海の檻歌とは、日本ファルコムが1999年12月9日に発売したPC向けロールプレイングゲームの名称である。
概要
この作品は、英雄伝説シリーズ5作目にしてガガーブトリロジー最終作である。尚、時系列順だと2作目になる。
今作はガガーブトリロジーでも他作品との関係性が明確であるため、今作をプレイする前に前作の朱紅い雫をプレイしておくことが望ましい。また、前々作の白き魔女も出来れば今作の前にプレイしておくとよい。
劇中の音楽には非常に力を入れており、ファンからも評価は高い。またストーリーの根幹を音楽が構成しており、三部作の中でも特に音楽が重要な意味をもっている。
Windows版とPSP版が存在するが、前者は日本ファルコムオリジナルのものである。後者は日本ファルコム開発・販売ではなく、マイクロビジョン開発・バンダイ販売のものである。
あらすじ
ガガーブに分断された三つの世界の一つ、ヴェルトルーナ。この世界で何百年もの昔に消え去った「水底の民」とその際に失われてしまった「幻のメロディー」。その失われた古のメロディーが再現されたという噂が音楽を生業とするものの間に広まった。再現したとされる天才音楽家の名はレオーネ・フレデリック・リヒター。彼は若き天才としても名を馳せていた。だが、それから50年が経った今でも、その真相は確かめられることなく、やがて忘れられていった。
レオーネ・フレデリック・リヒターが再現したとされる幻のメロディー、「水底のメロディー」のフレーズが刻まれている共鳴石を求めて、ガガーブ暦943年、マクベイン一座の巡業旅行が始まる。
ヴェルトルーナ世界における七つの国家・島
- レトラッド
- ヴェルトルーナ北東にある小さな国。ラング大老を首長として国家という形をとってはいるが、施政権は隣国グレイスール共和国に委託しており、実質的には小都市や村の集まりである。主人公たちの住む村であるラコスパルマでは、貝殻から染料が作られ、その隣村のクランカでその染料を用いて作られる「クランカ織り」が特産品として有名である。ピンゼルでは、4年に1度独奏会が開かれ、優勝者・準優勝者は翌年にメルヘローズのカヴァロで開かれる演奏会に出場できることとなっている。
- グレイスール共和国
- ヴェルトルーナ南東に位置する国。カントスに、レオーネ・フレデリック・リヒターが設立したといわれる音楽学校は有望な音楽家を輩出することで有名である。また、ボザールにはリップル・リングというパン屋があり、人気となっている。国土の南は、険しい山岳地帯であり、旅人たちには難所として知られている。加えて最近では盗賊が出没し、治安が悪化しつつあるため、私費を投じて自警団を組織する者も出てきている。
- ペニソラ公国
- グレイスール共和国とは地続きであり、ヴェルトルーナ中央付近に位置する国。代々のペニソラ公が治めている。資源は乏しく、豊かな国ではないが、近年公爵は豪商リッシュと結びつき、その援助を得ることで急速に都市部の整備を進めている。目先の利益に傾倒する公爵の政策により、首都エンボリンを含めた都市で、物価の上昇や物品の不足が起こっている。さらにリュトム島開発事業に大勢の兵士を派遣しており、国内の凶悪な魔獣が野放しになっている。ドガーナに住む公爵の盟友であるエグール子爵もこのことに心を痛めている。
- リュトム島
- ペニソラ公国北部にある島。美しい自然あふれる島であったが、豪商リッシュの私有地となってからは、開発によってその自然もほとんど失われてしまった。数年前まで住んでいた島民も海賊の度重なる襲撃によって島を離れている。
- メルヘローズ
- ヴェルトルーナ北部の中央に位置する大国。東部には芸術の都であるカヴァロがあり、西部には古代杉を使った人形で有名なエキュルがある。これらの都市を中心とした自由都市連合である。したがって、まとまった軍隊はなく、要所を守る自警団程度の軍事力にとどまっている。カヴァロにあるカヴァロ国際劇場は、ヴェルトルーナ中の若い音楽家たちが、その舞台で演奏することを夢見ている。また、マシューズ・ベーカリーというパン屋のくるみパンが美味しいと評判である。国土は森林で覆われ、カヴァロ南部には湿地帯も存在している。メルヘローズ北部には「大蛇の背骨」と呼ばれる巨大な山脈があり、登頂して向こう側を見たものはおらず、どうなっているのかは不明である。
- オースタン
- ヴェルトルーナ北西にあり、国土の大部分が砂に覆われたヴェルトルーナ最古の歴史を持つ国。メルヘローズとは海を挟んでいるが、グリム橋によって繋がっている。レトラッドとグレイスールの関係同様、ここもメルヘローズが施政権を預かっているが、結局のところほとんど干渉することはなく、自治に近い状態である。最近では、オアシスにバザールが頻繁に開かれるなど、経済的な面でも活発化しつつある。
- ヌメロス帝国
- ヴェルトルーナ南西にある軍事国家。ラウゼン皇帝の治世となってから、強大な軍事国家へと変貌した。皇帝に反対した大臣は粛清され、ヌメロスの正統な皇子の行方はわからなくなっている。近年では、大々的な徴兵が行われたとの噂も広がり、周辺諸国にはつねに緊張をもたらしている。これらの急激な軍事化によって、国民の生活は圧迫され続けており、政情は不安定なものになっている。民衆は、暮らしに困窮するだけでなく、村単位で工場などへ強制労働にかりだされることもしばしばあるようだ。首都プカサスでは、住民よりも兵士の数の方が多いという異常な事態となっている。ちなみに、ヴェルトルーナは、オースタンとヌメロス帝国の西側にある「忘却の海」によって、外界と隔絶されており、その外に何があるのかはこの世界に暮らす人々にとっては未知の世界である。
