キャプテントゥーレ(Captain Thule)とは、2005年生まれの日本の競走馬・種牡馬。芦毛の牡馬。
2008年の皐月賞に勝利し父アグネスタキオンとの親子制覇を達成、また川田将雅の初GI勝利のパートナーでもある。
20戦5勝[5-2-3-10]
主な勝ち鞍
2007年:デイリー杯2歳ステークス(JpnII)
2008年:皐月賞(JpnⅠ)
2009・2010年:朝日チャレンジカップ(GIII)連覇
概要
4戦4勝で2001年の皐月賞を制するも屈腱炎であっという間に引退してしまった「幻の三冠馬」「超光速の粒子」アグネスタキオンの3世代目産駒。ひと世代上でダイワスカーレットが桜花賞・秋華賞の牝馬二冠に3歳でエリザベス女王杯制覇など大活躍し「こりゃすごい!後継種牡馬はよ!」となっていた中で出てきた馬である。
トニービン産駒の母エアトゥーレは阪神牝馬ステークスの勝ち馬で、2002年には仏GIモーリス・ド・ゲスト賞2着の実績もある。半姉アルティマトゥーレ(父フジキセキ)はセントウルS・シルクロードSに勝利し、後に半弟クランモンタナ(父ディープインパクト)が小倉記念、シルヴァーソニック(父オルフェーヴル)がステイヤーズS・レッドシーターフハンデキャップ(サウジアラビア・G3)と、産駒4頭が重賞制覇を達成した名繁殖牝馬である。
祖母*スキーパラダイスはアメリカ産・フランス調教でムーラン・ド・ロンシャン賞(G1)制覇、日本にも参戦し京王杯スプリングカップに勝利している。スキーパラダイスの半弟*スキーキャプテンは日本で調教されて1995年のきさらぎ賞を制し、また同年に日本調教馬として初めてケンタッキーダービーに出走した記録を持つ。馬名は、この大叔父スキーキャプテンと母エアトゥーレの名を合わせたものである。
父方で1990年の桜花賞馬アグネスフローラ、母方で1983年のエイコーンステークス(アメリカ牝馬三冠初戦)勝ち馬スキーゴーグル(Ski Goggle)と、日米の三冠競走牝馬の血を引き、両馬の父である*ロイヤルスキー[1]の3×4クロスを持っているのが血統構成上の少々珍しい特徴といえる。
生産は社台ファーム、社台レースホースで125万×40口=5000万円で募集された。栗東・森秀行厩舎所属。主戦騎手は武豊→川田将雅→小牧太。
戦歴
2歳:目指せ世代のキャプテン
昇り調子の新鋭種牡馬アグネスタキオンに欧米仕込みの活躍牝系、さらにデビュー前の追い切りでも好時計を記録し、2007年7月8日の新馬戦(阪神芝1800m)は武豊を鞍上に単勝1.8倍の堂々1番人気……からの8着。ちなみにこの新馬戦、1着が後の宝塚記念馬アーネストリー、2着がこの世代の阪神JF・オークス馬トールポピー、3着がシンザン記念勝ち馬ドリームシグナルと、後の重賞馬が4頭も出た(といって8着では相手が悪かったとも言えないが…)。
気を取り直して2戦目の未勝利戦を勝ち上がり、9月16日の2歳OP・野路菊S(阪神芝1800m)に1番人気で臨むが、後方から追い込みきれず勝ち馬に1.3/4馬身差の3着。この3戦を以て、武豊から川田将雅に鞍上交代となった。
10月13日のデイリー杯2歳ステークス(JpnII)で重賞初出走。この時は栗東の坂路で4ハロン49秒8という猛時計を記録していたものの、新馬戦のこともあっていわゆる追い切り詐欺という見方が強く、当日は初めて1番人気を譲り3番人気に留まっていた。しかし、2番手追走から直線きっちり抜け出して重賞初勝利。
4番人気で迎えた2歳王者決定戦・朝日杯フューチュリティステークスでは、2番手追走もそのままゴスホークケンの逃げ切りを許し、3着。2歳を5戦2勝で終えた。
およそこういう感じの馬で、終いのキレで勝負するタイプではなく、競走成績を通じて上がり最速を記録したことは一度もない[2]。スタートからハナを取れれば逃げ、他に行きたい馬がいるなら無理に競り合わず2・3番手追走。そして直線での粘り勝ちを狙う、というのが以降のレーススタイルになっていく。
3歳:皐月賞父子制覇も…
クラシックイヤーの2008年は弥生賞から始動。しかし、8枠15番スタートから序盤で番手を取り切れず、そのままマイネルチャールズの4着と消化不良の内容で、本番の皐月賞を迎えることになった。
2008年4月20日、第68回皐月賞。この年の1番人気は京成杯・弥生賞を連勝して臨む「マイネル軍団クラシック制覇への最終兵器」マイネルチャールズ(3.1倍)、一方キャプテントゥーレは7番人気(17.1倍)で迎えた。良馬場発表ながら金曜日に強い風雨に見舞われた影響が残り、中山競馬場の芝は相当に荒れた状態だった。川田は3枠6番からのスタート直後から手を動かし、コーナーインまでにハナを取り切る。1・2角でペースを落とし、1000m61秒4と先頭を保ったままスローに落とすことに成功。4角の勝負所から再びペースを上げて突き放し、荒れた馬場で後続の脚が伸びあぐねる中、2着タケミカヅチ・3着マイネルチャールズに2馬身半差をつけてまんまと逃げ切り。父アグネスタキオンと史上5組目の皐月賞親子制覇[3]を達成、鞍上の川田将雅もデビュー5年目で初のGI級競走制覇を果たした。
さあ!次は父タキオンが走れなかった日本ダービーだ!……のはずが、早くも栗東に帰る前からキャプテントゥーレの歩様がおかしい。直ちに中山競馬場の診療所で検査が行われ、左第3手根骨骨折が判明。皐月賞勝利の代償に故障に見舞われることになった。そんな所まで父親に似なくていいから…[4]。
