??「違うんですゴールドシップ聞いてください」
「お前芦毛なら誰でもいいのか」とは、ある実在の競走馬のイメージから発生したネタフレーズである。
このフレーズに行きつくまでには、かなりの遠回りな説明が必要となる。順を追って説明したい。
最初に
この記事は、実在の競走馬を扱ったネタを記載しております。 発言や書き込みをする際には、十分に配慮した上でお願いします。 |
※実在の競走馬を扱ったネタという意味で、「ナマモノ」に近い概念である。取扱注意のこと。
背景
背景① 競走馬・ジャスタウェイと芦毛の親友
まずこのフレーズの主人公ともいえる競走馬「ジャスタウェイ」について。
主な勝ち鞍は2013年の天皇賞(秋)、2014年のドバイデューティーフリー、安田記念。ドバイデューティーフリーでは2着に6馬身以上の着差をつけレコードタイムで圧勝、その後国際クラシフィケイションにおいて130ポンドの評価を受け、日本調教馬では史上初となる単独1位にランキングされた名馬である。性格は真面目で大人しく、優等生そのものだったという。
さてそんなジャスタウェイであるが、彼には親友とも呼べる競走馬がいた。それが芦毛伝説の継承者・ゴールドシップである。「GI 6勝」という文句なしの輝かしい成績を残した名馬であると同時に、持ち前の激しい気性が爆発した結果レースの中でも外でも多くの伝説を残し「ゴルシ」「金船」「不沈艦」「芦毛の暴れん坊」「白いの」「シロイアレ」「120億円事件」など多くの異名がつけられた、今なお高い人気がある名馬である。
ジャスタウェイとゴールドシップとは同じ厩舎の同期にあたる。かたや真面目な優等生、かたや暴れん坊のヤンキー。そんな2頭だが、なぜか仲が良くウマが合ったという。普段は調教を嫌がるゴールドシップが、ジャスタウェイと一緒の時はやる気を出したり、ジャスタウェイが歩いているの見つけたゴールドシップが近寄ってきたりと、ゴールドシップの方が懐いていた様子。逆にジャスタウェイも図太くマイペースな面があり、その辺がうまい具合にかみ合ったのだろう。そんな2頭の仲良しエピソードは当時の調教師や厩務員から数多くのエピソードが語られており、2017年10月の「Number(937号)」では『暴れん坊と優等生、最強のふたり』というタイトルで特集が組まれたこともある。
背景② 競走馬・ジャスタウェイは○○好き(?)
多くの記録を残したジャスタウェイは、2014年有馬記念を最後に競走馬として引退となった。引退後は社台スタリオンステーションにスタッドイン。そこでは「隣の放牧地の芦毛馬(キャプテントゥーレやクロフネ)と仲良くしていた」「近くの芦毛の馬をじっと見ていた」という目撃談が多く集まっていた。それを聞いたファンは「ああ。彼は近くにいた芦毛の馬と、かつての親友・ゴールドシップを重ねて懐かしんでいるのか」とセンチメンタルな想いを持っていた、のだが。
と。
「ジャスタウェイが芦毛好き」「ゴールドシップと仲が良かったのはウマが合っただけではなく、芦毛だったから」。そんな小ネタひとつ生まれたら、一生遊んでいられるのが同士の皆様。芦毛に関してのトークになぜか割り込んでくるジャスタウェイ。芦毛の競走馬を集めたイベントレースに興奮するジャスタウェイ。そんなジャスタウェイ概念が水面下で広がっていった。
※
ところで「本当にジャスタウェイは芦毛好きだったのか」という点についてであるが、実は明確な出典による情報が乏しく、ファンの妄想から生まれただけの眉唾な話といえる。例えばジャスタウェイとゴールドシップの仲良しエピソードなどは厩務員の発言など出典が多数確認できるのだが、この件に関しては全くと言っていいほど出典は見つかっていない。「芦毛の馬に近寄って行った」というのも、実は反対側の放牧地にいた同期のディープブリランテがジャスタウェイを威嚇しまくっていたため逆側に逃げていたから、という見解もある。結局のところ、今まで仲良くなってきた友人にたまたま芦毛が多かった、という見解も間違いではないのだろう。
「嘘も百回言えば真実となる」というドイツの格言もあるが、嘘とは言わないまでも信憑性の乏しいネタを面白がってさも真実であるかのように吹聴して回るのは控えるべきである。ネタはネタとして楽しもう。ましてや対象となる相手は、否定も反論もできない元競走馬である。彼らにリスペクトを持って、良識のある対応を心掛けてほしい。
