プリンスローズ(Prince Rose)とは1928年産
イギリス生まれ、
ベルギー調教の競走馬。
ベルギーが誇る名馬として競走馬、種牡馬として大成功を収めた一方、戦火に巻き込まれて非業の死を遂げた悲運のサラブレッド。
そう、ベルギーで調教された馬である。ちなみにベルギーは近年パートIII国に昇格したが、古今競馬はさほど盛んな方ではない。どれくらいかといえば日本版Wikipediaと英語版Wikipediaでベルギー調教の競走馬で調べても本馬しか該当しない。出生こそイギリスであったが、生産所有者の第4代ダーラム伯爵が本馬が1歳の時に死去し、それによって出されたセリでベルギー人に購入されてベルギーに送られ、そこで競走生活を送った。
父Rose Prince、母Indolence、母父Gay Crusaderという血統。
父はSt. Simonの直系種牡馬で、母父は第一次大戦中、ニューマーケット競馬場で代替開催されたイギリス三冠競走の優勝馬、いわゆる「代替三冠馬」である。
通算成績は20戦16勝とされるが、17戦16勝という説もある。ちゃんとした記録が現代に残っていない事も考えられるが、それにしても活躍した事に変わりは無い。
ベルギーの主要競走ブリュッセル大賞を勝利し、また国際レースであるオステンド国際大賞を2連覇。なおこのオステンド国際大賞は現在「プリンスローズ大賞」と名前が変わっている。
彼の名声を高めたのはこのオステンド国際大賞によるものが大きい。1931年にフランスの歴史的名牝Pearl Cap(レッドディザイアのご先祖様)を相手に勝利し、今度は凱旋門賞に逆攻勢をかけると、フランスの名馬Tourbillon(トウカイテイオーやダイタクヘリオスの父系祖先)が6着に沈む中大健闘とも言える3着を確保した。
翌32年にオステンド国際大賞を連覇した後、仏共和国大統領賞(現:サンクルー大賞)を優勝。文字通りのベルギー史上最強馬としての名声を否が応でも高め、獲得賞金は米貨換算で6万ドルに達した。
種牡馬入り後、ベルギーとフランスで供用され、1946年にフランスリーディングサイアーとなった。
活躍した牡馬が種牡馬として成功した事もあり、プリンスローズ系という一大系統を確立するに至った。
しかし、彼がフランスリーディングサイアーとなった時、彼は既にこの世にいなかったのである。
1938年、彼はベルギーからフランスのノルマンディーに移動したが、この年ナチスドイツがチェコスロヴァキアを脅迫。緊張が高まり、1939年に欧州大戦の火蓋が切られた時もベルギーは中立を宣言したが……
ご存じの通り、1940年にドイツ軍がベルギー、フランスに侵攻。戦時中も各国で競馬は行われており、代表産駒のPrincequilloが米国に亡命しジョッキークラブ金杯を優勝、Prince Bioがプール・デッセ・デ・プーラン(仏2000ギニー)を優勝するなどその才能を発揮していた。戦時中でなければ如何ほどの活躍を見せたことか。
ナチスドイツはフランスに残った競馬資源をほぼ根こそぎドイツへ持ち帰った。中には名種牡馬Pharisも含まれていたが、プリンスローズはノルマンディーから動くことなく繋養されていた。結果としてこれが悲劇に繋がってしまう。
1944年6月、歴史上最大規模の上陸作戦、ノルマンディー上陸作戦が発動。繋養先が主戦場となった結果、詳しい経緯は不明ながらも、薔薇の大公は戦禍に巻き込まれ、戦火に燃え尽きた。享年16歳。
1946年、産駒Prince Chevalierがジョッケクルブ賞(仏ダービー)を制覇し、フランスリーディングとなった。
1940年にアイルランドで生まれたが、第二次大戦を避けてアメリカへ渡った(よく渡れたなあ)。
通算33戦12勝、主に10ハロン超の長距離重賞を勝利したステイヤーであり、種牡馬入り当初は敬遠されがちだったものの、Hill PrinceがプリークネスSを優勝すると人気が高まり、更にRound Tableが66戦43勝を挙げ、種牡馬としても活躍するなど、北米を中心に爆発的に流行。北米リーディング2回。
更に母父として大変優秀であり、かのSecretariatとMill Reefの母父として競馬界に金字塔を立ち上げている。特にNasrullah等のスピード系種牡馬との相性は抜群であった。
1941年にフランスで生まれ、こちらは欧州に残って活躍した。
競走馬時代、戦時中であったがプール・デッセ・デ・プーランを優勝。その他重賞を複数勝利し、1945年に種牡馬入りするとSicambreがジョッケクルブ賞を制覇した上親子2代のフランスリーディングに輝いた。他*セダンが伊ダービー等を制している。
1943年にフランスで生まれ、彼も欧州に残って活躍。
1946年にジョッケクルブ賞を制し、亡き父に種牡馬リーディングを捧げた馬の一頭である。
種牡馬入り後、Charlottesvilleがジョッケクルブ賞親子制覇を成し遂げ、更に英ダービー馬を輩出し英愛リーディングとなり、プリンスローズの血が世界に通用することを証明した。
当然、日本にもプリンスローズの血が流れ込んだ。
その先陣を切ったのはPrince Chevalier産駒の*ブッフラーであり、日本で種牡馬入りするといきなり二冠馬コダマを輩出。続けて導入された*セダンは八大競走優勝馬を数頭輩出し、更に母父としてサクラチヨノオーらを輩出。以後プリンスローズ系種牡馬は多数導入されており、代表的な活躍馬は
