日本国憲法第23条とは、日本国憲法第3章(国民の権利・義務)に存在する条文である。
日本国憲法第23条は、個人の人権としての「学問の自由」を以下の通り保障している[1]。俳句のような五七五になっている。
日本国憲法第23条 学問の自由は、これを保障する。
諸外国の憲法において学問の自由を明文化して保障している例は少ない。日本においても大日本帝国憲法時代は規定されていなかった。しかし下記の滝川事件や天皇機関説事件のように、学問の自由が国家権力によって侵害された歴史に鑑みて、日本国憲法ではとくにこれを規定した。
学問とは、真理探究それ自体に向けられた論理的・体系的知に関わる働きである[2]。
学問の自由とは、このような学問について、政府などの公権力によって妨害されないことを意味する。
現在の大学は、人類の学問の成果を継承しつつ新たな知の地平を切り拓いていく役割を担う中核として位置づけられている[3]。ゆえに学問の自由とは、特に「大学における学問」を政府などの公権力の妨害から保護するものとされている[4]。
学問の自由は以下の4つを意味する。
学問研究活動の自由は、憲法第19条「思想及び良心の自由」の特別法的性格を持つ[5]。
個人が学問研究活動をする自由は、内心領域にとどまるかぎりならその保障は絶対的である[6]。思想・良心の自由や信教の自由の「内心における信仰の自由」が絶対的に保障されるのと同じである。
しかし学問研究活動は通常なら何らかの外部的行動をともなう。その外部的行動は他者加害原理に基づく公共の福祉によって一定の制限が行われる。たとえば、人体実験のように他人の生命・身体などの法益を侵害してはならないという制約が存在するのは明白である[7]。
昨今の先端科学技術研究には、重度な脅威をもたらす危険なものが含まれている。たとえば、遺伝子組換えによる健康に対する危害、クローン技術、体外受精、臓器移植、ES細胞、ゲノム編集などに付随するプライバシー権侵害といったものである。研究者の自制に一任することは問題があると考えられるので、政府により学問研究活動の自由に対して必要最小限の規制を設けるべきではないか、との意見が有力になってきている。
個人の研究成果を発表する自由を尊重しないと、その個人が学問研究活動をする意欲を失うことになる。ゆえに発表の自由を尊重しなければならない。
研究成果発表の自由は、憲法第21条「表現の自由」の特別法的性格を持つ[8]。
研究成果発表の自由が侵害された例として、滝川事件と天皇機関説事件が挙げられる。
個人の研究成果を学生のような後進に対して教授する自由も尊重しなければならない。
「教授の自由」は従来、大学などの高等学術研究教育機関における教授のみに認められると考えられてきたが、小中学校・高等学校などの初等中等教育機関の教師についても、教授の自由が一定の制限つきで認められるべきだとする見解が優位である。
初等中等教育機関の教師に“完全な”教授の自由が認められていないのは、全国的に一定の教育水準を確保せねばならないためである。仮に、“完全な”教授の自由を認めたとすると、教育の内容や方法などについて教師が自由に決定できるようになってしまう。
また、大学に通う学生は十分な批判能力が備わっているが小学校・中学校・高校に通う児童・生徒はまだ十分に批判能力が備わっていないと考えられることや、教師が児童・生徒に対して強い影響力・支配力を有していて児童・生徒が「囚われの聴衆」になりやすいことを踏まえても、“完全な”教授の自由は到底認められないのである[10]。
大学における学問の自由を十分に保障するために、第23条は制度的保障として「大学の自治」をも保障している。制度としてこれは保障されているため、大学の自治を侵害するような立法は許されない。
つまり、大学が国家権力などの外部の権威から独立し、組織体としての高度の自律性を保つことを認めるものである。学長・教授・その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任されることが認められ、施設と学生に対する管理の自主性もある程度は認められる[11]。
そうすることで、教育研究機関の研究者・教育従事者に職務上の独立を認め、その身分を保障することができ、学問の自由を強固に保障することができる。
大学の自治の主要な担い手は、教授で構成される教授会が中心になる[12]。
大学の自治は大学の自律的な施設管理を含むが、学問の自由とは無関係の消防・衛生については一般の場合と同じ規制に服する[13]。学問の自由とは無関係の政治的な集会が大学で公開形式で行われ、それを私服警官が見物したとしても、大学の自治に基づいて私服警官を排除することができない。
日本国憲法 | |
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第1章 天皇 | 1 2 3 4 5 6 7 8 |
第2章 戦争の放棄 | 9 |
第3章 国民の権利及び義務 | 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 |
第4章 国会 | 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 |
第5章 内閣 | 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 |
第6章 司法 | 76 77 78 79 80 81 82 |
第7章 財政 | 83 84 85 86 87 88 89 90 91 |
第8章 地方自治 | 92 93 94 95 |
第9章 改正 | 96 |
第10章 最高法規 | 97 98 99 |
第11章 補則 | 100 101 102 103 |
掲示板
1 ななしのよっしん
2015/02/09(月) 20:38:37 ID: 7jfzS1RlD8
池上彰さんが言ってたけど、「学問の自由は、これを保障する。」って文が区切り方によっては575になるから好きなんだって。
2 ななしのよっしん
2019/10/11(金) 23:36:02 ID: Rf71e2ny2n
アカハラの法的根拠
3 ななしのよっしん
2023/07/06(木) 22:09:48 ID: Vd2twVrjZ3
知る権利って憲法に明記してなかったのね
現代的観点だと寧ろこっちのほうが大事というか基本じゃないのかと思ってしまうが....
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最終更新:2024/06/06(木) 22:00
最終更新:2024/06/06(木) 22:00
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