同じタキオン産駒のディープスカイが、NHKマイルカップ制覇からの変則二冠ローテ(松田国英厩舎じゃなく昆貢厩舎だけど)で日本ダービー制覇を達成する中、その後キャプテントゥーレの治療休養は1年以上に及んだ。
古馬時代
4歳となった2009年8月の関屋記念で1年4ヶ月振りの復帰(4着)。その8月末、同期のタキオン産駒ディープスカイはキャプテントゥーレの復帰と入れ替わるように屈腱炎で引退してしまった。ひと叩きして挑んだ9月の朝日チャレンジカップ(GIII)にて、道中4番手から直線ではブレイクランアウトとの叩き合いを制し、皐月賞以来1年5か月振りの勝利となる重賞3勝目を挙げた。
続いて完全復活のGI2勝目を狙い天皇賞(秋)に臨むも、2番手追走から直線では馬群に沈み、遅咲きの優良企業カンパニーのGI初制覇の中12着。距離を詰めてマイルチャンピオンシップではやはりカンパニーの4着止まり。(結果的に、この4着が骨折からの復帰後はGIでの最高着順となる。)
2010年(5歳)は、新たに小牧太を鞍上に迎えた朝日チャレンジカップにて、プロヴィナージュを2馬身抑えて逃げ切り勝ち、2連覇を達成。しかしGIでは、安田記念をショウワモダンの7着、天皇賞(秋)はブエナビスタの13着と敗れた。
2011年(6歳)も、中山記念2着・金鯱賞2着と重賞戦線で存在感を保っていたが、1番人気に推された七夕賞で12着に大敗、これを最後に引退することとなった。
皐月賞での故障がなければどうだっただろうか…というのが惜しまれるが、父タキオンが皐月限りで再起不能となった中、復帰して古馬重賞を2度制し、6歳まで走り続けたのはよく頑張ったと言えるだろう。
引退後
引退後は社台スタリオンステーションでのスタッドインを勝ち取り、亡き父アグネスタキオンの後継として期待が寄せられた。…が、南関東で黒潮盃を制したクロスケが最高で中央での重賞産駒はなく、正直種牡馬としては相当な空振りに終わってしまった[5]。
余談ながら、2015年に入厩してきたジャスタウェイが隣のキャプテントゥーレの放牧地へ寄って見つめていたという話から、ジャスタウェイは芦毛フェチなのではという競馬ファンのネタ(お前芦毛なら誰でもいいのか)が生まれている(単に逆側のディープブリランテに凄まれ、トゥーレの側に寄っていただけという説もあり、あくまでネタ話の域を出ないが)。
その後一時はレックススタッドに移ったが、2016年限りで種牡馬を引退。現在は社台ファームで功労馬として余生を過ごしている。競走生活も馬生も短かった父タキオンの分も、長生きしてほしいものである。
血統表
アグネスタキオン 1998 栗毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
アグネスフローラ 1987 鹿毛 |
*ロイヤルスキー | Raja Baba | |
Coz o' Nijinsky | |||
アグネスレディー | *リマンド | ||
イコマエイカン | |||
エアトゥーレ 1997 芦毛 FNo.3-l |
*トニービン 1983 鹿毛 |
*カンパラ | Kalamoun |
State Pension | |||
Severn Bridge | Hornbeam | ||
Priddy Fair | |||
*スキーパラダイス 1990 芦毛 |
Lyphard | Northern Dancer | |
Goofed | |||
Ski Goggle | *ロイヤルスキー | ||
Mississippi Siren | |||
競走馬の4代血統表 |
- 母エアトゥーレは阪神牝馬S勝ち馬。半姉にアルティマトゥーレ(父フジキセキ、セントウルS・シルクロードS)、半弟にクランモンタナ(父ディープインパクト、小倉記念)とシルヴァーソニック(父オルフェーヴル、ステイヤーズS・レッドシーターフH)がいる。
- 祖母*スキーパラダイスはアメリカ産・フランス調教、仏GIムーラン・ド・ロンシャン賞制覇、日本にも遠征し京王杯スプリングカップに勝利している。大叔父(スキーパラダイスの半弟)の*スキーキャプテンは日本調教できさらぎ賞を制覇、また1995年に日本調教馬として初めてケンタッキーダービーに出走した。
- 母系から受け継いだ芦毛の毛色を辿ると、歴史的名牝Mumtaz Mahalおよびその父The Tetrarchに行きつく。
関連動画
関連リンク
関連項目
脚注
- *米ローレルフューチュリティ(G1)勝ち馬。種牡馬生活の途中から日本で供用され、産駒にはアグネスフローラ以外にライデンリーダーの父ワカオライデンなど。
- *同じくタキオン産駒のダイワスカーレットも上がり最速は一度もなしにGI級4勝している。
- *トウショウボーイ('76)&ミスターシービー('83)、シンザン('64)&ミホシンザン('85)、ハイセイコー('73)&ハクタイセイ('90)、シンボリルドルフ('84)&トウカイテイオー('91)に続く記録。
- *「左前脚」はアグネスタキオン引退の原因となった部位かつ、産駒においても泣き所と化しており、ダイワスカーレットやディープスカイの引退も左前脚の故障によるものである。
- *タキオン後継種牡馬の双璧であるディープスカイの方はダート路線を中心に一定の活躍馬を出したが、有力な後継種牡馬を出すには至らず、タキオンのサイアーライン維持は極めて厳しい状況にある。
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