などがいる。
更に、プリンスローズ系種牡馬は牝系に入ることで活躍しており、近年ではリアルインパクトやネオリアリズムの母父Meadowlakeがプリンスローズの直系(Princequilloの末裔)である。1970年代~2000年代の活躍馬の牝系を見てみると、大体プリンスローズがどこかに入っていたりする。
現在、プリンスローズの直系父系はほぼ断絶しており、Meadowlakeが亡くなって以降さっぱり聞かなくなった。しかし、古くから続く牝系の中にその血は残り続けており、戦禍の渦に消えたプリンスローズは現代競馬の礎としてその役割を果たし続けている。
第一次、第二次大戦と時代を問わず、馬というのは貴重な移動、輸送手段である。その為サラブレッドが軍馬として利用されることは仕方ないにせよ、意図せずして戦火に巻き込まれたサラブレッドは数多い。
本馬プリンスローズはノルマンディー上陸作戦に巻き込まれたが、同時期に凱旋門賞を連覇した歴史的名牝Corrida、アイネスフウジンやバンブーメモリーの父系祖先にあたるPlassyが第二次大戦中消息を絶った。
Alchimistという馬はご存じだろうか。ドイチェスダービー等を勝利し、ドイツの歴史的名馬Birkhahnを輩出した優駿であるのだが、ソ連軍の侵攻により射殺され食肉として喰われるという非業の最期を迎えた(ソ連に持ち帰ろうとしたが骨折した為、そのような措置が執られたとも)。
無論、日本でもダービー馬カイソウを始めとして空襲に巻き込まれ亡くなった馬が多数いる。
現代の我々が競馬を興じていられるのも、戦時中必死に競馬資源を守り続けた関係者の尽力と、戦火を生き抜いてきたサラブレッド達があるからこそというのを、忘れてはならない。
| Rose Prince 1919 鹿毛 |
Prince Palatine 1908 鹿毛 |
Persimmon | St. Simon |
| Perdita | |||
| Lady Lightfoot | Isinglass | ||
| Glare | |||
| Eglantine 1906 黒鹿毛 |
Perth | War Dance | |
| Primrose Dame | |||
| Rose de Mai | Callistrate | ||
| May Pole | |||
| Indolence 1920 鹿毛 FNo.10-c |
Gay Crusader 1914 鹿毛 |
Bayardo | Bay Ronald |
| Galicia | |||
| Gay Laura | Beppo | ||
| Galeottia | |||
| Barrier 1910 芦毛 |
Grey Leg | Pepper and Salt | |
| Quetta | |||
| Bar the Way | Right-away | ||
| Barrisdale |
クロス:Galopin 5×5×5(9.38%)、Hampton 5×5(6.25%)、Barcaldine 5×5(6.25%)
日本の子孫達
Prince Rose 1928
|Princequillo 1940
||Prince John 1953
|||Prince Blessed 1957
||||Ole Bob Bowers 1963
|||||John Henry 1975
|||Speak John 1958
||||Hold Your Peace 1969
|||||Meadowlake 1983
||||||*トキオリアリティー 1994
||Round Table 1954
|||*ボールドリック 1961
||||キョウエイプロミス 1977
||||カツラギハイデン 1983
|||*デュール 1961
||||ヒカリデユール 1977
||||マイネルダビテ 1984
|||*ターゴワイス 1970
||||All Along 1979
||||レッツゴーターキン 1987
|Prince Bio 1941
||Sicambre 1948
|||*ファラモンド 1957
||||カブラヤオー 1972
|||||ミヤマポピー 1985
|||*シーフュリュー 1957
||||アサデンコウ 1964
|||*ムーティエ 1958
||||タニノムーティエ 1967
||||ニホンピロムーテー 1968
||||カミノテシオ 1970
|||*ダイアトム 1962
||||クシロキング 1982
||*セダン 1955
|||コーネルランサー 1971
|Prince Chevalier 1943
||*ブッフラー 1952
|||コダマ 1957
|||ヘリオス 1957
||||イナボレス 1969
||Doutelle 1954
|||Pretendre 1963
||||Canonero 1968
||Charlottesville 1957
|||メジロサンマン 1963
||||メジロイーグル 1975
|||||メジロパーマー 1987
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最終更新:2025/12/24(水) 22:00
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