背景③ ウマ娘ブーム
※ここは正直蛇足な節です。ウマ娘について説明しているだけなので読み飛ばしてもかまいません。
そんな中、2010年代後半に競馬界を巻き込む一大コンテンツが誕生する。それが『ウマ娘 プリティーダービー』である。Cygamesによるスマートフォン向けゲームアプリを中心としたメディアミックスコンテンツで、実在の競走馬達を美少女化したキャラクターが登場する。2018年アニメ第1期を放送し、その後2021年にゲームサービスが開始されるとそのクオリティの高さから人気に火が付き、大ブームとなった。
2018年のアニメ第1期から2021年以降の大ブームまでは多少の期間があった。それを支えていたのがゴールドシップである。
本コンテンツでウマ娘化されていたゴールドシップ。腰まで届く芦毛の長髪、モデル体型で超絶美人。だが一度口を開けば粗暴かつ豪胆にして毒舌。何よりも面白いことを優先し、その行動は突飛にして支離滅裂。故に「残念な美少女」「黙れば美人、喋ると奇人、走る姿は不沈艦」「ウマ娘の中で唯一ボーボボに出ていても違和感がない」と言われることも。
そんなゴールドシップは「ウマ娘の宣伝担当(自称)」という肩書で、なんとバーチャルYouTuberとしても活動している。ブームになる前の2018年3月から活動しており、Vtuber全体として見ても古参の1人である。ウマ娘のブーム後に過去の動画が再生数を伸ばしたりしており、ウマ娘を代表するキャラクターの1人となった。
この『ウマ娘』という一大コンテンツ以降、ゴールドシップのイメージは完全に固定されたといえる。「将来もクソもねー、今だ今!今面白く生きなきゃ意味ねーだろ!」「面白けりゃいいだろッ!よくねえよ!どっちだ、アァン!?」というセリフなど、横柄で馴れ馴れしい口調のイメージである。
一方で、この記事の主役であるジャスタウェイはウマ娘に登場していなかった。(2022年10月現在)
しかし『ウマ娘』というコンテンツ内でもひときわ異彩を放っているゴールドシップは、強すぎるキャラクターゆえに異彩過ぎて周りが巻き込まれていく描写が目立っていた。またゴールドシップ自体謎の多いキャラクターとなっており、寮生活は送っているはずなのだが、同室の相手は長らく不明なままとなっている。こうなると期待されるのがゴールドシップと対等にやり取りができる、同室ウマ娘の設定である。一部のファンは「ここに入るのはジャスタウェイしかいない」と思うのである。
「ジャスタウェイがもしウマ娘に実装されたら」「ウマ娘といかないまでも、もし擬人化して喋ったらこんな口調になるだろう」と多くのファンがイメージした結果それが集合知となり、そこからなんとなーくジャスタウェイのイメージが出来上がっていった。その過程で「お堅い口調の優等生で、芦毛好き」というイメージになったのは自然な流れだろう。
二次創作ネタの発生
こうして「ジャスタウェイとゴールドシップは親友」「競走馬の擬人化の隆盛」が重なり、ネット掲示板などでジャスタウェイとゴールドシップの会話を乗せた怪文書(SS)が散見されるようになる。その中で、「他の芦毛に目移りしてしまった親友を茶化す(ツッコミを入れる)ゴールドシップと、生真面目に言い訳するジャスタウェイ」という設定の怪文書が産まれ、多く使われるようになったのが以下の会話である。
ゴールドシップ「お前芦毛なら誰でもいいのか」
ジャスタウェイ「違うんですゴールドシップ聞いてください」
「ジャスタウェイに懐いていたゴールドシップ」という2頭の関係を上手く表しており、2頭のイメージ通りの口調、ジャスタウェイの芦毛好きネタが盛り込まれたこの会話はTwitterなどのSNSでも広まることとなる。
最終的には、「お芦誰」「違ゴ聞」と省略しても伝わる程度には定型文と化した。
派生
そこから派生して、芦毛の競走馬や芦毛のウマ娘についての会話中に、「芦毛...素晴らしいですね」などとお堅い口調で誰かが書き込もうものなら、どこからともなく「お前芦毛なら誰でもいいのか」などとツッコミの書き込みが飛んでくるのが一つのテンプレとなっている。
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関連項目
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