- ブロデイン王国
- ヴェルトルーナ南部中央にある王国。統治者であるデュオール王子は国内外で評判の良い名君である。前王ルザークⅡ世による暴政は、粛正と称した反対者の不当な弾圧・逮捕に始まり、犯罪者として次々とレクト島へ流刑するまでに及んだという。レクト島は王都グラバドルの北にあり、グラバドルからは島全体が不思議な白い光に包まれる「魔女の島現象」を見ることができる。現在では、地続きのヌメロス帝国からの侵略の脅威にさらされている状態にあるが、デュオール王子の巧みな外交手腕によってなんとか阻止している状態である。
主な登場人物
- フォルト
- 本作の主人公。14歳。レトラッド国のラコスパルマで難破船を住居にしている。ピンゼルの独奏会に参加するつもりだが、ラッパを演奏しようか、キタラを演奏しようかで迷っていた。ラッパの演奏に関しては師であり祖父のマクベイン曰く、「へたっぴ」である。マクベイン一座のキタラ奏者として、マクベインの共鳴石探しの旅に同行する。彼の成長を追っていくのもこの物語の重要なポイントである。
- ウーナ
- 本作のヒロイン。14歳。レトラッド国のラコスパルマの染料工場で働くしっかり者。フォルトの幼馴染にしてフォルトのことが好き。だが、奥手なのでうまく告白できない。しかも告白しようとする度に魔獣が出現したり、フォルトにスルーされたりと散々である。マクベイン一座のピッコロ奏者としてフォルトの旅に同行する。熱くなりやすいフォルトとマクベインの間を取り持ち、一座のブレイン的な存在でもある。
- マクベイン
- フォルトの祖父。62歳。オースタン国の出身。ラコスパルマの難破船に住み着いたのは彼である。何事も気合いがあればなんとでもなるという持論の持ち主。ロックラッシュという必殺技を持っており、薄い壁を殴って破壊できる。やっぱり気合い。フォルトとは喧嘩するほどなんとやら。若い女性や貴婦人に非常に優しい。演奏面ではフォルトやウーナの師匠として二人の成長のために尽力する。かつて何度も演奏巡業した経験を持っており、演奏だけでなく、人生経験も豊富。彼の助言と見極め、行動力には目を見張るものがある。新生マクベイン一座では、手琴を演奏する。今回の巡業を最後の巡業と位置づけ、死ぬ前に一度聞きたいと願っていたレオーネの再現した「水底のメロディー」が刻まれた共鳴石を追い求める。
- ジャン(&リック)
- ジャンは老犬である。しかし、老犬といっても一線で魔獣と戦闘を行う能力がある。また、動物魔法を詠唱することができ、マクベイン一座の回復役の要である。さらに、道中で加わるトビネズミのリックと合わせてマクベイン一座のマスコット的な存在でもある。動物だからといって侮ることなかれ。
- シャオ
- マクベインの弟子にして、かつての演奏仲間。41歳。アコーディオン奏者。お調子者で金銭欲が強いが、いざという時は師匠顔負けの正義感を見せる憎めない男。「水底のメロディー」の本を探し出してマクベインに送り、今回の旅立ちを後押しした張本人。彼がいなかったら今回の巡業旅行は存在し得なかったともいえる。
- レイチェル
- シャオの娘。18歳。シャオに似ず美人な姉貴分。コーラス担当。サボリ癖があるなどシャオの影響を受けているが、意外にしっかりしている部分も。ぬいぐるみの裁縫をこなすなど、ある程度家庭的なスキルを持ち合わせているのかもしれない。ジャンにはサボリを咎められたり、隠し持っていたお菓子を嗅ぎつけられて奪われたりするなど、ある意味天敵。
- アルトス
- ピンゼルの独奏会に参加していたバイオリン弾きの少年。16歳。グレイスール共和国のボザールに住み、実家はパン屋を営んでいる。幼い頃に生き別れた姉がおり、彼女が歌ってくれた音色を頼りに姉のことを探していた。独奏会に参加したのもそのためである。冷静かつ謙虚な好青年。バイオリン奏者として優秀なだけでなく剣の腕前もかなりのものである。
- アイーダ
- 人形師の孫娘。15歳。メルヘローズ国の西部、エキュル郊外のロゼット工房に祖父ロゼットとともに住んでいる。祖父のロゼットとマクベインは旧知の仲である。カプリやペドロといった傑作人形を生み出すロゼットとそれを華麗に操るアイーダがエキュルの名物となっている。また、元気で活発な性格であり、誰とでもすぐに仲良くなれる。辛い時でも笑顔を絶やさず、明るく気丈に振舞うため、マクベインたちから心配されることもある。人形の製作ではロゼットには及ばないものの、修理を器用にこなし、人形を操ることに関してはヴェルトルーナでも右に出るものはいない。
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オープニング映像
プレイ動画(完結シリーズのみ)
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関連項目