサデンコウ誕生時は実績なし)ため、アサデンコウは当時としては良血馬と言って良かった。

そんなアサデンコウだが、デビュー当時は注目されていたわけではなく、1966年暮れの中山で迎えたデビュー戦は15頭立て12番人気であり、着順も4着と、人気の低さの割には健闘したね、程度の競走成績のスタートであった。
さらに折り返しの新馬戦も4着に敗れ、3歳シーズンは2戦0勝と特に特筆すべきところのない成績で終えることになった。

快進撃、そして逆境の皐月賞

年が明け、4歳になるとアサデンコウは生まれ変わったように快進撃を始める。

年明けすぐの未勝利戦で2着の6馬身差をつけて勝ち上がると、条件戦とオープン戦を連勝。
続く弥生賞ではそれまでの主戦騎手だった藤本騎手から4年前に二冠馬メイズイの手綱を握っていた森安重勝騎手に乗り替わり、関西3歳チャンピオンのタイギヨウを破り、重賞初制覇を決めると共に皐月賞への出走切符を手に入れた。

そしてオープン戦を叩いて連勝を5に伸ばしたアサデンコウは、“電光の差し脚”と称されて、メジロフレームやリユウズキ、ホウゲツオーといった評判馬を抑えて皐月賞の大本命に踊り出た。

だが、ここでアサデンコウを不幸が襲う。皐月賞は折からの厩務員ストの影響で、例年より2週間遅い4月末に決行されることになったのだ。
文字通り皐月(5月)に行われた翌年よりはマシだったとはいえダービートライアル・NHK杯が同じ週に行われるほどのずれこみに、4月半ばを目安に調整されたアサデンコウは、皐月賞本番を好調維持どころか体調不良の状態で迎えてしまう。

これに加え、増沢騎手への突発的な乗り替わり、スタートの出遅れと不利な条件が重なり、勝ったリユウズキどころかホウゲツオー、フイニイらの影すら踏めない7着と惨敗。電光は陰り、一気に評判を落としてしまう結果となった。

雷光のダービー馬

皐月賞戦線に出た馬が次に目標とするのは、当然ながら日本ダービーである。

ストの影響で皐月賞の2週間後に行われたダービーを目指し、アサデンコウ陣営もなんとか調子を上げようと必死に調整するが、体調不良は解消されることなくついに本番を迎えてしまう。

皐月賞の惨敗、そして引きずったままの体調不良。鞍上は前走で出遅れというミスを犯している、10年目の重賞未勝利騎手。不安要素の大きさを考えれば5番人気という評価はむしろ過大と言えるものだったかもしれない。

本馬場入場を終え、刻一刻と迫るダービーの時間。そんな時、一つのアクシデントが起こる。それまで快晴だった天気が突然崩れ、ドシャ降りの雨と雷鳴が東京競馬場を襲ったのだ。

突然の出来事に、ある馬は怯え、ある馬は興奮し、そしてある馬は混乱してしまう。そんな中、一頭だけ落ち着き払ってゲート入りを待つ馬がいた。

そう、“電光”をその名に持つアサデンコウだ。

大半の馬が興奮が抑えられなかったのか、レースは超ハイペースで進む。2ハロン目の走破タイムが10秒0という、今の基準で考えても異常すぎるタイムだったのだからそのハイペースっぷりがわかるだろう。

そんな中、唯一の落ち着いた差し馬であるアサデンコウが有利なのは当然の道理である。

直線で総崩れになる先行馬たちの間を、電光の差し脚が切り裂いて一気に先頭へ躍り出る。そして、同厩舎でかつての主戦である藤本騎手騎乗のヤマニンカツプ、きさらぎ賞馬シバフジとの叩き合いの末にアサデンコウは先頭でゴールを駆け抜け、見事に第34代日本ダービー馬に輝いたのだ。

激闘を終えて

2015年 6月現在、ワカタカからドゥラメンテまで日本ダービー馬は82頭いるが、アサデンコウだけ彼の写った表彰式の写真が残っていない。

体調不良の中で豪脚を繰り出した代償として、レース中に骨折したレースを終えると同時に馬運車で運ばれてしまったのだ。
そしてアサデンコウはターフに戻ることなく引退し、種牡馬としてマレーシアに寄贈された。その後は異国の地で悠々自適に暮らしていたが、政変の影響で消息不明となってしまった。1988年に死亡、もしくは1991年に死亡したという説も残っている。

血統表

*シーフユリユー Si Furieux 1957 青毛	Sicambre 1948 黒鹿毛	Prince Bio	Prince Rose
			Bio logie
		Sif	Ria lto
			Suav ita
	Hell's Fury 1949 鹿毛	Dante	Nearco
			Rosy Legend
		Sister Sarah	Abbots Trace
			Sarita
ニユーベツシー 1949 栗毛 FNo.4-m	トシシロ 1940 栗毛	*ダイオライト	Diop hon
			Nee dle Rock
		月城	Campfire
			*星旗
	プリユー 1944 栗毛	*プリメロ	Blandford
			At hasi
		ユーターピーノ一	*レイモンド
			ユーターピー